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シンデレラ転生の左遷リーマンは零時までの身体能力チートで異世界を救う  作者: 釈 余白(しやく)
第三章:激しくも長き決戦

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20.決戦の始まり

 予測通りに進んでいた魔界門の構築に変化が見えたのは、夕方になり陽が落ち始めたころだった。


「で、伝令! 申し上げます! 魔界門の様子が、なにやら動く影が見えるようになりました!」


「とうとうこの時がやってきましたか! おそらくそうかからないうちに悪魔どもが飛び出し襲い掛かってくるでしょう。隊長、では手筈通りに迎え撃てるようお願いいたします!」


「ははっ、いざ参りましょうぞ!」


 最後の作戦を立てていたシンデレラたちが、伝令を受けて監視場所までやってきたときには、すでに門の向こう側に無数の影がうごめいている様子がはっきり確認できるようになっていた。


「つい先ほどまではなにかが動いているような程度だったのですが、今ではこの様子です。これが悪魔なのでしょうか」


「そうです、わたしが一度出くわしたのと同じ種類でしょうね。背丈は人間の半分にも満たないのですが、鋭い爪と牙がありますから十分注意してください。先鋒隊はわたしと共に、残りは隊長とともに抜け出た悪魔の対処をお願いしますね」


 今まで魔界門と言うくらいだから扉があるものだと考えていたシンデレラ。それは多くの部隊員も同じだった。しかし目の前で実体化しつつあるのは想像とは異なっており、いうなればガーデンアーチのような形状だった。


 これには一瞬たじろいだが、冷静に考えれば破壊に必要な部分が少ないほうが成功率は高まるだろうとシンデレラは考えを改めた。問題は門を閉じて悪魔の進出を押さえることは不可能であることだ。


 つまり片っ端から撃退していくしかない。いまだ絶対数がつかめない現状から考えると、これは精神を含めた持久戦となりそうだ、彼女はそんな気配を感じ取っていた。


 やがてシンデレラ率いる先鋒隊は門の目と鼻の先までやってきた。すぐ近くで目の当たりにすると、その禍々しさ否が応でも伝わってくる。


 こうして待機を初めてどのくらい経っただろうか。数分か、それとも数十分なのか一時間なのか、それすらわからないくらい緊迫した場に、突然異様な鳴き声が響いた。


 まるでそれが開戦の合図だと言わんばかり、魔界門は黒く光を放つ。いよいよ実体化を終えようとしているのであろう。シンデレラは腰のベルトからダーツを一本抜きとりしっかりと握りしめその時を待つ。


 やがて扉の代わりとなっている結界のような暗幕が徐々に色を薄くしていく。当然、さっきまで陰でしかなかった悪魔の姿が誰の目にもはっきりと見えてくる。


「あ、あれが悪魔…… なんとおぞましい……」

「くそっ、残らずぶっ殺してやる!」

「やらせはせん、やらせはせんぞ!」


 部隊員たちは今にも飛び出しそうに前のめりで合図を待っている。士気の高まりと同時に焦りも感じ取ったシンデレラは、ゆっくりと向き直り皆へ声をかけた。


「よろしいですか皆さん、あれが我々の敵である悪魔です。確かに姿はおどろおどろしく凶悪そのもの、なんとも形容しがたい嫌悪感を持ったことでしょう。しかしいくら異形とは言えあのような矮小な小物(インプ)、臆するに値しません。即座に蹴散らしてやりましょう!」


「おおお! 姫様の言うとおりだ!」

「あんな雑魚恐るるに足らず!」

「やってやる! いや、やるんだ!」

「「姫様万歳! 姫様に忠誠を!」」


 全員の表情から迷いは消え、高い士気だけが残された。これで今やれることはもうなく、あとは出たこと勝負で押し切れることをシンデレラは祈った。


 シンデレラを先頭に先鋒隊が魔界門へと進軍をはじめたところで、おそらく相手も危険を察知したのだろう。扉にかかる幕からはじけるように一匹、また一匹と悪魔が飛び出してくる。


 それはまるでシャボン玉か放たれるように、それとも水滴がしみだすようにと言ったらいいだろうか。とにかく一つ一つがふつふつと湧き出てきたのだ。


「今こそ我らの力を発揮するとき! みなさん、参りましょう!」


 シンデレラの合図で一気に高まった部隊員たちが一斉に走り出す。もちろんシンデレラは誰よりも早く特攻し小さな悪魔を素手で倒していく。


 この日のために(おのれ)を鍛えてきた皆もシンデレラに続けと剣を振るった。悪魔は次々に切り刻まれていき、戦局は明らかに優勢、流石の練度と言えよう。


「なんだ、案外と歯ごたえがないじゃないか。これならオレたちだけでも全滅に追い込めそうだな」

「油断するなよ? 敵さんがこいつらだけのはずがないからな」

「問題ないさ! 我等には姫様がついているんだ! きっと勝てる!」


 厳しい訓練で心身を鍛え上げた迎撃部隊員に油断も慢心もない。今はまだ前哨戦程度であることくらいは重々承知なのだ。


 それでもこれだけあっけなく倒し続けると、部隊員の中には疑問を感じ始めるものも出てきてしまう。それは救いを求める人間としては仕方のないこととも言えた。


「もしかして伝承が大げさだっただけじゃないのか?」

「そうだな、昔は兵士の数も少なかったのかもしれん」

「おそらく我らのような厳しい訓練をしていない、貧弱な者たちだったのだろうよ」


 確かにいくらなんでも弱すぎるとシンデレラも感じていた。ほとんどの悪魔は部隊員たちの一刀で消し飛んでしまうのだ。油断を招くのも無理はない。


 しかし、この場を引き締めるべく、喝を入れ皆の慢心を諭す声が響いた。声の主はもちろん迎撃部隊を束ねている隊長である。


「バカ者! 今まで何を学んできたと言うのだ! どんな敵だろうが油断をすれば最後に倒れるのは己だと今一度思い出せ! 自分たちの剣と精神にゆだねられた未来の重さをな! その手には王国の行く末と民たちの命、そして何より愛する家族たちの将来が握られているのだぞ!」


「はいっ! 戦の最中に戯言を発してしまい申し訳ありません!」

「そうでした、気を引き締め直します!」


 やはりこういう時は年長の経験豊富な隊長が頼りになる。シンデレラは悪魔を相手にしながらも、不思議と心が落ち着いていくのを感じていた。


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