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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第三部:駆け抜けろ 燃え尽きたろか シンデレラ
114/119

ハットリ一佐インパクト(前編)

ニンジャは決して倒れない!!

負けてはならぬ!ならぬのだ!!


鑑賞用BGM:

(前半)https://www.youtube.com/watch?v=bE-odp82Ds4&list=RDbE-odp82Ds4&start_radio=1

(後半)https://www.youtube.com/watch?v=BwsqDO_6xjE&list=PL4UMlWGx1pf6rwOZXOJsCntCwQxnQNvjm&index=5


~【シュヴァルツ・シュトルヒ】艦上~


黒い鳥が青い粒子を伴い、弧を描きながら甲板に舞い降りる。

歴戦のニンジャは両手を合わせ、黒い鳥に対し45度のお辞儀をする。


【ドーモ、ハジメマシテ】

【防衛省自衛隊所属、特殊作戦群指揮官の服部善三(ぜんぞう)です】

【階級は一佐。近い内に【国境治安維持隊】の所属になる予定です】

【今後とも宜しくお願い致します】


一分の粗もない見事な挨拶が、激しい戦場に独特の間を創り出した。

クレイエルも【レイヴンズマハト】を通して言葉を返す。


【私はクレイエル・フォン・ヴァレンシュタイン】

【生まれはオーストリアのアイゼンシュタット】

【元ドイツ空軍のトップエースで、今は軍事企業【レイヴンズネスト】のCEOだ】

【こちらこそ、燃え尽きるような闘争を貴官に望む】


見事!

文化が全く違うにも関わらず、流れる様な返しの挨拶!

烈しい争乱の中で、二人の間にだけ静寂が流れる。


【《忍法》】

【《影分身包囲の術》】


服部の姿が横に増え、【レイヴンズマハト】を取り囲んでいく。


【──!】


鷹狩り(・・・)……】

【いざ参る!!】


直後、無数の服部が【レイヴンズマハト】へ襲い掛かる。

しかし、黒い機体は敢えて分身(・・)の群れへ突っ込んで行く。


【【MOONLIGHT】二段階リンケージ起動】


【レイヴンズマハト】は敵の直前で右へ素早く回り込み、回転しながら分身達を回転ノコギリの様に斬って行く。


【──!】

【イヤーーッ!!】


分身達が消えて行く中、服部は刀を抜き、回転する巨大なブレードへ斬り掛かる。

月光色に輝く巨大なブレードと、刀がぶつかり合い火花が散る。


【……見事だ。ハットリ】

【ここに至るまでの修練と鍛錬、敬意に値する】


【黒い鳥を射落とす】

【それこそが小官に与えられた使命!】

【言葉は不要!!】


【レイヴンズマハト】が纏う青い粒子が増大して行く。


【ならここからが本番だ】

【【レイヴンズマハト】第三段階起動】

【《アサルトフィールド》】


青い波動が黒い機体から球体状に発せられる。

服部は飛び退いて回避したが、全身を焼かれてかけてしまう。


【……!!】


【【MR-R101】第二段階二重起動】


焼かれて行く服部を無数の弾丸が襲う。

最早それは弾丸による射撃というレベルでは無く、機関砲弾の連続射撃だった。


【【ハンゾウソウル】第三段階起動!】

【《忍法無限スリケン》!!】


彼は焼き尽くされながらも、向かってくる弾丸に対して手裏剣で迎撃する。

彼の肘から先は消えているかの如くであった。


【ヌゥオオオオオッ!!】


なんと、銃弾の嵐が手裏剣の嵐で相殺されて行く。

しかし、手裏剣の嵐は銃弾の嵐に押し込まれ始める。


【退けぬ!!】

【負けられぬ!!】

【メンタルの負けが勝負の負け!!】


【レイヴンズマハト】の足元には無数の薬莢が散乱していた。


【強敵……】

【この感覚だ……!】

【この感覚を求めて私は闘っている──】


青い粒子が漆黒のアサルトライフルに集中し、実弾からレーザー弾に切り替わる。


【【レイヴンズマハト】!!】

【私の闘争心に応えろ!!】


レーザー弾が手裏剣を貫通し始める。

レーザーが服部を削って行く。

だが!


【ニンジャは決して倒れない!!】

【負けてはならぬ!ならぬのだ!!】

【《精 鋭 無 比》!!】


服部を赤いオーラが覆う。

彼はなんと素手でレーザー弾をはじき始めた。


【イヤーーーーーッ!!!】


【……そうだ】

【私の前に立ち塞がる敵はそうではなくては……!】


クレイエルは僅かに口元を緩めた。



~首相官邸前~


【コンコンコン~~】

【通してどすえ~~❤️❤️】


狐耳と6本のシッポを生やしたアラサーが、警官達の前で前屈みになって胸を揺らし、尻尾を振る。


「ダメです」

「今は有事です。政府関係者以外の敷地立ち入りは禁止されています」

「さ、お帰りを……」


優秀な警官達だった。


【どうしても~~?】


「ダメです」

「上から部外者は通すな、と命令を受けていますので」


(ははぁん……妖子はんの仕業やね)

(例え私でも、通さん積もりなんやろうねぇ……)


九子はスマホを取り出し、張本警視へ連絡する。


【もしも~~し❤️】

【愛しの九子からどすえ~~❤️】

【勤勉なお巡りさん達が通してくれへんのよ~~】


電話の向こうからは、溜息混じりに返答が返って来る。


《……今から俺が直接そっちへ行く》

《正門前に居るんだな?》


【はい❤️】


《……そこで大人しく待っていろ》


《はいは~~い❤️》


通話は切れ、九子は柔らかい笑みを警官へ向ける。


【ウチの()が迎えに来てくれなはります】

【残念だったやねぇ……】

【ふふふっ❤️】


警官達は困惑の表情を浮かべた。

しかし彼等は認識していなかった。

相手は乗っ取りのプロだという事を。


【そして……勤勉も過ぎれば毒どすえ】

【【玉藻鏡】第二段階起動】

【《乗っ取り式神》】


形代(かたしろ)が鉄格子の隙間をすり抜け、警官達の胸に貼り付く。


【門を開けてくれまへんか?❤️】


警官達は抵抗の意思を示したが、身体は門を開けていく。


【ありがとうどす~~❤️】

【用が済んだら直ぐ帰ります~~❤️】


九子は形代を懐から取り出し、軽く口づけをした。

敷地のど真ん中の歩いて行く九子の前に、走ってきた張本が立ち塞がる。


「……!やはり……!」


【きゃ~~ん!❤️❤️】

【走って迎えに来てくれなはるなんて……】

【余りにも心がイケメンやわぁ……❤️】


彼女は尻尾ブンブン丸になった。


「九子……!」

「今は有事だ。お前を拘束……」


九子は張本に飛びつき、彼の口を自分の口で塞ぐ。


(言わしません❤️)

(拘束されてるのは張本はんどすえ❤️)


張本は彼女を引き剥がそうとする。

だが、何故か腕に力が入らないのを感じた。

それは彼自身が彼女に絆され始めて居る、という事でもあった。

彼女は唇を離して言う。


【張本はん……】

【あんた程のええ男、誰かの使い走りやってるなんて耐えられんのどす】

【例えあんたが良おしても、うちの心が許さへんのどすえ】


「俺は一介の警官、そしてSPの隊長に過ぎない……」

「九子、お前の望みは俺には大きすぎる……」


【張本はん……】

【それは自分自身で、そう言い聞かせているだけどすえ】

【今はもう乱世どすえ】

【自分の意思と行動次第で、全て(・・)がひっくり返る時なんどす】


九子は張本の肩へ手を回す。


【張本はんには仕事に賭けるプライド以上に、心の奥に【正義】がある……】

【今の世の中、正義の味方なんておらへん】

【だけど、あんた様なら成れる……】


「【正義のヒーロー】、にか……」

「懐かしいな、子供の頃テレビや雑誌で見たヒーロー達を思い出す……」

「だがこうして時が経った今は……年下の上司に使われるしがない独身男だ」

「今回の事件でも無力さを痛感しているよ」


彼女は手提げバッグから、バックルに装置が付いたベルトを取り出す。


【これ……】

【そう言うと思って、あんた様の為に取って来たんどすえ】

【《六本木トンネルダンジョン》に潜って……】


「……俺の……為にこのベルトを……」

「《バッタライダー》の変身ベルトに似ているな……」

「……嬉しいな。部屋に飾って……」


九子は首を振りながら、穏やかな顔で張本に迫る。


【……バックルに耳を当ててみなはれ】


張本は躊躇いながらも、バックルに耳を当てる。


《【自分の人生を狭くするのは他人じゃない。本当は、自分自身だ】》

《【自分を信じる事、それこそ自分が自分らしくあるための第一歩なんだ】》


「……!?」


彼は聞こえて来た声に驚き、思わず耳をバックルから離す。

九子は戦火の広がる空へ手を広げて言う。


【ふふふ……子供の頃憧れていたシチュエーションは直ぐそこどすえ?】

【あんた様は心の何処かで、平和が乱れる瞬間を望んどった】

【自分が愛する平和を護る、【正義のヒーロー】へなる為に……】


「ば、バカな……!」

「俺は……!」


【なら、何故SPを続けているんどすえ?】

【最早正義はそこにあらへんのに、危険だけに身を晒している……】

【本当は命を正義の為に賭けたい……それが伝わって来たわ】

【あの時……本当はあのイタリア男をヒーローとして退治しとうて、ウチを庇うたんやん?】


「──!!」


張本はベルトを見つめる。

もうベルトは声を返さなかった。

彼はベルトを腰に巻き、九子へ言う。


「九子」


【なぁに?❤️】


「俺はこれから【正義】になる」

「諦めたヒーローの夢……30年振りに追ってみようか」


【……!!❤️❤️】


張本は右手を回し、左手を引く。

ベルトのバックルが回転し、光を放ち始める。


「【正義のバッタベルト】起動!!」

「《変・身》!!」


彼は赤いマフラーを付けた、装甲を纏ったバッタ男に変身した。


《この混乱に乗じ、悪事を働く者達……》

《それこそ俺が闘わなければならない連中だ》

《……九子》


【はい❤️】


《ここの守備は任せた》

《今回の事件が片付いたら、バーかカフェへ行こうか》


【はぅぅぅんっ!❤️(きゅんきゅんきゅん)】


そして張本は警官達が驚く中、敷地の外へ出て行く。


《【正義】出陣》


赤いマフラーが風で靡いた。



~【シュヴァルツ・シュトルヒ】機関室~


【へぇ~……!なるほどですね……!】


上杉警視は傭兵の首を刀に差しながら、血塗れのゼリービーンズを袋ごと頬張った。


【つまりここをバラバラに斬ってしまえば……】


彼女は【毘沙門剣】を振り、首を放り投げた。


【まさにあの時(・・・)と同じです!】

証拠(・・)は焼き払うに限ります!】

【特に……あの藤原とかという自衛官は煩そうですし……】


上杉はコーラ味とサイダー味の飴玉を、同時に口の中へ放り込む。

そして飴玉を思い切り噛み砕きながら、微笑み出した。


【嗚呼……御祖父様……貴殿がいけないのですよ】

【私にお菓子を食べさせてくれなかったから……】

【私に遊ばせてくれなかったから……】


凶剣が薄明かりの中で煌めく。


【嗚呼……レイカ殿……】

【私は貴殿と早く遊びたくて堪りません……!】


複数の斬撃が巨大なエンジンへ向かって行った。


読者の皆様、オツカレサマドスエ。

服部一佐の超精鋭軍人としての矜恃と、ニンジャとしての(ソウル)が光っている。

彼のアイサツを邪魔せず、静かに応じた上に見事なアイサツを返すクレイエルも流石。


忍者作品好きかって?

大好きさ!


ぶっちゃけ服部一佐でダメだったら、マジでどうしようもない状況だったんだよね。

しかしその尋常ならざるカラテとワザマエスキルにより、光明が見えて来ました。

アイテムの練度に関しても滅茶苦茶高い。


そして……

上杉ちゃんが遂にやらかしましたね。

もし人口密集地帯で巨大空中空母が墜落したら、その巻き添えで数万人は吹き飛ぶでしょう。

負傷者を合わせると数十万人規模の被害です。


それでも彼女の日常は変わりません。

甘い物を食べ、仕事に励み、人を斬るのです。

逆の見方をすると、数万人程度の死で動揺するようであれば、殿上人は務まらない。

上杉ちゃんは生まれ付き、類い希な征服者としての才能がある。

ただ、それは彼女の行く所死体が積み上がるのは避けられない、という事です。


上杉ちゃんはお菓子すら与えられず、厳しいだけの環境に長い間置かれた子供が、どういう大人になるか……

その一例を示しています。

彼女は完全に壊れてる。今お菓子をバリバリ食ってるのは、子供時代の反動でしょうね。

子供には菓子を買い与えなきゃな。彼女には親の愛も無かったんだけども。


レイやんと上杉ちゃんは何もかもが対極だと思ってる。

もし彼女達の生まれが逆なら、全てが順調だったかもです。

レイやんなら抜け道を必ず見つけられるし、上杉ちゃんは両親の愛と一般的な教育を受けるべきだった。

無意味なIFですが。


それらはさておき、九子がこの動乱に乗じ、遂に蠢動し始めました。

なんだよこのアラサー。

可愛すぎるだろ……


四十万が姉に対し、超嫌な顔をする理由が分かると思います。

九子のソフトスキルは四十万より完全に上で、その手腕はアイテムを得てから更に磨きが掛かっています。

妹の政敵にならないよう祈っておきましょう。一応。


張本警視超頑張れ。

……と、言いたい所だけど、彼の雲行きも大概怪しくなってきた。

大体、大人になってから正義とかヒーローとか言い出すのは危険過ぎる。

九子から渡されたブツのポテンシャルの底が、余りにも知れないし……


ただ、アラサーでゴスロリの格好してネオナチの指導者やったり、大国の少将なのに40過ぎて魔法少女の格好する人が居る世界なんで、40代の【正義のヒーロー】な警官が居ても問題ないと思ってます。

ダンジョン業界はルール無用だな。

……クッソ怖いよこの業界。


四十万の部下ラインナップ、とんでもない事になってきたな……

ニンジャにライダーに、女軍神に覚悟完了……

リンちゃんがツッコミ&フォロー役として、過重労働になるのはもう避けられないにゃ。

うにゃぉおおぉん!!


キャラの濃さで言えば全勢力中トップクラスですね。

そもそも四十万からしてかなり濃いし、九子も濃い。

日本の治安・国防組織が一番濃いってどういう事だよ。特濃じゃん。

マルファやアーデルハイドの部下達も大概だけど。


そして張本警視……実はメンバーの中で一番狂人度が高くて、こっちもビビってるんだよね。

よく考えたら、仮○ライダーって狂人度高めな気がするけども。

【正義】そのものになる、ってかなりブッチ切ってますよ。

多分悪人と判断されれば問答無用で、正義の銃弾とキックが撃ち込まれます。マジ怖ぇよ。


九子は悪妻なのか良妻なのか、判断に困る所です。

()の為に尽くす、という意味では間違い無く良妻なんですが。

彼女は今まであらゆる有望な男達をダメにし、その人生を破壊して来ましたが、今回は逆にダメにされてしまってますね。

操ろうと思ってももう無理ですよ、あの男は。


四十万や藤原とよりも、張本が上杉ちゃんと対決する日の方が近そう。

張本の【正義】の定義的に上杉ちゃんは完全アウトなので。

国境治安維持隊のパーティバランス、実はかなり危うい。

服部が居なくなったら結構ヤバい気がする。ニンジャこそキーストーン。


次回、藤原の魂が血塗れで輝きます。

リンちゃんも大活躍しますにゃ。


「面白かった」「次回が楽しみ」「ワザマエ!」

「服部一佐がんばれ!」「流石ニンジャ強い」「互いに見事なアイサツ!」

「当然のようにクレイエルが強すぎる」「精鋭無比!」

「コンコンコン~~」「きゃ~~ん!❤️❤️」「これは良妻」「ヤバそうなベルト来たな……」「いや、ヤバいのは張本警視じゃないか……?」「正義のヒーロー……」「【正義】出陣!」

「やっぱり前科あったか、上杉ちゃん」「レイやんと真逆の過去だな……」「この女は壊れてる……マトモじゃない……」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

宜しくお願い致します。

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