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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第三部:駆け抜けろ 燃え尽きたろか シンデレラ
108/118

東京ダウンフォール2026(中編)

闘争の時間だ


鑑賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=qHM52usPvY8&list=RDGLowH7TwDR0&index=38


~数分後~

~三宅島上空~


《接近する機体に告ぐ!!最後の警告だ!!》

《もしこのまま北上して日本の領海に侵入するのなら、安全保障条約プロトコルに基づき撃墜する!!》


F-22ラプター戦闘機のパイロットは、マッハ1で海上を滑空する黒い人型の戦闘ロボットへ追い縋りながら、警告の無線を送った。


《……届いていないか。警告射撃開始!!》


機銃弾が漆黒の戦闘ロボットへ放たれる。

当然の如く、弾は濁った海へと吸い込まれて行く。

F-22のパイロットは機体を照準に捉えると、ミサイルスイッチへ指を置く。


『恨むなよ……!英雄……!!』

『俺の息子はお前に憧れているんだ……!せめてヒーローのまま死んでくれ……!!』


パイロットは目を閉じながらミサイルを発射する。

ミサイルが黒い戦闘ロボットへ迫る。


【戦闘開始】

【英雄の時間は終った】

【これからは……】


『──!!』


黒い戦闘ロボットはF-22の方へ向きを変える。

そして背面で飛びながら、灰色のアサルトライフルをミサイルに向かって構えた。


【闘争の時間だ】


銃口が赤く燃える。

ミサイルは撃墜され、爆風が海を吹き飛ばした。

F-22はその途轍もない上昇推力で、急上昇して爆風を回避する。


『……英雄相手にドッグファイトか!!』

『家に帰ったら息子に自慢出来るな!!』


現代最高の傑作機がその圧倒的なパワーで、急上昇からの左旋回を試みる。

銃撃が機体へ襲い掛かる。

だが、パイロットは操縦レバーを目一杯引き、機体は弾をギリギリで回避する。


『す、凄まじいGだ……!!』


パイロットへ凄まじい重力負荷が掛かる。


(最早、開発時の想定は超えているだろう……!)

(だがそうしなければ、この黒い鳥の攻撃は躱せない……!)


《【……良い腕だ】》

《【だが、私より高くは飛べない】》

《【【レイヴンズマハト】。【MOONLIGHT】リンケージ開始】》


【レイヴンズマハト】は7m程の長さもあるブレードを展開する。


《【その力に敬意を表する】》

《【さらばだ】》


月色に輝く巨大なブレードが、F-22の胴体を断裁機の如き速さで掠める。


(──やられたな)

(流石だ、黒い鳥──)


パイロットは射出装置を起動する間もなく、自分の敗北を悟った。


『お前の父さんは黒い鳥を少しだけ食い止めたぞ……!』


F-22は爆発四散し、残骸が海にバラ撒かれた。


【……】


【レイヴンズマハト】は北の空を向く。

F-35の編隊が、黒い鳥を撃破すべく向かって来ていた。


【相手になろう、戦士達】

【私の闘争心はお前達を歓迎する】


黒い機体の頭部から放たれる青い光が、更に輝きを増した。


〜首相官邸〜

〜臨時作戦本部〜


「……早速一機やられたようですねぇ」

「あっ。今度は1分経たずに4機ですよ」


四十万(しじま)は上杉から巻き上げた《とらや》の羊羹を(かじ)る。


「け、警視正……!」

「私の羊羹なんですけど!私のですよ!」


「少し静かにして下さいよ」

「今脳に糖分送って作戦考えてる所なんですから」


「このひとひどい……」


「日頃、私の事を妖怪だとか裏で言ってるクセにアホな事ぬかしますねぇ、このポンコツポニテは」


(バ、バレてる……!)


山金議員は四十万へ視線を送る。


(分かってるだろうな、四十万)

(ここで成果を示さねば、お前の命どころか国体すら危うい事を)


(……分かってますよ)

(だから今敵の弱点をフル回転で分析してるんです)

(しかし米軍内部ですらここまで分裂してるとは……想像以上に深刻ですよこの事件)


(……ローマ帝国の終焉と同じだな)

(それかこれから最盛期を迎えるかの2択だ)

(しかし……この演出を仕掛けた者の意図が掴み切れん)

(極めて嫌な予感がする)


四十万はため息をつきながら立ち上がり、陸自の幕僚へ言う。


「特殊作戦群」

「貸して下さい。どうせ【国境治安維持隊】へ編入するのですから、今使い方に慣れておきたいんです」


「──!」

「何処で合流させますか!?」


「《第二海堡》でお願いします」

「元は帝都防衛の想定で作られたモノですし」


「了解!」


自衛官達は慌ただしく動き始め、四十万も椅子から立ち上がる。

山金は四十万に言う。


「……何故《第二海堡》にした」


「あそこは首都圏全ての軍事施設……」

「その中心点にあるからです」

「今の米軍基地も自衛隊の駐屯地も、旧日本帝国軍が造った基地や施設の上にあります」


「……旧軍の遺産か」

「やはり先人の知見は侮れないな……」

「だが無論、敵もそれを認識している、か……」


「はい。あのクレイエルならそうでしょうねぇ」

「問題は彼が想像以上に強くて早かった事ですが」


四十万は扉に手を掛けた。

山金が彼女へ声を掛ける。


「……勝つ算段は?」


「妖怪の本領……」

「それは人が嫌がる事や、怖がる事を進んでする所にあります」

「私……良いネタ(・・)、掴んでるんですよ。ふふふっ……」


「……四十万」

「相手が何者だろうが、一切容赦はしなくて良い」

「総大将の本領、存分に発揮して来い」

「お前の狡知こそ、今の日本が過酷な生存競争に打ち勝っていくのに必要な要素だ」


「日本、ですかぁ……」


 (【もうどうでも良いですけどねぇ、そんなモノ……】)


四十万は周囲を一瞥した。

そして、彼女は張本へ目線を送る。


(頼みますよ、ハリー)

(いざという時は、貴方しか彼等の安全を担保出来ません)


(承知した)

(だが……)


張本は指で狐の形を作る。

そしてスマホの画面を彼女へ見せた。


(九子からメッセージがあった)

(『私も良い所で混ぜてどすえ❤️』、と……)


四十万の頬がヒクつく。


「あ、あのクソ姉……!」

「式神で盗聴していましたねぇ……!」


彼女は怒りに任せて扉を吹き飛ばす。

総理はビクリと震えた。

四十万は深呼吸し、総理の方を振り返る。


「……では鎮圧に行ってきます」

「置物なら置物なりの役割を果たして下さい」

「……行きますよ、上杉警視」


「はいっ!!」


上杉は【毘沙門剣】の鞘を握り、元気良く返事をした。



~数分後~

~国会正門~


議事堂周辺では自衛隊の輸送ヘリが離発着し、物々しい雰囲気に包まれていた。

四十万は風に髪を流されながら、一際目力の強い隊員へ敬礼する。


「貴方が特殊作戦群の部隊指揮官ですか?」


「いや、アンタを迎えに来た分隊長だ」

「指揮官は別の場所に向かっている」

「名前は藤原だ。階級は曹長」


藤原は敬礼を素早く返した。


「……仮にも私は指揮官なんで、敬語を使ってくれませんかねぇ」


「俺は自分より弱いヤツに敬語を使う気は無い」

「俺に敬語使わせたくば、俺より強い事をこの戦いで証明して見せろ」


「……中々良い度胸ですねぇ」

「早くその戦闘民族的な態度を改める事を期待してますよ」

(多分元ヤンキーか不良ですね、コイツ)


四十万は後ろに控えていた大道に言う。


「大道警部。貴方は市ヶ谷駐屯地に向かって下さい」

「そこはクレイエルの部下に襲撃される可能性があるので」

「戦闘時、盾となって職員達を逃がしてあげて下さい」


「了解しました!!」


大道は大型バイクに乗り、猛スピードで去って行く。


「さて、着替えましょうか」

「上杉警視。リン警部補」


「「え」」


「『え』、じゃないですよ」

「着替えるんですよ、ここで」

「わざわざ警視庁まで戻って、着替える時間なんてありませんので」


四十万は異空間から三人分の着替えを放りだした。

それは灰色のタイツに黒いアーマーが付いた、ピッチリしそうなスーツだった。


「なんかSFアニメに出て来るような、コスプレのような……」


「科捜研が造った試作品のスーツとアーマーですよ」

「アイテムの技術が応用されています」

「対戦車ロケットで撃たれたぐらいでは倒れないとは聞いています」


上杉は戦闘スーツに向け、手を立てる。


「わ、私は今の黒スーツで……」


「有給5日分追加」


「はい!着ます!」


「……」


四十万達はその場で服を脱ぎ始める。

議事堂を背にしながら。

藤原曹長は思わずフェイスマスクを外して言う。


「お、お前達……しょ、正気か!?」


四十万は下着のホックを外しながら答える。


「童貞男子中学生じゃあるまいし……」

「いい年した兵隊なら、女の裸なんて見慣れてるでしょうが」

「ねぇ、上杉警視」


「私は裸に男も女も無い!と考えています!」

「道場では男女同じ部屋で着替えてましたし!」


リンはショーツの位置を直しながら言う。


「警視は江戸時代から迷い込んで来たのかにゃ?」

「まぁでも、この兵隊はどうにも童貞臭いにゃ」


「わかります!」

「道場にも20過ぎたのに女性と付き合えずに風俗で……」


藤原曹長は片膝を付く。


「ぅぐあっ!」


「そ、そこまでにゃ、上杉警視」

「あの兵隊さん、完全にダメージ喰らってるにゃ」


四十万はニヤニヤ笑いながら、上杉のデカパイを持ち上げて見せる。


「敵の首を取れば揉ませてあげますよ?この天然巨乳を……」

「どうしますか?(くいっ↑くいっ↑)」


「……~~ッ!」

「分かった!約束を違えるなよ!!警官!!」


「という事です上杉警視」

「頑張って揉まれて下さいね」


「大丈夫です!!鍛えてますから!!(グッ)」


「も、最早国指定の天然記念物にゃ……」


藤原は背負っていた太刀を抜いて叫ぶ。


「【蜈蚣切(むかできり)】起動!!」


彼の身体が、たちまち武士鎧の様なパワーアーマーに覆われて行く。


《さあ俺に命令を下せ、メスゴリラ》

《どんな命令でも完璧にやり切ってやる》


四十万は首を傾げる。


「メスゴリラ?」

「それは私の事ですか?」

「お人形さんみたいに可愛いとは言われますけどねぇ」


《冗談で言ってるのか?》

《お前みたいなエゲツない身体つきしてる女なんて、今までに見た事が無い》

《いや、男でもそうは見ないぞ》

《……元柔道選手か?》


「ええ、世界選手権や日本選手権で何度か優勝してますから」

「ただ、柔道は出世競争の道具に過ぎませんよ」

「お陰で20代後半で警視正にまで成れましたから、そこは柔道に感謝してますが」


《それだけで、そこまでの身体と実績が作れるものか》

《尋常ではない高い目標(・・)が無いと無理だ》


四十万の黒い瞳が、底なしのブラックホールのように渦を巻く。


【そこから先に突っ込んだら、敵より先にアナタを殺しますよ】


だが、藤原は彼女の圧に怯える事も無く、平然と言い返す。


《そうか、なら今の話は忘れてくれ》

《……作戦を聞こう(中々の圧だ。もう何人か殺してるな、この女……)》


四十万はケロっと普段のニヤけ面に戻り、微笑みながら言う。


「簡潔に言いましょう」

「敵の旗艦に乗り込んで戦闘員を皆殺しにし、非戦闘員(・・・・)を人質に取ります」

「クレイエルが首都圏の防空体制を破壊する……その時間との勝負です」


「「「──!」」」


「敵の艦隊は東京湾を北上するでしょう」

「《第二海堡》で偽装しながら待ち伏せし、敵の後ろから乗り込みます」


藤原は腕を組む。


《……感心はしねぇが、それしか無いだろうな……》

《敵を交渉のテーブルに引き出し、行き先を逸らす》

《それがお前の作戦か》


「頭は悪く無いようですね、童貞兵隊さん」

「山金議員は私の意図を察してくれたみたいですが」

「……上杉警視は気付いていました?」


「いいえ!!」

「輸送機から飛び降りて、敵空中戦艦を真っ二つにしてやる!!……って考えてました!!」


《マジかよこの女》

《頭おかしいんじゃないのか……?》


「おかしいですよ」


「おかしいですにゃ」


しかし、上杉は刀を抜いて南の方角へ向ける。


「絶対に斬れます!!」

「私はいずれ月だって斬れると信じてますから!!」


《すげぇ……》

《ここまで迷いが無いヤツは珍しいな……》


藤原は逆に感心しながら、ヘリに乗り込んで行った。



藤原の度胸マジですげぇ。

流石精鋭……

相当自分の技量と戦闘力に自信があるのだと思われます。


四十万の目標?

それは今も昔も、イチカです。

『イチカならこうする、ここまでやる』が彼女の中の基準になっています。


クレイエルは自衛隊だけでなく、米軍も敵に回しています。

これはラロシェルの指示で、日本にある大統領派の手駒を減らしておきたいという思惑が一つ。

そしてこの事件が切欠で疑心暗鬼が生まれ、アメリカ本土はエライ事になるでしょう。

そう……内 戦 勃 発です。CIVIL WARです。全てはラロシェルの計算通りです。


四十万はもう初っ端から大変ですねぇ。


しかし、そろそろ妖怪共の本領が発揮されます。

妖怪は人の嫌がる事、怖がる事をするのが一番得意な&大好きなので。

しじまひょんはもしかしたら、クレイエルにとって一番相性の悪い相手かもです。


特殊作戦群にはもうアイテムを持った隊員が居ます。

61話の後書きにありますが、特殊作戦群はガッチガチの政府派部隊です。

彼らにも出動命令が掛かりました。

今は国境治安維持隊への編入途中ですが、まだ内閣と市ヶ谷の指示で動いています。


四十万すら知らなかった事ですが、特殊作戦群は自衛隊上層部の判断で富士樹海ダンジョン(難易度A)や新宿ダンジョン(難易度A)へ極秘裏に潜入し、時代錯誤レベルな猛訓練を行っています。

平良一尉の動きを知った防衛省の誰かが発案しました。


公安7課と対等か、人数的に考えるとそれ以上の戦力かもしれない。

ニンジャ居ます。というか、ニンジャが指揮官です。

事前に言っておきますが、彼等は本当に強力です。

四十万は使いこなせるでしょうか。


日本でこれなので、イギリスやアメリカはもっとえげつない想定で訓練をやっている可能性大です。

ラロシェルが警戒すべきは、このような少人数行動に長けた歴戦の戦士達かもしれない。


既に彼はモサドとIDF(イスラエル国防軍)による暗殺未遂に遭っています。

理由は戦争難民に対する巨大な支援と受け入れです。

その事件の翌日、イスラエル本土の発電所が全て機能停止し、光・衛星・無線通信が全てダウンしました。寧ろラロシェルの罠にかかってしまった。


この復旧にリソースを取られた事により、イスラエルは武装勢力に要衝ダマスカスを奪われています。

今は国土と占領地全体に防壁を建設して周囲からの侵攻を防いでいますが、一度サンドワーム使いに入られて途方もない被害を出しています。

これもラロシェルの手引きです。


読んでくれてありがとうございました。

甘い物が欲しい季節ですねぇ。


「面白かった」「次回が気になる」

「クレイエルが強すぎる」「身体が闘争を求める」「パイロットの腕、かなり良い気がする」

「四十万好き」「上杉ちゃん可愛いな……」「山金が有能」「議事堂前で生着替え!?」「科捜研すげぇ」

「上杉ちゃんが突き抜け過ぎてて好き」「メスゴリラは笑う」

「藤原のアイテムカッコいいな……」「四十万の作戦に期待」「おかしいですにゃ」「いつか月を斬ってみて欲しい」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

宜しくお願い致します。


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