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地球の裏側から来たロビンフッド

 世界最高の盗賊である俺に、二言は無いぜシンデレラ。


鑑賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=GLowH7TwDR0



~アスタルトのダンジョン~

~出口付近~


【【極光乙女レギンレイヴ】第三段階起動】 

極光の舞踏会場ポサーダカ・ポラーリノヤ・シーヤニエ


地上に通ずるダンジョンの穴が、オーロラの檻に塞がれ始める。


【泥棒……アンタは消え去るのよ、ここで】

【消しカスになりたくなければ、レーカさんを私によこしなさい!】


『ハハッ!お断りだ!』

『盗賊が一度手に入れたブツをその場で手放すコトはないからな!』

『しかもそれがシンデレラと来ている!』


 こんな至高の()、手放す方がアホだぜ!

 そして俺に盗めない宝は無い!


ベルトランは緑色の外套をレイカごと被り、エレナの目の前から姿を消す。


【──!?】


エレナはベルトランとレイカを見失い、慌てて周囲を飛び始める。


【どっ、何処に隠れたの!?】

【出て来なさい!!】


(……やっぱりまだ修羅場の経験が足りてないな、この銀髪ヴァルキリー)

(まだロープは消えてないってのに、見えてない(・・・・・)


ベルトランはそのまま上に上がって穴の縁に手を掛け、レイカを背負いながら軽々と地上へ這い出た。


「……済まないな、シンデレラ」

「あのロシア人は連れて行けない……」

「例え俺が許しても、ジュビアが許さないだろう」


「……」

「アイツは私がおらんかったら、一人ぼっちになってまう……」

「今のマルファの下なら、尚更や……」


「……情が厚い上に義理固いな。おまけに面倒見まで良さそうだ」

「俺は好きだぜ、そういうタイプ」

「……どうしても一緒に居たいか?」


「……でも、連れて行ったら私だけじゃなく、オマエの立場が悪うなる……」

「ジブンを救けてくれた人間に、そんなワガママは通せん……」

「でも──」


 別れの挨拶すら出来んのは辛すぎるわ……


レイカの涙が頬を伝い、ベルトランの首筋へと流れて行く。

嗚咽する彼女に対し、ベルトランは静かに呟く。


「……分かった」

「俺があのロシア人と逢える機会を作ってやる、お前の為に」

「近い内にな」


「……ホンマか?」

「でも……」


 世界最高の盗賊である俺に、二言は無いぜシンデレラ。


「……!」


レイカは彼の背中に顔を埋め、安心したように泣き続ける。

彼は大穴を一瞬だけ振り返り、そのまま彼女を背負ってその場を去って行く。


(もうちょっとだけお前が大人になったら、盗みに行ってやるよ。絶世のヴァルキリー……)

(それまでこのシンデレラは預かっておくぜ)


ベルトランは通信機のスイッチを押す。


『ハルカの仲間、救出成功したぜ』

『そっちはどうだ?ジュビア』


《……逃げられたわ》

《どうやらこっちのは分体だったみたいね》

《……!ベルナルド様が危ないわ。直ぐ加勢に……》


『いや、大丈夫だ』

親友(ダチ)なら目の前に居る』

『新妻と一緒にな』


彼の視線の先には、ハルカの腰を抱いたベルナルドが立っていた。


《……良かった。どうやら万事(・・)上手く行ったみたいね》

《こっちも脱出するわ》


『気を付けろよ』

『敵は大方くたばったか退いたみたいだが、まだ暴れているヤツらが居る』

『くれぐれも気を付けろよ。帰って来たら式の準備しないといけねぇし』


《し、式……!》

《ど、ドレスも選ぶのよね……!?》


『お前は何もしなくて良いぜ、ジュビア』

『ウェディングドレスは俺がオーダーメイドのを買ってやるから、それを着ろ』


《どっ、どこにそのお金が?》

《常時金欠の貴方が……》


『プールしておいたんだよ』

『お前の為にな』

『式に関わる費用も全部俺持ちだ』


《──ありがとう、ベルトラン……!》

《私の為に……!私、本当に嬉しい……!!》


『ハハッ……そういう事だ』

『焦らずゆっくり帰って来いよ』


《ええ……!》

《こんな楽しくて幸せな帰路は始めてよ!》

《じゃあね、愛しているわ!ベルトラン!》


『俺もだよ、ジュビア』

『じゃあな』


ベルトランは通信機を切り爽やかに笑う。


 マジでヤベェ。マジでカネが無い。

 昨日のカードで全部スっちまってる……!

 何故……何故俺は何時も出まかせを……!


彼はレイカを草むらの上にそっと横たえる。

そして彼女の前でスッと膝と手を付いた。


「……?」

「どうしたん……」


「すいません」

「哀れで貧しい盗賊にカネをお貸し下さいませ、シンデレラ様」

「もう貸してくれる人が居ないんです」


ベルトランの流れるような土下座が、その場を沈黙に包む。

しかし、レイカはクスリと笑う。


「……ええで」

「貸すなんて言わん、命の代金や。後で白紙の小切手持って来てや」

「カネなんか幾らでもくれたるで、ロビンフッド」


「た、助かった……!命の恩人だ、アンタは……!」


「も、もう立場逆転しとるがな……」

「後な……男がそない簡単に頭下げるモンやないで」

「私のオトンが私やオカンが居る前で頭下げたの、見た事無かったし」


「え……」


ベルトランは頭を上げ、驚いた顔でレイカの横顔を見る。


「なんで?って顔しとるな……」

「答え、教えたろか?」

「『男の背骨は誇りが支えている』。オトンが良く言ってたんや」


「……」


「《背骨》の無い男は女護っていけんで、ロビンフッド」

「あっても護れんコトがあるんやからな……」

「こればかりは文化の違いもあるやろから、強くは言わないけ……」


ベルトランはレイカを抱え上げ、彼女の薄茶色の目を見ながら言う。


「俺の背骨は、お前を持ち上げられる程度には強いようだが?」


「ぁ……!」


「ハハッ……」

「俺に背骨を入れちまったのはお前だぜ、シンデレラ」


「お、お、降ろしぃや……!」

「こ、こ、こんなん恥ずかしゅうて……!」


レイカはベルトランの顔を肘で押し退けようとするが、無駄な抵抗だった。


「ダーメーだ」

「お前の言葉が、俺のプライドに火を点けちまったからな」

「そう簡単には降ろさねぇよ」


ベルトランはレイカを抱えたまま、ベルナルドとハルカに向かって歩く。

ハルカは眉を緩め、少し微笑みながら言う。


「随分ガラの悪いお姫様だなぁ」

「何処でお拾いになって来たので?盗賊さん」


「地の底で灰被ってたから盗んで来たぜ!(キラキラ)」


「うおっまぶし……」

「……ベルナルド君。彼はいつもこうなの?」


ベルナルドは数秒悩んだ挙句、ベルトランから目を逸らして言う。


「……花嫁を盗んで来なかっただけ、今回はマシだ」


「ぅわぉぅ……」

「女を盗むのも超一流なんだね、こりわ……」

「で、レイやん。本当にありがと!」


「え、ええで……!」

「こ、今回は特別出血大サービスや……!」


レイカは頬を紅くしながら、ハルカの言葉に答える。


「……んん?」

「あのーもしかしてー……レイやーん?」


「な、なんでもない!これは治療受けるまでのサービス(?)みたいなもんや!」


「一体なんの治療受ける積りなんですかね」

「まぁ良いや。取り敢えず後は高っちゃんを探しに行こうか」


「お、おう……!」


レイカはベルトランの超イケメン盗賊フェイスから目を逸らしながら答えた。


~アスタルトのダンジョン~

~廃墟の屋上~


エレナは呆然と一人廃駅のベンチに座りながら、ブツブツと独り言を言っていた。

彼女の涙袋は腫れ、目はあらぬ方向を見つめていた。


『マルファの部下ね』

『まだ10代後半くらい……けれどカルテルの為にここで死んで貰うわ』


しかし、エレナは彼女の言葉など耳に入っていないかのように、独り言を続ける。


【なぜ……いつも気付けない、動けないのかしら……】


『……【魔女】の下で精神がおかしくなってしまったのね……』

『だったら……私が楽にしてあげる』


ジュビアはエレナの側頭部に白い拳銃を突き付ける。


はじめましてエンカンタン・デ・コノセルロ

『そして……』

さようなら(アディオス)


罪ある者を抉る聖弾が、エレナの頭に向けて発射される。

だが──


『す、擦り抜けた……』

『あ、あり得ない……!』


ジュビアは二度、三度と引き金を引くがその度にエレナの頭をすり抜けて行く。


『まさか……この娘に罪は無いと……!?』

『ウソよ、あの【魔女】の指揮下でそんな──』


エレナは横目でジュビアを見て言う。


【ドコの誰か知らないけれど、今はそんな気分じゃない……】

【レーカさん……パーパ……先生(ウチーチェリ)……】


『……!』


ジュビアは後ずさりし、口元を押さえる。


(まさか──)

(罪があるのは──)


ジュビアは水面に映る自分の顔を見る。

だが、それはいつもと変わらない自分の顔だった。


『わ、私に罪があるハズも無い……罪なんか無い……!』

『そうよね……!』

『もう結婚式があるのだから、それを考えないと……!』

『待っていた幸福は直ぐそこに──』


彼女は水面を見ないようにしながら、水の上を走り出した。




危ない橋を渡り過ぎだろこの盗賊。

感情の強い女とばかりと関わり過ぎや。


ベルトランは全探索者中最高のシーフだと思います。

アイテムもその組み合わせも完成されている。

何より本人の培って来たスキルが半端じゃない。当然鍵開けもこの男にとっては朝飯前です。

問題は女をたらし込むスキルも最高クラス、という事です。

アイテム回収率が高いけど、女の回収率も高いという……


そして出会ったばかりの女に、別の女の為に金を借りる。

王子とは別の意味で並じゃないな、この男は……

多分二人は相性良いでしょうね。


イチカとハルカ、そして高っちゃん以外に白紙の小切手をレイカから引き出したのは、ベルトランが初めてです。

それを初対面でやってのけたこの男は本当に傑物です。

イチカですら最初は対価ありだったので。

ベルトランはカルテルのナンバー2、そしてベルナルドの盟友に相応しい器量を持った男だと思います。


実際、創業する時にこういう相棒が居たら、銀行や投資家から金を集める時本当に助かると思います。

経営危機に陥った際にも同様だなぁと。

従業員や幹部からのリスペクトもあり、統率力もあって頭もキレるし、自身も仕事がクッソ出来る。

心配要素は女性関係のトラブルと経費の使い込みだけです。

いや、致命的な心配要素だわ……


因みに、レイカから貸して貰える金が少なかった場合、ギャンブルで増やす積りでした。

金を増やす事に関しては本当にダメな男です。

借りる才能はあっても、使う才能が全く無い。皆無。

王子はギャンブルで勝てるけど、この盗賊は毎回負けてる。


それにしてもレイカの金の使い方は近江商人みたいだ。

特に身銭を切るタイミングと相手をしっかり選んでいる所が。

普段はハイパーケチですが、ここぞという時にドーンと使います。

ただ、今回はほぼ100%原資すら帰って来ない投資だと思います。

かわいそ……


ジュビアさんの放った銃弾はエレナをすり抜けました。

彼女に【罪】があると【アマンテ・エン・ラ・レイ】は判断しなかった。

それが全てです。


しかし、その事実こそがジュビアさんに取っては受け入れ難かった。

黒だと思っていたものが白だった。

そして、もしかしたら自分の方が黒ではないかと僅かに疑い始めている。

順調だった歯車が少しずつかみ合わなくなり始めてます。


彼女はベルトランとの甘い関係に逃避し始めました。

いや、最初から逃避しているのかも。

ただその逃避先、常に見ておかなくて良いのかい?


ジュビアさんはアナ・デ・アルマス(ブレードランナー出演時)とドルフロのジェリコを足して2で割って、薄い褐色肌になったイメージです。

ベルナルドはノイエ銀英伝のラインハルトが銀髪かつ瞳がグレーになった感じです。

ベルトランはお好きなロビンフッドを思い浮かべて下さい。

ただし、ラッセル・クロウを除く。


ハルカ?そりゃアラサーでたぬき顔で巨乳で、年下好きで度々プレジャーする人って言ったら……ね?

エレナはRWBYのワイスを長身にしたイメージ。割と性格や背景は似てるかも。おバカなのは似てない。

レイやんの見た目を表現するのが一番難しい。戦い方は土方+沖田なんだけども。


読んでくれるのは有難いけれど……

ここに出て来る悪党達みたいな真似したら、どうなるか分かってるわよね?


「面白かった」「次回が気になる」「エレナはまだ未熟なんだな……」「それを一目で見抜いて即座に対策を打つベルトランすげぇ」「ライブ感で生きすぎだろこの盗賊」「レイやん惑わされ過ぎ」

「心盗まれてるぞ!レイやん!」「金無いのかよ!」「流れる様な土下座で笑った」「やっぱレイやんの金遣い好き」「ベルナルドが目を逸らすレベルなのか……」「そう言えばエレナは人を殺してないからな……」「躊躇いもなく殺しに来る所が本当に処刑人」

「不穏な終わり方だ」「いや、真似出来ないから大丈夫です」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

宜しくお願い致します。



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