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12 恐ろしく速い人間(?)

-10月20日(水)美島家16:30-



 綾香はてきぱきと説明し始めた。





「まず報道されていることについてはある程度省きます。報道では都内での失踪事件は18件とありますがこれはあくまで露見した数字であり現在調査中の地域も含めると23区内だけでも30件以上になるそうです。神奈川や埼玉も千葉にも波及しているようで、似たような事件が起こっておりこちらも現在調査中のようです。

 また最初の失踪事件はやはり成城での1件のようです。それ以前には同様の事件は報告されていません。また失踪した方にはいまだ誰一人連絡がつかないそうです。

 そして、成城で遺体で発見された佐々木照子さんについてですが警察はほぼ間違いなく殺人事件であると断定し、またその犯人がこの事件に何らかの関係があると見込み捜索しているようです。

 残念ながら警察も混乱を防ぐため情報規制を敷いており、知り合いの警察関係者に聞けたお話が今の以上のことです。」




「ほかに、ほかになにか手掛かりはないんですか」




 尚のすがるような問いに綾香はやや間を置き




「申し訳ありません。現状得た情報は以上のことだけです」




「そうですか。分かりました。ありがとうございました」




「いえ。またなにか分かったらご連絡します」




「はい。おねがいします」




 尚は電話を切りしばし宙を見やり落胆した。結局めぼしい情報は何一つなかった。恵理につながる情報が。尚はしばしの絶望のあと、パンと顔をたたき着替え始めた。今日からは自分で情報を集めよう。失踪事件が起こるのはたいてい深夜である。夜行動を起こそう。そう決め尚は家を出た。





-10月20日(水)東京都杉並区18:00-



 大軒は杉並区のある住宅街をよどみなく見回していた。失踪事件の発生件数は世田谷区に杉並区が多い。隣接している区ということもある。本当は世田谷区で捜査したかったがなんせ謹慎中の身だ。うっかり同僚に見つかりでもしたら困ったことになる。



 

 大軒はその後も原付で杉並区の住宅街を見回った。さすがに杉並区のすべてをみて回るのは不可能なので、事件が起きた付近を重点的に見回った。




 21:00になり帰宅ラッシュも終わり住宅街には人がまばらとなっている。今のところ特に街に変わった様子はない。大軒は少し安堵し、加えて少し失望し別の住宅街に向かう。




 24:00、杉並区の住宅街、杉並区での失踪事件の現場からは結構離れている。大軒は原付で辺りを周回していた。事件が起こるならそろそろだろう。そう思いやや気を引き締め辺りを見回す。終電も終わり辺りに人はいない。



 そう思ったが、大軒の視線の先に何かが映った。人のようだ。身長からして男のようだ。住民か?まったく今は深夜の外出は極力避けるよう警察から注意喚起されているのに。大軒は自分が謹慎中なのを棚に上げ、そいつにあまりふらふら出歩くなと言おうと思い原付を走らせた。




 原付がその男に50Mほどの距離に近づいたとき、向こうも気が付いたようだ。一瞬振り向いたような仕草を見せた後そいつはばっと逃げ出した。大軒は直感した。こいつはなにかあると。




 大軒はスロットルを回しスピードを上げた。5年近く前に買ったおんぼろの原付だ。一応メーターは60kmまで出せるが、マックスでもせいぜい40kmほどしか出ないだろう。だが十分だ。相手がウサインボルトなら話は別だが。




 逃げる男(?)を追いかけるが距離が一向につまらない。それどころか少しづつ話されていく。

おいおい嘘だろ、何キロで走ってるんだよ。50kmはあるぞ。男(?)は突然角を曲がった。大軒は逃がすものかとスピードマックスで追いかけ角を曲がる。さっきからずっとこの付近をぐるぐるしていたんだ。その先は行き止まりだ。




 追いつめたと思いばっと角を曲がりライトを照らしたがそこには誰もいなかった。



 そんなバカな。



 大軒の狙い通り確かにそこは行き止まりだった。周囲を住宅の塀がおおう正に袋小路。塀の高さも高く2M近くある。超えるにしても時間がかかる。奴はどこに行ったんだ。大軒は急いで辺りを探した。しかしそこにあるのはしんとした静寂だけだった。まるで誰もいないかのようにしんとした静寂。




 そこで大軒は気が付いた。なぜ誰も家から出ないんだ。大軒は男を追っている最中かなり大きい声で待てやら止まれやらクソだの言っていた。




 自分で言うのもなんだが声はでかいほうだと大軒は思った。それこそおんぼろの原付が出すうるさいエンジン音に負けないくらいには。そんな大声を上げたのに誰も様子を見に来ないのだ。いくら外出自粛要請が出てるとはいえ。




 大軒は嫌な汗が止まらなかった。もしかしたらまた俺は取り返しのつかない失敗をしたのではないか。それこそ今度は懲戒免職ものの失敗を。大軒は少し悩んだが、110番と同僚の刑事に電話をした。



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