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マリアの守護天使達(前編)

気付いていないかもしれないけれど……

ここはもう既に魔女の庭なのよ、天使さん達……


~帯広市上空~

~【英雄達の船(アルゴ・ナウティカ)】~


『それ!フルハウスだ!』

『今日は全て頂きだな!ハハッ!』


青い目をした茶髪の男は場に5枚のカードを出し、微笑みながら周りの反応を窺う。

彼の隣に居た薄褐色肌の女性はため息を付き、場にカードを出す。


『……ストレートフラッシュよ』


『あ、あれ?』


桃色髪の少女は喜びながらカードを放り投げる。


『フォーカード!』


『あれあれ??』


銀髪の美青年は5枚のカードを表にし、広げて行く。


『……ロイヤルストレートフラッシュだ』

『俺の勝ち……そしてお前の負けだ、ベルトラン』


ベルトランはテーブルに崩れ落ちた。


『チ、チクショウ……今日もタダ働きかよ……!』

『お前等運強すぎるだろ……!』


『う~ん……』

『ベルトランがギャンブル弱いだけな気がするんだけど……』

『でも、ちょっとかわいそう……』


『全然可哀想ではないわ、ティエラ』

『ベルトランから提案して来た賭けなのだから』


意気消沈していた彼は肩を叩かれ、背後を振り向く。

そこには今までのツケを記した表を持った、褐色肌の女性が笑顔で立っていた。


『……何時になったら払うんだ?このツケを』

『もう200万ドル分は溜っているぞ(ニコニコ)』


『ど、どうもカヴァレリアさん……』


『さん付けは必要ない、と前に言ったハズだが??』


『ハ、ハイ』


ベルトランは隣に居る薄褐色肌の女性に縋りついた。

しかも即座に。


『頼む!ジュビア!』

『どうか!』

『暫くギャンブルはやらないから!』


ジュビアは琥珀色の瞳で、彼を上から睨みつける。


『暫く……?』


『い、いや、今年中はやらないと誓う……!』


彼女の圧と眼光は更に強くなる。


『ら、来年以降までギャンブルはやらない……!』


ジュビアは少しだけ笑顔になり、褐色肌の女性へ言う。


『私がベルトランのツケを全部払うわ、この場で』


『ジュビア~~!!』

『やっぱりお前は最高の女だ!!』

『マジだって!間違いない!』


『!』

『そ、そう……??』

『ふふ……』


ジュビアは満更でもない顔で頬を染め、横髪を触る。

ティエラはテーブルへ両手で頬杖を突く。


(このやり取り……今年に入ってもう何回目なんだろう……)


カヴァレリアは額を押さえる。


(あ、余りにも甘すぎる……!激甘だ……!)

(この男はまた近い内に大借金をこさえるぞ!ジュビア!)


その時、カルテルのメンバーがやって来て、銀髪の美青年にタブレットの画像を見せる。


首領(ヘフェ)

『これを……』


そこには高っちゃんによって上空へと吹き飛ばされた、【ケストレル】の姿が撮られていた。


『これは……』


テーブルの横でピアノを弾いていた青髪の女性は、手を止めて言う。


『マルファ……いや、【ラーチン大統領】直属の探索者……リナト・ヤストレブ大尉の乗機だね』

『ヤストレブはロシア連邦英雄にして、世界でもトップ10に入る程の実力を持つ探索者……』

『あのイリヤー・ムローメツの生まれ変わり、とも称されてる男だよ』


『……だがやられているぞコレは……』

『相手はあのクレイエルか?』


『相手はクレイエルじゃない』

『彼は今ドイツのラムシュタイン空軍基地に居るハズだから』

『あのラロシェルと一緒にね……!』


『うえっ、マジかよ……ミューゼ』

『次は何企んでやがんだ、アイツ……』


ミューゼはそっぽを向き、頬を膨らます。


『しーらない!』

『どうせロクでもない事でしょ!』


ベルトランは微笑みながら肩を竦め、銀髪の美青年へ言う。


『あのヤストレブをブチのめすようなヤツが、この土地の何処かに居るって事だぜコレは』

『……もしかしたら、あのハルカとその仲間が【魔女】と戦ってるのかもな』

『どうする?【魔女】と戦って花嫁を救い出すか……?ベルナルド』


『答えは決まっている。救出だ』

『……お前は何時もそうだな』

『お前は俺がどう答えるか分かっているのに、敢えて聞いて来る……』


『俺はリーダーであるお前の意思を何よりも重要視している……』

『それだけさ』

『……ユルゲン!』


『ハッ』


大盾を磨いていた大男は立ち上がり、ベルトランへ向かって警官式の敬礼をする。


『【戦槌】が出て来たら相手を頼むぜ』

『ヤツだけはお前にしか対処出来ない』

『やれるか?』


『無論!』

『敵がどんな相手であれ、制圧あるのみです!』


『相変わらずだな、今回も頼りにしているぜ!』


ユルゲンは彼の言葉に対し、盾を甲板に立てて応える。

ベルトランは彼の肩を軽く叩き、ティエラに向かって言う。


『ティエラ』

『俺とジュビアは【魔女】の足止めをする』

『サポート狙撃と敵兵の排除を頼む』


『りょーかい!』


ティエラは笑顔で手を挙げ、元気良く応えた。


『カヴァレリア!』


『何だ?色男』


カヴァレリアはツケの記録が記された紙を破り捨てる。


『ロシア軍への制圧砲撃を』

『敵の砲兵やミサイルを黙らせてくれ』


『ふふっ……了解した』


そしてベルトランはベルナルドと拳を突き合わせる。


『先に降りてるぜ、ベルナルド』

『しっかり迎えてやれよ、花嫁を』


『心から感謝する……!親友(とも)……!』


そしてベルトランはミューゼのフードを指で跳ねる。


『もう見当付いてんだろ?ハルカと【魔女】の居場所』

『道案内とドローンの妨害頼むぜ』


彼女は琥珀色のギターをケースから取り出す。


『任せて!』

『ロシア軍の電子戦を完全に抑え込んで魅せるよ!』


ベルトランは黄金船の欄干に足を掛ける。

そして、ジュビアの手を優しく握る。


『ちと早いが新婚旅行だ』

『スリル満載の、って枕詞が付くけどな』


『え……!?ちょっ、新婚……!?!?』

『心の準備が……!』

『そういうのはもっと……』


『ったく……うるせぇ口だな』


ベルトランはジュビアの唇を、自分の口で塞いだ。

彼女の目が大きく見開かれる。


『……!……!!……!!!』


そして、彼はそのまま彼女を抱いて船から落ちて行った。



~アスタルトのダンジョン~

~水上都市廃墟~


【はぁっ……!はぁっ……!はぁっ……!】


レイカは血塗れになりながら、膝を付く。

既に折れていないアバラの方が少なく、骨が肺に刺さっていないのが奇跡だった。

腕や足の骨の至る所にはヒビが入り、一部は凍傷になっていた。


【身体が弱すぎるわね、レーカ……】

【あのタヌキちゃんの方が頑丈じゃなくて?】


【ほ、ほざけ……!】


【その刀……邪魔ね】


マルファは【グラデニェッツ】を仕舞う。


【!】

【何の積り……】


彼女はレイカの縮地を真似し、一気に距離を詰める。


(──!)

(んなアホな──)


【一度見た技を一度で再現出来る位でないと、女でスペツナズは務まらなかったの】


マルファはレイカの袖と奥襟を握って足を掛けると、腰の捻りを加えて彼女を地面に倒した。


【……っ!】


【倒れて終わり、では無いのよ】


マルファはレイカの刀を持っている方の腕を取る。


【!】

【しまっ……】


【遅いわ】


彼女はレイカの腕を膝で挟むと、思い切り捻り上げた。


(……腕十字固めか……!?)

(しかも完璧に極められた……!)


レイカの手から【加具土命】が落ちる。

だが、マルファは技を解かなかった。


【腕、貰うわよ】

【これは殺し合いなのだから】


骨が折れ、筋が断絶する音が響く。


【──ぁっ……!!】


レイカは声にならない叫びを上げた。


【終わりね】

【久々に楽しかったわ、レーカ】


マルファはそのままレイカの首に手を回し、頸動脈を絞めに掛かる。

過酷な大地で生み出された合理極まる格闘術が、レイカの命を刈り取ろうとしていた。


(あ、アカン……!息が……脳に酸素が……!)


レイカの視界が暗くなっていく。

魔女の甘い匂いが、更に彼女の思考を奪って行く。

マルファは何事か呟いたが、レイカにはもう聞き取れなかった。


『おっと!』

『美女の死は世界の損失だぜ?』

『しかも最高に勇敢なシンデレラと来ている!』


投げナイフが数本、マルファに向かって放たれた。

彼女は技を解き、宙返りで後ろに退避する。


『大丈夫か?お嬢さん(シニョリータ)


(……スペイン語……!?)

(何処から……!?)


退避したマルファに向かって、鋭い蹴りが放たれる。

それは彼女が経験した中で一番鋭い蹴りだった。

彼女は間一髪でその蹴りを躱し、足首を取ろうとする。


『──コンバットサンボね』

『その手は喰わないわ』


白いトレンチコートが翻る。

蹴りは更に回転し、マルファは捌かざるを得なかった。

白い二挺のハンドガンが魔女の額を狙う。


【──!】


蹴りとガード、そして射撃と回避の応酬が、まるで社交ダンスさながらに繰り広げられる。


『ベルトラン!その人を頼むわ!』

『恐らくハルカさんの仲間よ!』


『了解だ!ジュビア!』

『と言う事は……』


『『家族!』』

『『そして手を出された!』』

『『ならやる事は一つ!』』


ジュビアの目つきが変わる。

琥珀色の瞳が凄まじい怒りに燃え始める。


『【ザドキエルコート】第二段階起動』

『【法の恋人(アマンテ・オーダー)】』


彼女の動きが更に加速(・・)し、マルファは捌き切れなくなる。


(速い……!!)

(いえ、これは──)


マルファのふくらはぎに、ジュビアのカーフキックが遂に命中する。


【……ッ!】


マルファは感じた事の無い鈍く強い痛みに、思わず眉を歪めた。

ジュビアの猛攻は止まらない。


『貴女が何者であろうと!!』


彼女の右膝がマルファの脇腹に命中する。

マルファは体勢を崩し、ガードに僅かな隙が出来る。


『私の【法】は平等に裁きを下す!!』


(私の動きを完全に予測しているわ……!)

(まるで統計が導き出したかのような──)


その隙をジュビアの前蹴りが射貫き、彼女は吹き飛ばされる。

マルファは後ろへ回転し、【グラデニェッツ】を抜いた。

レイカは霞む視界で観たこの出来事に驚愕する。


(ウソやろ……!?)

(なんて強さや、あのメキシコ人……!)


ベルトランは緑色のコートを脱ぎ、レイカの目の前に姿を現す。


「強いだろ?ジュビアは」

「俺の自慢の新妻(・・)だ(マジで美人だな、このシンデレラ)」


「……け、結婚しとるんか……?(なんやこの超イケメン)」

「(つーか何処から現れたんや……!?)」


ベルトランはレイカを背負いながら言う。


「さっきした」

「お陰でメチャクチャ張り切ってる」


「あ、後先考えんにも程があるで……」


「結婚なんて勢いでするモノなんだよ」

「分別付いたら結婚なんか出来ねーって」


「一理あるけど、顔の良さで誤魔化されてるような気も……!」

「……けど、それはそれとして……ありがとな……」

「てか、アンタらまさか……!」


ベルトランは懐から虹色のロープを取り出しながら言う。


「ご存じの通り……俺等は【シルバーステイシス】のメンバーだよ」

「表向きはな」


「……【コンキスタ・カルテル】か」


「なんだ、知ってるのか」

業界人(・・・)か?」


虹色のロープは空に向かって急速に伸びて行く。

そしてロープは高っちゃんが開けた大穴の縁に掛かった。


「……私は日本のギャングや」

「世間では《半グレ》って呼ばれとる」


ベルトランはレイカを背負ったままロープを掴む。

掴まれたロープは穴の縁に向かって、自動で縮んで行く。


「はみだし者のシンデレラ、か……」

「通りで輝いて見えたワケだ」


「……私をナンパしとるんか?」

「もう嫁さんおるやろ……」

「超おっかない嫁さんが」


「おっかないか!」

「確かにな!ハハハッ!」


「笑い事ちゃうで、特にあの嫁さんの場合……」

「夫婦喧嘩になったら100パー負けるがな……」


ベルトランは下で戦っているジュビアを見て言う。


「ハハハ……」

「ケンカするからこそ、寧ろ互いの絆を確かめられるのかもな」


「……」


「ハハッ。【魔女】以外に誰かとケンカしたのか?」


「……私がアカンかっただけや」

「……あっちは何も悪うなかった」

「私が処女のガキみたいな事()かしたのがアカンかったんや……」


「……男がダメなのか?」


レイカはベルトランの背中に思わず顔を埋める。


「怖いんや……」

アレ(・・)に突かれるかと思うと、どうしても身が竦む……」


「……最初にダメな男へ当たったんだな」

「だから舞踏会(・・・)へ踏み出せなくなった、という事か」


「……その通りや」


「……良し!分かった!」

「なら暫く俺で練習するか?ダンス(・・・)を」


レイカは顔を上げる。


「え……」


「少しずつだ。いきなりは刺激が強すぎると思ってる」

「勿論本当に付き合うワケじゃない」

「これはリハビリみたいなモノさ」


「リハビリじゃ済まなくなったらどうするんや……」


「そん時は笑って誤魔化すさ!」


ベルトランの明るい笑顔が、太陽の光と共にレイカの瞳を射抜いた。


【ドコへいくの??レーカさん……】

【私、貴女にまで見限られたらどうしたら良いか分からないわ……】


レイカとベルトランの視線の先には、涙を流す白銀の戦乙女が浮かんでいた。


『……!』

『この人に救けて貰うとるだけや、エレナ……!』

『オマエもこっちに……』


【私は嫌いよ、そのラテン男】

【何故なら私から大切な人を奪おうとしているから】


『……エレナ……』


ベルトランはエレナの言葉に答える。


『……俺は盗賊だからな』

『ただ、乙女が泣く程のモノを盗んでる覚えは無いよ』


【嘘よ】

【アンタは女を泣かせる男だわ】

【そういう顔をしている……】


ベルトランは腰に手を掛ける。

彼の指は投げナイフの柄に触れようとしていた。


「ならどうする……?」

「ここで俺を殺すか?(頼む……!退いてくれ……!)」


エレナは無言でバルディッシュを振りかざし、虹色のロープを切ろうとする。

まさに刃がロープを切断しようとした瞬間、鋭い轟音が響いてバルディッシュは跳ね飛ばされた。


【……!?】

【狙撃……!!】


(……色んな意味で助かったぞ!ティエラ!)

(後で山盛り菓子を買ってやる!)


虹色のロープはレイカとベルトランを、急速に地上へ上げて行く。

エレナの色違いの目に涙が溢れて溜まって行く。


【どうしよう……】

【わたし、また一人になっちゃった……!】

【どうしよう……!そんなのイヤ……!!】


跳ね飛ばされたハズのバルディッシュは、回転しながらエレナの手元へ戻って行く。


【レーカさんを返せ!!泥棒!!】

【【極光乙女レギンレイヴ】第三段階起動!!】


廃墟の空に極光の涙が降り注ぎ始めた。


~ダンジョン内線路~

~【冥急エクスプレス】車内~


「よし……!」

「光が見えて来た、あともうちょい……!」


青色の装甲列車は時速300km以上で線路を駆け抜け、

猛スピードで戦場から脱出しようとしていた。

【冥急エクスプレス】は跳ね上がりながら地上に飛び出る。


「後は身を潜めてレイやん達と合流して、その後ベルナルド君と……」


突如【冥急エクスプレス】は警笛を鳴らす。


「……一体何!?」


ハルカはシャッターを開け、小窓から外を確認する。

彼女の視線の先には線路上に人型の障害物があった。

いや、それは変態だった。


「──!」

「アレは──!」


『そうだ!私だ!』

『ヴァヴィロ……』


ヴァヴィロフは【冥急エクスプレス】に轢かれ、弾き飛ばされた。


最高だッッッ(ハローシィー)!!!』


「ぅわっ……」

「なんか気持ち悪いモノ轢いちゃった……」

「ごめんね、黒川君」


【冥急エクスプレス】はライトの点滅で『気にしていません』と答えた。

一方、吹き飛ばされた変態はかつてない快感を味わっていた。


『マルファ様のお怒りによるかつてない圧迫……!』

『エレナ様の放置プレイ……!』

『核が使用されるかもしれないという緊張感……!』

『そして……!』


彼は倒れながら【冥急エクスプレス】の最後尾を見送る。


『このナチュラルかつ容赦のない轢き逃げ……!』

『しかも僅かに聞こえたぞ!日本語で『気持ち悪い』と……!』


ヴァヴィロフは背中を逸らせ、身体を震わせる。

そして息を荒げながら彼は呟く。


『【エゴーリィの戦槌】第二段階起動!!』

『もう私は何処まで大きくなるかわからない!!!』


ヴァヴィロフの身体が装甲ごと巨大化して行く。

彼の身体はあっという間に電車のサイズを超えて行く。


『さあ!次は私の出番だ!!』

『そのシベリア!!是非開拓させてくれ!!』


ヴァヴィロフは猛スピードで駆け出し、【冥急エクスプレス】を追跡し始めた。

ハルカは車内が揺れ、何らかの異常が迫っている事に気付く。


「……!?」

「次は一体何……!?」


『さあ!!私にもっと攻撃を!!』

『攻撃をーーーー!!!』


彼女は小窓から猛スピードで迫る巨大な変態を確認すると、即顔をひっこめた。


『な、な、何アイツ……!!』

『メチャクチャデカくなってる……!!』

『……【冥急エクスプレス】!!第二段階起動!!』

『【誘導霊子キャノン】発射!!』


全車両の砲塔がヴァヴィロフに向けられる。


『そうだ!!それで良い!!』

『途中で容赦されるプレイなど萎えるからな!!』


放たれたはレーザーは当然の如く、全てヴァヴィロフへ命中する。


『おおおおおおッ!!』

『全身を隈なくとは……!これは新手だ……!!』


彼はレーザーに撃たれながらも、更に巨大化していく。


「もう無敵じゃん!!アイツ……!!」


ヴァヴィロフは【冥急エクスプレス】の最後尾を掴み、脱線させる。


『さぁ!!もっと!!もっとだ!!』


ハルカは身を乗り出しながら叫ぶ。


「【アスタルトのシュシュ】第二段階起動!!」

「【合成転生】!!」


レールと枕木が分解され、鋼鉄の太いツタになり、ヴァヴィロフへ巻き付いて行く。


『なんと!!縛りプレイまで!!』

『最高だ!!ハルカ・イチハラ!!君は最高の女王様になる素質がある!!』

『だが!!後はもう絶頂しかない!!』


ヴァヴィロフは鋼鉄のツタを巨大化して力ずくで破壊し、【冥急エクスプレス】を放り投げる。


「──ッ!!」


車内はかき回され、ハルカは身体を色んな場所へ打ち付ける。


「……ぅあっ……!」


ヴァヴィロフは地響きを立てながら車両に迫る。


『もっと!!もっとだァーーーー!!!』


彼は拳を【冥急エクスプレス】に向かって振り下ろそうとする。

そこへ大盾を持った大男が割り込んで来る。


『……間に合った!!』

『【ゴライアスの大盾】起動!!』


盾はヴァヴィロフのパウンドを受け止め、男の足元にはクレーターが出来る。


『なぬっ!!?』

『誰だ!!貴様は!!プレイの邪魔をするな!!』


『既に名乗る程の名など無い!!だが敢えて名乗ろう!!』

『私はユルゲン!!そしてこれは抗争だ!!』

『【サンダルフォンアーマー】起動!!』


黒い装甲を纏った男はヴァヴィロフを超え、更に巨大化していく。

そして【冥急エクスプレス】を線路に戻し、大盾を構える。


『ここは私が食い止めます!!』

『さあ!早く!』

『指揮官殿が線路の先でお待ちです!!』


ハルカは【冥急エクスプレス】の警笛を鳴らして言葉に応え、列車はまた走り始める。

ヴァヴィロフは追い掛けようとするが、大盾に跳ね返される。


『消えろ!!邪魔だ!!』

『まだ私は絶頂していない!!』


『絶対に私は後退しない!!』

『何故なら私が最終防衛線だからだ!!』

『私の背後には常に護るべき者達が居る!!』

『前進!!!』


ユルゲンは盾を構えながら、ヴァヴィロフへ突進して行った。


~アスタルトのダンジョン~

~水上都市廃墟~


『ここからが本番ね……』

『頼むわよ、ティエラ……!』


マルファはカツカツと足音を鳴らしながら、白い拳銃を構えるジュビアの元へ歩み寄って行く。


【流石は【死神】直属の部下ね……】

【腹に蹴りを食らったのなんて、何年ぶりかしら……】


『……次は顎に食らわせるわよ』

(なんて流暢なスペイン語……!やはり……!)


【ふふ……本当に勇敢で向こう見ずね……【天使】というのは……】


『……』


彼女はジュビアに向かい合い、ゆっくりと両手を広げて言う。


【気付いていないかもしれないけれど……】

【ここはもう既に魔女の庭なのよ、天使さん達……】


マルファの足元からは、巨大な闇の手が這い出して来ていた。



なんだこのイケメン盗賊は。

魂レベルからしてイケメン度が天元突破してやがる。

人の心を盗むのが上手すぎるぞ、この盗賊。

てか、新婚早々不倫しそうになってんじゃねぇ。その火遊びは本当に燃えるぞ。


ヒモはヒモでも世界で一番イケメンなヒモです。

正直顔のムダ遣いなんだ。

獄中でもファンレターや差し入れが毎日、それも大量に来るレベルでした。

しかし、彼は差し入れを囚人の皆と分かち合いました。そういうトコやぞ。


しかし、余りにもジュビアさんがあまあますぎる……ヒモ男に耐性が無さ過ぎて心配になる。

ただ、結婚したら金の管理は彼女の仕事になるので……

いや、今までと大して変わらないか。ダメみたいですね。


そしてジュビアさん強すぎる。

彼女より強いのは、【コンキスタ・カルテル】ではもうベルナルドくらいです。

ジュビアさんはとにかく身体能力が非常に高く、運動神経が良い。

総合的な身体能力で言えば、フェルゼンやリヴァの次にぐらいに来ると思う。


彼女は速さとパワー、タフネスとスタミナを極めて高いレベルで両立させています。

何より彼女は頭が良い。少々堅物ですが。

ティエラちゃんも運動神経はかなり良いです。


変態は更に一歩先のステージに到達しましたね……

もう止められねぇわコイツ。ダンジョンはM性感じゃねぇんだ。

そして客は客でもかなり迷惑な部類の客ですね。コレ。

本当に頼むユルゲン。


エレナはもう精神状態がヤバい。

今の彼女には何処にも居場所がありません。

レイカを連れて行かれると、心から頼れる人は誰も居なくなる。


マルファの元に居ても足手纏いの日々が続くし、本国にも帰れない。

だからと言ってフェルゼンやイチカの所へは行けないし、もう行く場所がレイカしかない。

だから彼女は全力でベルトランを殺しにかかると思います。自分の精神と居場所を守る為に。

【覚醒】してるのは、ほぼ本能から出た現象です。本人は意識してない。


魔女とその部下達がその本性と実力を剥き出しにして来た感じ。

流石のベルナルド達でも今回は厳しい気がする。

そしてまだハルカは彼に辿り着いていない。まだ最後の関門が残っています。


読んでくれてありがとうな。

カネは出せないが、次も飽きさせないぜ。


「面白かった」「次回も期待している」「ギャンブルが弱すぎる……」「借金が多すぎる」

「そこで払っちゃうのがもうハマってる感ある」「金が絡まないと本当にイケメン」

「お姉さんの戦闘技術エグい」「レイやん本当に良く頑張った」「ジュビアさんクソ強い」

「新婚早々火遊びしようとすんな」「ティエラの射撃凄い」「エレナ……」「確かに泥棒なんだよなぁ」

「レベルアップしてやがるこの変態野郎……」「ダンジョンがM性感は草」「ユルゲン頑張れ!」

「お姉さんの底が全く知れない」「ったく……うるせぇ作者だな」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

宜しくお願い致します。

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