学級委員の役割
兄様との再開から一週間、俺は平穏な日々を送っていた。
栄光七家や栄十六家の人達は皆SSクラスの為、遠くから偶に見かける事があるぐらいだし、あれ以来兄様が接触してくることもない。
俺の望んでいた平穏な生活。それをやっと手にすることができたのだ。
そんな風に喜びを噛みしめながら、いつもの様に真っ直ぐに寮へ帰ろうとしていると、ナナに呼び止められた。
「シン?何処に行くの?」
「ん?寮に帰るんだよ。午前の授業も終わったし。」
普段の俺の行動を知っているナナが、何故そんなことを聞くのか疑問に思いながらも質問に答える。
「え?今日は月一で開かれる委員会の日じゃない。行かなきゃだめよ!」
「委員会?」
「そう、委員会!シンは副委員長でしょ?」
「えぇ?」
ナナの言っていることがよくわからない。副委員長って最初のクラスのときのだよな。
って、待てよ。確かどこかでそんな内容を見たような…
あっ、そうだ!学校案内に書いてあったんだ。
確か、委員会メンバーは一度決まればいかなる事情があろうとも、半年は変更することはない。そして月一で集会が開かれ、それに参加しなければペナルティが課せられる。
ただ、逆にいい面もあり、委員会に選ばれれば食堂メニュー半額や学校にある施設の使用許可などが降りやすくなるのだ。
変な規則だと思ったからよく覚えている。
「今日が集会の日だったんだ。教えてくれてありがとう。なら行ってくるよ。」
ナナに礼を言って教室を出る。
集会の場所は確か会議室だった。
何時からかはわからないが、なるべく早く行ったほうがいいだろう。
俺は校舎内の間取りを頭の中で思い描きながら、早足で目的の場所へと向かった。
✽✽✽
俺は思っていた。
いくらこの学園とはいえ、所詮は委員会である。前世と大差ないだろうと。
この学園で今まであった事を考えれば、委員会が普通であるはずがないというのに…
俺はそんな深い後悔の念に駆られながら、静かに周りを見渡す。
会議室は中央に大きな円卓があり、大人数が座れるようになっていて、俺の右隣には同じクラスの委員長である怜斗、左隣には何故か風間 俊也がいる。
というか、見たところSSクラスは全員いる。
委員会は先程始まったばかりだが、進行役の生徒会の話を聞く限り、委員会とは学校イベントの運営を行う役割を持っているらしい。
だから優秀な人間しか選ばれない。と、そういうことだ。
さて、その優秀な人間の一人に含まれている俺だが、今直ぐにここから抜け出して、別の人間に押し付けたい思いである。
何故かって?さっき言っただろ?
SSクラス=優秀な人間=栄光七家+上流階級
この公式が成り立つんだよ!
いや、流石にバレる!しかも兄様に魔力制御甘いって言われたばっかりだし!
やばい!やばいって!!
俺はどうするべきかぐるぐると考える。
本当はここに居たくないけど、逃げ出しても不審に思われるだけだ。幸いまだ誰にもバレていないことだし、ここは穏便に距離をとっていかなければ。
俺はそう決意すると、ほとんど聞き流していた話に耳を傾ける。
どんな仕事があるかによって、関わり度合いが決まるからな!
「――ということで、例年通り自己紹介は省き、新入生歓迎会に向けての部署の振り分けを行います。まず、生徒会は警備員の手配、三年生は――」
あー、なんか始まってる。
新入生歓迎会?それって普通俺らはされる側のはずじゃ?する側なの?何で??
俺の頭の中では?マークが飛び交う。
まあ、結局は鳳凰学園だから。で納得するんだけど。はあ。
「では、これで今回の集会は終わります。この後は各自、振り分けられた部署のリーダーから指示を貰ってください。では解散!」
さてさて。やっと終わりました。
現在、集会が始まってから三時間が経過しています。もう夕方四時です。早く帰りたい。
……まあ、まだ終わりそうにないんだけどねっ!
俺は心の中で涙を流しながら、さっき言われたとおり、振り分けられた部署のリーダーの元へ向かう。
今回の俺の配属先は“派遣部”。所謂、雑用係である。
まあ、予想できてたけどね!委員会の中で一般庶民は俺だけだし!
というわけで、今俺は“派遣部”リーダーの目の前にいます。そして俺以外は全員先輩です。
視線が痛い。
「お前が河野 慎哉か?」
「はい!これから宜しくお願いします!」
リーダーの圧が凄い。身長が俺の頭が鼻あたりにある程高いのだ。
だが俺はそれに負けない様に腹に力を込めて、元気に挨拶をする。挨拶は人間関係の基本である。
「おー、元気な挨拶だな。俺は郷野 仁志だ。お前の事は聞いている。なかなかに優秀らしいな?存分にこき使ってやるから覚悟しとけ!」
リーダー――郷野先輩がニヤリと凄みのある笑みを浮かべてそんなことを言うと、周りの先輩たちも便乗する様にそうだそうだと声を上げた。
どうやらここは体育会系のノリらしい。
これからが大変だ。俺は先輩達にもみくちゃにされながら、そんな事を思う。
たが、そんな俺の思いとは裏腹に、口元にはいつの間にか笑みが浮かんでいたらしい。
まあそれも仕方ない。まさかこの体育会系のノリが、今世で味わえるとは思わなかったのだ。
俺は懐かしげに遥か昔の記憶を思い出しながら、先輩達の輪に加わる。
だから、気づかなかった。そんな俺を見つめている者がいた事に。




