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白い聖夜の逆さま密室_⑧
三時間ほどで会はお開きに。龍馬は明日出勤らしく、お土産の温泉まんじゅうを手に帰って行った。少しでいいから、小園くんにも分けてあげて欲しい。
寝室のドアを開けると、当然ながら部屋は真っ暗。浮かびかけた幻覚やら幻聴やらを消し去るべく、さっさと電気をつける。
「…芹谷、か」
芹谷泉。
まさか碧波自身からその名前が出るとは思いもしなかった。
まだ仕事に明け暮れていた、今年の春のことを思い出す。
真っ赤な壁と、動かない体。
どす黒い感情が滅茶苦茶に混ざった、幼馴染の顔。
誰が殺したのかは考えるまでもなかった。
わかっていながら、共に血溜まりへと踏み入った。その方が彼女のためになったから。
ちょうど良くと言うべきか、証拠は一つも残されていなかった。
ベッドに腰掛け、向かいにある壁を眺めた。頭の中で、あの日見た血痕の形を描いてみる。今頃奴はどこにいるんだか。
俺たちそれぞれに失望やら、不甲斐なさやら、少しの感謝を残して。
「二度と会わなければ、一番いいんだけどな」
誰に聞かせるでもない呟きは、深夜の静寂に吸い込まれていった。




