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制御技術者転生 モデルベース開発が魔術革命をもたらす WEB版【書籍発売中】  作者: 新田 勇弥
8章 青年期 青雲編I

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307話 親密さの進展

そういえば。余り他人を呼び捨てにしなくなったなあ、学生時代以降。○○ちゃん呼びはするけれど。

「よし!」

 アデルの館の地下階。魔導ボイラーの前。

 改造届けが受理されたので、彼女との約束通りこちらの館にも、新型魔石を設置しにきた。そして、たった今、試運転に向けた確認が終わった。

 地下室には僕の他、代表とこちらのメイド頭であるヨハンナさんがいる。

「待たせたね、できたよ。ちゃんと動くと思う」

 1時間程前から、従前の基部を停止させていたので、暖房は効いておらず、2人はすこし寒そうにしている。

「じゃあ、一旦起動するよ」

 鉄扉奥の魔石に触ると、鈍い音が地下室に響き渡った。

 西側の熱交換器に近づいて、手を近付けるとじわじわと熱気が伝わってくる。

「うん。良い感じだ」


「じゃあ、説明をしようか」

「はい。皆を呼んで参ります」

「ヨハンナさん。ホールの熱交換器を見て来て」

「承りました」

 彼女は階段を上って1階へ行った。

「ふう」

「お疲れさまです」

「いやいや」


 しばらくすると、ぞろぞろとメイドが地下室に集まってきた。

 エストとヨハンナさん以外は、リリアナさん、グレースさん。

「あれ? ロッテさん」

「あっ、私も見せてもらって良い?」

「いいけれど」

 ロッテさんは、ウチの館でも見ていたよな。魔導具が好きなのかな?

 ちなみに、アデルは舞台稽古で不在だ。


「じゃあ、簡単に説明するね。この部分に新型の基部を追加した。それで、今はこちらが稼働して、館を温めている。上の区画には今まで動いていた部分も残してあるよ」

 メイドたちがのぞき込んでいる。

「もし不具合が起こった場合、これまでの基部に自動的に切り替わるようになっているから……試しにやってみよう」

 ボイラーの扉を閉める。

「この魔石が緑に輝いているときは、新しい方が稼働している。ここで、不具合が起こると」

 腕を扉に伸ばす。


印加(インプレス)

 放出している蓄魔石の周りに魔界を作用させる。数秒後。

 ダン!!

「「おぉ」」

 結構な音がした。

「こういう感じで、魔石が緑だけど、点滅しているときは、古い方が動いているから、覚えておいて」

「はい」

「もし、この状態になった場合は、ウチの館に知らせるように」

「承りました」

「ここに取扱説明書の冊子を置いておくので、見てほしい。それで次は……」


     †


 魔導ボイラーと冷蔵魔導具の一連の説明を終えると、労ってくれるということで、応接室に通された。ヨハンナさんが、お茶を淹れてお菓子を出してくれる。


「滞りなく終わり、ようございました」

 部屋には代表とロッテさんが残っている。

「うん。お姉ちゃんがすごくよろこぶと思う。この前も早く来ないかなあって言っていたし」

「そうなんだ」

 昨夜、魔導通信で話したけれど。

「私もうれしいわ」

「あら、シャルロットさん、そうなのですか?」

「ええ、お姉ちゃんが、いろいろお菓子を作るって言っていたので」

「そういえば、ロッテさんも、叔母さんのお料理を手伝うって言っていなかったっけ?」

 ブランシュさんに言われていたよな。

「うううん。私は向いていないわ。お料理」

「そうかなあ」


 カチッと音がして、代表がカップを置いた。

「オーナー。ちょっと、失礼します」

 立ち上がると、部屋を出て行った。

 気を利かせた?


「レオン君は、お料理ができない女は嫌い?」

 えっ?

「どうだろう。好きになったら、気にならないかな」

 目線を外す。

「何か、前に好きな子が居たような、言い方だわ」

「んんん」

 濁しておくか。


「それって、エイルちゃん?」

「エイル?」

「エミリアに居た頃は、歌劇を一緒に観たのよね」


 あいつは、何を話しているんだ。

「そうだねえ。あの時は母様と義姉さんと一緒だったけどね」

「えっ、ええ? そうだったの?」

「うん。あれは、エミリア劇場に照明用に投光魔導具を納入したから、それを見せようと、母様が思ったんじゃないかな」

「なあんだ」

「ずいぶん。エイルと仲が良いんだね」

「まあね。彼女も一緒に研究生になったし。あっ、2人とも若手公演に出ることになったから」

「そうなんだ。エイルも研究生にねえ」

「知らなかったの?」

「うん。聞いていない。オットーさんと仕事しているからレナード商会へ行って、何回か会ったけど。そんなことは言わなかったな」


「ふむ。オットーさんって、彼女のお義兄さんよね」

「そうだね」

「エイルちゃんのことはわかったわ」

 疑いは晴れたかな?


「もしよかったら、私たちの公演を見に来られないかな」

「ああ、何日にやるの?」

「10日と11日。私とエイルちゃんが出るのは1組で、午前中なの」

「うぅん、10日か……」

「予定があるの?」

「確か、王都には居ない。仕事でねえ」

「ああ、そう……残念。でもお仕事なら仕方ないわ。そっ、そういえば。なんで彼女のことは呼び捨てなの?」

「えっ。いやあ、すごく昔から知っているからね」

「私だって、会ってから3年経ったわ。学校の同級生の2人も愛称で呼んでいたわよね」

 むう。


「あれは、あの2人がそう呼べって言うからだよ」

「じゃあ、私もロッテって呼んでほしいわ、同い年だもの」

 ロッテさんが、身を乗り出してきた。

 ノック。

 折り良くか、折り悪くか、代表が応接室に戻ってきた。

「失礼致しました」

「ああ、代表。僕の10日の予定は?」

「10日は……」

 手帳を出した。

「ガライザーへご出張の予定です。それが?」

「いや、なんでもない」

「そうですか。では、オーナー、そろそろ」

「そうだね。じゃあ、ロッテさん(・・)、また」


     †


『そっちへ行っていいかな』

「うん」

 夜になって、アデルから魔導通信が掛かってきた。

 壁に楕円の水面ができると、部屋着のアデルが潜り抜けてきた。

「レオンちゃん」

 腕を広げると、ソファーになだれ込んできて抱き付かれた。

 入浴の後なので、寝間着にガウン姿の僕の顔やら首筋に吸い付かれる。


「ありがとうね。さっきヨハンナさんから報告があって。地下のボイラーと冷蔵冷凍魔導具、それから厨房の小型のも見たわ、ちゃんと動いていた」

「うん」

「本当にうれしい。お菓子を作って持ってくるから」

「楽しみにしてる」

 忙しいだろうし、年末か年明けかな。

 実際のところ、あの建物はトードウ商会のものだから、アデルの利得としては便利になったぐらいなのだが。


「いい匂い」

 アデルが、ガウンの前あわせから手をつっこんで、その辺りをさすっている。

「だめだよ、アデル。変な気分になる」

「ふふっ。明日は休みだから、いいわよ。別に」

 蠱惑的に笑う。


「そうだ」

「ん、何?」

「ボイラー稼働のあと、そっちの館でお茶を出してもらったんだけど」

 アデルは、2、3度瞬いた。それがどうしたのという風情だ。

「ロッテさんも応接室に居て、少し話したんだけど」

「へえ」


「彼女、魔導具が好きなのかな?」

「ロッテが? いやぁぁ、聞いたことがないけど。なんで?」

 首を傾げた。

「うん。ウチの地下室で説明した時も居たよね」

「居た。って、今日も見ていたの?」

「うん。だから好きなのかなあと」

 アデルは、ニヤッと悪そうな顔をした。


「それで?」

「若手公演を誘われたけど、僕は仕事が入っていてさ」

「ああ、やっぱりね」

 やっぱり? じっと見てくる。

「それで、自分のことを、ロッテって呼んで欲しいって」

「ほぉぉお」

 意外にもうれしそうだ。


「いいわねえ。呼んであげたら?」

「ええ?」

「いつまでも、さん付けだとよそよそしいもの」

「だけど」

「いいわよ。その代わり……」

お読み頂き感謝致します。

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「その代わり」が怖い。 頑張れアデル!今日も脇が甘いぞ。
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