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四条紅大、新たなる始まり

正直なんでこんな主人公にしたのかは自分でもわかりません笑


せめて、楽しめたらなと思います。

さて、突然だけどあなたは、ゴキブリの事はどのくらい知っているだろうか?

ゴキブリを嫌う人はかなり多いはず。

それはなぜか?

単純な話、気持ち悪い以外にはない気がする。ぶっちゃけそれだけだろう。見てるとゾワゾワっと悪寒がしたり、どこか痒く感じたり……そんな感じだろう。

それだけで彼らは、嫌われているのだと思う。

彼らは、汚いという偏見があるかもしれないが実はかなり清潔だ。身体の表面から抗菌物質みたいなのを出してすぐに綺麗になる。

だから、汚いから嫌いは通じないのだ。

あ、でも病原菌を運ぶんだったか? でも、それは極稀だった気がする。

ゴキブリは人類から、その姿形、色、挙動でとてつもない生理的嫌悪感がするのだ。

だから人に「お前、ゴキブリみたいな奴だな」なんて言わないであげてください。

泣けてきます。

と、言っても俺の主観だからなんとも言えないな。もしかしたら中に「ゴキブリ、カッケー」って奴がいるかもしれないし……。

とにかく、すごい嫌われ方だという事はわかってもらえただろう。

斯く言う俺も、ゴキブリが大っ嫌いだ。

しかし、彼らをなんとかする方法などなかなかなく野放し状態だ。

もちろん、そんな事をいちいち気にしながら生きるわけじゃない。

だが、もし家の中に居たら、問答無用で殺すだろう。誰もがすることだ。

いや、そうでもないのかもしれない。ゴキブリを飼う人はいるし大きさや艶、速さなどを競う催し物が開催されていたりする。さらに言うと、……想像もしたくないが食べる地域もあるらしい。

とにかく、俺が言いたいのはゴキブリが大っ嫌いだということだ。

そんな、俺にとんでもないことが起きた……。

まさか、俺がゴキブリに転生するなんて……。

これじゃあ、困った時の神頼みなどできない。

困ったちゃんにされて神恨みだ。

いや、魂をゴキブリに宿したのはまだ許そう。転生とか何になるかもわからんしな。

でもさ……俺の記憶ぐらい消してもいいんじゃないかな!!

とりあえず、俺、四条紅大(しじょうこうだい)は、ある日、普通に死んで、ゴキブリに転生した。

そして、俺が現在いる場所は、とある学校の教室の後ろ側で隠れている。

今は、もう、下校時間で教室には4人の男女が楽しそうに話している。

男1人の女3人。

ハーレムかよ、とか思うけど俺には関係ないな。それに、あれなら俺は許せる。なぜなら、男は忌々しい事にイケメンではあるし、女の子達に好意を持ってそうなんだけど、女の子達は、全然意識してる様子は無さそうだ。女の子達は、かなりレベルの高い美少女ちゃん達だ。

イケメンに幸せなど訪れさせるものか。

お前が幸せになりそうならば、俺が出てきてその場を混沌にしてやる……。フフフッ。

まあ、それは良いとして、俺は「なんでこんな場所に来てしまったんだっけ?」と、過去を振り返った。

そう、始まりはあそこからだった……。



カサカサッ


真っ暗な視界しかない場所でやたらとカサカサとうるさい。

というかここどこだ?

たしか俺は……死んだ、よな?

そうだよ。信号無視した車にはねられて死んだんだよ!

なら、なんで俺はこんな真っ暗でカサカサとうるさい場所にいる?

体はなんか動かせるけどちょっと動きづらいな……。

そんなことを思っていると急に視界が白く染まる。

良し! 外に出よう! とした瞬間、大量の白い物体が俺の前をダダダダッとウジャウジャと表れる。

ひっ!

な、何今の!?

なんか嫌な予感がしてきた。

ゆっくりと外を見たらさっきの白いのが沢山いた。

……これは……ゴキブリ、か?

生まれてすぐは白かった気がする……。

いやあああアァァァだぁあ!!!!

助けて!

こんなデカイゴキブリの幼虫とか絶対に嫌だよ!

みんなうろちょろしてんじゃねぇよ!

どっか行けよ!

なんでどこにもいかねぇんだよ!!

ハア、ハア、ハア……。

一旦、落ち着こうか。脳をフル稼働で落ち着こう。

まず、なぜこの巨大ベイビーコックローチ達はここから去らないのだろうか?

考えろ俺。

仕方がない奴等を観察しろ。さすれば、きっと理由がハッキリ、と……。

なんか、浮いてる? いや、違うな。

そうか! ガラスか! でも、どうして?

ガラスが周囲を囲んでいて逃げ場がないんだ。

てことは、ここは瓶の中なのか!

でも、なんで俺まで瓶の中に……?

ま、さか……!?

恐る恐る自分の手を見てみる。

そこには、とても人間の手には見えないものが!

いやああああぁぁぁ!!

なんで!? おかしいでしょ。バッカじゃないの!?

もう、わけがわかんねぇよ!

ちきしょう!

なんで俺がゴキブリなんかになっちまったんだよ!

もういやだ……。

ん? 待てよ?

この際、もう、本当にゴキブリになった事は、転生してしまった事は置いておこう。うん。

それは割り切るしかない。そう考えて割り切れるものじゃないけどとりあえず今は置いておく。現実逃避もしくは先送りとも言う。

でもさ……。

瓶の中ってなんだよ!!!!

これは人に飼育、もしくは観察されてるってことだよな!?

もう、これ詰んでない?

死ぬの俺?

今の所誰も近くにいないみたいだけどさ、上も蓋が閉まってるみたいだし、絶対逃げられないね。

終わった……。

まあ、残り少なそうな虫生を生きようか。

俺は、そう決めた。



それからしばらくがたった。

みんなの体も黒褐色に染まっていて、当時の気持ちとしては、もう……こう……全てを諦めそうになったよ。

人の姿もたまに見る様になった。

まあ、それはいいさ。

時間が経てばさすがに慣れる。

だけど、新しい問題が出てきた。

腹が減った!

ここ何日も、何も食ってないんだよ!? 飯はくれないのかね? 飼い主さんよ。

いや、兄弟たちの何匹かは卵の殻を食べてたけどさ。

俺に、それはちょっとまだハードルが高いっすよ!

それからまた、数日が過ぎると異変が生じ始めた。

へ、ヘイ! 兄弟達。そ、そんなに互いを見つめ合ってどうしたんだい? そう殺気立つもんじゃないよって、あぁぁ……。

と、共喰いですか……。他所でやってくださいよ、ブラザー共。

まったく、ゴキブリって怖いですねぇ。

……ん?

そんな風に傍観を続けてたらなにやら不穏分子が!

……ちょ、ちょっと待って欲しい。

クロチくん(適当に命名)、そんなに物欲しそうな目で俺を見ないでおくれ。割とマジで、グロテスクだから、な?

ま、待て、待てよ! いやああぁぁぁああ!!

逃げる! でも、追いかけられる!

クソッ!

ゴキブリって雑食なのは知ってたけど共喰いまでするのを忘れてた。

マズイな……。

とりあえず、また向き合う様に立つ。

クロチくんめ……。

貴様が俺を喰うつもりなら俺がてめえを喰ってやるよ!

こちとら腹が減ってんだよ!!

俺は果敢にクロチくんの上にのしかかる。良し! これでマウントポジションを取った!

そして、ガブリンチョッ!

うわぁ、気持ち悪い。

もぐもぐ……。

……………………うまいな。

これがゴキブリの味覚なのか……。雑食なだけあるな。

とりあえず残さず食べよう。

これで一応、腹は満たした。

周りを見るとまだ争ってる奴等がいたけどこっちに来ようとする奴はいなかった。結構な数がいたのに今では10匹程度だよ。

そんな風に眺めていたら、ズンッズンッ! と音と振動が伝わってきた。

飼い主が来たんだなぁ。


「母さん! ゴキブリが共喰いしてる!」


少年が瓶持って自分の母親に見せる。

おい、やめろよ。揺らしてんじゃねえよ。こんなか結構、滑るんだぞ。


「やめて、近づけないで。……あんたそれいつ捨てるの?」

「持ってちゃダメなの?」

「私はそんな気持ち悪いものを家に置きたくはありません!」


逃がそうとしてくれてるのは嬉しいけどやっぱりショックだよなぁ。気持ち悪いって言われるのって……。


「ええ! 良いじゃん! 僕、こう言うの見たいんだよ!」


え、なにこの子!? なかなか、猟奇的な事を言い出したんだけど!

親御さん、しっかり教育してくださいよ!

あと、揺らすんじゃないよ!

そんなに手を振るな! シェイクするな! あ〜、目がクラクラしてきた……。


「あんた、そんなに手を振らないで! 落としたらどうす……」

「「あっ!」」


息子くんの手から瓶が離れた。

そして……。


パリーンッ!!


瓶が割れた! 自由だ!! でも、欲を言わせてもらえればクロチくんを食べる前に落として欲しかったかな!

では! さようなら!


「キャアアァァァアァァァッ!? なにやってるのよ、健志!」

「ご、ごめんなさい」


この隙にどっかに隠れよう!

あ、でも殺虫剤を撒かれたら終わりそうだなぁ。

とにかく、どこかに行こう。

その後、殺虫剤は撒かれた。

俺にも多少かかったけど大した事は無かった。

俺の生命力と免疫力の為せる技だな!

とりあえず、しばらくここに住み着こうと思う。ゴキブリの環境適応力を舐めんなよ?

でも、しばらくは、ここに世話になるんだしお礼はさせて貰いますね!

いろいろ、綺麗にさせていただきます。もちろん、出来る限りですが……。気持ち悪いし……。

でも、ゴキブリは、雑食だからね! なんでも美味いっすね!

あ、もちろん、罠には引っかからないよ?

でも、1つの罠に毒の食べ物があったんだけど、かなり良い匂いだったからほんのひと口だけ食べてみたら死ぬかと思った。マジで……。

引っかかってんじゃんとか言わないで欲しい。きっと本能的な何かだよ。

なんというか、さすが、俺の免疫力って感じではある。


そんな感じに5ヶ月ぐらい過ごしたわけだけど。

慣れって凄いね。

今じゃなんでも食える様になっちまったよ。最初は、あんなに気持ち悪がってたけどやっぱり空腹に勝てずに食べて。そしたら意外に美味しいし……。

こんな事思ってる自分とか嫌なんだけど……。

それより、ヤバイ!

なにがヤバイって俺の触覚がヤバイ!

脱皮を何回か繰り返してきたんだけど、その度に俺の感覚がすごい敏感になってるんだよ。

自分の超感覚が恐ろしいよ!

どんな気配でも食事の在処(ありか)もすぐに見つけられるんだよね!

風の動きや匂いまで!

でも、そろそろこの家からも出ようと思うんだ。やっぱり、殺虫剤を多少くらった程度じゃ死なないけど大量にやられたらさすがに死ぬからね。

逆に良く5ヶ月ここに入られたもんだよな!

という事でそろそろ、この屋根裏から出て、違う場所に行こうかね。

今は、早朝だし旅立ちとしては丁度いいだろう。

そう思って出て行こうとした瞬間……。


ガサガサッ!


ん?

なんだ今の?


ガサガサッ!


お、お前は!

ちきしょう! とりあえず隠れよう!

クソッ! 最近兄弟達がいないと思ったんだよ!

せっかく飛べるようになったのにフライアウェイせずに死ねないよ!

今回は先に見つけられて良かった……。

でも、あいつ……出口に陣を張ってやがる。

なんとか攻略しないとマズイな……。

クソ忌々しい奴め!

その名も、アシダカグモ。俺の、ゴキブリの天敵だ。

奴は、人によるが気持ち悪いとカッコ良いで意見はかなり割れる奴だ。

まあ、それはいいさ。

だが、あいつは軍曹といったカッコ良い二つ名まである益虫なのだ!

羨ましい!! いや、羨ましくはないさ!

俺にもカッコ良い二つ名ぐらいあるからな。

なにせラテン語でゴキブリはルキフィガっていう感じのカッコ良い響きでその意味は『光を厭うもの』なんだぜ? なんかカッコ良いだろ?

だからなんだって話ではあるけどさ。

とりあえずあいつをなんとかしないとだな。

たしかアシダカグモは、近眼で臆病だったか?

これじゃあ出口に近づいたら喰われちまうな。というかデカイなあれは……。

俺より少しだけだけど。

他に弱点はないのか?

……そうか! あいつらはたしか体力がないんだ!

それと好奇心が旺盛だったか?

なんとかなる……か?

でも、無茶苦茶速いんだよなぁ。

どうするか……。


……………………。

…………。


よし、喰うか。

と言ってもそう簡単な話ではないんだよな。

どう仕留めてやろうか……。

俺は、思いつく限りの事を考えてどうするかを考えた。

でも、案外簡単かもしれないな。

俺は、行動を開始した。まずは、あいつの近くにある棚の上にあるビー玉の1つを落とす。あいつの所じゃないよ?

別のところ。


トンッ!


と音がした瞬間、サササッと物凄いスピードで少し逃げた。

ふむ、行けそうだな。ビー玉をさらに何個か落として、1つのところに集める。

それをゴロゴロと1つずつ蜘蛛に向かって転がしていく!

蜘蛛は1つのビー玉にかなりダイナミックに避けてくれるから面白い。

ふふふ、ははは、はーはっはっはっ。

踊れ踊れ! まだ、終わらんぞ!

しばらく経つとダイナミックさが結構失われていた。

良し、これで誘導はしやすくなった。

あいつをさっきの棚の下辺りに誘導する。

そこで俺は棚の上に来て下にいるあいつにビー玉をぶつける。完璧だな!

この中で1番大きいビー玉を選んでっと。

さすがに重いな。でも、このぐらいの方が狙いやすい。

下を良く確認して、投入!


ゴロゴロ〜、ヒューッ、ガンッ!


クソッ! 脚に当たったか!

まだまだだ!

さらに、ビー玉を投入する。何度も何度も。

だけど、あっちも動き回ってる訳でなかなか仕留められない。

運が良かったのは一発目で若干、体に当たって結構、ダメージがあったというのと、片側の脚、3本が折れてた事だろうか? 残り1本じゃないか!

動きも大分遅くなったし、体力もほとんど無いだろうと判断した俺はあいつの元に近づく。

脚も大半が折れていてロクに動けない筈だ。正直、俺が焦れったいってのもある。

そうして慎重に近づいて……。

では、いただきまーす。


スススッ!


はっ!?


バサバサッ!!


あ、危な! あいつ、いきなり何すんだ!ちきしょう!

俺を喰おうとしやがった! いや、生存本能か……。

でも、俺は怒ったぞ!

俺は蜘蛛の背中目掛けて思いっきり飛んで後ろからガブッ! と頭に噛みついて、全ての脚を奴の胴体に絡みつかせる。

そして、かじる! かじりまくる!

やがて、動かなくなって俺は全てを平らげた。

やったぞ!

ジャイアントキリングだぞ!

でも、ちょっと反省だな。少し迂闊だったかもしれない。

危険があるのはしょうがないとしてそれをなるべく必要最低限にしたいよな。

今は、それはいいか。

この家から出て行こう。家の人からこそこそ隠れて玄関から外に出る。

今日は晴れですな。

とりあえずどういう場所に行くかは目星は付けてる。

学校だ。それは何故かって?

もちろん、一番安全だと思うからだ。食料も十分あるし、なによりあそこには殺虫スプレーというものが無い……はずだ。

という事で早速、向かおうと思うのだが、普通に行けるはずがない。

普通に道を歩けるわけじゃない。

誰かに踏まれるかもしれないし、鳥や猫、他の虫に見つかったら元もこうも無い。

それと、もう1つ問題がある。

そもそも学校の場所はどこにあるのか、だな。しかし、それについては抜かりはないさ!

なんのために朝早くでてきたと思っている。

それは、朝に登校している学生さんについて行く為に決まっているだろう。

そんな風に、しばらく待ち伏せをしていると、1人の男子学生さんが来た。

お? これは、天敵対策も出来るかもしれないな。

俺は素早く飛んでその男子学生さんが下に身につけているパーカーのその外に出ているフードの中に上手く入り込む。

いや〜、後は任せたぞ、少年。

後は、出るタイミングを見計らうだけだな。

しばらくすると周りも大分騒がしくなってくる。そろそろかな?

でも、こんな人の多いところで出るとこの少年がこの先、イジメに遭いかねない。そんなのは可哀想だろう?

この子はまだ、思春期なのだ。女の子とイチャコラしたいはず!

……俺も転生前はしたかったなぁ。どうでもいいね。

という事で隙を見てこっそりと脱出っと。

うわぁ……でけぇ〜。

ゴキブリ視点から見る校舎がでかすぎて笑えてくる。

びびっててもしょうがないか。

いざ、尋常に!

意気込みは強く! 行動は慎ましく! こそ泥の如く速やかに! よっしゃ行こうか!

え? なんか、カッコ悪い?

うるせえ! こちとらゴキブリなんだぞ!

泥臭く、しぶとく、執拗にを信条にしないとダメだろうが! これが、ゴキブリの三ヶ条みたいなもんだ。許せ。

…………こういう所がゴキブリに転生させられた原因なのだろうか。いやいや、だとしても記憶を持ったままとか鬼畜過ぎるぜ神様さんよ。

けどまあ、なんとかカッコ良く表現するなら闇に潜めし凄腕ハンター、かな?

うん、あんまりカッコ良くないな。

とりあえず、中に潜り込もうと思うけど……。

今はとてもじゃないけど入れないな。人が多すぎる。

みんなが登校し終わってから入ろうか。


しばらくして、やっと中に入れそうな時間になったので入った。

そして、いろいろ見て回った。

なんだかすごく広いな、この学校。

特に見たいものとかもないし適当なクラスに入る事にした。

たしか、2年1組って書いてあったな。

後ろのドアが開いていて、その近くに掃除道具を入れる為のロッカーが少し開いていたからそこに入った。

中では良い感じに狭い所があってそこで一休みする事にした。最近、睡眠が浅かった気がするしなぁ。

そこで、俺の意識は落ちた。



そんで、俺が目覚めて外を覗いてみると、さっきのハーレム野郎がいたってわけだ。

でも、あれだな。ここで見ててもつまらないし少し近づいてみるか。


「ねえ、ユウくん。明日、みんなで遊ばない? せっかくの休日なんだし」


ポニーテールが良い感じの元気っ子がイケメンを誘っている。さっきの話だと幼馴染らしい。

ユウくんとやら、ニヤニヤしてんじゃねぇよ。お前、表情わかりやすいなぁ。

てか今日、金曜日だったのか……。


千佳(ちか)、勇気は誘わなくて良い。3人で行こ?」


割とバッサリと切って捨てたのは、サイドテールが可愛らしく、背丈も胸も表情も控えめな子だった。

ま、まあ、その、なんだ、そんな表情をするなよ。勇気とやら。


「ウチは1人でも良いって言ったのに沙絢(さあや)は過保護だなぁ〜」


軽い感じに沙絢とやらをたしなめたのは、豊満な胸がなんとも堪らん姫カット様だ。少し眠そうだな。


「ダメ、凛奈(りんな)をどこかに1人で行かせるとかそんなの心臓がいくつあっても足りない……」

「し、信用ないなぁ〜」

「それだけリンちゃんを心配してるってことだよ!」

「うん」

「まあ、いっかぁ」


ま、まて、凛奈とやらは一体、何者なんだよ……。

てか、勇気くん表情コロコロ変わるな。あと、胸見過ぎな。


「まあまあ、俺の為にそんな……ってのは冗談で、俺はやめとくよ。用事があるんだよ」


こいつ、やっと喋り出したと思ったら何を口走りそうになってんだ?

おかげで、沙絢さんにすごい睨まれてたけど……。

お前、そういうのは中学で卒業してくれよ。あの子は俺に気があるんじゃないか? みたいなやつ……。

そんな風に話してる4人にだいぶ近づいたけど……これはなかなか壮観だな!

青、赤、黒ですか……。

いやはや、沙絢様と凛奈様が随分と大胆な色を……。

くそぅ……。この眩しい青春を見てると俺も高校生時代に戻りたくなるぜ。

道具入れに戻りますか……。

そう思って戻ろうとした時。


「わっ! な、なにこれ!?」

「魔法、陣?」

「眩しいよぉ〜」

「あ、G(ゴキブリ)だ」


バコッ! ベコッ! ドカッ!


なんか勇気くんに見つかったと思ったら殴られてた。何やってんだアイツ。

でも、俺も驚いたな。

いきなり地面が光り出すんだもんな。

数秒が経つと、突如、何もない白い部屋に居た。

ちょ、え?

なにここ?

さっきの4人もいないし……。

しばらく部屋を見渡すけどなにも起きないし、なにが起きてんだ?

しばらく時間が経つといきなりとんでもない美人が目の前に出現した。これが、女神ってやつなのだろうか……。きっとそうに違いない。

ぼーっと見てると女神らしき人がキリッと引き締まった表情で話を始めた。


「私は女神、メリファ。あなたは、異世界、フェンドールに勇者として〜ってあれ? 誰もいない? あれ〜?」


と、思ったらちょっと間抜けな顔で周りを見渡し始めた。


「おかしいなぁ。やっと4人目の説明が終わってまだ魂の反応があったから来たのに……」


あ、あの〜。ここですよ!

って言っても意味ないかぁ。


「ひっ! なんでこんなところにゴキブリが!?」


な、なんだと!?

女神って神様だよな?

よし、わかった! 俺も神とやらに話があるんだよちきしょうめが!

そもそも神が俺をゴキブリに記憶を持ったまま転生させたんだろ!? いや、勝手な推測だけどさ!

だからその反応はおかしくねぇか? アァン?


「ギィーー、ギギィ!!」

「わー、ごめんなさい、ごめんなさい。事情はこっちでもわかったから落ち着いて! ちなみに、その転生の事については私の管轄外だから、代わりに謝るから! 多分、またあの子が悪ふざけしただけだから! 気に入られたのよ! や、ヤッタネ!」


あの子はお気に入りにイタズラするのが好きなのよ! と女神様はまくし立ててきた。

ふう……。

しょうがないから許そう。悪くないみたいだし。


「あ、あなたも大変ね?」


ありがとうございます。

てか、心が読めるのね。今更だけど。

そう言えば最初すごいキャラ作ってたけどあれなに?


「あ、あれは、アレよ! 女神っぽさって必要でしょ?」


心中お察しします。


「なんか複雑! それと、薄々疑問に思ってるだろうから答えるわね。あなたは多分近くにいたあの4人に巻き込まれて召喚されたんだと思う。普通は虫がいても巻き込まれないんだけど、あなたの、紅大くん? の魂が強かったから呼ばれたんだと思う。あれは、魂に干渉してるからね」


なるほどなぁ。でも、虫って言われるとちょっとショックだなぁ。まだ、割り切れてないのかもな。

じゃあ、俺もその、さっき言ってたフェンドールに行くのか。


「そうなるわね〜」


どんな世界なんだ?


「ファンタジー世界よ! 剣も魔法もあるわよ!」


どっちも使える気がしないんですが……。


「だ、大丈夫よ! 魔法ぐらいなら多分いけるから! あっちの魔法は案外簡単で魔力が足りる限り想像した魔法はできるはずだから! それにあなたなら多分、ステータスってのがあるんだけどね? そこのレベルを上げれば進化とかできるかもよ?」


おお! それは楽しそうだけど前途多難だな……。

魔力とか絶対少ないし、レベル上げとか絶対、魔物狩りとかでしょ? 俺、倒せなくね?


「…………」


ほら、いった!

もう、終わりじゃね?

あっ! でも、向こうのゴキブリを食えば……。


「あ、あっちの世界にゴキブリは……いないわ。あなたが世界で唯一のゴキブリになる。 や、やったね?」


やったね! じゃねえよ!

手詰まりじゃねえか!


「だ、大丈夫よ! 勇者達にもあげたスキルってのを上げるから!」


それなら良いけどさ。


「ちなみに、向こうに行ったら持ってるスキルが全部わかるから大丈夫よ! 効果まではわからないと思うけど……。雰囲気でがんばって!」


メリファ様が気遣ってくれてるのがわかるから怒れないんだよな。

まあ、頑張ります!

んで、どんなスキルがもらえるんだ?


「そうね。……なにが良い?」


とりあえず、ちゃんと生きてたいから再生かな? 足とか取れちゃったら元もこうもないし。


「わかったわ」


メリファ様は一つ返事で返してこちらを向く。

あ、そう言えば、聞き忘れたんだけど、筋力のパラメーターというか数字みたいなのはあるの?


「あるにはあるけどそういうのは見れないわよ? ステータスには、スキルと称号、個人の事しか載らないの」


なるほどなぁ。じゃあ、筋力は上がるには上がるってことか。


「そうなるわね。あなた、いろいろ大変そうだしスキルも少しサービスしといてあげるわね」


メリファ様はそう言って、微かにウィンクをしてくれる。

マジ可憐です!


「じゃあ、そろそろ時間だし、フェンドールに送るわね? ちなみに勇者達と同じタイミングだから頑張ってね」


はい!

そして、俺は、また白い光に包まれてフェンドールに着いた。


ついて早々に、隠れられる場所に移動する。

勇気くんの肩に提げたバッグのポッケにコッソリ進入。

全部が、命懸けでしんどいな……。

勇気くん達は女神からの話があったのか動揺は見られない。まあ、良い国と人達だって言ってたしな。

そして、見据える先には額に汗を滲ませる、


「はあ、はあ、はあ。……ようこそ、勇者様方、私は、この国、モーフェン国の王女、セルビナと申します。お手数ですが早速、国王様に会っていただきたいと思います。そちらで説明を聞いていただければな、と」

「あ、ああ。わかりました」


セルビナ王女とやらがいた。

彼女は、金髪でまさに王女って感じで綺麗な人だ。

てか、勇気くんが答えたのは少し驚いたな。もう少しヘタレかと思ってた。若干、頬が緩んでるけど……。

そんなこんなで、みんな国王様の前です。

ッカァー! さすが、一国の王って感じだな。

勇気くんなんて緊張しまくりだったよ。

国王様の話は簡単に言うと、いずれ攻めてくるであろう邪神軍に対抗するために助けて欲しいんだとか。

まあ、話もなんやかんやあったけど4人とも助けてあげるらしい。

ぶっちゃけ俺に関係ないから、適当に聞き流した。

俺が知りたいのはこの世界の地理だよ。


「ああ、そうじゃった。お主ら、この城がある王都のすぐ近くに大きな森があるんじゃが、そこに人はまったくいないんじゃ……なんだあれは?」

「く、黒いのが勇気様の荷物から……」

「ユウくん、あの時、ゴキブリ拾ってたの!?」

「……ありえない」

「それは、ウチも引くなぁ」

「ち、違うって! 誤解だよ」


ごめんよ。勇気くん!

俺はここに留まるよりその森とやらに早く行かないといけないんだな!

人がいないとかそこ以外に住む場所とか絶対ないでしょ。

俺はその部屋からそそくさと出て行った。


「ご、ゴキ、ブリ……?」

「な、なんじゃそれは」


勇気達は少し驚いた表情を見せて、ここにはいないのかと納得した。


「それは、あとで説明しますよ。それより、さっきの森がなんです?」

「あ、ああ。その森には人がいないんじゃ。理由は、わかるかね?」


そう、問われた勇気達は思案顔になる。

しばらく、いろんな可能性を考えて、答えようと口を開く。


「……食べる物とか、魔物が多いからですか?」


確かに普通ならありえる話だろう。

だが、今回は違った。

国王が重苦しく言い放つ。


「あそこには、食べ物はあるかもしれんが生き物はとてもではないがいるとは思えんな」

「な、なんでですか?」

「魔力濃度が高過ぎるのじゃ。生半可な龍じゃ容易く死んでしまうかもしれんのう」


なるほど、と勇気達は思う。あそこはなるべく近づかない方が良さそうだとそれぞれ胸に刻んだのだ。


俺が部屋から出た時にそんな会話があったとかなかったとか。



はい、ということでやってまいりました、外です!

今、俺は街を、もっと言うと王都の空を飛んでいます!

そして、ここからでも見える鬱蒼とした森が見えております。

本当に人などいないのだろうか?

まあ、それは行ってこればわかることだから考えてもしょうがないな。

そして、やっと森の中に入ったんだけど、少し、違和感を感じた。

なんだか少し、体が重いというか。

まあ、興奮しすぎたのだろう。

そういえば、この世界に来てからステータスとやらを確認してなかったな。

俺はそう思って、頭の中で「ステータス」と、唱える。

そこで、俺が見た自分のステータスは…………。



ここは、勇者とそれに巻き込まれたゴキブリのいた場所、あの白い部屋だ。

そこで、女神、メリファは溜め息を着いた。


「やっと終わったわ。まさかゴキブリまで来るとは思わなかったけど、あの子はあの子で大変そうね……」


ふと、こちらに来たゴキブリ、四条紅大の魂を宿したゴキブリのことを思い出す。

あれは、キツイなぁ、と思いながら。


「ふふふ。面白い子でしょ?」


ふと、その白い部屋の中に別の声が響く。

メリファは、自分が良く知る友に、問う。


「あれは、さすがにかわいそうじゃない? マティア」


マティアと呼ばれた少女。

その子は、メリファが真っ白な大人な魅力を持つ美女に対して、マティアは黒がとても良く映える妖艶な美少女と呼んでも文句は言えないだろう。

見た目は15歳と言える姿。黒い髪を2つに纏めたツインテールがとても似合っている。

一体、どこからこんなにも艶かしくなれるのだろうかとメリファは、密かに思ってたりする。

メリファの意見に対してマティアはその美しい笑みを崩すことなく、さらに濃くして言う。


「可愛い子ほどいじめたくなるでしょ? さすがに勇者召喚に巻き込まれるとは、思わなかったけど、さすがに飽きてた頃だしちょうど良かったわ」


メリファは楽しそうに、まるで全力で恋を語るような友人を見て少し微笑む。


「本当に気に入ったのね」

「ええ、あの子の魂が、その在り方が、あの子の全てが愛おしいわ。さすがに今回はやりすぎかもって思ったけど……」

「あら? あなたも、反省するのね?」

「メリファったらひどいわ」


プイッと恥ずかしそうに顔を背けた。

メリファは思い出したように疑問を口にする。


「そういえば、あの子に加護は渡さないの?」

「それは、もっと良いタイミングで渡したいわ。好感度アップを狙って!」

「あ、あなたねぇ……」


思わず呆れてしまうメリファにマティアは、ハッと思い出したようにそれよりと続ける。


「メリファ、あなた、あの子にサービスし過ぎじゃない?」

「そう? ゴキブリなんだからあれぐらいあってもいいと思うのだけど……」


そう答えるメリファに思わず溜め息を吐いて、なぜそう思ったのかを説明する。


「ゴキブリだからこそ、よ」

「?」

「ふふふ、あの子のスキルは多分、今すごいことになってるはずよ?」


これはこれで面白いかもね、とコロコロとマティアは笑うのだった。



俺は、自分のステータスを見て


名前:なし

種族:ゴキブリ

レベル:1

魔力量:5

コモンスキル:清潔化、無痛、悪食

エクストラスキル:超感覚、食溜、超再生、超硬化、筋力強化、

レジェンドスキル:環境適応・極、強力免疫、繁殖の王、底無の生命力、成長補正・Ⅴ

称号:巻き込まれし者、生きた化石、唯一の種族、下剋上、同族喰い


絶句した。

思ったよりも元々のスキルがあったのだ。

というか、同族喰いってらあれだよな? 生まれて間もない時の奴だよな? ク、クロチくん……。

スキルの詳細がわからないのはしょうがないとして、雰囲気で大体どんなものなのかあたりはつけてる。

強ければ良いだけどなぁ。

でも、今はそれより、やっぱり体が重い……。

しかも、だんだん体が動かなくなって……。

そして、俺の意識はここで1回途切れたのだった。

どうだったでしょうか?


ちなみに、自分の初めての作品「付加勇者」もよろしくお願いします!

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