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俺は魔法使いの息子らしい。  作者: 高穂もか
第一部 決闘大会編
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第百二話

「片倉先輩、いねえなあ」


 二年C組の戸口から中を窺って、俺は首を傾げた。

 ホームルームが終わって、ダッシュでやって来たのに。もう帰っちまったのかな。

 教室には何人か生徒が残ってて、ちょっとガヤガヤしてる。


「あの、すいません。片倉先輩って、帰っちゃいましたか」


 黒板のとこで喋ってる二人組に、聞いてみる。


「片倉?」


 その人たちは顔を見合わせた。


「知らねえよなあ」

「あいつ、すぐ帰ってくからな。なんか用?」

「そのー。葛城先生から連絡がありまして」

「じゃ、残念。入れ違いだわ」


 やっぱり、そうかあ。

 こうなったら、お部屋に訪ねてみるかな、って考えてたら。さっきの二人がじっと見てきてるのに気づく。

 いけね、お礼。


「すんません、ありがとうございました」

「あーちょっと待って」


 ペコっと頭下げて帰ろうとして、引き留められる。


「何すか?」

「お前さあ、俺らの序列なにかわかる?」

「えっ。青です」

「わかってんの。すげー」


 けらけら笑われて、ポカンとする。なに笑ってんの? すると、二人のうちピアスを超付けてるほうが、ニヤッと笑う。


「いやあ。黒に話しかけられたの、久々だわ」

「なあ、お前、最近黒になったの?」

「ええと。この秋、転入してきたところで」

「転入生ー! どうりで新鮮な反応するわけだ」


 縁の太い眼鏡かけてるほうが、超ピアスの肩を叩いている。えらいご機嫌そうなんだけど、全くテンションについて行かれねえ。

 と、急に腕を引かれる。


「うわっ!」


 気がついたら、教卓に押し付けられていた。両側からのぞき込むように抑え込まれて、ぎょっとする。


「ちょっと、何すんすか!」

「いいねえ。この何もわかってねえ感じ」

「わかるわかる。こういうので遊ぶのが面白れーんだよ」


 うんうん頷き合ってる二人に、俺は目を白黒させる。

 何言ってんのか、全然わかんねえぜ。

 ボコられるって感じじゃなさそうだけど、なんかやな感じがするっつーか。

 てか、他の人たちは全然スルーなんだけど、こういうノリって普通なん?

 と、超ピアスにネクタイをぎゅっと締められて、ぐえっとなる。


「お前さあ、決闘大会だれに頼むの」

「……えっ?」

「どうせ真面に闘わねえんだろ? なら――」

「ちょっと、待て」


 良く通る声が、太縁眼鏡の言葉を遮った。

 この声は――白井さんだ! つかつか歩み寄ってきて、二人の肩をひっつかんで引き剥がした。


「上位の人間が、下位の人間に決闘を申し込むのは、品のいい振る舞いじゃないぞ」

「何だよ、白井。俺たちは別に」


 言い募ろうとした超ピアスを、白井さんが強い目で睨む。太縁眼鏡が、「おい」って相方を宥めた。こそこそ囁き合ってたかと思うと、肩をすくめて去って行った。


「吉村くん、大丈夫か?」

「あ! はい、平気っす」


 ボー然としてると、心配そうに顔をのぞき込まれる。慌てて床に立って、ファイティングポーズをとる。白井さんは、ちょっと苦笑した。




「すまない。あいつらは、クラスメイトなんだが……。かなり変わった奴らだから、あまり近寄らないほうが良い」


 並んで、廊下を歩く。

 白井さんが心配して、俺の組まで送るって言ってくれたんだ。


「あのう。俺やっぱ、絡まれてたんすか?」

「気づいてなかったのか?!」

「いや、そうなんかな? って思ったんすけど。他の人があんまり普通だから……」


 そう言うと、白井さんは苦虫を噛んだみたいな顔をした。 


「あいつらは序列が高いから、みんな見て見ぬふりするんだよ。自分たちに火の粉がかからないようにね。せめて、風紀に知らせが来るだけマシなぐらいで」

「そうなんすか……」

「と言っても無理強いしたって証拠もないから、処罰と言うわけにも行かなくてね。頭が痛いよ。ともかく、あいつらには用心してくれ」

「はい。本当に、ありがとうございました!」

 

 真剣に諭されて、俺はじーんとした。

 俺の教室の前で、白井さんとは別れた。

 これからまた会議らしく、颯爽と歩き去って行く。忙しいのに送ってもらって、申し訳ない。

 背中に向かって、もう一回頭を下げた。






 教室には、もう誰もいなかった。

 俺も帰って、勉強だ。あと、魔力コントロールの練習もしなくちゃ。

 いそいそと帰り支度をしようと、鞄を取る。


「あれ?」


 なんか、軽くね?

 ジッパーを開けて、俺はぎょっとする。


「ええっ?!」


 な、無いっ! 

 俺の参考書! ――ああっ、自主勉ノートも! 

 慌てて机の中を見る。もっと悲惨なことに、空っぽになっていた。

 今日の教科書も、ノートも、筆箱まで、全部なくなってる!


「う、嘘だろ~……?!」


 おろおろと机の中を、ロッカーを何度も見たけれど、やっぱり無い。

 なんで? 誰か、間違って持って帰っちまったのか?

 教室中、どこを探しても見当たらなくて、俺は途方に暮れてしまった。



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