適応化
志穂はヴィルとの激突を避けようとかわそうとしたが、ヴィルはそれを上回るスピードで志穂に突進し、激突した。
志穂は身体をくの字に折り曲げそのまま放物線を描き天月町の広場に隣接する川に落ちた。
川に勢いをもった人体が無造作に放り投げられる音がした。
人体には肺がある。肺に空気が有る限り肺は二つの浮き袋の役目をする。
故に人は浮く。
しかし志穂は浮き上がらなかった。
水中で志穂はぶくぶくと口から泡を吹きながら沈んでいった。
(私、このまま死んで逝くのかな)
志穂はどんどんと川底へ沈んでいく。
「…………沈んだか」
ヴィルは志穂のHPを0にしようとしたがそうはならなかった。
HPゲージは寸での所で止まり残りわずかを指していた。
志穂は死んではいない。
志穂は川底に沈んだ。
沈んだだけだった。
志穂が死を覚悟したその刹那、
(──な、何!?)
荒れ狂う群青の光が志穂を包み、目の前に広がる水面を巻き込んでいく。
その光がうねりが全てを呑み尽くさんと、凄まじい勢いで周りを押し寄せる。
(が、かほっ)
志穂は肺の中にある全ての空気を押し出した。
しかし、息苦しくはなかった。
(何!?なんなの!?)
志穂は川底で水中で息が出来る。
いや、正確に言うと息はしてない。
水中で行動できるように『適応化』した。
「…………さて、大事なこれ返すよ」
ヴィルはそう言うとぽいっと志穂の刀を放り投げた。
志穂と一緒にいたいだろうと思いのことだった。
だがそれが仇になる。
刀は川に入水しみるみると川底に沈む。
(っ!?私の刀!?)
志穂は自分の刀が川に降りていくのを見、自分の刀を取った。
刀は傷もなくそのままの姿だった。
(よし、使える)
志穂はそう思うと川からあがろうと考えた。
自分は千代子のように動き回れる訳ではない。
うーんと考えた結果、答は簡単だった。
(いや、普通に川岸に行けばいいじゃん!)
実に簡単な答だった。
志穂は川底から川岸に向い歩いた。
「…………おそらくもう浮き上がらないだろう」
ヴィルはそう言い川岸に降り、くると川に背を向けた。
「何、逃げようとしてんのよ」
「!?」
ヴィルはその言葉を聞きすぐさま後ろを振り返った。
目の前には志穂がいた。刀を持って。
「…………戻ってきたか」
「あら、意外そうね。私が死んだと思った?」
「…………いや、死んだとは思わない。殺せとは命令されてはないし、そもそもこの程度で魔法少女が死ぬわけがない」
「なんか、変な自信ぶりね」
ヴィルは志穂の姿を見て思った。
「…………それにしてもお前、水の中で息が出来るのか?」
「いや、出来ないけど。まぁわけがわからないままこうなったのよ」
「…………特性の開花か、何かか」
「ん?」
「…………いや、何でもない」
そして、ヴィルは手首から先が剣となった右手を構え出す。
それを見た志穂が刀を構える。上段の構えだ。
志穂が上段の構えから刀をヴィル目掛け降り下ろした。
ヴィルはそれを右手で受け止めた。剣となった右手で。
「…………!?連撃が継続している!?それもMPは消費をしてない!?」
ヴィルは驚愕した。てっきり、自分が刀を抜いたときに連撃は終わったと思ったが実は終わってなかった。
連撃ボーナスはまだ続いていた。
志穂が再び連撃を始めたと思ったのは間違いで、本当は連撃の続きを始めたのだ。
ギーン、キーンと金属のぶつかる音がする。
それは本当は鳴らしてはいけない音。
志穂の連撃が成功し続けてる意味を為す。
しかし、かわそうにもかわせない。
理由として近すぎるというのもあるのだが、何より志穂がヴィルの剣に的確に当ててくる。
与ダメージは期待できないがダメージの上昇は期待できる。
ヴィルに脅しを恐怖を仕掛けるのにそれで、十分だった。
もし、一発でも当たればという恐怖だ。
ヴィルは何発も剣で受けきっているうちに機会を逃した。
いや、もう機会でも何でもない。
身を呈して志穂の攻撃を受けるのは無理であるのだ。連撃がリセットされないし。
ヴィルはどうしたものかと考えながら剣で受けきっていた。
しかしそのながら作業が災いしたのかヴィルはヘマをした。
ヴィルは剣で受けきれず志穂の攻撃を自分の身で受けてしまった。
「…………っ!!」
ヴィルは大ダメージを受けてしまった。
幸いHPはまだ残存していたが、これ以上の二撃目を受けるのは不可能だった。
半分以上削られたのだ
そして、志穂の連撃ボーナスはまだ継続する。
「…………ちっ」
ヴィルはアイラからもらっていた。
エスケープを。
「やぁああああ」
志穂が横一閃の斬撃を繰り出そうとしていた。
「…………覚えてろよ」
ヴィルはそう言い残し、エスケープをした。
エスケープをした瞬間、志穂は空振りをした。
「ちっ、逃げられたか」
志穂はヴィルに勝利した。
マキャファートは感じた。これは戦闘が起きてる。
「まさか、僕の電磁フィールド並みのを……」
そう言い残しマキャファートはアンテナが感じた方向へ駆けた。
マキャファートはおそらくここであっただろう場所に着いた。
「っ!志穂か」
マキャファートは志穂を見つけ志穂に駆け寄った。
「遅かったわね、マキャファート」
志穂は今までと違って少し冷たくマキャファートに言い放った。




