第30話:化かし合いのその先へ
是非読んでいただけると嬉しいです!!
旦那様が部屋を去った後、私は静まり返った自室の隅の畳を上げて床下の隠し空間を開いた。
暗がりのなかに整然と並ぶ、これまで必死になって貯めてきた大量の金貨や町娘の服。
それらをじっと見つめながら、私は必死に自分へと言い聞かせた。
(……落ち着きなさい、私。元々、時期が来たら私はこの家を出て、念願の隠居スローライフを送るつもりだったんだから。あの禍々しい悪霊のことも、本来の私には一切関係ないわ!……だけど……っ)
しかし、そうやって必死に頭で自分を律しようとすればするほど、さっき頭を撫でてくれた旦那様の手の温もりや、あの慈しむような優しい瞳、そして何より『君のことは僕が絶対に守るから』という、あの真っ直ぐな誓いの言葉が頭から離れない。
実家の篝家で無能と虐げられてきた私を一人の人間として見てくれて、「君は何も心配せず、ここで笑っていればいい」と、世界の濁りから自分を庇ってくれた優しい旦那様。
その旦那様の壮絶な孤独と底知れない優しさを知ってしまった今、私の胸は、彼を置いていくことへの猛烈な罪悪感と――何よりも、旦那様が心配でたまらないという強い想いでいっぱいになっていた。
私が膝の上でぎゅっと両手を握り締めていると、いつの間にか目を覚ましていた琥珀が、トコトコと私の方に向かって歩いてきた。
琥珀は私の複雑に揺れる心を察したのか、そっと愛らしい小さな頭を私の足元に擦りつけてくる。
「きゅぃ、きゅ~う……」
まるで「僕はいつでもあなたの味方だよ」と励ましてくれているかのような温かい鳴き声に、とうとう堪えきれなくなった涙がぽろぽろと零れ落ちた。
私は琥珀を両腕で強く抱きしめると、そのふかふかとした温かい毛並みに顔を埋めた。
(……決めたわ。この屋敷の不可解な事件がすべて解決するまで……私は、あの優しい旦那様を全力で支え抜いてみせる!)
私は涙を拭い、床下の金貨たちをもう一度見つめてから、今度は迷いのない手つきで静かに畳を元に戻した。
(……この離縁準備品は、いつか本当に自由を手に入れるその時まで、ここに眠らせておくわ。……でも、それは今じゃない。私が私のやり方で旦那様を守りきったその時こそ、これの本当の出番よね!)
私が新たな決意を胸に気合いをいれていた、まさにその瞬間。
遠くの夜空でゴロゴロと重苦しい雷鳴が轟き、屋敷を囲む水の結界が、不穏な嵐に反応して微かにキィンと共鳴した気がした。
それはこれから始まる大悪霊との壮絶な戦いの予感。
けれど、不思議ともう私の心に恐怖はなかった。
私は琥珀を優しく膝の上にのせ、微笑みながら言った。
「……さあ、琥珀。おやつの時間にしましょうか!」
旦那様への偽りのない想いと確かな覚悟を胸に秘め、物語は嵐吹き荒れる第2部へと続いていく。
第一部完結しました!
これまで読んでいただき、ありがとうございました!
第二部は作成でき次第、投稿したいと思っています!
よろしくお願いします!




