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吉野宮暁良と隠された扉 5

 それは次に討伐しに行こうと思っているマガツモノについて調べる為に図書室を訪れた時の事だった。


 一緒に調べ物をする予定だった遼が私情により来られないということで俺は一人、人が疎らな図書室で目当ての本を探し、それを借りて部屋に戻る予定でいた。


 そしてようやくその本を見つけ、本棚からそれを抜き出した、その時。


 その隣の見るからに年代が経った手帳より少し大きいくらいのノートがカサっと音を立て地面に落ちる。


 「なんじゃこりゃ···」


 独り言を呟きながら、目当ての本をそっちのけでそのノートを手に取る。


 そして俺はそれをそっと開く。


 そのノートは全てボールペンで直に書かれていて、紙質は明らかに数十年は経過していそうな感じに劣化し、全ページに渡って茶色がかっていて、恐らく何回か水に濡れたのではないかと思えるくらいに1ページ1ページがゴワゴワとしていた。


 「ごくり···」


 そして俺は恐る恐るそのノートを開く。


 なんだか嫌な予感はしていたが案の定、それは正しく例の噂に深く関わるものであった。


 「九條学園連続失踪事件の調査ノートって感じか···?」


 そこに書かれていた事をサラッと確認し、その正体を察した俺は最後の方のページを開く。


 「えーっと、持ち主は···木戸川鶴子?」


 その人物が正確に何者なのかは俺には分からなかったが、当時の生徒なのか、はたまたこの失踪事件を調べるために国から派遣された人物なのか、とにかくその辺の人である事は推測できた。


 また、やはり劣化が激しいのと手帳という事で少し雑に書かれているせいか、この場では詳しく読む気になれず、俺はなにか気を引くものは無いかとパラパラとページをめくる。


 すると。


 「!?」


 そこにはあの掲示板に貼られていた失踪したと思われる人物の写真が5人分5ページに渡って貼られていて、同時に学歴や出身地などの個人情報も記されていた。


 「山園美枝子16歳···倉石たま15歳、新堂理恵、29歳教師!?···」


 !?···居なくなったのは生徒だけではなかったのか。


 俺はドンドンと木戸川鶴子の調査ノートにのめり込んで行ってしまう。


 そして、さらに詳しく写真のページを見ると、その失踪した人物たちの中で1番昔だと今から80年ほども前の人であり、ページを進めるごと写真技術が上がっていっていて、そういう事から長年に渡って疎らに失踪事件が起こっていた事が伺えた。


 続いてページを捲っていくと案の定、噂の封印されているマガツモノについての情報が目撃証言を元に描かれた絵と共に記載されていて、風水や地理的な問題や、緊急事態の時にすぐに戦う人員を集められるとの目的からこの場所に封印されたのでは無いかとの推測が筆者によってなされていた。


 と、ここまではだいたいあの掲示板に書かれていた内容と一緒であり、俺も知っていることであった。


 だが続いて俺にとって初めて見る情報が示される。


 「これは建物の見取図?」


 そのページには先程とは打って変わってページ丸ごと使い、とても丁寧に定規を使って描かれた建物の見取り図があり、そこには隠された扉の場所がすでに明記されていた。


 しかし、俺はある異変に気づく。


 「これ九條学園とは微妙に違うな。···いや建て直されたのか?」


 つまりここに書かれているのは九條学園の旧校舎であり、扉が今のどこなのかは全く分からないという事になる。


 俺はほっとした様な、ガッカリしたような気持ちになりながらさらに読み進めると、そこには雑なスケッチで扉の様な絵が描かれていた。


 そして俺はゆっくりとその次のページを開く。


 「!!?」


 それは恐らく最後に筆者が書いたページなのであろう。

 

 その部屋の中の特徴的なものを絵で描きながら、それについての感想や説明を書き殴っていたであろう筆者の文章は途中で途絶えてしまっていた。


 「···」


 この筆者は恐らくここで···。そう考えるとゾクッとする。


 「はあ···ふう」


 俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

  

 そして念の為、そのノートに貸出カードなどが着いていないかを確認する。


 うん、付いているわけないよな。ちょっと付いていて欲しかったけど。


 それから更に少しの時間どうするかを考える。···が俺は直ぐに意を決した。


 そして俺は本の貸出の手続きを終えると、2冊の本を持って図書室を後にした。 

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