連撃を止める
ヴィルの腕が変形した。
まるで生き物が蠢いてるかのように歪に腕が変形し、手首から先が剣になっている。
「……何、……これは」
志穂は目を丸くした。
あり得ないことが目の前で起きたのだ。
いや、あり得るかもしれない。
おそらくこれは、魔法。
魔法なら納得がいく。
だったら、自分も?
志穂はそう思うとすぐにスマホの変身アプリを押した。
謎の光が志穂を包み、ブルーの魔法少女に変身した。
「…………お前は、ちゃんと負けるべき」
ヴィルがそう言うが、志穂は
「何言ってんのよ。負けるために戦闘をするわけないでしょ」
志穂は負ける気はなかった。
経験値のかけら欲しさに負けようとはしない。
というより、そんな負けかたで経験値のかけらが得られるわけがない。
本気で戦って本気で負ける。でなければ本物ではない。
「やぁぁああ」
志穂は刀を抜きヴィルに向かって突進する。
「…………ッ」
ヴィルが剣を構え、突進してきた志穂を右へ受け流す。
「ッ!」
舌打ちを一声、志穂は足を地面に打って更に右へ飛びヴィルの後ろへ回った。
志穂がヴィルの背中目掛け刀を突きの構えで襲いかかる。
「…………っ!」
しかし、ヴィルは勘と反射で後ろを見ずに回避した。
志穂はそのまま反動で前へ転んでしまった。
しかしすぐに立て直してヴィルへ向き直る。
右肩を前に出し、刀身を腰に寝かせて体の横に置く、再び刺突の構え。
それに対しヴィルは両手をフリーにし棒立ちになった。
その姿に志穂はイラッとし足を踏み出した。踏み切りと同時に突き出す剣尖がヴィルの体を貫いた。
「っ!!?」
志穂はその呆気なさに驚いた。
まさか、手を抜かれた!?
「…………なるほど、最初の方はダメージが少ないな」
ヴィルは志穂が連撃することを恐れ身を犠牲にした作戦にでた。
いや、作戦という立派なものではなくどちらかというと気合いである。
志穂は直ぐ様連撃をしようと一旦ヴィルの体から刀を抜こうとするが、抜けない。
「っ!?」
何度も何度も試行を繰り返すが結果は同じだった。
抜けない。
抜けてはない故にヒットは継続中であり連撃も終わってない。
だが、次の攻撃が出来ない。
ヴィルの体は志穂の刀が突き刺さったままである。
突き刺さったままで次の攻撃は許さない。
これがどういう意味を為すか。
「…………ウルトラCの連撃の止め方」
「っ!!?」
志穂の厄介な点は青天井の連撃である。
連撃をすればするほどダメージは上がる。
では、回避等で連撃に失敗したら?
再び次の連撃を始めるであろう。
そしてヴィルは連撃に失敗とも成功とも言えぬ方法を見つけた。
気合いであるが。
連撃を失敗にさせることは出来ないが連撃を止める方法はある。
ある意味連撃を止めたことは失敗させたも同じである。
ヴィルは体に志穂の刀を刺さりながら右手の剣を動かす。
「はっ!?」
志穂はそれに気づき刀を手放し、後ろに跳びヴィルの斬撃をかわした。
「……よく、動かせるわね」
「…………私は死なない。……死ねない」
「?どういうことよ」
「…………改造能力とでも言うべきか」
「改造能力?」
「…………人為的に手が加えられた能力」
「…………私は改造能力によって死ねない」
「…………いや、死ねるかもしれないが少なくとも私からは死ねない」
「??」
「…………簡単に言うと、お前は私を倒せない」
「!?何よそれ」
ヴィルはとあるコツで志穂の刀を抜いた。
志穂の刀を左手に、自分の剣は右手に。
「…………ひとつ訊く。回復方法がないお前にもし、HPが0になったらどうなる?」
「し、知らないわよ。気絶とかじゃないの?」
「…………果たして、気絶で済むだろうか」
「なっ何、何が言いたいの!?」
「…………イルヴァは死んだ。HPが0になっても気絶ならば、死ぬまではない。つまり何らかの条件があって死んでしまった」
「…………その条件を私は知っている。そしてソレを回避すれば私は死なない。いや、死ねなかったか」
「っっ!?」
「…………覚悟はいいか?連撃の魔法少女よ」
ヴィルは砲弾のような軌道を描いて志穂に突撃してきた。




