光闇戦線9
九、事件
和勝はいつものように偉零と――と遊ぼうと思って、家を出ようとしたが、父親に呼び止められた。
「どこにいくつもりだ?」
「森に修行しにいく」
「修行なら家でもできるだろ。俺が見てやる」
「お父さん、『伝授光』できねぇだろ。一人でいいよ」
そう言って和勝は外へ出た。早く遊びたいと思い、急いでいつもの森に向かった。和勝が森に着いた時には偉零と――はもう着いていた。
「遅かったな」
「なんかあった?」
「お父さんに引き留められたんだ。誤魔化してきたけどな」
「ねぇ今日はどんな遊びをするの?」
「今日はかくれんぼしようぜ!」
三人はかくれんぼを始めた。鬼になった和勝は十数えてから二人を探し始めた。森の中を見渡すと、茂みの中に偉零の青い髪が見えた。和勝は思わずニヤリ、と笑い。ゆっくりと茂みに近づいた。
「見ーつけた!」
「くそー!」
偉零が見つかったので、今度は――を探し始める。――は中々見つからなかった。
「おーい!どこにいるんだ?」
「全然見つかんないね」
森の中のあちこちを歩き回ってみたが、――は見つからない。和勝はもう一度注意深く辺りを見渡してみた。すると、走り去る龍福家の使用人の姿と、その使用人の腕に捕まった――の姿をみた。和勝は家を出た時からつけられていたが、それに気づかなかったのだ。
「やべぇ!――が捕まっちまった」
「え?誰に?」
「龍福家の使用人!つけられてたんだ!くそ!全然気づかなかった」
「とりあえず追いかけよう!」
二人は全速力で使用人の後を追った。使用人の行く場所はなんとなくわかっていた。東雲家だ。闇獣である――を封印するつもりなのだ。そうなると、二度と話すことも遊ぶことも、会うことすらもできなくなってしまうかもしれない。封印を解く方法はあるにはあるのだが、子供である和勝たちには知らされていない上、闇獣と関わっていた和勝たちに教えてくれるはずも無いだろう。和勝たちはなんとしても封印される前に助け出さなくてはならなかった。
「偉零、あいつの行き先は東雲家だ!先回りしよう!」
「先回りってどうやって?あいつも最短ルートで行ってるはずだよ」
「ご先祖がいいもん残してくれてんだ!『風変光』の再現!それを使う!」
『風変光』は光を風に変えることができる能力だ。過去の『伝授光』の能力者がその能力を再現したことがあるのだ。
和勝は偉零に自分の肩につかまっておくように指示を出し、地面に手をつけた。その手から勢いよく風を放った。その風が地面に当たったときの反発で、和勝と偉零の体が吹っ飛んだ。あっという間に和勝と偉零は東雲家の家の上にたどり着いた。和勝と偉零の体がそこで勢いよく下降していく。その勢いを弱めるため、和勝は手から風を出し、安全に着地できるようにした。二人は怪我もなく着地した。龍福家の使用人はまだ来ていないようだった。先回りには成功したようだ。和勝はうまくいってよかった、と少し安心した。しかし、隣で偉零が倒れた。和勝がそれに驚いた瞬間、和勝は棒か何かで頭を殴られた。和勝はその衝撃で前に倒れる。意識が無くなる前、和勝が見たものは太い木の棒を持った自身の父親だった。