光闇戦線7
七、和勝と偉零
壱樹と偉零は二条家で揃って龍福家の家に向かっていた。
その途中、和勝の姿を見た。
「今日、集まりなのに何で和勝は外にいるんだ?家と逆方向に歩いていったけど。もしかして家出?」
「流石にそこまで子供じゃないだろ」
偉零の言葉を壱樹は否定した。
「和勝、結構子供っぽいからなー。心配だから追いかけてみるよ」
「任務頼まれたとかだと思うけどな」
壱樹にはそう言われたが、偉零はとりあえず追いかけてみることにした。
*****
和勝は紫千の森に辿り着き、父親に言われた闇獣を発見した。紫色の髪の筋肉質な体の闇獣だった。人型B級はかなり強い。しかし、B級は強さの範囲が広い級なので、この闇獣はB級の中でも弱い方だった。
(これぐらいだったら、雷騎でもギリ倒せんじゃねぇか?左紀はちょっときついか?)
そんなことを闇獣を見て考えた。
「久しぶりだな。『伝授光』の使い手」
闇獣が声をかけてきた。『伝授光』というのは和勝が持っている能力である。
「久しぶりってどこかであったか?」
「昔、お前を殺そうと思ってな、子分を1人送ったことがあるんだ。覚えてないか?」
「俺を殺しに来た闇獣?いっぱいいすぎて覚えてねぇよ」
『伝授光』は龍福家に与えられた能力ではあるが、その能力を持って生まれてくる子供は少ない。『伝授光』は光の力の性質や形、強度などを自由に設定できるので、光を別の物質に変えたり、別の能力を再現したりできるのだが、少しでも設定を間違えると再現することができなくなる。だが、既に亡くなった『伝授光』の能力者が設定したことのある光の力ならば、設定を自分で行うことなく、一瞬でその設定の光の力を使うことができる。そのため、自分で設定した光の力を実践で使うのは困難であり、ほとんどの『伝授光』の能力者は先祖が設定したことのある力で戦うのが常だが、和勝は光の操作に人一倍長けていたので、自分で始めて設定した光の力も実践で容易に使うことができた。その類稀なる才能を闇獣たちは本能で見抜き、強くなられる前に殺そうとしていたのだ。だから、和勝は子供の頃からよく闇獣に狙われていた。
「まだ幼い闇獣だったな。身寄りがなくて俺しか頼りがいなかったのか、どんだけ暴行を加えても付き従ってくれたよ」
闇獣は笑いながらそう言った。和勝は聞いているうちに気分が悪くなっていった。
「お前、もう喋るな。一発で殺してやるよ」
和勝はそういうと右手に火の球体を作り、左手に水素の球体を作った。実際には火や水素ではなく、光なのだが、能力で性質を再現しているのだ。和勝はどちらの球体も闇獣に放った。二つの球は闇獣の目の前で合わさり、爆発した。闇獣は跡形もなく消えた。木々も巻き込んで爆発したので、森には大きな穴が残った。
「相変わらずすごい力だな」
後ろから声がしたので振り向くと偉零がいた。
「偉零、何しにしたんだ?」
「途中で見かけたから追いかけてきたんだ。家出したのかと思って」
「流石にそこまで子供じゃねぇよ」
(壱樹と同じこと言ってるって言ったら怒るんだろうな…)
偉零は内心そう思った。
「お前、昔仲良くしてた闇獣のこと覚えてるか?」
「…顔も名前もよく思い出せないけど、何となく覚えてるよ」
「そいつも最初は俺のこと殺しにきたんだっけ?」
「あー、確かそんな感じだったような…」
二人はその闇獣との思い出を振り返った。