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7 ドブネズミみたいに

-10月16日世田谷区09:00-


「上村さん、ほんとにここから行くんですか?」



 尚はややひきつった顔で綾香に問うた。



「ええ、友達が心配なんでしょう?」



 綾香はさも当然といった感じでこたえた。それは大き目の溝蓋であった。かつて成城にまだ下水道が完備されていなかったときに使用されていた下水用排水路だ。もう世田谷区には下水道が100%完備されているので現在は道路におおわれており、一部に溝蓋が存在するだけである。埋められていないのは大洪水の際の排水路として利用されるからである。



 綾香はこの旧排水路の地図をネットで調べていた。ここから地図通り進んでいけば三井恵里の家に行けるだろう。本来三井恵里の家およびその付近をすべて取材し、スクープを得たかったが警察による事実上の封鎖のおかげでそれもかなわない。



 綾香は溝蓋を開けた。思いのほかの臭気に顔をゆがめたが思い切って入っていった。それを見て尚も意を決して入っていった。



 中は非常に狭く、女性である尚と綾香が中腰になってやっと進める程度だ。臭気もひどく、尚は口呼吸だ。ひどいのは前を進む綾香で、ゴキブリやネズミが出るたびにビクッとする。さすがに悲鳴を上げたりはしないがいちいち立ち止まるので少しイライラする。



 あんなに意気揚々と入っていったのに。そうおもいつつ尚は中腰で辛い体制の中いちいち止まられるのも面倒なので綾香と前後を変わった。綾香は尚が虫やネズミに一切ひるまないのを見て驚いたが、尚が前にいて虫やらをどけてくれるので地図アプリで出口の溝蓋を見ながら尚を誘導する。



 尚は、排水路を進んでいく中ですこし疑問に思ったことがある。ネズミや虫はたくさんいたが、ネズミなどの小動物に噛み傷のような傷をつけて死んでいるものが結構な数いたのだ。



 そのことを綾香に言おうと思ったが、綾香はネズミなんか見たくもないといった感じで尚の背中にびっちりくっついて、地図アプリで誘導している。



 ようやく出口の溝蓋があった。蓋を開けあたりを見回す。よし、警察はいなさそうだ。尚と綾香は排水路から出てどこか確認する。よし、恵里の家はかなり近い。あとは警察に見つかる前に恵里の家に行くだけだ。



 そう思った矢先、角からかなり大柄の刑事が出てきた。顔ははっきり見えないが昨日の刑事だ。尚は確信した。確か大軒といったか。尚と綾香はとっさに近くの民家の庭に隠れた。息をひそめ大軒達が通り過ぎるのを待つ。



 しかしどうやら大軒達は今からこの辺を捜査するらしい。厄介なことになった。そう思い、綾香の方をみやると白い顔をしていた。なんだと思い、尚も綾香の視線の先にあるものを見ると犬小屋があった。



 そこで尚もごくっと唾をのんだ。犬小屋には頭から腰に掛けての上半身がごっそりなくなっている犬が死んでいた。

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