第27話 勉強会と様子のおかしい日向
「湊く~ん、勉強教えて」
「もちろん。でも、日向は勉強できるほうじゃなかったっけ?」
「う~ん、出来る方ではあると思うけど。ほら、彼氏に教えてもらいたいというか。えへへ」
うん、凄く可愛い。
なんていうんだろ、見てるだけで凄く幸せになる。
守りたい笑顔っていうのはこういう事を言うんだろうな。
「任せてくれ。僕もそこまで勉強がめちゃくちゃ得意ってわけじゃないけどさ」
高校一年の範囲の勉強であれば、僕でもある程度教えられる。
問題は、ちゃんとわかりやすく教えられるかと言う所ではあるんだけど。
「嘘つかないでよ。湊くんめちゃくちゃ勉強できるじゃん」
「そんなことないさ。学年順位だってそこまでいいわけじゃないしね」
「何位だったの?」
「学年で四位だよ。神凪会長とかと比べると全然だね」
「……全然頭いいじゃん。めちゃくちゃすごいからね? 学年四位って」
僕以外の生徒会メンバーは大体、学年順位トップスリーには入っているから感覚が少し麻痺しているのかもしれない。
「そうかな。ありがと。褒められると嬉しいな」
「ううん。湊くんの実力だから。そう言うわけで勉強教えて!」
「わかった。じゃあ、何の教科からやる? 苦手な奴をやったほうがいいよね」
今日は休日だし、一日中勉強に費やせる。
そろそろ期末テストも近づいてきているし。
中間テストは選挙活動とかも相まって、たくさん勉強とかはできなかった。
今回はちゃんと真面目に勉強をしよう。
「う~ん、じゃあ国語系をお願いしてもいい? どうしても苦手でさ」
「わかった。任せてくれ」
そうして、僕たちはテスト勉強を始める。
国語科目は僕の得意分野だし、十分に教えることが出来ると思う。
「湊くんは国語が得意なの?」
「うん。昔から本とかを読むのは好きだったからね。そのおかげもあってか、勉強はかなり得意になったんだよね。逆に日向は何で国語が苦手なんだ?」
「う~ん、なんていうかね。読み取り手によって、答えが変わるからって言うか。絶対的な答えがないわけじゃん? それがかなり苦手なんだよね」
「なるほど。確かに、そう言う点で言えば数学とか化学とかとは違うか」
理系の科目と違って、国語は曖昧な点が多いと僕は思う。
例えば、作者がこの時何を考えてこの物語を書いたか答えよ。
とか、そう言った問題は百パーセント確実な答えと言うものは存在しないんだし。
読み取り手によって答えは千差万別になる。
「そうなんだよね。と言うわけで教えてくれると嬉しいな」
「うん。じゃあ、教科書とかを見ながら要点をまとめて行こうか」
「うん! よろしくね。湊くん」
一年生の範囲であれば、まだ記憶にある。
テストの内容もそこまで変わらないと思うし。
とりあえず、教科書の内容をみてそれを思い出しながら勉強を進めようかな。
◇
「ちょっと休憩しようか。流石に日向も疲れたでしょ」
「そうしよ。詰め込み過ぎた感はある」
「コーヒーでも淹れようか?」
「ありがと。ミルクと砂糖多めでよろしくね」
「了解」
ぐで~っと、寝転がる日向に笑みを向けながらキッチンに向かってコーヒーを淹れる。
最近はこの家にも完全に慣れてしまっており、もう勝手知ったる我が家と言った感じだ。
「えへへ。なんか、こうしていると新婚さんみたいだね」
「新婚のハードルが低いような気がしなくもないけど。心配しなくても数年後には正真正銘の新婚さんになるよ」
「も、もう。そういう事真顔で言わないでよ。恥ずかしくなる」
「だって、事実だからさ」
僕たちはこれでも婚約者だ。
二人で将来を誓い合ったし、僕たちも結婚を見据えて付き合っている。
僕は日向のことがいつまでも大好きだし、何があっても守りたいと思う。
もうすでに、自分の命よりも大切な存在になっているんだ。
「湊くんは本当に……まあ、嬉しいんだけどね」
「ならよかったよ。じゃあ、今はゆっくりしようか」
「だね。はぁ~疲れた~」
「お疲れ様。凄く頑張ってたね」
日向は二時間ぐらいちゃんと教科書を見て、僕の話を聞いてくれていた。
最初はいろんなところがわからないと言った感じだったけど、徐々に出来るようになっていって最後にはテストの予想問題は全問正解していた。
「ありがと~」
隣に座る日向は僕の肩に頭をのせてくる。
日向の体温が僕に伝わってきて、少しドキドキしてしまう。
「ねぇ湊くん」
「どうしたの?」
「膝枕してよ」
「なんで急に?」
「して欲しいと思ったから。ダメ?」
上目遣いでそんなことを言われたら断れるわけもなく。
いや、そもそもとして断るつもりなんかないんだけどさ。
「いいよ」
「やった! じゃあ、失礼します」
そう言って、日向は僕の膝に頭をのせてくる。
むふふ~っと頬を綻ばせる日向はなんだか猫みたいで凄く可愛かった。
僕の彼女が可愛すぎて困る。
「日向……最近なんか嫌な事でもあった?」
「どうして?」
「最近の日向はちょっと暗い表情をしていることが多かったし。それに、日向が僕にこんな風に甘える日は何か嫌なことがあった時だしね」
学校で何かあったのか。
それとも、私生活面で何かあったのか。
私生活面で何かあったような感じはなかった。
となると、学校の方か。
まだ、片付いていない悪い噂の件で何かあったのかな。
「あはは、湊くんは何でもお見通しなんだね」
「そう言うわけじゃないよ。誰でも見抜けるってわけじゃない。日向だから変化に気づけたんだ」
彼女以外であれば、僕は些細な変化には気が付かないだろう。
でも、日向の変化であれば僕は気が付くことが出来る。
膝の上に頭をのせている日向は苦笑いを浮かべながら、口を開く。
「……実はね」




