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よんのきゅう 吐露

 前回のあらすじ。色々あって女子高生を押し倒すような形になった。もっと大事なことはあったけど、今の喫緊の課題はこっちだ。なんだか教室がざわざわしてきた。

 「全員動くな!」

 入り口の方から声が響いた。タマの声だ。つまり……動けない。

 「今更だけど……二人ともアクセサリはどうしたの。。」

 ゆっくり近づく足音に向かって……実際には顔を動かせないのでそういう気持ちで言う。

 「外した。緊急事態だから。兄さん、コト、動いていいよ。」

 まあ、確かにそうだ。コトの方を見ると青ざめた顔で少し震えている。うわごとのように何かつぶやいているようだけど、歯がカチカチ鳴ってうまく言葉になっていないようだった。

 「とりあえず……誰もいないとこに行こう。」

 「そうだね。」

 タマはコトの手を引いて、僕の後についてくる。

 「教室にいる皆、休み時間に会ったことは忘れて。そしたら動いていいよ。」

 去り際にタマはそう言い残して、それで段々と教室から騒ぎ声が聞こえだした。

 「なんというか、手慣れてるね。」

 「自分の能力だから。使い方を知らないと。」

 いい心がけだ。どうやって試したのかは気になるけど。


 屋上に向かう階段のところで僕たちは止まった。

 「鍵はかかってるはずだけど。」

 「だから誰も来ない。ちょうどいい場所でしょ?」

 それでよくお昼ご飯を……それはいい。タマは納得したようで、頷いて階段のとこに座った。

 タマがぺちぺちとコトの頬を軽く叩く。コトは何度かその手を払っていたが、それでもやめないタマについにキレた。

 「もういい!どうせ馬鹿だって思ってるんでしょ!」

 「そう思ってるのはコトだけ。……何があった?」

 「あれ、タマは知らないの?いつも一緒にいると思ってたけど。」

 「兄さん。僕たちは一度も同じクラスになったことはない。たぶん、兄弟だから。」

 タマが呆れ気味に言う。そうか、言われてみればそういうものかもしれない。たしか部活も違うから、学校ではずっと離れてたのか。

 「それで、コト、この二週間何してた?」

 「……全部知ってるんでしょ。」

 「知らない。でも分かる。」

 コトはため息をついて、ぽつぽつと話し始めた。


 高校生になってから、新しいグループにはなんとか入ることはできた。でも、そこで話してるのはいつも誰かと誰かが付き合ったとかアレしてないのは遅れてるとか、どうでもいいような恋の話ばっか。それでも他のグループなんかにはいけないし、なんとか話を合わせるしかなかった。

 でも、そんなグループに誰かを好きになったことがないなんてことは知られるわけには行かなかった。だから、誰でもいいから好きにならなきゃって。そう思ってたのに……。

 でも、考えたらもうそんなこと気にする必要ないって。『言霊』の力があるんだから、話を聞いてもらえる内にアタシの話を聞かないことがないように言えばそれでいいって気付いたの。


 「それを始めたのが二週間前。いい加減お兄にネックレス見せつけるのも飽きた頃。」

 ちょうど僕がもういいかなと思い始めた頃だ。なんというか、うん。

 「それからは……楽しかったなぁ。グループも思い通りに動いて、いつでも話を聞いてくれる。言うとおりに動いてくれる。」

 話しながらコトの声が震え始める。話を止めるためにも口を開く。

 「それって……虚しくないの?」

 「虚しいなんてことないよ。だっていつも誰かが側にいてくれる。いつも欲しいときに構ってもらえる。それが嫌だと思う?」

 反論出来ない。でも、納得もいかない。表情にでたのか、コトが自虐気味に笑う。

 「まあお兄には分かんないよ。お兄は何でも捨てられる人だから。高校やめて、お兄何してた?」

 「コト。」

 「分かってる、タマ。とにかく、この二週間は充実してた。それが、いつまでも続くって。でも。」

 コトの口は思い出したように震えだした。目が潤んで、ついには泣き出してしまった。

 「あのとき、本当にやるんだって思ったら声が出なくなって……。アタシ悪いことした?あんなの本気で思ってなんかない!あんなの、いつも言ってた冗談なのに。」

 「たぶん、いつも通りだったのが悪かったんだと思う。僕たちはもう変わった。だから、全部が同じにはいけないし、そうしたらどこかがだめになるんだ。」

 「そんなの、アタシ変わりたくなんてなかった!誰にも頼んでない!こんなになるなんて。」

 「変わらない方法ならある。もう、それは貰ってる。こっちも頼んでないのにね。」

 タマはポケットからリストベルトを取り出した。『言霊』の力を抑えるためのアクセサリー。

 コトは手を伸ばして、それでもちょっと躊躇した。

 「でも、これを付けたらみんな離れていっちゃうかも……。」

 「そうかもしれない。でも、みんなじゃない。言われなくたって、来ればいつだって一緒にいるよ。僕も、兄さんも。ね。」

 「え?ああ、もちろん。言われたら従っちゃうけど、そんなのあってもなくても僕は二人のお兄さんだから。」

 なにそれと、コトが笑って、お兄が断る訳ないもんねとタマのリストベルトを受け取った。

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