おまけ〜Happy Halloween〜
ハロウィン仕様なので微ホラーかもしれません。ご注意下さい。
――人間たちが暮らす世界とは別の世界にある猫型妖精の国。その国の王オシアンは、ゆったりと七色の森を歩いていた。
七色の森は、その名の通り、クリスタルの木が枝葉を広げ、日の光を浴びて七色に輝く美しい森だ。
オシアンは、その森の少し開けたところで、小さな黒い猫型妖精が三匹、小さな焚き火を囲みながらダンスを踊っているのを見た。
そのうちの一匹が、何やらタールの塊のようなものを左右の前足にそれぞれ一つずつ持ち、他の二匹に差し出した。
「見てみなよ、穢れた魂が二つ。悪霊たちに痛めつけられて、もう転生することも出来ない魂だよ」
「煉獄の火で炙って、齧ってみようか」
「うん、いいね。じゃあ、みんなで一口ずつ齧ろうね」
そう言いながらはしゃぐ幼い猫型妖精たちは、どこまでも無邪気で愛らしい。
――猫型妖精。彼らは美しい魂を持つ人間に永遠の忠誠を近い、その人間のために力を貸す善なる妖精たちだ。だが、一方で世界の均衡を守るために、穢れ過ぎた人間の魂が転生しないよう「処分」するという役目を担っている。
穢れ過ぎた魂を人間の世界から大人の猫型妖精たちが回収し、幼い猫型妖精に間食として与えるのだ。
人間たちの中にもそれを知る者がいるのか、死者に猫を近づけまいとする国が幾つかあるらしい。だが、それは愚かしい試みだとオシアンは思う。猫が皆猫型妖精という訳でもないし、こちらとて一般的な善人の魂になど用はない。それに、どうしても回収しなければならない魂がある時は、姿を変えて近づくだけのことなのだから。
オシアンには、幼い猫型妖精たちが持っている二つの魂のうち、一方に心当たりがあった。水妖の魔力を帯びていながら真っ黒に穢れ爛れた魂の持ち主など、そうそういるものではない。そこでもう一つの魂の持ち主の見当もついたのだが、黙って幼い猫型妖精たちのするがままにさせておいた。
「聖騎士団に属する者は、あの二人には決して関わらない。そうハワード卿が決めたのだからね」
私もそれに従うまでさ、とひとりごち、彼は歩いて行った。
そして目的の妖精の輪の前に来ると、輪に入る前に、人間の姿に変身した。
歳の頃は五十代後半。すらりと背が高く、しなやかに鍛えられた体つきで、彫りの深い美しい顔立ちをした、高雅な雰囲気を纏う男性の姿に。
これから彼は、最愛の女性が好むボンボンショコラを買いに行くのだ。
そのボンボンショコラを作っているチョコレート専門店の主人は、夢にも思わないことだろう。華美ではないが仕立ての良い衣服に身を包んだ常連の紳士が、まさか猫型妖精の王だとは。
なんかちいさくてかわいい黒猫たちに登場してもらいました。
ボンボンショコラ公はノルウェージャンフォレストキャットのイメージなのですが、人間姿は北欧繋がりで「北欧の至宝」をイメージしております。しかし筆力が足らず、どちらも上手く描写出来ないのが残念です。




