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母親になった吸血鬼と過去を失った男

相変わらず美しいな、レティツィア……

そしてヴェネツィアも美しい……

流れて行く旧市街が……行き交う観光客が……


鑑賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=K6dmZhdCYs0


~ホロホロ湿原ダンジョン~

~ボブのハウス~


フェルゼンとアイカは庭へ料理を運んで来る。


『ライス&ピーズ(※1)だ!』

『バアさんの家で良く食べてたんだ!』


ボブは手を叩き、ココナッツへ穴を開ける。

レナは早速料理に手を付けようとするが、ボブから待ったがかかる。


『生き急いでいるな、2号』

『料理はまだ出切って無いぞ!』


『その2号ってのやめて欲しいんだけど……』


ボブはイチカとレナを交互に見て言う。


『?』

『姉妹じゃなかったのか?』


『しっ……!』

『そ、そうよ!姉妹よ!ずっと一緒に住んでるの!(大嘘)』

『良く分かってるじゃない(虚勢)』


(((豪快な大嘘来たな……)))


ボブは笑いながらココナッツの汁を飲む。


『皆さ〜ん!まだまだ出て来ますわ~!』


フェルゼンは追加の料理を持って来る。

クリチカは皿に顔を近づけながらボブに言う。


『うわ……良い匂い……』

『これはスパイス使ってるの?』

『名前は何て言うの?』


『ジャークチキン(※2)だ』

『スパイスに漬け込んだ鶏肉を、炭火で焼いてるんだ』

『ちょうど今日食べようと思って準備してたんだよ』


ゲオルグはチキンに食いつく。


『うめぇ!相変わらずうめぇなコレ!!』

『カリブには何度か飛んだ事があるが、その中でもジャマイカの料理はマジで疲れが吹き飛ぶ気がするぜ!』


イチカは別の料理を見て言う。


『これはタラを使った料理?』


『ああ!アキー&ソルトフィッシュ(※3)って言うんだよ!』

『安くて美味くてコクがあるんだ!』

『タラの代わりに【ブリタラ】って言う魚を使ってるけどな』


イチカは魚と野菜を抓み、ゆっくりと咀嚼する。


『……!』

『結構食べやすい……!』


『だろ?』

『本当は朝メシに出す物なんだが、何時でも食えるシロモンだ!』


アイカはパンらしきものを噛みながら言う。


『……この全てが天然物だなんて信じられませんよ』

『というか、作物の成長早すぎません?今は6月ですよ』

『どう見ても時期じゃないのもありますし』


ボブはパティ(※4)にがぶり付いて言う。


『それもこのダンジョンの特性だ』

『逆に言えばここ以外で早く育つ作物を見かけたら、何らかの人為的なバックがある』

『そういうのには注意しろ。ここにも穀物メジャーの雇った殺し屋が来た事あるんだ』


レナはスプーンを持つ手を止めて言う。


『……殺し屋はどうなったの?』


常連(・・)に始末された』

『その男は青い煙を定期的に吸いに来ててな』

『一通りキメた後は水辺で黄昏(たそがれ)てるよ。何時もな』


『……強いの?そのヤク中』


ボブはパティを置いて言う。


『あんなにスマートかつ手際の良い奴は見た事が無い』

『いつも黒いスーツに黒いコートを着ているから、見かけたら話し掛けてみると良い』

『こちらから何かしなければ、危害は加えて来ない』

『ただ、ヤツは何時も過去の幻覚を見ている。どうなるかはその幻覚次第だな』


『過去……』


『そう、過去だ』

『何処まで行っても、過去は色んな場所から這い出して来ては人を悩ませる』

『それを防ぐには、根本的に原因を解消するしかないんだ』


ヨハンはサングラスを取り、胸ポケットへ仕舞う。


『……お前はセラピストか?』


『いや、そんなご大層なもんじゃない』

『穏やかな環境で自分と向き合う時間を客人に与えるのが、俺のライフワークなんだ』

『そして落ち着いて来たら俺なりにアドバイスしてやるだけだ』

『ただ、もう自分が見当たらないヤツも居る……』


『それが黒コートの男か……』


『その通り……』

『ヤツはもう手遅れだった』

『既に過去はバラバラになり、夢と現実の狭間で精神は分裂を繰り返している』

『混血の娘……お前もそうなる所だったが、良い友人達に巡り会えたな』


『それは……本当にそう思ってる』

『たった2週間なのに、この時間は今までの人生で最も充実してる気がする……』


ボブは手製のドラムを取り出して叩き、静かに言う。


『大変か?』


『うん』

『でももう辛くは無い』

『まだ過去の全てを克服出来た訳じゃないけど……』


『でも一歩ずつ進んではいる』

『出会い……別れ……そして出会い……』

『その全てがお前の血肉になっている』

『そして、その血肉が形を取り始めている。拙いながらも……』


ゲオルグは畑を見ながら、ココナッツの汁を飲む。

フェルゼンは大量の料理へ手を付け始め、ヨハンは弟の肩へ手を回した。

ボブはドラムを叩き続ける。


『俺はそれをこう呼んでいる』

『《成長》、と』

『俺はお前の今後が楽しみでならない!』


『……ありがとう』

『今度はこっちに招待させて、ボブ』


ボブは笑いながら言う。


『呼び名はブラザーでいいぞ!』

『互いのある所、俺達は家族だ!』

『家族!何度発してもいい言葉だ!』


『……だな!』


ゲオルグはドラムのリズムに合わせ、フォークで机を叩き始める。

そして彼はおもむろにイチカへ向き直る。


『あのさ、クリスティナ……』


『……なぁに?ゲオルグ……』


『【魔女】を退けたら、俺の第二夫人になってくれるか?』

『お前の仕事が落ち着いたらでいい、王国に来てくれ』

『法律は何がなんでも変えさせてやる!』


『……まさかマルファと揉めてる?』


『ああ。スマホを取り違えた時にな……』

『黙ってて悪かった、クリスティナ』

『あのババァは俺を消す積りだ。核を使ってもな……』

『お前をロシアへ連れて行くには、どうにも俺が目障りらしい』


『そんな……』


『だから俺はお前に対し、お前自身の自由を脅かした責任を取らないといけねぇ』

『フェルゼンもお前が王国へ来る事に反対はしてない』

『寧ろ来て欲しいと思っているぐらいだ』


『……』


フェルゼンは静かに頷く。

ただ、ヨハンだけが渋い顔をしていた。

イチカは手を止め、自分の腿に手を置く。


『ゲオルグ……』

『本当の理由を言って欲しい』

『……らしくないって』


『……何をだ』


『子供の為……』

『妊娠してるって、【血の防衛魔人】が教えてくれた……』 


『……!!』


彼女は赤い瞳に涙を貯めながら、ズボンを握り締める。


『なんて言うのかな……』

『私……せいぜい心が14か15くらいでさ……』

『母親になる準備なんか全く出来て無くて……』

『私自身母親に放置されて育って来たから……』


『……どう接すれば良いか分からないのか、クリスティナ』


『うん……』

『頭ではわかっていても、もう心が追い付かない……』

『今……子供が出来ても、どう愛して良いか分からない』

『自分が母と似たような女になるんじゃないかと考えたら、怖くて怖くて仕方がない……』

『本当に……』


『大丈夫だ、きっと乗り越えて行ける!』

『俺が──』


ゲオルグはイチカの肩を揺さぶる。

イチカは涙を堪えながら、彼の手を掴む。


 私はきっと皆を困らせる。

 だから私は……一緒に王国へは行けない。


イチカは顔を上げ、唖然とするゲオルグを優しく見つめる。

それを見たレナはゲオルグに言う。


『……前からバカだと思ってたけど、アンタは本当のバカだったわね』

『自由?責任?そんなものイチカお姉ちゃんには関係無いの』

『この人が感じてるのは恐怖と葛藤よ』


『……!!』


『アンタには恐怖心も葛藤も無いから分からないのよ』

『だからお姉ちゃんが何を恐れているか……何で躊躇っているか根本的には理解出来ないし、理解するキッカケも掴め無いの』

『……アンタはあのヤストレブとかと同類よ』

『偶々周りに恵まれただけだわ』


アイカはパンを置くと、イチカを除いた一同に向かって番犬の様な視線を飛ばした。

そして静かに口を開き始めた。


『……イチカさんとその子供は何があっても私が護ります』

『寂しい思いなど私がさせません。絶対に放置なんかしねーですよ』

『例えそれがしょうもないバカ王子の血を引いていても、です』

『それが私のイチカさんに対する恩返しですよ』


『アイカさん……』


『デカデカゔぁるきりー……』

『本来なら私は命を賭けてイチカさんの愛と、健全かつ幸せな家庭構築の為にお前を殺しに行く所です』

『でも悪いのは魔女のオババと、イチカさんを孕ませた上、オババから喧嘩を買ったそこのバカ王子です』

『それに……兄弟姉妹が居ないってのも寂しいモノですから』


フェルゼンは席を立ち、アイカへ向かって深く頭を下げる。


『……本当に……本当にお心遣い感謝致しますわ……!』


そしてアイカはヨハンに言う。


『……お前だけは分かってたみたいですね、こうなる事が』


『私はゲオルグの兄だからな……』

『弟がしでかした事の不始末はいつでも拭う覚悟が出来ている』

『それだけだ』


『なら一つだけ頼みがあります』

『駄犬の戯言だと思って聞いて下さい』


『……良いだろう』


『例え兄弟姉妹が遠く離れていても、定期的に会わせてやって下さい』

『それが強引にでも出来るのは叔父のお前だけです』

『でないと可哀想なおバカギャルが出来上がってしまいますから』


ヨハンはそれがエレナの事だと気づき、水を飲んで言う。


『……了解した』

『後見人の役、しかと務め上げて見せよう』

『私も遂に……叔父か……』


ヨハンは目元を隠すかのようにサングラスを掛け直した。

そしてアイカは、ゲオルグの前に椅子を持って来て座る。


『最後はスーパーバカ王子』

『テメーです』


『ワン公……』


『後の事は心配せず、是非あのくそオババと相打ちにでもなって死んで下さい』

『寧ろ子供にお前の存在は悪影響ですので』

『私としても鬱陶しいのが一掃されてスッキリです』


『なっ……!お前……!』


『ただ……もし生きて帰って来る事が出来たのなら……』

『イチカさんの家で子供と一緒に遊んであげて下さい』

『そして子供が成人するまで生きていて下さい』

『私がお前に望むのはそれだけです』


『──!!』


アイカは席を立ち、イチカの隣に座って彼女の背中をさすり始める。


『これで……良いんですよね、イチカさん』


イチカは嗚咽しながら頷く。

アイカは手を叩き、クリチカへ言う。


『料理の続き、ボブと一緒に用意しますよピチスーおっぱい』


『わ、私!?』

『あとこれはアイテムのライダースーツで……』


『どう見てもエロコスプレですよ』

『そこの妹気取りのクソガキは料理がヘタそうなので、お前を選びました』

『てか空気読まないと、その無駄なおっぱいを刻んで鍋に放り込みますよ』


『こ、この人やっぱり怖い……!』


レナは鼻を鳴らし、肘をつきながらそっぽを向く。


『ふん……もっと素直に……』


『姉の子供、即ち』


『!』

『わ、分かった!私も手伝うわよ!』


レナはアイカとクリチカを追うようにして、厨房へと入って行く。

イチカはおもむろに立ち上がり、目を押さえながらボブへ言う。


『……ちょっと外出て来る』

『料理が出来上がる頃には戻って来るから……』


ボブは椅子の下の箱から紙を取り出す。


『周囲一帯の地図だ』

『飯までには戻って来てくれよ』


『……ありがとう』


イチカは彼から地図を受け取ると、ゲオルグに抱きつき、首筋に甘く噛みついた。

そして血を吸い終えると、血の口紅が付いた唇で彼の頬へキスをした。


『家で待ってる』

『貴方が勝って帰って来るまで』


『クリスティナ……』

『任せろ、俺はお前と子供の為に必ず帰って来る』

『勝って……帰って来る!!』


そして、イチカはフェルゼンの手を優しく握る。


『ゲオルグを……暫くお願い』

『フェルゼンがいればきっとマルファにも勝てるから……』

『貴女も無事で帰って来て……』


フェルゼンは彼女の手を額に当てて言う。


『誓いますわ。戦乙女の名に賭けて』

『貴女の想い、例えヴァルハラまでも届かせて見せますわ』

『もう私とクリスティナさんは運命共同体ですから』


イチカはニコりと笑うと、そのまま湿原へと出て行こうとする。

そこへ腕を組んだヨハンが呼び止める。


『イチカ』

『ゲオルグを信じて待て』

『私の弟は必ず責任を果たす男だ』

『私も出来得る限りの事はする』


『名前……呼んでくれた……』


頬を赤くしたヨハンはイチカを手で追っ払う。


『き、気のせいだ!と、とっとと散歩して来い!』


イチカは口元を緩めると、草むらへと消えて行った。



〜湿原ダンジョンの休憩所〜


(私程母親の資格が無い女は居ないのに……)

(皆が気遣ってくれる……)


イチカは何気なしにタバコの箱を取り出し、火を点けようとする。


「……もうやめた方がいいよね、タバコ……」


彼女は後ろにタバコの箱を放り投げた。

数秒後、彼女の背後から男の声がして来る。


『ラッキーストライクか……』

『レティツィア警部。俺の好みを覚えていてくれたのか……』

『やはりアンタしかいないな、俺の女は』


『えっと……(イタリア語?)』

『私はレティツィアって名前じゃないんですけど……』

『あと私は警官でもないです』


『悪戯は止してくれよ、警部殿』

『今日はゴンドラに乗った後、レストランに行く約束だろ?』

『明日の夕方にはまたフィレンツェだ』

『楽しもうぜ、今日を』


『まさか会話が通じない系??』


『大丈夫だ』

『言いたい事は全部分かってるぜ、レティツィア』


『だからレティツィアじゃないって……』


男がイチカの前へ姿を現す。

男はコートからシャツ、靴に至るまで黒一色だった。

ネクタイだけが男の青い目と同じ色をしていた。


『あっ……』


『似合ってるだろ、この黒いコート』

『1年分の給料をつぎ込んだんだ』

『シャツもスーツも靴も、全部オーダーだ』

『全てはお前の為だ、レティツィア』


イチカは男から危険な匂いを感じ、その場を離れようと男に背を向けて歩き出す。


『……私にはそれ以上に金を掛けてくれる人が居るから……』

『じゃ……』


しかし黒づくめの男は一瞬でイチカの前に回り込み、休憩所の柱へ手をついて彼女の行く手を塞いだ。


『レティツィア』

『嘘は良くないな』

『気のない素振りを見せて、更に俺の気を引こうとするいつもの手口か?』

『可愛いマネだが、今日は予定が詰まってるんだ』

『嫌が応にでもデートに付き合って貰う』


『……一体何を?』


黒づくめの男は草むらからボートを引っ張り出し、水面に浮かべた。


『それ……まさか私物??』


『まさか』

『知り合いの船頭が貸してくれたのさ』

『微罪を見逃す代わりにな』


『……乗るから早くそのデートとやらを終わらせて』


『そうだ!やっとその気になってくれたか!』

『全く手間の掛かる女だ……』

『だが、俺はお前のそんな所に惚れ込んでるんだ』


イチカは黒づくめの男とボートに乗り込む。

男はオールを漕ぎ出した。


『相変わらず美しいな、レティツィア……』

『そしてヴェネツィアも美しい……』

『流れて行く旧市街が……行き交う観光客が……』


男はまるで映画に出て来る俳優のように、遠くを見ていた。


『……貴方に取って……【過去】って何?』


男はイチカの質問に、灰色の髪をかき上げて答える。


『それは今だ』

『俺には今この時しか無い』

『この麗しい時しか、だ』


『……!』


『俺からも逆に質問しよう』

『レティツィア。お前にとって【過去】とはなんだ?』


 決して消えない傷。

 何処までも私を追って来るトラウマ。


『……そうだ』

『人一倍美しく、かつ繊細で真面目なお前は傷つき易い女だ』

『だがそれでも自分の仕事に殉じ、運命と戦いながら生き抜こうとするその気高さ……』

『俺はそれにやられてしまっている』


『……』


ボートは湿地の中央まで辿り着く。

男は金無垢の懐中時計を取り出し、イチカに渡す。


『受け取ってくれ、レティツィア』

『お前の為に用意していたんだ』


『……こんなに大事なモノ……受け取れない』

『それに私には……』


『関係無いな……他の男なんざ』

『お前は俺だけを見ていろ、レティツィア』


黒づくめの男はイチカの顎を掬い上げ、キスした。


 例えこれが夢でも、俺はお前を愛している。


『──!』


ボートは岸に辿り着き、男はおもむろにイチカへ言う。

イチカは口も拭わず、呆然としていた。


『『ヴィットーリオ、愛している』と』

『それだけ言ってくれれば、俺は明日を生き抜ける』


イチカは喉をうねらせながら言う。


『ヴィットーリオ、愛してる』

(言ってあげれば、多分満足して居なくなってくれるハズ……)


『……これで明日が苦しくなくなった』

『俺に必要なのは金でも薬でも無い……』

『やはり一人の女の言葉だ』


ヴィットーリオはボートから立ち上がり、岸へと上がっていく。

彼はスマホを取り出しながら、イチカへ言う。


『身に危険が迫った時は懐中時計の長針を、2周手動で回してくれ』

『お前が何処に居ようと、相手が誰だろうと……』

『俺はお前を助けに行く。部下として、そして男して……』


ヴィットーリオはコートの襟を整え、灰色の髪を櫛で撫で付ける。

そして、彼はドラックを吸いながら何者かと通話を始めた。

彼の雰囲気がたちまち変化して行く。


『ダハハハッ!レゼルヴァ!』

『ネバダのムショには潜入出来たか!?』


《簡単ダッタゾ、マルティーニ》

《アイテムヲ使エバコノ程度ハナ》


『なら俺もネバダに向かう』

『俺の調子は過去最高だ!ダハハハハハッ!!』

『レティツィアだ!レティツィアにキスして貰えたからな!!』


《マタ幻覚ヲ見テイルノカ……?》


『いや、違う!』

『遂にレティツィアに会えた!!』

『この感じは本当のレティツィアだ!!』


《……マァ良イ……》

《ヒネス大佐ガ待チワビテイル》

《【次元潜航艇コロニア】ヲソッチニ向カワセタ。ソレニ乗レ》


『了解だ』

『ヒネスの野郎も良い休暇が取れただろ』


マルティーニは通話を切り、イチカへ向けて言う。


『じゃあな、レティツィア!』

『また会いに来る!』

『今度は裸で待ってろよ!ダハハハハハハハッ!!』


マルティーニ(ヴィットーリオ)は笑い声を上げながら、イチカの前から一瞬で姿を消して行った。



※1,※2, ※3, ※4:https://www.spintheearth.net/travel_jamaican_food/


アイカが重要な事を言っています。

今は【6月】です。

イチカが北海道に来たのは5月の終わりにかけてです。

凄い今更な話だけど、重要な事なので。


レナとイチカは見た目の系統的には似ています。

両者とも東欧系と日本人との混血なので。

イチカはドイツ系も入っているので、レナの方が日本人好みの見た目かもしれない。

無論、ボブは彼女達が姉妹じゃないのを分かって言っています。


レナはサラッとイチカの妹と主張する辺り、案外アイカと近い気質の持ち主かもしれない。

アイカの言う通りもう妹気取りです。

やはりイチカに惹かれるだけある。でも豪快な大嘘は可愛い。


イチカはマルファお姉さんよりもゲオルグを選びました。

お姉さんの敗因は、ゲオルグよりも早くイチカの深層に食い込めなかった事です。

ただ、もう当人の意思なんか関係ねぇ、攫ってロシアンクイーンメーカーやりてぇ、って感じですが……


マルティーニの言葉を真に受けるのは危険です。

彼は大麻による幻覚で、ホロホロ湿原が過去のヴェネツィアに視えています。

そしてイチカが過去の女に視えている。


イチカもそれをなんとなく察していますが、ゲオルグへの想いを紛らわす為にマルティーニの行動に付き合ってあげています。


イチカは思っていました。

自分は何処まで行っても代用品でしかない。

皆誰かの姿を自分に見ている。


その認識を心身共に正面からブチ破ってくれたのが、ゲオルグでした。

しかし、ゲオルグには既に将来を約束した人が居た。

例え彼が自分を妻として受け入れてくれると言っても、その分フェルゼンが割を食ってしまう。

だからイチカは身を引いた。皆の幸せの為に。


そして失意の中遭ったのは、幸せも希望も過去も無い男だった。

自分を代用品としてすら見ていなくて、その人本人だと思っている。

イチカは、そんな彼にある種の愛おしさを抱いてしまったようです。

恋人とかそういうのではなく、今は保護対象的な感じで彼女は見ています。見てはいますが……


しかし、本場イタリア男の本気はマジでヤベェな……

コイツは油断すると、思いっ切り脳をぶん殴られますね。

ここが小樽の運河じゃなくて良かった。


ヨハンお兄ちゃんが遂にデレてくれました。

クールな男のデレからしか得られない栄養は確実にある。

たまらねぇぜ。


次回から新章へ入ります。

時間が経過し、世界には強烈な変化の予兆が現れ始めます。

その先鋒は堕天使のバックアップを受けた最強の黒い鳥と、未だ旧友に固執する妖怪総大将との死闘です。


四十万は苦渋の選択を迫られます。

旧い秩序と権力か、イチカか、それとも世界か。

直ぐに選ばなければ、その全てを黒い鳥に破壊されるかもしれません。

彼は一時も待ってはくれない。


東京の海も空も地上も、激烈な戦場と化します。

クレイエルの旭川以上の本気が観れます。

何故なら、これは世界を変える為の闘争……その狼煙ですから。


いつもお読み下さりありがとうですわ。


「面白かった」「次回が気になる」「次章早く来い」「ジャマイカ料理美味そう」「レナの豪快な大嘘好き」

「本当にデキちまったのか……」「イチカは自覚出来るだけ色々と辛そう」「こういうイチカは新鮮」

「ゲオルグの良い所と悪い所が両方出てる」「今回はアイカが本当に頼もしい」「お兄ちゃんから叔父さんにランクアップしたな」「フェルゼンしっかりしてるなぁ」「クリチカの恰好が気になる」

「ボブの気遣い好き」「押しが強いな、マル……ヴィットーリオ」「流石はイタリア男」

「口説きが中々本気で怖い」「これ末期症状だろ……」「過去が本当だとすれば、マジで何があった」「まーた超重いプレゼントを……」「元に戻るな、そのままで居ろ」


「 例えこれが夢でも、俺はお前を愛している 」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

宜しくお願い致します。



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