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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第三部:駆け抜けろ 燃え尽きたろか シンデレラ

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146/154

暗黒ファッションデザイナー(中編)

だから俺達はコレ(・・)で決着を着けるしかない。


鑑賞用BGM(√64階から):https://www.youtube.com/watch?v=r107W1YXrSM&list=RDLuKGGz-0Q7s&index=9


~ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン~

~√64階~


『連中が穴から出て来たぞ!クエイド!』


クエイドは走りながらハンドガンに切り替え、黒い装甲服を着た隊員へ向けて撃つ。

しかし、隊員は全く倒れず、クエイド達に追い縋る。


『全く……ムカツクぐらい良い装備だな!』

『《ライトニング・スマッシュ》!』


エスティアは指先へ光を集中させ、【降下機甲猟兵大隊】の隊員達に向けて放つ。

爆発が起き、隊員達は吹き飛ばされる。


『あの女!自然現象系のアイテム使いだ!』

『俺が行く!』


ニット帽を被った男がAR-15を構え、机へから机に隠れながらエスティア達へ接近して行く。


『ッ!?……あの敵、動きが素早すぎる!!』


『──捉えた!』


しかし、男の放った弾丸は、別の弾丸によって弾かれる。

弾丸はエスティアの肩を掠めて行く。


『!!』


クエイドはマガジンを高速でリロードし、男に向けて正確無比な射撃を放つ。


『ここは俺が食い止める』

『逃げろ、エスティア』


『──っ!』

『絶対生きて戻って来るんだぞ!!クエイド!!』


『……ああ』


そして、ニット帽の男は机の下に転がり込みながら、隊員達へ向かって言う。


『別の部屋から連中を追い掛けろ!』

『コイツは元特殊部隊員だ!!真っ直ぐ進めば間違いなくやられる!!』


黒装甲服の群れは、元来た穴へ走って行く。


『悪いが……そうはさせない』


クエイドはフルオート射撃にスイッチを切り替え、針に糸を通す様な精確な連射で、隊員達の装甲の継ぎ目を狙って撃った。


『ガッ!?』


『ぐあっ!?』


隊員達の急所へ弾が入り込み、次々と倒れて行く。

ニット帽の男はデスクを背にし、リロードしながらクエイドに向けて叫ぶ。


『随分やるな!!何処に所属していた!?』


『……デルタだ』


『!!』


割と正直に答えてしまうのがクエイドの良さでもあり、欠点でもあった。


『その声……!他人の空似だと思って居たが……』


『俺も今思い出した……』

『シリアでの作戦以来だな、キャクストン』


キャクストンはクエイドに向かってまたも叫ぶ。


『クエイド!!お前を殺したくは無い!!』

『投降するか、俺等の仲間になってくれ!!』

『お前の戦歴と能力なら、絶対に上層部を説得出来る!!』


『……お前こそ、その組織からは脱けた方が良い』

『連中の行き着く先は……全てを巻き込んだ破滅しかない』

『それに俺達はプロフェッショナルだ。自分から政治に関わってはならない』


『クエイド……!!アメリカを離れていたお前には分からないかもしれないが……』

『この国は【連中】によってメチャクチャにされているんだ!あのオランダ人を旗頭としてな!!』


クエイドはデスクの端を撃って質問する。


『……何かあったのか』


キャクストンは蛍光灯を撃って返答する。

蛍光灯の破片が、クエイドの肩に落ちて来た。


『俺の妻と娘は不法移民の強盗にナイフで刺し殺された!!』

『俺が国を守っている間にだ!!』


『……!!』


『判決はどうなったと思う!?』

『たった8年だ!!しかも刑務所病院で薬物治療と精神カウンセリングのオマケつきだ!!』

『そんなの……そんなの絶対に許せるものか!!』

『だから俺は……俺は……!!』


『……移送中に殺したのか、その囚人を』


『そうだ!!【降下機甲猟兵大隊】はその為に協力してくれたんだ!!』

『だから俺は今、ここに居る!!』


『……お前の事情は理解した』


『──!』

『クエイド!こっちに来てくれるのか!?』


クエイドはアサルトライフルを背負い、【M82ニヌルタライフル】を静かに起動しながら言う。


『……もうお前はプロでは無い』

『精鋭の誇りを忘れ、私怨に囚われ、悪魔に魂を売った只の復讐者(アヴェンジャー)だ』


キャクストンは苦笑しながら、禍々しく……そして青黒く光るアサルトライフルを、ゆっくりと手に取りながら返答する。


『残念だ、クエイド……』

『あのユダヤ人のメスブタや、アジア人共、ムラートのガキと共に死ぬ事を選ぶとは……』

『正にアメリカの損失だな』


『……似たようなセリフを返そう』

『精鋭中の精鋭が絶望と狂気に堕ちるのは、社会の損失だ』


『……人生はままならないな、クエイド』


『ああ……ままならないな、キャクストン』


そしてクエイドとキャクストンはほぼ同時に、武器を構え机から身を乗り出して言う。


『『だから俺達はコレ(・・)で決着を着けるしかない』』


鼓膜を貫く様な轟音が、フロア全体に響き渡った。



~同時刻~

~ニューヨーク市内~

~Stumptown Coffee Roasters~


『《エコーキャニオン ハーフカフェイン》を1つ』


ラロシェルはニコリと微笑みながら、女性店員に注文を出した。


『は、はい!』

『(ま、まさかあのラロシェルが……!)』

『(実物は本当にホットだわ……!)』


カフェでリモートワークをしていたニューヨーカー達も、彼の存在に気付き始める。


『ほ、本物だ……』


『カンファレンスで見た事があるが、まさかNYのカフェで……』


『一緒に動画撮ってくれるかな……?』


ラロシェルは店員からコーヒーを受け取ると、彼女の手元のペンと視線に気付いた。


『サイン、もし宜しければ空きのカップに』

『もう1杯分お支払いしますから』


『!?』

『えっ、良いんですか!?』


ラロシェルは店員から空のカップを受け取り、サラリと自分のサインを書いてチップの100ドル札を入れた。

店員は小躍りしながら、カウンターの奥へと引っ込んで行く。


『コレは追加のチップです』


彼は腕時計型のデバイスをスワイプする。

周囲の風景がビーチに面したラウンジへと変化して行く。


『『『おぉ~~……!』』』


彼は腕時計型の装置をカウンターの前に置く。


『来週発売する予定の商品です』

『アプリを使って、部屋の風景を切り替えられます』

『是非、店の宣伝にも使って頂ければ……』

『充電は既存のUSBケーブルで可能です』


『い、良いんですか!?』


『成果物を共有し、世に広めて行くのはIT業界の習性みたいなモノですから』


レナちゃんが見たらビックリするでこんな姿。

ラロシェルは別のアプリを起動する。


『ここをこうすると……』

『バックグラウンドミュージックも流せます』

『曲はお好きな物を』


穏やかなボサノバが流れ始める。

店長は目を丸くし、デバイスを手に取りながら言う。


『一体どういった技術が……』


『ははは……』

『それは流石に企業秘密です』

『ただ、来年には技術情報を公開しようかと思っています』

『私共も、企業ではありますので……』


その時は、この男がアメリカを支配しているかもしれない。


『新製品開発の為にも、利益の確保が必要……という事ですね』


『その通りです』

『利益を確保し続ける事が出来れば、より世界にも貢献出来る……』

『その流れを作る為なら、惜しくはない投資であり宣伝です』


『ハハハ……!』

『これはやられましたね。『最小限の投資で、最大限の投資効果を』ですか』

『しかし、貰ったままでは恰好が悪い』

『新作ブレンドも少し味わって行かれますか?』


『ええ、是非』


ラロシェルは2杯のコーヒーを受け取って窓際の席に座り、タブレットをスワイプしつつ、ブレンドコーヒーを飲みながら穏やかな時間を楽しみ始めた……

とでも思っていたのか?


《(ファルネーゼ)》

《(IDFの防衛ラインはどうなっていますか?)》


《(F-35I アディールの編隊が接近しています)》

《(防空網との接触予測時間は残り118秒です)》


《(カウフマン女史からの連絡はありません)》

《(そのまま攻撃を続けて下さい)》


《(了解致しました)》


ブレンドコーヒーをオシャレなカフェで飲みながら、戦争の指示を出す。

これがニューヨーカーの頂点だ。

ラロシェルは画面を切り替え、次はあるダンジョンの画面に切り替える。

そのタブレットを売れよ。


『(やはり裏で活動してましたか、マルタレータ)』

『(ケンザキ氏とソリマチ氏のコンビにはしてやられましたね)』

『美味い……』


彼の呟きを聞き、店長は得意顔になる。

彼はタブレットを軽く指で叩く。


『(ですが、ここからが本番です)』

『(身体改造型のアイテム、特に【サイバネ・ウェヌス】はここからが強い)』

『(……彼女にもプレゼントを贈りますか)』


彼はある人物に電話を掛け始めた。



~ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン~

~√64階~


走るレイカの上着が振動する。


「──!?」

「一体誰や!てかなんでスマホ繋がっとんねん!」


「出るんかい?」


「出るしかないやろこんなん!」


レイカはスマホを取り、スピーカーをONにしてポケットに再び放り込んだ。


《初めまして》

《私は『L』です》


「いきなりデ○ノート始まったで」


《もし私がキラだったら死んでますよ、レイカ・ケンザキさん》


「無駄にノリがええな!」

「……って違うわ!今はコントしてるヒマが無いんや!」

「刺しても斬っても死なん、化物みたいなサイボーグババァに追われとる!」

「電話の相手なら後でしたるから!」


《その化物の攻略法を教えて差し上げようかと》


レイカの小豆色の瞳が、一気に真剣味を帯びる。


「──何が欲しいんや、インテリ君(・・・・・)

「ワイの命か?」


《──流石です、ケンザキ氏》

《単刀直入に言うと、貴女が欲しい》


「ふぁっ!?!」

「きゅっ、急すぎるわ!!」

「で、でも今はダメや!ワイにはいっちもエリちも居るんや!」


化かし合いが始まったで。

良い子の皆、よ~く見とくんや。


《残念ながら、後者には嫌われてしまいましてね》

《銃を突きつけられてしまいました》


マルタレータの前腕が開き、小型ミサイルの群れがレイカ達へ襲い掛かる。

レイカがミサイルの群れを三枚に下ろし、残りは高っちゃんが爆発を受け止めた。


「……何したんやエリちに」

「(いっちの事も知っとるな、コイツ……)」


《彼女の祖父を間接的に殺してしまったようです》

《意図的では無かったのですが、彼女を怒らせてしまいました》


意図的では無かったというのは怪しい。


「……エリちに謝罪はしたんか」


ご存じの通り、謝罪は無かった。


《はい。無論》


はい。息をする様にウソ。

逆に脅しを掛けているぐらいだぜ。

クエイドとは人間性が真逆だ。


「……オマエを信用してええんか?」


《して頂けなければ、全員マルタレータに殺されるだけです》

《それ程にあの女傑は存在として強い》


「……聞かせぇや」


《彼女の弱点は【炉心】です》

《動力炉と言い換えても良い》

《そして、【炉心】の位置は常に移動している》


「ハッ……!」

「法則はあるんやろ!?」


レイカは刀を構え、近づいて来るマルタレータと正対する。


《ご名答です。ケンザキ氏》

《では情報提供の対価を》


「この場を斬り抜けられるのなら、どないな条件でも飲んだるわ」


《明後日のパーティー》

《盛装して来て頂きたい》

《服装自体は貴女のチョイスで構いません》


「ほーん、そんなんでええんか」

「ワイのセンスで招待客の心、微塵切りにしちまうで?」


《楽しみにしていますよ》

《情報の方は端末に送っておきました》

《ではご健闘をお祈ります》


通信が切れ、レイカは不敵に微笑みながらスマホを取り出した。



後半はなんかラロシェルの話になってしまった。

けど、ある意味彼のお陰で、プレッパーズの世界は進んでいる所がある。

彼が慕われ、支持されるのにも一定の理由がある。


レナや四十万、エリちの視点だと、涼しい顔をして途轍もないスケールの悪事を働く悪党です。

しかし別の立場の人々から見ると、『親しみ易いテック界の超天才』という側面や、『グローバル経済の寵児兼象徴』、『リベラリズムの守護者』という側面も存在するのは確かです。

彼が積極的に寄付や難民支援を行っている事も、支持を受けている理由の一つです。


実際、女性店員は彼をほぼアイドル扱いしてました。

超大富豪の高身長インテリイケメンだからさもありなん。

ヘタな俳優より人気なんだ。


メディアで彼を悪く言う存在はF○Xニュースや、アーデルハイド寄りのローカルメディアやSNSの一部ぐらい。

なので、俳優やインフルエンサー、ベンチャー企業家なんかも彼とお近づきになりたがります。

要はええかっこしいしたい人に取って、彼の存在は都合が良すぎるんです。


で、ラロシェルは以上の事情を全て把握した上で、【理想】を演じ、全ての情報を統制しています。

ここがこの男の一番恐ろしい所だと思う。

その癖割と素で生きていて、演じる事がコストにならないし、演じていない時も普通にある。

そういう意味でも天才だ。

イチカに足りないモノを全部持っている人間(?)です。


アーデルハイドは【理想】を演じる事によるコストが大きすぎて、ふと弱い所が出てしまう。

本来の自分じゃない自分を創り上げて、支持を受けている所があるので。

普段は余裕ぶった顔をしていますが、ヴェルミーナに裏でわんわん泣きついてる時はあります。

それも何処かで描写するかも。

頭の良さ、という意味ではラロシェルとは別ベクトルでズバ抜けているとは思う。


……ミーナが居なくなったら、アーデルハイド閣下の精神状態は総統地下壕状態になるでしょう。

その時こそ、フリスちゃん様の毒手が伸びて来る時です。

ラロシェルの数万倍は性格ヤバいからね、フリスちゃん様……

ミーナはあらゆる意味で、メチャクチャに重要なポジションの人間です。


そして、クエイドがマジでプロ過ぎてカッコイイ……

最後まで頼りになる人だと思う。

自分の感情を徹底的に抑えられるのは、優れた隠密偵察兵としての証拠なんだ。


キャクストンはクエイドとは正反対の方向へ行った人。

家族が居たかどうかも大きな要素だとは思う。

ぶっちゃけ、どちらの言ってる事もそれぞれの立場からすれば正しい。  


妻と娘を殺されて、全くの正気で居られる人の方が異常だと思う。

キャクストンは自分がもう既に、おかしな方向へ行ってるのを自覚していると思う。

それでも最早、感情と行動が止まらなくなっている。

アーデルハイドには心に傷を抱えた人間達を惹き付ける、強力なパワーがある事を示す一例です。


クエイドの方も、度重なる戦闘のストレスとトラウマでおかしくなっている自分を、ひたすらに抑えているだけだと思う。

だからこそ、幻覚で根の部分が出て来てしまった。

それを正面から受け止め、フォロー出来るエスティアはマジでイイ女だ。

普段の行動はマジでアレだけども、身を挺して護る価値があるとクエイドが判断するのも当然かと。


で、エスティアは意外と体力はあります。

フィールドワークが多いタイプの学者なので。

NY在住時代は、ジムとかでブルンブルンしながら走ってました。

ただね、水と空気だけでも太るタイプなんだ。

能力が光だから光合成してるのかもしれない。


ここまで読んで頂いて感謝します。

好きな時にカフェへ行ける。それが本当の自由です。


「面白かった」「次回も楽しみにしている」「そんなお気楽なご身分になりたい」

「エスティアのアイテム使い勝手良さそう」「クエイドが恰好良すぎんよ~」

「キャクストン……」「マジでアメリカの状況ヤベェ」「どっちも正しいからこそ辛い」

「元同僚同士が殺し合うって、ダンジョン業界は業が深い」

「四十万、これが本当のオシャレランカーだ」「社会的にはマジの強者だな、ラロシェル……」

「レナが視てたらキレそうな光景」「部屋の背景を勝手に変えるな」「コミュ強過ぎる」

「ブロリーやめろ」「ろくでもねぇ頂点だな」「ラロシェル、結構ノリ良いな……」

「化物みたいなサイボーグババァは草」「レイやんのフランクな会話好き」

「息をする様にウソを付きやがる」「※イチカもエリシェバもレイやんのモノではない」

「レイやんの盛装みてぇ~~!」「お祈りやめろ」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

よろしくお願い致します。


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