暗黒ファッションデザイナー(前編)
しかし、命を失っても良いと思える程の美しさ、それもまた日本刀の魅力です。
鑑賞用BGM(マイナス4階から):https://www.youtube.com/watch?v=zTpycqGYRRM
鑑賞用BGM(マイナス√256階):https://syosetu.com/draftepisode/updateinput/draftepisodeid/6127309/
鑑賞用BGM(√64階から):https://www.youtube.com/watch?v=ol2bezKfSe4
鑑賞用BGM (バッテリー・パーク):https://www.youtube.com/watch?v=5NV6Rdv1a3I
~ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン~
~マイナス4階~
『……連中の痕跡はここで消えています』
『大量の薬莢から、相当切羽詰まっていたかと』
報告を聞いていた大女が、橙色の髪を払いながら言う。
『じゃあ、元デルタの見解を聞こうか』
『キャクストン。聞かせろ』
30前後位のニット帽を被った男が、銃痕に触れて言う。
『弾の散らばり方から、撃っていたのは一人』
『薬莢が多いのはリロード頻度の高さが原因』
『数と距離、撤退ペースを考慮すると、特殊部隊で訓練で受けた人物だと思われます』
『ふん……』
『で、何処の部隊出身だと予測する?』
『デルタです。マルタレータ女史』
『シールズなら、もう少し粗い』
マルタレータは大笑いする。
『アッハッハッハ!!』
『あのサル共!やるべき事はやっているじゃあないか!!』
『デルタの元隊員をリクルートしていたとはねぇ!!』
『気に入ったよ!!』
キャクストンは軍用靴の痕を見つめる。
『(これは……まさか……)』
『(いや、クエイド……お前がこんな場所に居る筈が無い……!)』
『(お前は今頃……アンナと幸せに暮らしている筈だ!)』
背後から、彼の肩に大女が顎を乗せてくる。
『思い出に浸っていたのかい?』
『でも今は先を急いでいるんだ。そういうのは後にしてくれないと……』
【喰っちまうよ?】
マルタレータのグロスに塗れた唇が大きく開き、肉食獣の様な細い瞳孔が彼を覗いていた。
『(……怪物め……)』
『(何故こんな奴と契約を……)』
『ふふふ……』
『私は経営者もやっているからねぇ』
『人間の心や感情を見透かすのも得意なのさ』
彼女はニヤニヤとしながら顎を離し、浮遊型の映像通信機へ話し掛ける。
『と、まあそういう事だ。ディルレヴァンガー』
『敵は行方不明だな』
『戦闘の痕が途切れているから、恐らくギミックが発動して転移したんだろうよ』
『取り敢えずはこっちでそれを探してみるさぁねぇ』
《……了解したわ》
《今の内に撤収の準備を……》
マルタレータの目付きが鋭くなる。
【撤収??バカ言うんじゃないよ】
【あの軍事オタク女に何を言われたか知らないが……】
【こんな上玉共、追い掛けて殺さないと勿体無いにも程がある】
《……!?》
『お前達そんなんじゃ……』
【ラロシェルのガキに負けちまうよ?】
【私がお前達【降下機甲猟兵大隊】と契約したのは、お宅の総統閣下の思想や主張に共鳴したからじゃない】
【あのガキが趣味や仕事のジャマだからさ】
【私にとって、思想や価値観、国や社会、他人なんて犬の糞程にどうでも良い存在なんだ】
《お、お前……!》
【ヴェルミーナやクラリスお嬢ちゃんに泣きつくかい?】
【【悪魔姉妹】と戦うのも、正直一興さね】
【けど、私は心ゆくまで【人間狩り】を楽しみたい】
【それに日本人……サムライ(しかも女だよ!)と元デルタ隊員を狩るのは初めてだ!】
【さっきからワクワクが止まらないねぇ!】
マルタレータは廊下の壁を、綿菓子の様に毟り取った。
壁は握り潰され、彼女の手の中で砂になっていく。
【ディルレヴァンガー……】
【連中に遭えなかったら、先にお前を喰っちまうかもね】
【お前達も頑張って探すんだよ】
《……言われなくても捜索中よ》
【最近はね、思い出すんだ】
【白人少女の肉を毟るのも悪くない、と】
【特に顔色が悪そうなのが、私の好みなんだ】
《……!!》
【アッハッハッハ!】
【また起きて欲しいねぇ!!戦争!!】
【出来ればヨーロッパで!!】
《(もう相手に出来ない)》
通信が切られる。
マルタレータは歯を剥き出しにして笑う。
【毒ガスやゾンビで不法移民達を殺すのは平気でも……】
【愛娘に危害が加えられそうになったら、ブルっちまうらしい】
【所詮、お前は疑似親子関係にハマっているだけの病人さ、ディルレヴァンガー】
彼女はエレベーターがあった場所を何度も行き来し、何か納得したように頷いた。
~ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン~
~マイナス√256階・花畑~
「このコーヒー、ウマイな……」
「良い目利きや、ミレイア」
「オマエ、商売で成功するで」
「そっ、そうですかぁ~?」
「えへへ……」
ミレイアは照れながら、レイカの綺麗過ぎる横顔をチラチラと覗く。
「(顔整い星から来た、美人星人……)」
「(探索でささくれ立った心が潤って行きます……!)」
葵が彼女の耳元でそっと囁く。
「好きになっちゃった?レイカの事」
「ひゅぃっ!?」
ミレイアは思わずコーヒーを溢しそうになった。
「レイカとは誰も付き合ってる、って聞いた事ないんだよね」
「ミナミでも仕事一筋だって専らのウワサだったし」
「(じゃあ……私にも……!)」
彼女の鼻息が僅かに荒くなる。
葵はお茶を飲み、言葉を続ける。
「けど、《いっちゃん》って人が今でも好きなんだと思う」
「え……」
「恋愛感情なのか、仕事仲間としてなのか、親友としてなのか……」
「そこら辺の惚れた腫れたはあった感じがしてる」
「あんまり突くとメンヘラ拗らすから言わないけど……」
「大方、男にでも取られたんじゃないかなぁ」
葵はケタケタ笑う。
「あ、葵さん……」
「う、後ろ……!」
「え」
ニコニコ顔のレイカが葵の首に刀を突きつけている!
「おもろい話してるなぁ~~葵ちゃん」
「ワイにも詳しく聞かせてくれへんか?ん?」
「いや~これはですね、そのですね……」
「その、なんや」
「おぅ?」
「他人の色恋に首突っ込んだらアカン、とオヤジさんから教わらなかったか??」
葵は余裕の笑みを浮かべる。
「語るに落ちたなぁ、レイカさんや」
「自分から色恋沙汰だと白状してしまってますぜ」
「あっ……」
「とまぁ、こういう所が可愛くて付いて行きたくなっちゃうんだよねぇ」
「こんな迂闊な女サムライ、危うくてほっておけないでしょ」
ミレイアは笑顔で首をタテに振った。
レイカは赤面し、そっぽを向いて寝転がった。
「あーうるさい!うるさい!」
「勝手に言ってろや!」
一方、エスティアはノートに書き起こした図を見て、渋い顔をしていた。
『……このダンジョンは三層構造だな』
『実数層が①、裏の層が②、虚数の層が③……』
『マイナス√256を実数と虚数の組み合わせに直すと√-1 * 16、虚数を外せば16階だ』
『つまり、ここは逆の裏……本来の階層とは対偶の空間にある』
『しかし、空間を複素数平面に落とし込むと……』
『……』
『階層の式が直線上で交わり、どんな値を取ろうとも絶対に動かない場所がある』
『原点だ』
『ゴールは恐らくそこだ。そこへ近づくようにエレベーターを乗り継いで行くのが攻略法だろう』
『逆に階層の数字が大きければ大きい程、ゴールからは遠ざかる』
『しかし、ナチ共がこの事に気付いていないとも考え辛い……』
『……待ち伏せか』
『その通りだ、クエイド』
『どちらが先制を取れるか、それは遠距離攻撃役に掛かってる』
『つまり、私達の連携こそが重要なファクターになる』
エスティアは彼の腕を抱き寄せる。
『大丈夫さ』
『私達は旭川の修羅場を潜り抜けて来たんだ』
『今回もきっと上手くやれるさ』
『エスティア……』
『分かった。俺の命、改めてお前に預けよう』
『俺はケンザキ達へこの事を知らせて来る』
彼女は拳を差し出し、クエイドは彼女の拳に自分の拳を軽く合わせた。
~ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン~
~√64階~
レイカ達はエレベーターを降りる。
そこはデスクだけがひたすら並んでいる、殺風景な個室だった。
レイカは何かを感じ、全員を止める。
『……全員警戒せぇや』
『獣の臭いがプンプンしよる』
『獣だと?』
『モンスターの事か?』
『……違う』
『人の皮を被った獣や』
高っちゃんが皆の前に躍り出る。
『しかも超ヤバい奴やで』
『高っちゃんセンサーがビンビンや』
『大胸筋が震えとるやろ』
「おい!大胸筋!」
「何かに反応しているのかい!?」
高っちゃんの大胸筋がピクピクしながら答える。
『筋肉怪物が居るヨー!』
『でもプロテインの臭いが全くしないヨー!』
『──!!』
レイカは刀を抜く。
『クエイド、エスティア』
『私らは高っちゃんと一緒に怪物の相手や』
『『了解だ』』
『ミレイアは何が何でも葵を護れ』
『このダンジョン、葵を最後まで掴んでいたグループが攻略を達成出来る』
『何が何でもナチ共には渡すな』
『はい!』
ミレイアの返事の直後、巨大な振動が部屋全体を揺らす。
「──!!」
「もうワイらに気付きよった!!」
「(幾らなんでも早すぎるわ……!!)」
壁が爆発したように吹き飛び、穴から巨大な腕が覗き始める。
腕は装飾品で飾られていたが、丸太の様に太かった。
【オシャレサムライ発見伝~!】
【私好みだよ、お前】
クエイドは【M82ニヌルタライフル】の引き金を引いた。
巨大な轟音が部屋に響いたが、弾は肩に弾かれて天井に大穴を開けた。
『──!?』
【フフ~……良い判断だねぇ】
【デルタの元隊員ってのはお前かい?】
橙色の髪を揺らしながら、大女が穴から這い出して来る。
ワインレッドの瞳孔は獣の様に細く、レイカ達の誰かに狙いを定めようとしていた。
『(アカンアカンアカン)』
『(コイツは完全な闇の住人や……!!)』
『(あのバカナチ共、なんつーヤツを呼び込んでくれたんや!!)』
エスティアの表情が恐怖で引き攣り始める。
『ケンザキ……!』
『今すぐ逃げるぞ……!!』
『この場所ではコイツに勝ち目が無い……!!』
【まるで、他の場所では勝てるかの様な言い草だねぇ】
【流石は学者様、高慢だよ】
【このマルタレータ様も舐められたモンさ】
エスティア達の姿が背景に溶け込んで行く。
【……光学迷彩かい?小賢しいよ】
【【サイバネ・ウェヌス】起動】
【《ヒート・サーチング》】
マルタレータは真っ直ぐ、そしてゆっくりと見えないハズのレイカ達を追い掛け始める。
「(……見つかっとる!)」
「(完全に戦闘慣れしとるやんけ!!)」
「(ええぃ、こちらから仕掛けたる!!)」
レイカは踵を返し、刀を構える。
高っちゃんも続いて拳を構えた。
【イ~イ根性だ、女サムライ】
【無理をしなきゃ一人前の女じゃない】
【半人前ばかり殺しても詰まらないからな!!】
レイカの全身から炎が噴き出る。
【じゃかあしいわ!筋肉ババァ!】
【こっちこそ、オマエをバラして売りさばいたる!!】
マルタレータが姿勢を屈め、弾丸の様にレイカに向かって飛び掛かる。
【加具土命】はレイカの身体の中心線を、残像を伴いながら一周する。
【《一刀居合・業火》】
刀が巨体を鋭く、そして鮮やかに斬り抜き、マルタレータは炎に包まれる。
彼女の胸に薄く長い切り傷が開く。
【……この程度でくたばってくれれば、どないに楽か……】
マルタレータは炎に包まれたまま、振り返って笑う。
【へぇ……良く分かっているじゃあないか】
【というかもう気付いているんだろう?】
【私が生肉じゃない事に】
【……【身体改造型アイテム】】
【遺伝子や体の性質・構造そのものを変化させてしまうアイテム】
【オマエの身体は機械か金属になっとる(カタすぎて斬り抜けんわアホ)】
【正解だ】
【しかし、何故気付いた?】
【……ダチに同じ系統のアイテムを使ってる奴がおるんでな】
【まさか戦闘サイボーグが出て来るとは思わんかったが】
【心は熱くし、頭は冷たくし】
【余計に気に入ったよ】
【お前の腸を裂く時が楽しみになって来た!!】
マルタレータはレイカの視界から姿を消す。
次の瞬間、彼女はレイカの死角から襲い掛かって来た。
【ヤー!!】
マルタレータの拳を、高っちゃんのナチュラル超筋肉が受け止める。
レイカは刀を逆手に持ち、刃を水平にする。
【その人狩りマダムボコボコにしとけ】
【ソイツの頭で盃作ったるさかい】
【オゥケイ!!レイやん!!】
マルタレータのもう一方の拳も高っちゃんに抑えられ、二人は四つに組み合う。
【──ほほぅ!!】
【素晴らしいパワーじゃないか!!ビルダー!!】
【こんなの余裕!!ヤー!!】
【ではこれでどうだ??】
【【サイバネ・ウェヌス】3段階起動】
【《リミッター解除》《リミッター解除》《リミッター解除》】
なんと、高っちゃんがマルタレータに力で押され始めた。
【パ、パワーーー!!!】
【アッハッハッハ!】
【膝がガクついているよ!!ビルダー!!】
その時、マルタレータの背後から刀が突き刺さる。
刃は左胸を貫き、するりと退いた。
【ダンジョンに力比べしに来たんか、アホ】
【今のウチに逃げるで!】
高っちゃんとレイカは、倒れたマルタレータから逃げ出して行く。
【……良い容赦の無さだねぇ、サムライの小娘……!】
【これだ……!これを求めていたのさ……!!】
白い循環液に塗れた口元が、怪しく歪んだ。
~マンハッタン~
~バッテリー・パーク~
ラロシェルは海辺を見ながら、独りベンチで本を読んでいた。
既に日は暮れつつあったが、彼のページを捲るペースは変わらなかった。
『(レイカ・ケンザキ……)』
『(現状、彼女の行動は何処までも私の利益になってしまっている)』
『(人間の才は特定の個人に奉仕するには非ず)』
『(才能はより遠大な目標の為に尽くされるべきです)』
彼は本を閉じ、行き交う客船を眺めながら独り言ちる。
『……ケンザキ氏には正当な対価と報酬を支払わねばならない』
『そう思いませんか?』
『エリシェバ・カウフマン』
彼の後頭部へ《ジェリコ(※1)》が付きつけられる。
『余計な事を喋るなラロシェル』
『お前が電力インフラを破壊したお陰で、入院していた祖父は死んだ』
『テルアビブで軍事裁判に掛けられ、収監される。それがお前のキャリアの最期だ』
周囲の通行人に扮した諜報員達が、ラロシェルを取り囲み始める。
『フフ……アイヒマンみたいに、ですか?』
『私情で事を判断し行動するのなら、アーデルハイド達となんら変わる所がありません』
『貴女の中にもナチが居ますよ、カウフマン』
『戯れ言を!!』
エリシェバの表情は怒りに満ちて居たが、手先は動揺し、銃口が震えていた。
『いえいえ』
『極めて本気です』
『何処にでも全体主義は発生し得る』
『貴女と同じユダヤ系の女性が明らかにした事ですよ』
『H・アーレント《全体主義の起源》……』
『全体主義の本質とは、人間性の破壊です』
『私の行動に賛否があるのは存じていますが、人間性の破壊を指揮した事は一度も無い』
『寧ろ……私は人間とその中身を愛している』
『特に才能ある人物を……文明の針を急激に進められそうな人物をです』
『煙に巻く気か!』
『こんな話をしているのは、貴女が逸材を連れて来てくれたからでもあります』
『もう既に分かって来たでしょう。私が何を言いたいか……』
『ケンザキ達を……お前に売れ、と……!?』
『はい』
エリシェバは激高する。
『貴様には倫理が無いのか!?』
『ケンザキ達は心を持った存在だ!!』
『商品ではない!!』
『それに祖父を間接的に殺した貴様に、私が従うと思うか!!』
『カウフマン(商人)らしくない態度ですね』
『私が何を差し出すか聞いても居ないのに、頭から取引を拒否している……』
『……ッ!』
『私に協力して頂ければ、貴女の祖国への完全不干渉……』
『そして我が【エグレゴール】の軍需部門が誇る、最新鋭兵器を供与する事を約束しましょう』
周りの諜報員達がざわめく。
ラロシェルは指を鳴らす。
水面が泡立ち、飛沫を飛ばしながら水色の戦闘ロボットが宙へと舞い上がる。
『これは通常兵器ではありません』
『歴とした、量産型のアイテム兵器【MI-4インテリオル】です』
『多少人は選びますが、既存の航空機パイロットの選別と大差はありません』
『こ、こんなものを何時から……!』
『NYは私の庭です』
『何処に何を沈めておくか……それは主である私が自由に決められる』
『それだけです』
『……!!』
『さぁ、返事を聞きましょう……』
【私に協力するか】
【それとも、イスラエル国家が消えて無くなるまで徹底抗戦を続けるか】
【カウフマン。貴女がここで決めるのです】
エリシェバへ諜報員達の視線が集中する。
『(これが集団で襲い掛かって来たら……)』
彼女の脳裏に、炎上するテルアビブやエルサレムの光景が再現される。
彼女の手から銃が落ち、草地へ両膝を付いた。
『(私は生き物として弱い……!)』
『(たった一つの事にすら、自分で決断を下せない……!)』
『(今なら分かる……ケンザキ、お前の強さと気高さが……)』
【返事は?】
【私も忙しい身ですので、早めのご回答を】
ウソつけ、さっきまでのんびり本を読んでただろ。
『我々は……』
エリシェバは、地面すら自分から遠ざかっていくような感覚を覚えた。
『カウフマン!!』
『副局長!!』
彼女は呟くように絞り出す。
『協力……しない……』
『ケンザキ達も売り渡さない……』
【では、ソドムとゴモラは塩の柱で埋め尽くされるでしょう】
【《ファルネーゼ》】
《はい》
【【商人】は私との取引を拒否しました】
【IDFの空海軍を撃滅し、テルアビブの港湾地区を徹底的に破壊して来て下さい】
《了解しました》
《直ぐに部隊を率いて出撃致します》
ラロシェルは立ち上がり、本を指の上で立てる。
【次は《パーティー》でお会いしましょう、カウフマン】
【それまでに気分が変われば、何時でも話を聞きますよ】
そして、彼は読み終わった本をベンチに置いて行く。
【その本のタイトルはユキオ・ミシマが訳した《葉隠》です】
【ケンザキ氏はサムライの一番濃いDNAを受け継いでいる】
【サムライの魂に、年齢も性別も関係ありません】
【彼等彼女達の在り方はまるで日本刀です。扱う覚悟の無い人間は簡単に命を落としますよ】
【貴様には……その資格があると……】
【分かりません】
【ただ、彼等を前にする時は命を失う覚悟が必要でしょう】
【しかし、命を失っても良いと思える程の美しさ、それもまた日本刀の魅力です】
ラロシェルは上着の襟を正し、諜報員達の包囲を悠然とすり抜けて行った。
※1 通称「ベビーイーグル」。正式名称:ジェリコ941
IWI(イスラエル・ウェポン・インダストリーズ社)によって開発された、傑作銃。
メンテナンスが容易で、民間市場でも人気。
カウボーイビバップでスパイクが使っていた銃として有名。
はい。
マルタレータお姉様は暗黒金持ちです。
ダンジョンが出現する前から、人間狩りの常連でした。
しかも、人に狩らせるのではなく、自分が狩りを楽しみたいタイプです。
正しく暗黒貴族趣味だ。
しかもこの暗黒貴族、クッソ戦闘力が高い上に頭がキレる。
状況と場合によっては、アーデルハイドの敵にも普通になる。
アーデルハイドの度量が大きいと見るべきか、この暗黒サイボーグ女の嗅覚がヤバいと見るベきか……
無論、暗黒金持ち人脈も健在です。
そして、クラリスを40メートルの高さから落としたのはこの人です。
理由は、自分のデザインした靴にケチを付けられたからです。
良くこんな怪物を契約で縛れたな、ヴェルチカ……
ただ、こんな怪物を呼び寄せてしまったのは、彼女達の自業自得だと思う。
この手の怪物は血と金の匂いには凄まじく敏感なので、組織に食い込まれるのは時間の問題だった。
本気で関係を切る積もりなら、ミーナの圧倒的な戦闘力をぶつけるしかない。
そして、ラロシェルに対する見方が少しだけ変わったと思う。
彼が創ろうとしている世界は、この手の怪物が生きられない世の中である事は確かです。
彼は社会の概念そのものを入れ替えようとしているので。
それは核戦争よりも遙かにインパクトが大きく、既存の支配階級達にとっては受け入れ難い。
ラロシェルは押しも押されぬ世界有数の大富豪ですが、周りの富豪達はほぼ全て敵です。
支配階層の中で、いち早くラロシェルを攻撃し出したのがマルタレータです。
攻撃性の高さと嗅覚の鋭さが為せる所業ですが、結果としてエゲつない反撃を受け、彼女は資産に大損害を被りました。
痛い目を見た彼女は【降下機甲猟兵大隊】を利用する事を思い付き、実際それが当たり始めて居ます。
反対に、いち早くラロシェルと協力・共生関係を築いた富豪がクライヴです。
ラロシェルが彼を特に優遇しているのは、先行投資してくれた見返りと、その先見性に対する高い評価の裏返しでもあります。
彼の高い専門技能や力量、プロフェッショナリズムや創造性もラロシェルの好む所です。
日本刀は高いプロフェッショナリズムと才能、長年の技能蓄積の集大成みたいなものだから、そりゃ大好物です。
彼は日本刀の精神的な価値にも気づいていると思う。
多分、陶器や焼き物の価値もしっかり理解している。
こういう所があるからラロシェルは嫌いになれない。
ここまで読んで頂いて感謝します。
是非一度、《葉隠》を読んでみては?
「面白かった」「次回も楽しみにしている」「敵の動きが早すぎる」
「クエイドの知り合い来ちゃってんじゃん……」「なんなんだこの怪物……」
「関わっちゃいけない人に住所を知られたような感覚」「悪のレベルが数段階上に見える」
「ミレイアかわいい」「レイやんかわいい」「葵はホント良いキャラしてる」
「顔整い星」「エスティア、やはり頭脳は一流だなぁ」
「もう人間辞めてやがるな、この人狩り……」「オシャレサムライ発見伝~!」
「高っちゃん以上のパワーとか、恐怖しかない」「知能の高い猛獣って感じ」
「レイやんと高っちゃん流石だわ」
「エリちがマジでキレてる……」「お祖父さん死んでるのか……」
「息を吐くように詭弁」「そして、息をするように嘘」
「ラロシェルの力、思ったより遥かに強大だった」「罠に掛けた積りが罠に掛けられてしまった」
「良心的な選択を仇にする、うーんこの」「やっぱり一筋縄では行かねーわ、コイツ」
と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。




