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制御技術者転生 モデルベース開発が魔術革命をもたらす WEB版【書籍発売中】  作者: 新田 勇弥
8章 青年期 青雲編I

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302話 昼食会と鞘当て(仮:誤用)

鞘当てって、1人の女性を2人の男が奪い合う様子なので、男女逆な場合は誤用なのだけど。その場合は、なんて言うのだろう。良いのを思い付いたら、今話のタイトルを替えるかも。

 翌日の昼前。

「やあ、いらっしゃい」

「おっ、おじゃまします」

「えっ。固いぞ、ディア。確かにでかい館だけどレオンの家だぞ」

 約束通り2人がやって来た。


「だけど、ベル」

「そうそう。僕の家だよ、気兼ねなく」

「そう……だよな」

 玄関の石段を登って、ホールに入る。


「来たわね、ディア、ベル!」

「アデルさん」

「うわぁ、なんで」

 待っていたアデルの元にディアとベルが、早足で歩み寄った。

「うん、昨日レオンちゃんから聞いてさ、2人に会いたかったのよ」

 その後ろに、最近メイド服を着なくなったロッテさんも居た。

「それでね。今日は妹のロッテも連れてきたわ」

 ロッテさんが、客達に会釈した。

「シャ、シャルロットです。よろしくお願いします」

 彼女たちが准男爵家の一族とは伝えてある。

「よろしく」

「よろしく。あれ? この前は、メイドさんじゃなかった?」

 よく覚えていたな、ベル。

「えっ、そうだっけ?」


「そうそう。あの時は、ウチの居候だったからね。今やこの子も、歌劇団の研究生になったのよ」

「えっ? シャルロットさんもサロメア歌劇団なの?」

「あっ、ああ。そうです」

 ふむ。やっぱりロッテさんは人見知りだな。すぐにうち解けるアデルとは対照的だ。


「すごーい。見た目どおりの美人姉妹なんだ」

「それに、かわいい」

「そうね。かわいいにかけては、ロッテには勝てないわ。2人もロッテって呼んであげて」

「ちょ、お姉ちゃん……」

「じゃあ。ロッテさんは、娘役なんですか?」

「あっ、はい」

「研究生って、女優さんと一緒に舞台に立つんですよね?」

 よく知っているな、ベルは。そういえば、月刊歌劇界の雑誌を僕に突き出したとき、ベルのつながりだったけど。好きなのかな、歌劇団。

「って、ことは、何年か後には姉妹で共演したりして」

「恋人役で?」

「えぇ。それは嫌だよ、はずかしい。兄妹役なら良いけれど」

「私は、それでも、恥ずかしい」

 これは、話が終わりそうにないな。

「じゃあ、立ち話はそのぐらいにして、食堂へ行こう」

「ああ、そうね。レオンちゃん」


 移動して、いつもの席に着く。

「おお、レオン。この様子なら貴族の御曹司でも通るぞ」

「あはははは」

 一瞬僕に話題が来たが、すぐ変わり、食堂でも女子話が盛り上がり30分ぐらい続いた。

 瞬きすると、システム時計が11時30分を過ぎている。

 よし。

「えっ、レオンちゃん。もう、作るの?」

「うん。そろそろお昼時だしね」

「いやいや。レオン師匠は、ここに座っていてください」

 はっ? どうしたアデル。


「一番弟子のアデルが、黄金トーストを作ります」

「そうなの?」

「えっ、レオンに習ったんですか?」

「そうよ。レオンちゃんが編み出したんだから」

「「へぇぇぇ」」

 じとっとした目で、ディアとベルに見られた。

 今まで、なぜ言わなかったという顔だな。


「じゃあ、作ってくるわ」

「私、作るところを見ていていいですか?」

 ディアも立ち上がった。

「いいわよ。どうせなら、ディアちゃんも一緒に作る? 寮に帰っても作れるように。いいよね、レオンちゃん」

「もちろん。じゃあ、教えてあげて」

 特許になったとしても、自家用に作る分には問題ない。

「了解! ルネさーーん」

 2人が、厨房へ入って行った。


「ふう。アデルさんて、料理好きなんだなあ」

「そうですね。主にお菓子作りですけど」

 でも、下宿でおいしい料理を作ってくれたけどなあとは言わない。

「そうだ。ロッテさんって、何歳?」

「はい。レオン君と同じで16歳です」

「へえ。そうなんだ」

「ベルさんは?」

 ふむ。2人は厨房に行く気はなさそうだ。すこしずつロッテさんもうち解けてきたな。

「18」

「お姉ちゃんより1つ下なんだ」

「そうなのよね。あと1カ月で19よ、そしたらすぐ20歳になっちゃうわ」

 話が変な方向へ。


「入学した頃は、若いと思ったんだけどね……」

「何を言っているんだ。20歳なんて若いだろう」

「はん! 16歳の……しかも、男に言われたくないわ」

 ロッテさんが、僕をきっとにらんだ。

「そうよ。レオン君は、まったく乙女心が分からないんだから」

「そうだ、そうだ!」

 そうなのか?


「私はわかりますよ。貴族女性への結婚しろって圧力は厳しいって聞きますもの」

「良い子ね、ロッテさん。まあ、大貴族に生まれて、知らない間に婚約がまとまっているのも嫌だけどねえ。下級は下級で、大変なのよ。大して裕福じゃないし、気位ばっかり高くって。ここ数年、両親は、私の顔を見たら縁談の話しかしないし」

「そうなんですねえ」

「そうなのよ。まだ救いなのは、私もディアも長子ではないぐらいかな。でも、ウチよりディアの方が厳しいかもね」

 ほう。

「同じ准男爵でも、あっちの方が名門に近いし」

 そういうものなんだ。

「だから、なんとかしてやる気はないか? レオン!」

「はっ? どういう意味だ。貴族の男子なんて知り合いは居ないぞ。中尉って貴族だったか?」

 イレーネさん(レナード商会長女)なら……頼む気はないけれど。

「これだよ。まあ、ロッテさんや、アデルさんが周りに居れば、(なび)かないのもわかるけどさあ」

 何の関係があるんだか。


「ああ。でも、お姉ちゃんもちょっと焦っているかも」

「えっ?」

 この前、ウチに来たときの話を根に持っているな。

「歌劇団は、女性ばっかりですから」

「ああ、出会いが少ないかあ」


「できたわよー。なんかさっき、私のことを話していなかった?」

 食堂に甘くて良い香りが漂う。

 アデルとディアが戻って来た。後からリーアとルネが皿や茶器を運んできてくれる。

「いえ。私たちの話ですよ。里に帰ったら、見合いしろってうるさいって」

「へえ」

「ベル。そんなことを話していたのか」

「まあ、まあ。冷めちゃうから、食べながらね」

 おお、良い色に焼けている。

「うわあ、おいしそう」


 ルネが、茶を注いでいる。もちろんアーキ茶だ。

「アデルさん、ディア。ありがとう」

「どうぞ、召し上がれ」

 一口大に切って、口に運ぶ。

「おいしい」

「本当。おいしい。黄金トーストって、バターと卵なんだねえ」

「さて。レオンちゃんの食べているのは、私とディアちゃんとどっちが焼いたトーストでしょう」

 はて。

「味からすると、ルネの味なんだけど……」

「ああ。下拵えは、ルネさんがしてくれていたからね」

 結構早く焼けたのは、そういうことか。

 でも、それじゃあ、わからないだろう。視線を巡らせる。


「アデルさんが焼いてくれたのじゃない?」

「正解! でも、なんでわかったの」

「いや、なんとなく」

 ディアが普通にしていたからな。多分彼女が焼いたものなら、もっと狼狽(うろた)えているに違いない。


「私は、すぐ分かったわ。ディアは恥ずかしがって無理だもの」

「ベル」

「そうなのよ。どっちがレオンちゃんに食べさせるって話になって、即座にディアちゃんが拒否したのよ。さすが友達ねえ」

「いやあ。じゃあ、私のは?」

「私が焼いた」

 ディアは素っ気ない。

「そう。でも、おいしいわよ。そうだ。アデルさんのも食べてみたいから、レオン、半分交換しよう」

「あぁああ。ベルさん。私のがお姉ちゃんの焼いた物なので。私と交換しましょう」

「そうね。そうしてくれる」


     †


 和やかな内に昼食会が終わり、客達は帰っていった。

 しかし、夜になって、1人戻って来た。


「いやあ。あの時のロッテの反応、傑作だったわね、レオンちゃん」

 長椅子(カウチ)に座って、アデルが僕の手を取った

「あの時って?」

「ううん。ベルちゃんが、レオンちゃんと黄金トーストの半分を交換しようって言った時よ」

「あぁ」

「ロッテは、ベルちゃんのナイフで切ったのを、レオンちゃんに食べさせたくなかったのよ、あれ」

「んんん。考えすぎじゃない?」

「間違いないってば」

「ああ、そうか。ふふっ」

「何?」


「いやあ、あの時、アデルも少し顔色が変わっていたなあと思って」

「それはそうよ。レオンちゃんには私が焼いたものを食べてほしかったからね」

「僕も、アデルが焼いたのだけが食べたかったから、よかったよ」

「うわぁ。いつの間に女(たら)しになったの? レオンちゃん」

「いつかなあ」

 アデルの二の腕をつかむと、引っ張り寄せた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
返信をみて冒頭の説明の意図を誤認していたことを理解しました。 作者様は語源から鞘当ても男の争いとの認識の様ですが、私は鞘は女性の見立てで意識していたので今回の話とタイトルに違和感はなかったので、女性同…
正直家に誘ったの迂闊すぎると前話で思ってた。 アデルが縛る系の女になってもこれはレオンが悪い。 迂闊で脇が甘いならもうアデルが締めるしかないじゃないか。
刀と鞘が男女の見立てで女が鞘当てなら男は鍔迫り合いでは?
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