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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第三部:駆け抜けろ 燃え尽きたろか シンデレラ

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145/154

暗黒ファッションデザイナー(前編)

しかし、命を失っても良いと思える程の美しさ、それもまた日本刀の魅力です。


鑑賞用BGM(マイナス4階から):https://www.youtube.com/watch?v=zTpycqGYRRM

鑑賞用BGM(マイナス√256階):https://syosetu.com/draftepisode/updateinput/draftepisodeid/6127309/

鑑賞用BGM(√64階から):https://www.youtube.com/watch?v=ol2bezKfSe4

鑑賞用BGM (バッテリー・パーク):https://www.youtube.com/watch?v=5NV6Rdv1a3I


~ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン~

~マイナス4階~


『……連中の痕跡はここで消えています』

『大量の薬莢から、相当切羽詰まっていたかと』


報告を聞いていた大女が、橙色の髪を払いながら言う。


『じゃあ、元デルタの見解を聞こうか』

『キャクストン。聞かせろ』


30前後位のニット帽を被った男が、銃痕に触れて言う。


『弾の散らばり方から、撃っていたのは一人』

『薬莢が多いのはリロード頻度の高さが原因』

『数と距離、撤退ペースを考慮すると、特殊部隊で訓練で受けた人物だと思われます』


『ふん……』

『で、何処の部隊出身だと予測する?』


『デルタです。マルタレータ女史』

『シールズなら、もう少し粗い(・・)


マルタレータは大笑いする。


『アッハッハッハ!!』

『あのサル共!やるべき事はやっているじゃあないか!!』

『デルタの元隊員をリクルートしていたとはねぇ!!』

『気に入ったよ!!』


キャクストンは軍用靴の痕を見つめる。


『(これは……まさか……)』

『(いや、クエイド……お前がこんな場所に居る筈が無い……!)』

『(お前は今頃……アンナと幸せに暮らしている筈だ!)』


背後から、彼の肩に大女が顎を乗せてくる。


思い出(・・・)に浸っていたのかい?』

『でも今は先を急いでいるんだ。そういうのは後にしてくれないと……』

【喰っちまうよ?】


マルタレータのグロスに塗れた唇が大きく開き、肉食獣の様な細い瞳孔が彼を覗いていた。


『(……怪物め……)』

『(何故こんな奴と契約を……)』


『ふふふ……』

『私は経営者もやっているからねぇ』

人間(エモノ)の心や感情を見透かすのも得意なのさ』


彼女はニヤニヤとしながら顎を離し、浮遊型の映像通信機へ話し掛ける。


『と、まあそういう事だ。ディルレヴァンガー』

『敵は行方不明だな』

『戦闘の痕が途切れているから、恐らくギミックが発動して転移したんだろうよ』

『取り敢えずはこっちでそれを探してみるさぁねぇ』


《……了解したわ》

《今の内に撤収の準備を……》


マルタレータの目付きが鋭くなる。


【撤収??バカ言うんじゃないよ】

【あの軍事オタク女に何を言われたか知らないが……】

【こんな上玉共、追い掛けて殺さないと勿体無いにも程がある】


《……!?》


『お前達そんなんじゃ……』

【ラロシェルのガキに負けちまうよ?】

【私がお前達【降下機甲猟兵大隊】と契約したのは、お宅の総統閣下の思想や主張に共鳴したからじゃない】

【あのガキが趣味や仕事のジャマだからさ】

【私にとって、思想や価値観、国や社会、他人なんて犬の糞程にどうでも良い存在なんだ】


《お、お前……!》


【ヴェルミーナやクラリスお嬢ちゃんに泣きつくかい?】

【【悪魔姉妹】と戦うのも、正直一興さね】

【けど、私は心ゆくまで【人間狩り(マンハント)】を楽しみたい】

【それに日本人……サムライ(しかも女だよ!)と元デルタ隊員を狩るのは初めてだ!】

【さっきからワクワクが止まらないねぇ!】


マルタレータは廊下の壁を、綿菓子の様に毟り取った。

壁は握り潰され、彼女の手の中で砂になっていく。


【ディルレヴァンガー……】

【連中に遭えなかったら、先にお前を喰っちまうかもね】

【お前達も頑張って探すんだよ】


《……言われなくても捜索中よ》


【最近はね、思い出すんだ】

【白人少女の肉を毟るのも悪くない、と】

【特に顔色が悪そうなのが、私の好みなんだ】


《……!!》


【アッハッハッハ!】

【また起きて欲しいねぇ!!戦争!!】

【出来ればヨーロッパで!!】


《(もう相手に出来ない)》


通信が切られる。

マルタレータは歯を剥き出しにして笑う。


【毒ガスやゾンビで不法移民達を殺すのは平気でも……】

愛娘(・・)に危害が加えられそうになったら、ブルっちまうらしい】

【所詮、お前は疑似親子関係にハマっているだけの病人さ、ディルレヴァンガー】


彼女はエレベーターがあった場所を何度も行き来し、何か納得したように頷いた。



~ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン~

~マイナス√256階・花畑~


「このコーヒー、ウマイな……」

「良い目利きや、ミレイア」

「オマエ、商売で成功するで」


「そっ、そうですかぁ~?」

「えへへ……」


ミレイアは照れながら、レイカの綺麗過ぎる横顔をチラチラと覗く。


「(顔整い星から来た、美人星人……)」

「(探索でささくれ立った心が潤って行きます……!)」


葵が彼女の耳元でそっと囁く。


「好きになっちゃった?レイカの事」


「ひゅぃっ!?」


ミレイアは思わずコーヒーを溢しそうになった。


「レイカとは誰も付き合ってる、って聞いた事ないんだよね」

「ミナミでも仕事一筋だって専らのウワサだったし」


「(じゃあ……私にも……!)」


彼女の鼻息が僅かに荒くなる。

葵はお茶を飲み、言葉を続ける。


「けど、《いっちゃん》って人が今でも好きなんだと思う」


「え……」


「恋愛感情なのか、仕事仲間としてなのか、親友としてなのか……」

「そこら辺の惚れた腫れたはあった感じがしてる」

「あんまり突くとメンヘラ拗らすから言わないけど……」

「大方、男にでも取られたんじゃないかなぁ」


葵はケタケタ笑う。


「あ、葵さん……」

「う、後ろ……!」


「え」


ニコニコ顔のレイカが葵の首に刀を突きつけている!


「おもろい話してるなぁ~~葵ちゃん」

「ワイにも詳しく聞かせてくれへんか?ん?」


「いや~これはですね、そのですね……」


「その、なんや」

「おぅ?」

「他人の色恋に首突っ込んだらアカン、とオヤジさんから教わらなかったか??」


葵は余裕の笑みを浮かべる。


「語るに落ちたなぁ、レイカさんや」

「自分から色恋沙汰だと白状してしまってますぜ」


「あっ……」


「とまぁ、こういう所が可愛くて付いて行きたくなっちゃうんだよねぇ」

「こんな迂闊な女サムライ、危うくてほっておけないでしょ」


ミレイアは笑顔で首をタテに振った。

レイカは赤面し、そっぽを向いて寝転がった。


「あーうるさい!うるさい!」

「勝手に言ってろや!」


一方、エスティアはノートに書き起こした図を見て、渋い顔をしていた。


『……このダンジョンは三層構造だな』

『実数層が①、裏の層が②、虚数の層が③……』

『マイナス√256を実数と虚数の組み合わせに直すと√-1 * 16、虚数を外せば16階だ』

『つまり、ここは逆の裏……本来の階層とは対偶の空間にある』

『しかし、空間を複素数平面に落とし込むと……』


『……』


『階層の式が直線上で交わり、どんな値を取ろうとも絶対に動かない場所がある』

原点(・・)だ』

『ゴールは恐らくそこだ。そこへ近づくようにエレベーターを乗り継いで行くのが攻略法だろう』

『逆に階層の数字が大きければ大きい程、ゴールからは遠ざかる』

『しかし、ナチ共がこの事に気付いていないとも考え辛い……』


『……待ち伏せか』


『その通りだ、クエイド』

『どちらが先制を取れるか、それは遠距離攻撃役に掛かってる』

『つまり、私達の連携こそが重要なファクターになる』


エスティアは彼の腕を抱き寄せる。


『大丈夫さ』

『私達は旭川の修羅場を潜り抜けて来たんだ』

『今回もきっと上手くやれるさ』


『エスティア……』

『分かった。俺の命、改めてお前に預けよう』

『俺はケンザキ達へこの事を知らせて来る』


彼女は拳を差し出し、クエイドは彼女の拳に自分の拳を軽く合わせた。



~ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン~

~√64階~


レイカ達はエレベーターを降りる。

そこはデスクだけがひたすら並んでいる、殺風景な個室だった。

レイカは何かを感じ、全員を止める。


『……全員警戒せぇや』

()の臭いがプンプンしよる』


『獣だと?』

『モンスターの事か?』


『……違う』

『人の皮を被った獣や』


高っちゃんが皆の前に躍り出る。


『しかも超ヤバい奴やで』

『高っちゃんセンサーがビンビンや』

『大胸筋が震えとるやろ』


「おい!大胸筋!」

「何かに反応しているのかい!?」


高っちゃんの大胸筋がピクピクしながら答える。


『筋肉怪物が居るヨー!』

『でもプロテインの臭いが全くしないヨー!』


『──!!』


レイカは刀を抜く。


『クエイド、エスティア』

『私らは高っちゃんと一緒に怪物の相手や』


『『了解だ』』


『ミレイアは何が何でも葵を護れ』

『このダンジョン、葵を最後まで掴んでいたグループが攻略を達成出来る』

『何が何でもナチ共には渡すな』


『はい!』


ミレイアの返事の直後、巨大な振動が部屋全体を揺らす。


「──!!」

「もうワイらに気付きよった!!」

「(幾らなんでも早すぎるわ……!!)」


壁が爆発したように吹き飛び、穴から巨大な腕が覗き始める。

腕は装飾品で飾られていたが、丸太の様に太かった。


【オシャレサムライ発見伝~!】

【私好みだよ、お前】


クエイドは【M82ニヌルタライフル】の引き金を引いた。

巨大な轟音が部屋に響いたが、弾は肩に弾かれて天井に大穴を開けた。


『──!?』


【フフ~……良い判断だねぇ】

【デルタの元隊員ってのはお前かい?】


橙色の髪を揺らしながら、大女が穴から這い出して来る。

ワインレッドの瞳孔は獣の様に細く、レイカ達の誰かに狙いを定めようとしていた。


『(アカンアカンアカン)』

『(コイツは完全な闇の住人や……!!)』

『(あのバカナチ共、なんつーヤツを呼び込んでくれたんや!!)』


エスティアの表情が恐怖で引き攣り始める。


『ケンザキ……!』

『今すぐ逃げるぞ……!!』

『この場所ではコイツに勝ち目が無い……!!』


【まるで、他の場所では勝てるかの様な言い草だねぇ】

【流石は学者様、高慢だよ】

【このマルタレータ様も舐められたモンさ】


エスティア達の姿が背景に溶け込んで行く。


【……光学迷彩かい?小賢しいよ】

【【サイバネ・ウェヌス】起動】

【《ヒート・サーチング》】


マルタレータは真っ直ぐ、そしてゆっくりと見えないハズのレイカ達を追い掛け始める。


「(……見つかっとる!)」

「(完全に戦闘慣れしとるやんけ!!)」

「(ええぃ、こちらから仕掛けたる!!)」


レイカは踵を返し、刀を構える。

高っちゃんも続いて拳を構えた。


【イ~イ根性だ、女サムライ】

【無理をしなきゃ一人前の女じゃない】

【半人前ばかり殺しても詰まらないからな!!】


レイカの全身から炎が噴き出る。


【じゃかあしいわ!筋肉ババァ!】

【こっちこそ、オマエをバラして売りさばいたる!!】


マルタレータが姿勢を屈め、弾丸の様にレイカに向かって飛び掛かる。

加具土命(カグツチ)】はレイカの身体の中心線を、残像を伴いながら一周する。


【《一刀居合・業火》】


刀が巨体を鋭く、そして鮮やかに斬り抜き、マルタレータは炎に包まれる。

彼女の胸に薄く長い切り傷が開く。


【……この程度でくたばってくれれば、どないに楽か……】


マルタレータは炎に包まれたまま、振り返って笑う。


【へぇ……良く分かっているじゃあないか】

【というかもう気付いているんだろう?】

【私が生肉じゃない事に】


【……【身体改造型アイテム】】

【遺伝子や体の性質・構造そのものを変化させてしまうアイテム】

【オマエの身体は機械か金属になっとる(カタすぎて斬り抜けんわアホ)】


【正解だ】

【しかし、何故気付いた?】


【……ダチに同じ系統のアイテムを使ってる奴がおるんでな】

【まさか戦闘サイボーグが出て来るとは思わんかったが】


【心は熱くし、頭は冷たくし】

【余計に気に入ったよ】

【お前の腸を裂く時が楽しみになって来た!!】


マルタレータはレイカの視界から姿を消す。

次の瞬間、彼女はレイカの死角から襲い掛かって来た。


【ヤー!!】


マルタレータの拳を、高っちゃんのナチュラル超筋肉が受け止める。

レイカは刀を逆手に持ち、刃を水平にする。


【その人狩りマダムボコボコにしとけ】

【ソイツの頭で盃作ったるさかい】


【オゥケイ!!レイやん!!】


マルタレータのもう一方の拳も高っちゃんに抑えられ、二人は四つに組み合う。


【──ほほぅ!!】

【素晴らしいパワーじゃないか!!ビルダー!!】


【こんなの余裕!!ヤー!!】


【ではこれでどうだ??】

【【サイバネ・ウェヌス】3段階起動】

【《リミッター解除》《リミッター解除》《リミッター解除》】


なんと、高っちゃんがマルタレータに力で押され始めた。


【パ、パワーーー!!!】


【アッハッハッハ!】

【膝がガクついているよ!!ビルダー!!】


その時、マルタレータの背後から刀が突き刺さる。

刃は左胸を貫き、するりと退いた。


【ダンジョンに力比べしに来たんか、アホ】

【今のウチに逃げるで!】


高っちゃんとレイカは、倒れたマルタレータから逃げ出して行く。


【……良い容赦の無さだねぇ、サムライの小娘……!】

【これだ……!これを求めていたのさ……!!】


白い循環液に塗れた口元が、怪しく歪んだ。



~マンハッタン~

~バッテリー・パーク~


ラロシェルは海辺を見ながら、独りベンチで本を読んでいた。

既に日は暮れつつあったが、彼のページを捲るペースは変わらなかった。


『(レイカ・ケンザキ……)』

『(現状、彼女の行動は何処までも私の利益になってしまっている)』

『(人間の才は特定の個人に奉仕するには非ず)』

『(才能はより遠大な目標の為に尽くされるべきです)』


彼は本を閉じ、行き交う客船を眺めながら独り言ちる。


『……ケンザキ氏には正当な対価と報酬を支払わねばならない』

『そう思いませんか?』

『エリシェバ・カウフマン』


彼の後頭部へ《ジェリコ(※1)》が付きつけられる。


『余計な事を喋るなラロシェル』

『お前が電力インフラを破壊したお陰で、入院していた祖父は死んだ』

『テルアビブで軍事裁判に掛けられ、収監される。それがお前のキャリアの最期だ』


周囲の通行人に扮した諜報員達が、ラロシェルを取り囲み始める。


『フフ……アイヒマンみたいに、ですか?』

『私情で事を判断し行動するのなら、アーデルハイド達となんら変わる所がありません』

『貴女の中にもナチが居ますよ、カウフマン』


『戯れ言を!!』


エリシェバの表情は怒りに満ちて居たが、手先は動揺し、銃口が震えていた。


『いえいえ』

『極めて本気です』

『何処にでも全体主義は発生し得る』

『貴女と同じユダヤ系の女性が明らかにした事ですよ』


『H・アーレント《全体主義の起源》……』


『全体主義の本質とは、人間性の破壊です』

『私の行動に賛否があるのは存じていますが、人間性の破壊を指揮した事は一度も無い』

『寧ろ……私は人間とその中身を愛している』

『特に才能ある人物を……文明の針を急激に進められそうな人物をです』


『煙に巻く気か!』


『こんな話をしているのは、貴女が逸材を連れて来てくれたからでもあります』

『もう既に分かって来たでしょう。私が何を言いたいか……』


『ケンザキ達を……お前に売れ、と……!?』


『はい』


エリシェバは激高する。


『貴様には倫理が無いのか!?』

『ケンザキ達は心を持った存在だ!!』

『商品ではない!!』

『それに祖父を間接的に殺した貴様に、私が従うと思うか!!』


『カウフマン(商人)らしくない態度ですね』

『私が何を差し出すか聞いても居ないのに、頭から取引を拒否している……』


『……ッ!』


『私に協力して頂ければ、貴女の祖国への完全不干渉……』

『そして我が【エグレゴール】の軍需部門が誇る、最新鋭兵器を供与する事を約束しましょう』


周りの諜報員達がざわめく。

ラロシェルは指を鳴らす。

水面が泡立ち、飛沫(しぶき)を飛ばしながら水色の戦闘ロボットが宙へと舞い上がる。


『これは通常兵器ではありません』

『歴とした、量産型のアイテム兵器【MI-4インテリオル】です』

『多少人は選びますが、既存の航空機パイロットの選別と大差はありません』


『こ、こんなものを何時から……!』


『NYは私の庭です』

『何処に何を沈めておくか……それは主である私が自由に決められる』

『それだけです』


『……!!』


『さぁ、返事を聞きましょう……』

【私に協力するか】

【それとも、イスラエル国家が消えて無くなるまで徹底抗戦を続けるか】

【カウフマン。貴女がここで決めるのです】


エリシェバへ諜報員達の視線が集中する。


『(これが集団で襲い掛かって来たら……)』


彼女の脳裏に、炎上するテルアビブやエルサレムの光景が再現される。

彼女の手から銃が落ち、草地へ両膝を付いた。


『(私は生き物として弱い……!)』

『(たった一つの事にすら、自分で決断を下せない……!)』

『(今なら分かる……ケンザキ、お前の強さと気高さが……)』


【返事は?】

【私も忙しい身ですので、早めのご回答を】


ウソつけ、さっきまでのんびり本を読んでただろ。


『我々は……』


エリシェバは、地面すら自分から遠ざかっていくような感覚を覚えた。


『カウフマン!!』


『副局長!!』


彼女は呟くように絞り出す。


『協力……しない……』

『ケンザキ達も売り渡さない……』


【では、ソドムとゴモラは塩の柱で埋め尽くされるでしょう】

【《ファルネーゼ》】


《はい》


【【商人】は私との取引を拒否しました】

【IDFの空海軍を撃滅し、テルアビブの港湾地区を徹底的に破壊して来て下さい】


《了解しました》

《直ぐに部隊を率いて出撃致します》


ラロシェルは立ち上がり、本を指の上で立てる。


()は《パーティー》でお会いしましょう、カウフマン】

【それまでに気分が変われば、何時でも話を聞きますよ】


そして、彼は読み終わった本をベンチに置いて行く。


【その本のタイトルはユキオ・ミシマが訳した《葉隠》です】

【ケンザキ氏はサムライの一番濃いDNAを受け継いでいる】

【サムライの魂に、年齢も性別も関係ありません】

【彼等彼女達の在り方はまるで日本刀です。扱う覚悟の無い人間は簡単に命を落としますよ】


【貴様には……その資格があると……】


【分かりません】

【ただ、彼等を前にする時は命を失う覚悟が必要でしょう】

【しかし、命を失っても良いと思える程の美しさ、それもまた日本刀の魅力です】


ラロシェルは上着の襟を正し、諜報員達の包囲を悠然とすり抜けて行った。




※1 通称「ベビーイーグル」。正式名称:ジェリコ941

IWI(イスラエル・ウェポン・インダストリーズ社)によって開発された、傑作銃。

メンテナンスが容易で、民間市場でも人気。

カウボーイビバップでスパイクが使っていた銃として有名。


はい。

マルタレータお姉様は暗黒金持ちです。

ダンジョンが出現する前から、人間狩りの常連でした。

しかも、人に狩らせるのではなく、自分が狩りを楽しみたいタイプです。

正しく暗黒貴族趣味だ。


しかもこの暗黒貴族、クッソ戦闘力が高い上に頭がキレる。

状況と場合によっては、アーデルハイドの敵にも普通になる。

アーデルハイドの度量が大きいと見るべきか、この暗黒サイボーグ女の嗅覚がヤバいと見るベきか……

無論、暗黒金持ち人脈も健在です。


そして、クラリスを40メートルの高さから落としたのはこの人です。

理由は、自分のデザインした靴にケチを付けられたからです。

良くこんな怪物を契約で縛れたな、ヴェルチカ……


ただ、こんな怪物を呼び寄せてしまったのは、彼女達の自業自得だと思う。

この手の怪物は血と金の匂いには凄まじく敏感なので、組織に食い込まれるのは時間の問題だった。

本気で関係を切る積もりなら、ミーナの圧倒的な戦闘力をぶつけるしかない。


そして、ラロシェルに対する見方が少しだけ変わったと思う。

彼が創ろうとしている世界は、この手の怪物が生きられない世の中である事は確かです。

彼は社会の概念そのものを入れ替えようとしているので。

それは核戦争よりも遙かにインパクトが大きく、既存の支配階級達にとっては受け入れ難い。

ラロシェルは押しも押されぬ世界有数の大富豪ですが、周りの富豪達はほぼ全て敵です。


支配階層の中で、いち早くラロシェルを攻撃し出したのがマルタレータです。

攻撃性の高さと嗅覚の鋭さが為せる所業ですが、結果としてエゲつない反撃を受け、彼女は資産に大損害を被りました。

痛い目を見た彼女は【降下機甲猟兵大隊】を利用する事を思い付き、実際それが当たり始めて居ます。


反対に、いち早くラロシェルと協力・共生関係を築いた富豪がクライヴです。

ラロシェルが彼を特に優遇しているのは、先行投資してくれた見返りと、その先見性に対する高い評価の裏返しでもあります。

彼の高い専門技能や力量、プロフェッショナリズムや創造性もラロシェルの好む所です。


日本刀は高いプロフェッショナリズムと才能、長年の技能蓄積の集大成みたいなものだから、そりゃ大好物です。

彼は日本刀の精神的な価値にも気づいていると思う。

多分、陶器や焼き物の価値もしっかり理解している。

こういう所があるからラロシェルは嫌いになれない。


ここまで読んで頂いて感謝します。

是非一度、《葉隠》を読んでみては?


「面白かった」「次回も楽しみにしている」「敵の動きが早すぎる」

「クエイドの知り合い来ちゃってんじゃん……」「なんなんだこの怪物……」

「関わっちゃいけない人に住所を知られたような感覚」「悪のレベルが数段階上に見える」

「ミレイアかわいい」「レイやんかわいい」「葵はホント良いキャラしてる」

「顔整いイチカハウス」「エスティア、やはり頭脳は一流だなぁ」

「もう人間辞めてやがるな、この人狩り……」「オシャレサムライ発見伝~!」

「高っちゃん以上のパワーとか、恐怖しかない」「知能の高い猛獣って感じ」

「レイやんと高っちゃん流石だわ」

「エリちがマジでキレてる……」「お祖父さん死んでるのか……」

「息を吐くように詭弁」「そして、息をするように嘘」

「ラロシェルの力、思ったより遥かに強大だった」「罠に掛けた積りが罠に掛けられてしまった」

「良心的な選択を仇にする、うーんこの」「やっぱり一筋縄では行かねーわ、コイツ」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

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