ヘッド
教団の改装が終わってから数日。
ノクス教団には、以前とはまったく違う日常が訪れていた。
かつての礼拝堂は、街の片隅にひっそりと存在するだけの場所だった。
看板を見ても興味を持つ者は少なく、扉を開けて中へ入る者などほとんどいなかった。
依頼を求める冒険者からも、信仰する神を探す人々からも、ほとんど相手にされない。
それが以前のノクス教団だった。
しかし今は違う。
神代神殿攻略。
Lv30ゴーレム討伐。
そして下位天使討伐。
短期間で成し遂げた数々の功績は、アクセルの街全体へ知れ渡っていた。
さらに、所属する十人全員がBランク以上へ昇格したという事実も、多くの人々を驚かせた。
「ノクス教団は、これからさらに大きくなる。」
そんな噂が街中で広がり始めていた。
そして、その噂を聞きつけた者たちが、毎日のように教団へ訪れるようになっていた。
「こんにちは! 入信希望です!」
「冒険者ギルドで噂を聞いて来ました!」
「《三力の導手》の教団ですよね!」
朝になると、教団の入口にはすでに数人の希望者が待っていることも珍しくなくなった。
以前なら、一週間誰も来ないことすらあった場所だ。
それを考えると、今の光景はまるで別の教団のようだった。
「いらっしゃーい!」
ノクスは今日も元気いっぱいに新人たちを迎えていた。
以前の彼女を知っている者が見れば、きっと驚くだろう。
昔のノクスは、どこか近寄りがたい雰囲気を持っていた。
神としての力を失い、自信を失っていた時期もあった。
しかし、神核の欠片を取り戻し、多くの信者を得たことで、彼女は本来の明るさを取り戻していた。
今のノクスは、怖い神様ではない。
誰よりも信者との距離が近い神様だった。
「神様ってもっと怖い人だと思ってました。」
新しく来た少女が、少し緊張しながら言う。
「えー! そんなことないよ!」
ノクスは頬を膨らませる。
「私はみんなと仲良くしたいだけだから!」
「でも、神様ですよね?」
「そうだけど!」
「じゃあ、もっと偉そうなのかと……。」
「そんなの嫌だよ!」
ノクスは笑う。
「一緒にご飯食べたり、お話したり、困った時に助け合う方が楽しいもん!」
その言葉に、新人たちの表情が柔らかくなる。
神を信仰するというより、仲間になる。
それがノクス教団の特徴だった。
礼拝堂には毎日のように笑い声が響くようになった。
以前の静まり返った空間とは違う。
人が集まり、会話が生まれ、そこには確かな活気があった。
俺はそんな様子を少し離れた場所から眺めることも増えていた。
正直、不思議な気分だった。
少し前まで、俺たちは誰にも知られていない小さな教団だった。
それが今では、多くの人間がこの場所を頼って訪れている。
変われば変わるものだと思う。
しかし、俺にはやるべきことがある。
新しく入った教団員たちを育てることだ。
俺は第一班の訓練場で木剣を握っていた。
訓練場はまだ小規模なものだが、新人たちが基礎を学ぶには十分な広さがある。
土の地面には何度も剣を振った跡が残り、壁際には訓練用の武器が整然と並べられている。
以前のノクス教団には、こんな場所すらなかった。
だが今では、未来の冒険者を育てるための環境が整っている。
「カイン!」
「はい!」
俺の声に、青年が素早く反応する。
木剣を握り、正面から向かってくる。
「はぁっ!」
勢いのある一撃。
しかし。
「甘い。」
俺は木剣で軽く受け流す。
「足が止まってるぞ。」
「相手の剣を見るだけじゃなく、次の動きを考えろ。」
「攻撃するときに自分の身体がどう動いているか意識するんだ。」
「はい!」
カインはすぐに構え直した。
彼は第一班の中でも特に成長速度が速い。
最初に出会った時は、強者への憧れだけが先行していた。
しかし今では、自分自身が強くなるために努力している。
その変化を見るのは嬉しかった。
「もう一度。」
「はい!」
再び木剣がぶつかり合う。
その横では、ルナが神力操作の練習をしていた。
「神力を一点に集めろ。」
俺は彼女へ声を掛ける。
「焦るな。」
「力を無理やり押し込もうとすると、神力は乱れる。」
「呼吸を合わせるんだ。」
「自分の中にある力を探すように。」
「は、はい!」
ルナは目を閉じる。
手のひらへ白い光が集まっていく。
最初は不安定だった光が、少しずつ形を持ち始める。
小さな光球。
しかし、それは確かな成長の証だった。
「できた……。」
ルナが驚いたように呟く。
「上達してきたな。」
「本当ですか!」
ルナは嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、俺も自然と笑う。
教える立場になって初めて分かったことがある。
誰かが成長する姿を見ることは、自分自身が強くなることとは違う喜びがある。
自分が経験してきたこと。
失敗したこと。
苦労したこと。
それを誰かへ伝えて、その人が少しずつ強くなっていく。
それは冒険者として戦うこととは別の達成感だった。
「アステル!」
その時だった。
訓練場の入口から声が響く。
振り向くと、レオンがこちらへ走ってきていた。
「どうした?」
俺が尋ねると、レオンは少し息を整える。
「ギルドから呼び出しだ。」
「またか。」
俺は思わず呟いた。
今週二度目だ。
最近、冒険者ギルドから呼ばれることが増えている。
以前なら、こちらから依頼を探しに行っていたのに、今では向こうから話が来ることも多くなった。
それだけノクス教団が注目されているということなのだろう。
「今回は何だ?」
「詳しい内容は聞いてない。」
レオンは肩をすくめる。
「でも、悪い話じゃなさそうだ。」
「そうか。」
俺は木剣を壁へ立て掛ける。
「なら行くか。」
教団が成長したことで、俺たちの役割も変わってきた。
ただ強敵を倒すだけではない。
仲間を守る。
教団を支える。
そして、次の未来へ進む。
そのために必要なものなら、確認する必要がある。
俺はレオンと共に訓練場を後にした。
アクセル冒険者ギルド。
以前なら、俺たちがこの場所へ入ると向けられる視線は決して好意的なものではなかった。
「弱小教団。」
「変わった神を信仰するだけの集団。」
そんな風に見られていた時期もあった。
依頼を探して掲示板の前へ立っても、周囲から聞こえてくるのは冷たい笑いや興味のない声ばかりだった。
しかし、今は違う。
扉を開けた瞬間、多くの冒険者たちがこちらへ視線を向ける。
だが、その視線には以前のような侮りはない。
驚き。
尊敬。
そして、少しの期待。
それが混ざったものだった。
「ノクス教団だ。」
「《三力の導手》本人だぞ。」
「隣にいるのは《鉄壁の剣》レオンか。」
小さな声が周囲から聞こえる。
以前なら名前すら知られていなかった俺たちが、今では街の冒険者たちに知られる存在になっている。
その変化を改めて実感しながら、俺たちは受付へ向かった。
受付嬢は俺たちを見るなり、すぐに笑顔になった。
「お待ちしておりました。」
「ギルドマスターがお呼びです。」
「やっぱりヴァルドか。」
レオンが苦笑する。
最近、ギルドから呼び出される回数が増えた。
以前は依頼を探す側だったのに、今では向こうから話が来ることも多い。
それだけノクス教団が注目されているということなのだろう。
俺たちは受付嬢に案内され、二階へ向かった。
階段を上がると、そこには冒険者ギルドの重要な資料が保管されている区域がある。
一般の冒険者が立ち入ることはできない場所だ。
その奥にある執務室。
扉を開けると、ヴァルドはすでに待っていた。
「来たか。」
ギルドマスターは短く言うと、机の上に広げられた地図へ視線を戻した。
部屋の中にはいくつもの資料が積まれている。
魔物の活動記録。
冒険者たちの報告書。
街周辺の危険区域を示した地図。
その中心にあったのは、アクセルの街と周辺地域を描いた大きな地図だった。
「今日は一つ、また依頼をこなして貰いたい。」
「依頼?」
俺が聞き返すと、ヴァルドは頷いた。
「ああ。」
「ただし、今回は単純な討伐依頼ではない。」
その言葉に、俺とレオンは自然と表情を引き締める。
ヴァルドは腕を組み、ゆっくりと話し始めた。
「お前たちの活躍は、この町でもかなり話題になっている。」
「神代神殿攻略。」
「Lv30ゴーレム討伐。」
「そして下位天使討伐。」
「短期間でこれだけの功績を上げた教団は、過去にもほとんど存在しない。」
「ですが。」
ヴァルドは一度言葉を区切った。
「まだこの街には、お前たち以外にも大きな勢力を持つ教団が存在する。」
机の上に、一枚の別の資料が置かれる。
そこにはアクセルの街に存在する教団勢力図が記されていた。
「現在、アクセルには七つの大規模な教団が存在している。」
「その中でも最大勢力なのが、キリスト教団だ。」
地図上で、一際大きく描かれた名前。
キリスト教団。
その信者数は二千人以上。
アクセルの街でも最大級の規模を誇る教団だった。
「長い歴史を持ち、複数の高ランク冒険者を抱えている。」
「所属する聖職者も多く、治癒や支援能力に優れている。」
ヴァルドは説明を続ける。
「その次に位置するのが、千人規模の教団が二つ。」
「さらに数百人規模の教団が三つ存在する。」
そして。
最後に指を置いた場所。
そこには小さく描かれた名前があった。
ノクス教団。
「現在のお前たちは、勢力だけで言えばまだ最下位だ。」
「……。」
その言葉に、俺は静かに地図を見る。
確かにそうだ。
戦闘能力だけを見れば、俺たちは急成長した。
しかし、組織として見ればまだ小さい。
信者数。
施設。
資金。
人材。
どれも大教団には及ばない。
「幹部の人数も少ない。」
「Sランク冒険者も存在しない。」
「歴史も浅い。」
ヴァルドは現実を正しく伝える。
だが、その声には否定的な意味はなかった。
「だが。」
「それでも、お前たちには可能性がある。」
ヴァルドは地図を広げる。
そこには街の周辺一帯が描かれていた。
各地には赤や青の印が付けられている。
「ここ数か月で、街周辺の聖物と武物の活動が活発化している。」
「特に北西の神聖森林。」
ヴァルドは赤い印を指す。
「ここでは高レベルの聖物の目撃情報が増えている。」
「さらに東の廃戦場。」
今度は別の場所を指す。
「こちらでは武物の活動が急増している。」
武物。
かつて戦場で使われた武器や防具に意思が宿った存在。
聖物とはまた違う危険性を持つ魔物だ。
「原因はまだ分かっていない。」
「だが、何か大きな変化が起きている可能性が高い。」
部屋の空気が少し重くなる。
ただ強い魔物が増えているだけではない。
世界そのものが変化している。
そんな印象だった。
「これから、討伐依頼は確実に増えるだろう。」
「そして、その中には今まで以上に危険な依頼も含まれる。」
レオンが腕を組みながら笑う。
「つまり。」
「俺たちの出番ってことか。」
ヴァルドは頷いた。
「ああ。」
「お前たちがどこまで成長できるのか、それを試す機会でもある。」
「まだ街の主力は、キリスト教団をはじめとする大教団だ。」
「しかし、ノクス教団は急成長を続けている。」
「焦る必要はない。」
「一つずつ実績を積み重ねろ。」
その言葉を聞きながら、俺は地図を見る。
確かに、今の俺たちはまだ大教団には届いていない。
だが。
最初から強かったわけではない。
誰にも知られていない小さな教団だった。
仲間も少なかった。
金もなかった。
それでも、一つずつ積み重ねてきた。
ゴーレム戦。
神代神殿。
下位天使。
その全てが、今の俺たちを作っている。
なら、これからも同じだ。
一つずつ勝ち取っていけばいい。
「分かりました。」
俺は頷く。
「依頼を受けます。」
ヴァルドは満足そうに笑った。
「期待している。」
俺たちは執務室を後にする。
翌朝。
アクセル冒険者ギルドで受けた依頼は二つだった。
一つ目は、街周辺に出現した聖物《聖ゴーレム》の討伐。
そしてもう一つは、昨日ギルドマスター・ヴァルドから直接依頼された、廃戦場に現れた武物《鬼頭千肢》の討伐だった。
どちらも通常の冒険者なら簡単に受けられるような依頼ではない。
聖物とは、神力を宿した特殊な存在だ。普通の魔物とは違い、強力な防御力や特殊な能力を持つことが多い。
さらに武物は、過去の戦場や武器に残された強い念や力が形となった存在であり、戦闘能力に特化している。
つまり、今回の二つの依頼は性質こそ違うものの、どちらも高い戦闘能力を要求されるものだった。
しかし。
今のノクス教団には、それに挑むだけの力が少しずつ集まり始めていた。
俺は教団の会議室で地図を広げ、集まった仲間たちへ視線を向ける。
「今回は二手に分かれる。」
地図には、聖ゴーレムが確認された場所と、廃戦場の位置が記されている。
「聖ゴーレムは第一班の新人育成も兼ねる。カインとミーナ、お前たち二人で行け。」
その言葉を聞いた瞬間、カインは目を見開いた。
「えっ、俺たちだけですか?」
驚くのも無理はない。
少し前まで、彼らはまだ冒険者として経験の浅い新人だった。
強力な魔物と戦う時は、必ず先輩冒険者や仲間の助けを借りるのが普通だ。
しかし、俺は首を横に振った。
「ああ。」
「相手はLv20だ。」
「今のお前たちなら十分勝てる。」
カインとミーナは第一班の中でも特に成長が早い二人だった。
カインは剣術と気の扱いに優れ、ミーナは槍による攻撃速度と正確性に才能がある。
二人のレベルを合わせれば30を超える。
もちろん、単純な数字だけで勝敗が決まるわけではない。
経験。
判断力。
仲間との連携。
それら全てが必要になる。
だが、いつまでも誰かに守られているだけでは成長できない。
だからこそ、今回は二人に任せることにした。
「ただし。」
俺は少し声を低くする。
「危なくなったらすぐ撤退しろ。」
「勝てない相手に無理をするな。」
「それだけは絶対に守れ。」
冒険者にとって一番大切なのは、生きて帰ることだ。
勝利することも大切だが、死んでしまえば次の戦いはない。
カインとミーナは顔を見合わせる。
そして、力強く頷いた。
「任せてください!」
「必ず討伐してきます!」
二人の声には不安よりも、挑戦する覚悟が込められていた。
「俺とレオンは鬼頭千肢を討伐する。」
俺は続けて言う。
「相手はLv30。」
「油断はできない。」
Lv30という数字は、今の俺たちにとって決して低くない。
下位天使との戦いを経験したとはいえ、強敵であることに変わりはない。
特に武物は、戦闘に特化した存在だ。
どんな能力を持っているか分からない以上、警戒する必要がある。
すると、隣にいたレオンが大剣を肩へ担ぎながら笑った。
「ようやく歯ごたえのある相手だな。」
レオンにとって強敵との戦いは恐怖ではなく、己を試す機会だった。
「楽しそうだな。」
俺が言うと、レオンは豪快に笑う。
「そりゃそうだろ。」
「強くなるには、強い相手と戦うしかないからな。」
その言葉に、俺も頷いた。
こうして二つの討伐隊が決まった。
一方は、新人たちが自分の力を試す戦い。
もう一方は、俺たち幹部がさらに上を目指すための戦い。
それぞれ違う目的を持ちながら、俺たちは教団を出発した。
数時間後。
街周辺に広がる森。
そこは普段なら、多くの冒険者が薬草採取や低級魔物討伐に訪れる場所だった。
しかし最近では、聖物の活動が増えている影響で、奥地へ入る者は減っていた。
その森の奥。
カインとミーナは、巨大な存在と向き合っていた。
「……あれが。」
カインは息を飲む。
目の前に立っているのは、巨大な白い岩の巨人だった。
その身長は五メートルを超えている。
全身は白い岩石で覆われており、表面には神力が流れるような光の筋が走っていた。
ただの岩ではない。
一つ一つの欠片が強大な神力によって強化されている。
胸の中心。
そこには青白く輝く聖核が存在していた。
「あれが聖ゴーレム……。」
ミーナも槍を握る手に力を込める。
「緊張するね。」
巨大な敵を前にすれば、恐怖を感じるのは当然だった。
しかし。
ミーナは一度深呼吸する。
「でも。」
「アステルさんなら『できる』って言ってくれた。」
カインも剣を構える。
「ああ。」
「だったら、やるしかない。」
その瞬間。
聖ゴーレムの身体が動いた。
巨大な腕がゆっくりと持ち上がる。
次の瞬間。
ドォォン!!
巨大な拳が地面へ叩きつけられた。
衝撃波が周囲へ広がり、大地が大きく砕ける。
しかし。
二人は左右へ飛び退き、攻撃を回避していた。
「今だ!」
カインが叫ぶ。
剣へ気を集中させる。
「はあぁぁっ!」
一歩踏み込み。
全身の力を一つにまとめた斬撃を放つ。
ズガァン!!
聖ゴーレムの右腕に亀裂が走った。
そして。
次の瞬間。
巨大な腕が砕け散る。
「続けるよ!」
ミーナが走る。
槍へ力を集中させ、一点突破の構えを取る。
「ここだぁぁっ!」
槍先は一直線に聖核へ向かう。
硬い岩。
強力な防御。
しかし、弱点は存在する。
パリン――。
聖核が砕けた。
その瞬間。
聖ゴーレムの動きが止まる。
巨大な身体はゆっくりと崩れ始め、白い光の粒となって消えていった。
「や、やった……。」
カインは呆然と立ち尽くす。
「俺たちだけで……。」
ミーナも槍を下ろし、大きく息を吐く。
「倒せた……。」
二人は顔を見合わせる。
そして。
大きく笑った。
それは、自分たちの力だけで成し遂げた初めての討伐だった。
一方その頃。
廃戦場。
かつて多くの戦いが行われた場所には、崩れた城壁と錆びた武器が大量に残されていた。
その中心。
朽ち果てた城壁の前に、一体の異形が立っていた。
頭だけ。
巨大な人間の頭部に、小さな手足が生えている。
赤く染まった瞳。
裂けた口。
そして、不気味な笑み。
「あれが…… 鬼頭千肢か。」
俺が呟いた瞬間。
『ヴェ?』
低い声が響く。
こちらの存在に気付いたようだ。
『ヴォォォォ!!』
ヘッドが叫ぶ。
直後。
地面に黒い魔法陣がいくつも浮かび上がった。
そこから現れたのは、腕だけの武物。
脚だけの武物。
胴体だけの武物。
どれもLv5程度の小型武物だった。
しかし。
それらはただの雑魚ではない。
ヘッドは自身の身体を作るために、周囲の部位を集める能力を持っていた。
腕が胴体へ。
脚が胴体へ。
最後に頭部が乗る。
ギギギギギ……。
金属が擦れるような音と共に、巨大な人型武物が完成した。
「なるほど。」
レオンが笑う。
「部下を集めて、本体を作るタイプか。」
完成した武物から放たれる力は、間違いなくLv30相当だった。
「アステル!」
「雑魚を頼む!」
「ああ!」
俺は魔力を集中させる。
「火球!」
炎の弾丸が飛ぶ。
「火球!」
「火球!」
「火球!」
合体前の腕や脚を次々と破壊する。
一体でも残せば、再び完成される可能性がある。
「一体でも減らせば完成しない!」
「了解!」
レオンが走る。
大剣へ力を込める。
「おおおおおっ!!」
ドォン!!
一撃。
胴体が真っ二つに切り裂かれる。
『ヴゥゥゥ……』
鬼頭千肢は再び魔法陣を展開しようとする。
「させるか!」
俺は右手を向ける。
「ホーリーボルト!」
黄金の光が魔法陣を貫く。
召喚そのものが破壊された。
「今だ!」
「おう!」
レオンが全身へ気を纏う。
「おおおおおっ!!」
大剣が振り下ろされる。
ズガァァン!!
ヘッドの額へ深い亀裂が入る。
『グ……ッ……。』
しかし、まだ倒れない。
「アステル!」
「合わせるぞ!」
「ああ!」
俺は右手へ魔力と神力を集中させる。
「ホーリーボルト!」
同時に。
「斬空断!」
黄金の光と漆黒の斬撃が走る。
二つの攻撃は寸分違わず鬼頭千肢へ命中した。
轟音。
衝撃。
そして。
頭部が粉々に砕け散る。
残った腕や脚も力を失い、灰となって崩れ落ちた。
静寂が戻る。
「終わったな。」
レオンは大剣を肩へ担ぎ、笑った。
「思ったより面白い相手だった。」
俺は地面へ落ちた黒い武石を拾い上げる。
その時。
遠くから声が聞こえた。
「アステルさん!」
振り向くと、カインとミーナがこちらへ向かって走ってきていた。
その表情は明るい。
「成功しました!」
「俺たちだけで倒せました!」
俺は二人を見る。
「そうか。」
自然と笑みがこぼれる。
新人たちも成功。
俺たちも成功。
ノクス教団は、また一歩強くなった。
夕日に照らされながら。
俺たちは討伐の証である武石を手に、アクセルの街へと帰路についた。




