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竜たべ 小話集(2012)

連載『竜と食べ歩き。』を読んだ後にお読みください。

時間軸は本編のどこかです。


七夕 アルフィ&ユーク&ジーク編



「この町のお祭りで、この細長い紙に願い事を書いて木の一番高いところにつるすと願いが叶うそうだ。そんなわけで頑張れジークッ!」

「ギャウ!?」

「そこのおじょーさん、無茶ぶりしない。で、なぁにそれ? 願い事? お祭り?」


「これは短冊というらしい。なんでも星にまつわるお祭りらしくてな! 夜空に願い事をかけてお祝いするんだと。そんなわけでお前たちの分ももらってきたぞ」

「ジークの分ももらってきてくれたんだ、ありがとう。

……願い事、ねぇ、アルフィはもう書いたの?」

「もう書けた」


〝美味しいものがたくさん食べられますように〟


「うん、予想通り」

「……なんだ。そういうユークはなんて書くんだ」

「急に言われても思いつかないけど……そうだなぁ」


〝平穏に旅ができますように〟


「つまらん」

「ばっさり切り捨てないの! 大事なことだよ?」

「もっと俗物的なことはないのか! いい子ちゃんすぎて面白みがない!」

「そんなこと言われても……じゃあねぇ」


〝これ以上ヘタレキャラが定着しませんように〟


「とか?」

「意味が分からん」

「拍手でね、『ユークざまぁ!』って頂いた瞬間の衝撃は忘れられないよ……」

「ますます意味が分からん。猫嫌いが克服できますようにとか書いておけばいいのに」

「あ、それいいね」

「もう少し真剣に悩まないか! せっかくなんだぞ!」

「そんなこと言われてもなぁ。ん、ジークも書いたの?」

「キュ」


〝〇■☆Иш△ΦД◎〟


「……読めん」

「文字じゃないっぽいし。そもそも爪の跡だし」

「通訳」

「できないよ」

「キュー」

「……ま、思いを込めたならいいんじゃないの。きっと届くよ」

「キュ!」





「よしこの短冊三つでお団子三つと交換できるぞ!」

「アルフィ最初からそれが目的だったんでしょ」

「ギャウ……」




-----

さて。

ジークはなんて書いたんでしょうね。



* * *


※もし『竜たべ』世界にハロウィンがあったら。




 ばたーん。


「ユークッ! トリックオアトリート!」

「ギャースッ!」


「…………は?」


「だから! トリックオアトリートだ!」

「ギャーウ!」


「…………。……あぁ、(がさごそ)はい」



「な」

「ギャ?」

「なぁに、ふたりともびっくりした顔して。ちゃんとふたつあるよ?」

「ユーク、このお祭り知ってたのか!?」

「あ、お祭りだったんだコレ」

「へ?」

「さっきね、宿屋のご主人から『お菓子は用意しないほうがいいぞ』って言われて、あとその、とりっく・おあ・とりーとだっけ? それも教えてくれたんだよ。理由聞いてもにんまり笑って教えてくれないし、なんとなく嫌な予感がしたからとりあえず用意しといたんだけど、合ってた、の、かな?」

「むぅ、なんだつまらん。せっかく悪戯しようとしたのに。なぁジーク?」

「ギャウ」

「そんなこと言うコたちにはこのお菓子あげません。町で見つけた本日限定パンプキンパイらしいけど俺ひとりで食べちゃいます」

「あぁっユーク待て! 冗談だ! だからその箱をここに置いてくれ!」

「キュー!」


「……で、なんのお祭りなの?」

「よくわからんが仮装してこのセリフを言うとお菓子をもらえるお祭りらしい」

「ざっくりした説明をありがとう」

「魔除けの関係らしいがな。ちなみに今夜は一晩中灯りを灯し続けるんだと」

「あぁ、だから入り口に大きなランプがあったんだね」

「お菓子をもらえないと悪戯してもいいそうだ」

「へぇ。で、キミたちはその後ろに隠したネコの置物でナニする気だったのかな? ん?」

「重かったのだ」

「見せなくていいから。

……で、さ、アルフィ。俺ね、実はもうちょっと前からずぅぅっと気になってて、なんとなく口に出しちゃいけないような気がしたから見ないふりしてたんだけど、でもどうしても気になって仕方なくて、むしろ今でもそればっかり気にしてしまってこの先目の前のことが手に付かなくなりそうだから、質問してもいいかい?」

「なんだ前置き長いな。いいぞ? どうした?」




「……なんでメイドさんの格好してるの?」



「可愛いだろ? 宿のご主人に貸してもらった」

「…………」

「ジークもホラ! 黒い布を借りてマントにしてみたのだ。とんがり帽子は町で配ってたお菓子のオマケだ」

「キュウ!」

「あぁ、うん。良かったなジーク、似合ってるよ」

「キュー!」


「…………しかし、なんでよりによってそのチョイスなんだ。絶対わかってないよなコレ。わざとか? だまされてるのか? 宿の主人が言ってたのはコレだよな、確信犯か。後でシメるか。で、アルフィは分かってないと。……そうだよなぁ、なんでこの子こんなに鈍感なんだろう」


「なんだユーク、ひとりでブツブツ言って」

「キュ?」

「なんでもない。……アルフィ、そうやって上目使いでこっち見るの止めて」

「?」

「そしてジークを抱え込んでふたりして小首を傾げないで」

「どうしたユーク。なんで視線を逸らす? ……なんで頭を抱えるのだ?」

「キニシナイデクダサイ。……ところでアルフィ、そのお祭りって誰でも参加できるの?」

「特に男がダメとかドラゴンがダメとか聞いてないが」

「そっか。じゃ、アルフィ、トリック・オア・トリート」

「……ん?」

「〝お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうよ?〟」

「………………んんん?」

「あれアルフィ、お菓子持ってないの? じゃあ悪戯しないとねぇ」

「…………あ」



「…………いいよ、そんなプルプルしてさっき渡したパイ差し出さなくても。冗談だよ、ごめんってば」

「……うぅぅ」

「悪戯する時は報復されることも考えないといけないよ?」

「……(実はちょっと怒ってる?)」




「……まぁ、男としてもちょっと残念と言うか。できれば別の悪戯をリクエストしたいとこだけども」

「?」

「なんでもない。とりあえずアルフィ、その格好で外出ちゃダメだよ」





-----

……アルフィが、暴走、しますた…………orz




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