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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第三部:駆け抜けろ 燃え尽きたろか シンデレラ
110/117

戦場家族フロントライン

言うなれば運命共同体。

互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。

だからこそ戦場で生きられる。

部隊は兄弟姉妹、部隊は家族。


鑑賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=qyARO-c1LvM&list=RDqyARO-c1LvM&start_radio=1



~浦賀水道上空~


上杉警視がエネルギーフィールドを叩き斬ったのと同時に、服部一佐が素早く飛び入る。


【《忍法壁抜けの術》!!】

【イヤーッ!!】


【シュバルツ・シュトルヒ】の外壁装甲に、鍛え抜かれたニンジャソルジャーの強烈な飛び蹴りが炸裂する。

達人と呼ぶに相応しい蹴りは外壁装甲をいとも簡単に貫き、大穴が開く。

藤原曹長はその光景を見て、一反木綿から即座に飛び降りる。


《全隊突入~~~ッ!!!》


彼の掛け声を合図に、特殊作戦群の猛者達もそれに続いて行く。

勿論、パラシュートなど無しで。

四十万(しじま)は笑いを堪えながら言う。


「くくく……!」

「流石は日本が誇る最高の猛者達……!」

「そうです!!」

「私の手足となるからには、中途半端では困るんですよ!!」


隊員達は次々に三点着地(※)を決め、服部が開けた穴へと飛び込んで行く。


「行きますよ!リン!」

「ここからはスピード勝負です!!」


「了解ですにゃ!!四十万司令官(・・・)!!」


四十万とリンは表情に高揚感を浮かべながら、一反木綿から飛び降りた。



~【シュバルツ・シュトルヒ】艦内~


《D-34区画に敵侵入!!》

《近隣区画に待機している歩兵部隊は直ちに迎撃せよ!!》


艦内には警報が鳴り響き、完全装備の傭兵達が次々と武器を取って、薄暗い通路を駆けて行く。


『クソッ!!』

『一番イヤな手段に出やがった!!』

『敵は相当頭がキレやがる!!』


《敵はD-34区画を突破!!》

《E-28区画とD-30区画に侵入中!!》


『動きが早すぎる……!!』

『精鋭を投入して来やがったな……!!』


走る傭兵達に、武装した10代後半の少女達が合流する。


『『『私達も迎撃に参加します!!』』』


『──!』

『俺達の後ろを付いてこい!!頭を低くしろよ!!』


『『『はい!!』』』


そこへ霊体化して天井をすり抜けて来た四十万が、突如傭兵の一人に組み付く。


『──!?』


傭兵は即座に彼女を振り払おうとしたが、素早く首を捻られる。


『撃て!!撃て!!』


彼女に銃撃が襲い掛かるが、四十万は壁を走って銃撃を躱し、宙返って身体を捻りながら傭兵の頭を蹴り砕いた。


『このっ──』


金髪の少女兵がコンバットナイフを持って四十万へ襲い掛かる。

四十万は素早く少女兵の手首を掴み、捻り上げて投げ飛ばした。

少女兵は四十万の強烈な投げにより、背骨と腕の骨が折れて動けなくなった。


『──ッ!!』

『良くも私の()を!!』

『許さない!!』


四十万は目の前に迫って来た銃剣による刺突を躱し、敵の銃を脇に抱えて顎に掌底を入れた。

銀髪の少女兵は顎を砕かれ、意識が飛んで崩れ落ちる。

傭兵と少女兵達は四十万を遠巻きに取り囲み始める。


「……これでも心が折れないとは……」

「それにまるで家族をやられたかの様な、この憎悪に満ちた表情……」

「これは艦内の敵も意外と難敵かもしれませんねぇ」


四十万は姿勢を低くし、右手から妖気を放ち始めた。



~E-28区画~


通路には青や赤の光線が乱れていた。

特戦群の隊員は物陰に隠れながら、後ろの藤原に言う。


「曹長!!敵が撃って来てるのは実弾じゃありません!!」


《んなの見りゃ分かる!!》

《時間がねェ!!簡潔に言え!!》


「光線兵器です!!曹長!!」


《良し!!分かった!!》

《俺が前に出る!!》

《【蜈蚣(むかで)切】の装甲なら大丈夫だ!!多分!!》


藤原は通路に飛び出し、光線の嵐の中を駆け出した。


《全員俺に付いて来い!!頭を低くしねェと死ぬぞ!!》


彼は太刀を構え、光線を弾きながら敵陣へ突撃して行く。

部下達は姿勢を低くし、彼の後ろを素早く付いて行く。

対戦車ミサイルが彼に向かって飛んで来る。


《うぉらああぁぁぁ!!!》


太刀が弾頭に正面から食い込み、ミサイルは真っ二つにされて行く。

真っ二つに斬られたミサイルは爆発し、両側の壁を爆熱で焼き尽くした。

彼は遮蔽物を乗り越え、射手に斬り掛かろうとする。


《よっしゃ!!敵陣乗り込だ……》


『侵入者め!!』

『ここで終わりよ!!』


レーザーライフルを構えた少女が、藤原の額に狙いを定めていた。


《──!!?》

《しょ、少年兵だと!!?》


銃口からは容赦なくレーザーが放たれ、藤原の鎧を掠める。

彼は驚きと怒りの混じった声で怒鳴る。


《バカ野郎!!傭兵ってだけで国際法違反なのに──》


彼は少女のライフルを掴み、足を掛けて押し倒す。


《少年兵まで使いやがるのかよ!!》

《どうなってんだよこの艦は!!!》

《このガキは俺の妹より歳下じゃねぇか!!》


少女はコンバットナイフをケースから取り出し、鎧の隙間目掛けて刺そうとする。

藤原はそれを弾き、後ろから続いて来る部下達に向かって言う。


《この艦には少年兵が乗ってやがる!!》

《少年兵に関しては装備の破壊と身柄の拘束を優先しろ!!》


「「「りょ、了解致しました!!」」」


部下達は敵少年兵の武器に狙いを定め、正確な機械の様に破壊して行く。

だが、少年兵は次から次へと近接武器を取り出し、連携を取って逆襲に出て来た。


「──!まるで怯んで無い……!!」


隊員はコンバットナイフで少年兵のスタン棒を受け止める。

が、横から脇腹を刺されてしまった。


「なっ……!?」


更に通路の奥から完全武装の傭兵達が、藤原とその部下達に襲い掛かって来る。

藤原は怒りを露わにして叫ぶ。


「大人なら子供を戦わせない様にするのが義務だろうが!!!」

「フザけるんじゃねぇ!!!どんな理由が在っても許せねェ!!!」

「【蜈蚣切】第二段階起動!!」

「《絡繰強化外骨格》!!」


絡繰の外骨格に覆われた藤原は正拳突きの構えを取り、猛烈な闘気を放つ。


「俺の魂が!!!」

「このバカげたやり方を終わらせろと叫んでいる!!!」

「何をされようが俺は退かねェ!!振り向かねェ!!」

「俺の拳が届く所まで!!」


藤原は再び銃撃の嵐に立ち向かって行った。



~D-30区画~


【イヤーッ!】

【トァーッ!!】

【セヤーッ!!】


服部一佐の鋭すぎる拳や手刀により、傭兵達は次々と薙ぎ倒されて行く。

リンはP-90を構えながら、服部の後を追い掛ける。


「す、すごいにゃ……!ニンジャ……!」


その時通路の奥から服部目掛けてミサイルが飛んで来る。

しかし彼は手裏剣を放ち、ミサイルの信管を破壊してただの金属にした。


「お、おかしすぎるにゃ……!ニンジャ……!」


リンは敵の陣地に弾を撃ち込む。

しかし、それは文字通り100倍になって帰って来た。


「にゃにゃっ!?」

「【火車にゃんにゃん】起動!」


リンは火のついた車輪になり、銃撃が炎をすり抜けて行く。

服部はその輪を掴んで言う。


【すまぬが手裏剣になってくれ】

【敵の裏に回って攻撃した方が時間的に早い】


「にゃっ……」


【セヤーッ!!】


リンの返答を待たず、服部はニンジャパワーを持って彼女を手裏剣の如く投げ飛ばした。


「にゃおぉぉぉっ!?」


燃える車輪は縦回転しながら敵陣を猛スピードで突き抜け、リンは咄嗟にアイテムを解除する。


「──超強引だけど流石に良い判断にゃ!!」


彼女のP-90が火を噴き、傭兵達を背後から薙ぎ倒した。



~艦橋~


『ルヴィアンカ艦長!!敵の侵入が止まりません!!』

『隔壁で区画を封鎖しても突破されてしまいます!!』


『……動ける者は全員艦を脱出を』


『はっ、しかし……!』


ルヴィアンカは帽子を取り、金色の髪を振り乱しながら言う。


『敵に貴方達を人質に取られる方が余程問題なの!!』

『早く随伴艦へ脱出しなさい!!』


『りょ、了解です!』


少女兵は仲間に声を掛け、脱出艇に向かい始めた。


『ラロシェル……何故傍観している……!!』


【心外ですねルヴィアンカ艦長】

【敵はアナログ精神の塊です】

【こちらの用意したゲームにはまるで乗る気が無かった……】


背の高い赤髪の男が足音も無しに、ルヴィアンカの前に現れる。


【敵は思いの他非常に柔軟……そして視野が広い】

【日本の官僚には非常に珍しい……いや、稀有な素質を持った存在と言って良い】

【彼女もまた非常に興味深い……】


ルヴィアンカは男を尻目に、幾何学模様の入ったサブマシンガンを取る。


『……敵の論評なんて今更聞かされてもしょうがないの』

『東京は思ったより手強かった、それだけよ……ラロシェル』

『【シュバルツ・シュトルヒ】……いえ、この作戦の弱点をまんまと突かれたわ』


しかし、ラロシェルは平静を崩さない。


【想定外の苦戦を強いられてるようですね】

【……なら私がやってみましょうか、《ヨウカイタイジ》とやらを】

【《ヨウカイ》には固有の弱点(・・)が必ず存在します】

【そこを突けば、正面から戦わずとも相手を追い返せるハズです】


『随分と余裕ぶっているけれど……』

『その弱点とやらは分かっているの……?』


ラロシェルはルヴィアンカの問いに対し、穏やかな笑みを浮かべて言う。


【その人物の弱点……】

【それは……その人物の愛の対象を知る事で判る】

【日本側の指揮官は人を愛する事を、誰よりも良く知っている人物です】

【だがその愛が故に歪んでしまった】


『相変わらず気味の悪い解釈……』


【身体を重ねる事だけが愛する事では無い……】

【人の良い部分だけを愛する事だけも……】

【嘗て街娼にまで堕ちた貴女なら、良くご存じのハズ】

【本当の愛とは……】


彼は唇を噛み締めるルヴィアンカを一瞥し、更に歩きながら言葉を続ける。


【相手の醜い部分、悪い部分、そして情けない部分を何処までも噛み締める事……】 

【敵指揮官の四十万は……まさに【愛の達人】とも言うべき存在です】

【本当の愛は……口には出さないモノです】

【普段は憎まれ口を叩いているぐらいが丁度良い……】


『……』


ラロシェルはルヴィアンカの方を振り返って言う。

彼はいつの間にか4つ目の仮面を被っていた。


【もし彼女にゲームへ参加する気が無いのなら……】

【強制的にでも参加して貰いましょう】

【【セムヤザの仮面】第三段階起動】

【《仮想浸食》】


ラロシェルは指を鳴らす。

彼を起点とし、青い波動が艦内を伝わって行く。


【……神出鬼没の特権を何時までも維持出来るとは思わない事です】

【ハッカーは姿が見えない相手に対し、日々情報空間で対ゲリラ戦を繰り広げていたのですから】

【四十万妖子……貴女の底……是非私に魅せて頂きたい】


ラロシェルの身体は床に吸い込まれるように消えて行った。




※ パラシュート無しで高所から飛び降りるのは危険です。特殊な訓練を受けた人以外は絶対に真似しないで下さい。受けても真似しないで下さい。


ニンジャ大佐が余りに強すぎて困る。

カラテ(物理能力)が鍛えられすぎている。

元々の素質と絶え間ない狂った鍛錬で造り上げた最高の肉体に、アイテムソウルが宿って無法な強さになっております。

リンちゃんはニンジャ大佐と同行してしまった時点で、色々と諦めて欲しい。


それにしても本当に猛者揃いすぎてヤバいぜ。

四十万の戦力は大幅に強化された、と言って良い。

彼女自身も高い戦闘能力がありますが。

特に、戦闘続行能力は全登場人物中トップだと思います。


藤原好きだなー

本当に人間らしいし、勇敢で良識がある所が好き。

国際法も意識してますし、彼は良き市民であり良き兵士だと思います。

何よりアツいぜこの男。戦い方もアイテムも。


前書きに関してですが、嘘は言ってないです。

例え嘘でも本当にしてしまうのが、クレイエルという男の凄さです。

【レイヴンズネスト】という企業のCEOでありながら、彼は同社の家長でもあります。

言わば『社員は家族』ってヤツです。


即、アットホームな企業=ブラック企業の図式が成立するとは個人的に思っていません。

どんな者でも見捨てないので、寧ろ集団としての強度は劇的に向上しています。


正直業界によっても、その辺りのやり方は変わる気もします。

彼等が普段居る所は【戦場】です。

仲間を見捨てたら、正直それこそ規律と士気を維持出来なくなる。

特戦群が苦戦させられているのは、社員同士の絆がかなり強い証拠です。


逆にこれが極限の効率性と究極の時間競争、画期的アイデアが求められる製品開発や製造業だとどうでしょうか?

ビッグテックとその傘下企業を率いるラロシェルなら、簡単に使えない社員のクビを切ります。

なんなら、不要になった工場ごと切る、なんて事もザラです。

組織内には常に緊張感と不安、そして恐怖が漂っています。


正直、初期のイチカはラロシェル寄りだった気もする。

四十万、実はかなりクレイエル寄りです。

彼女の言動は、彼女の立場や抱えている物がそうさせている部分も大きい。

あとはイチカが原因。


クレイエルとラロシェルを二極だとすると、組織に対する考え方はこんな感じで分かれる。


《クレイエル型》


ベルナルド

四十万

アーデルハイド

ゲオルグ

レイやん

平良

マルファお姉さん


《ラロシェル型》


イチカ

ハルカ

マルティーニ

ラインバウト

ヨハン

ジュビア


《クレイエル型》には結構感情的な人が多いかも。

どちらにも強みと弱みがある。

そして、これに個々人の職業や立場を重ねると……


《クレイエル型》


ベルナルド(自警団カルテルリーダー・実業家)

四十万(警察官・国家警備隊司令官)

アーデルハイド(極右政治集団指導者・思想家)

ゲオルグ(王族・パイロット)

レイやん(半グレ・剣士)

平良(自衛官・反乱部隊指揮官)

マルファお姉さん(軍事工作員・軍事指揮官)


《ラロシェル型》


イチカ(建築家)

ハルカ(反政府テロリスト・作家)

マルティーニ(犯罪シンジケート最高幹部)

ラインバウト(騎士団長・EU議員)

ヨハン(王族・軍需企業CEO)

ジュビア(自警団カルテル幹部・国際弁護士)


個々の登場人物に対し、また違った見方と楽しみ方が見えて来ると思います。

ハルカは結構意外かもしれない。

けど、目的の為に犠牲をあっさり割り切れる部分はラロシェルに近い。

自分すら犠牲に出来る点も。


一方、レイやんは全く割り切れずに泣いています。

マルファお姉さんは毒親チックなだけで、部下達を生徒や子の様に愛している。

平良は死んだ同僚や部下の為に行動を起こしていますし、ベルナルドに至ってはカルテルメンバーを自分の半身の如く大切に扱っています。


だから精神操作系のアイテムは危険なんです。

集団の絆を一瞬で崩壊させ、生き残った者にも深い心の傷を負わせる事が出来るからです。

アーデルハイドは文字通りの『ジョーカー』かもしれません。

ただ、余程の事態に陥らない限り、彼女もそういう手段は採らないでしょう。


四十万がアーデルハイドに洗脳された部下を殺した時、彼女は何を思ったのでしょうか。

本来なら、藁人形に釘を打ちつける程度では済まないレベルの感情を抱えたハズです。

次回、人間『四十万妖子』の貴重な本音と心の傷がボロボロと出て来ます。

人類愛を騙る堕天使によって。



読んでくれてありがとうございますにゃ。

何も予定が無くても、休暇はそれだけでいいにゃ。


「面白かった」「次回が楽しみ」

「やはりカラテだよ!」「流石ニンジャ」「パラシュート無しとはたまげたなぁ」

「四十万の近接戦闘能力が高くて驚いた」「藤原好き」「藤原の言葉がアツい」「お、おかしすぎるにゃ……!ニンジャ……!」「にゃっ……」「リンちゃんのアイテム面白いな」「艦長判断力あるな」

「遂に現れやがったな元凶が」「ラロシェルの四十万評が面白い」「当然のように覚醒してやがる」「いつの間にか四十万達を応援してた」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

宜しくお願い致します。

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