エロ本奪還作戦 11
「お姉様の本を探すにゃ!」
姉小路さんはそう言うと散らばった本の山の中にいち早くて向かって散策を開始し、それに続いて本庄さんと黒木さんも俺の本探しに参加する。
まずい。
正直に言って本庄さんと黒木さんのお願いは、なんの条件が無くても受け入れる事が出来るし、姉小路さんのも立場上嫌がってはいるがその気持ちは滅茶苦茶嬉しい。
まずいというのはその事ではなく、シンプルに彼女達にあの本を見つけられ表紙や中身を見られてしまう事だ。
そう考え、俺も彼女達から数秒遅れる形で本探しに参戦する。
「おい吉野宮、取り敢えずどんな本か教えろよ」
「えっ!?い、いやー、恥ずかしいですわ」
言えねー。ほぼ100%引かれてしまう。
「見られて恥ずかしいと言うことは日記や自作小説など自分で作ったのかあるいはBLもの、もしくは殿方が読まれるようなエッチな内容のもののどれかですにゃね。でも1番最後は考えにくいので自作の物かBLものだと推測できますにゃ」
「は、ははは」
姉小路さんの推測に俺は苦笑いを浮かべる。
だからこの子、そんな変な口調でなんで有能なムーブかましてくるの?俺のこと女だと思ってるからなんとか助かったけどさ···。
「これ何やってんの暁良?」
「ツヅリコジキに食われた俺の本を見つけたら俺が何でも言う事を聞くって流れになってんだよ」
「ふーん」
と遼はそう言うと俺から少し離れると徐ろに鎧鬼を召喚して共に本を探し始める。
「おい、じゃない···ちょっと遼さんズルいですわよ。こっちは神具の使いすぎで斬像が使えないんですのに」
「そんなの知らないよ······あ、あった」
「なんですって!!?」
俺は愛しの本の存在を確認する為に誰よりも先に遼の元に駆け寄る。
この"かわいそうなのは抜けない?は?甘えんな"と言わんばかりの表紙、間違いない。
「ちっ、何だ見つかっちまったのか?」
「悔しい···」
「どんな本か気になりますにゃね」
俺の本が見つかった事を知り集まってくる姉小路さん達。
「先程、姉小路さんが予想したようなものですわ、ははは。」
と俺は誤魔化しつつ制服の上着の下に隠すようにしまう。
そしてそのまま苦笑いを続け答えを濁す形で姉小路さん達の追求を回避する。
「あーあ、せっかく吉野宮とガチでやれると思ったのにな」
「···残念」
「ああ、いやいや本庄さん、今日の所は厳しいですが勝負ならいつでも受けてたちますわよ。それに黒木さんも私達は合体技をした仲ですわよ、つまりすでに友達である事は明白です」
それから俺は残念そうにする2人をフォローするように笑いかける。
「といことは私のも!?」
「姉小路さんのは保留ですわ」
「えー、なんでですにゃ〜」
と俺達がそんなやり取りをしていると上の観客席から学園長と桐原先生、東雲さんが降りてくる。
「さっきのは巨大過ぎてそうは思えなかったがツヅリコジキだったのか?」
「ええ桐原先生。こいつは···!?」
俺は今回の件について事情を説明しようとするがあることに気付き遼の方を見る。
「遼さん。研究員の男がいませんわ!」
「!?。たしかに」
そして俺達はお互いの顔を見合ったまま小さく頷くと急に走り出す。
「おい、一体どうしたんだ」
「事情は後で話しますわ」
後ろから聞こえてくる桐原先生の言葉に俺達は振り返ること無く返事をしてそのまま模擬戦場を後にした。
「一体どこに行こうというのです?」
「ひぃ」
俺はコソコソと周りを気にするとように駐車場の車へと向かっていた研究員の男の首元に刀の峰の方を当てながら呼び止める。
「残念ながら被害が大きくなりすぎました。あなたを庇うことはもう不可能ですわ」
「ち、違うんだ」
「何が違う言うんですの?」
「あ、あああ、あ、あのツ、ツヅリコジキは俺が連れてきた奴じゃないんだ!!」
「なにを白々しいことを」
「ほ、本当なんだ。車に行けば分かる」
と、研究員の男があまりにも必死に言うので仕方なく俺と遼は男に着いて行き彼が乗ってきた車まで行くと彼はツヅリコジキを入れてきたと思われるケースを取り出す。
「ほ、ほら見てくれ」
そして男はゆっくりとケースを開ける。
「ギ、ギギ?」
「は?」
そこには紛れも無く、ツヅリコジキが存在していた。
「···ん?」
そうか、そういう事かよ。
俺はツヅリコジキのいるケースの奥にビデオカメラの存在を確認し、この男の意図を理解する。
「盗撮してたって訳か」
「あ、ああ、だが中身を見てくれ、俺が撮っていたのはトイレや更衣室みたいなものじゃ無いんだ」
「いや盗撮って時点で悪いだろ······ってこれ神具を使ってる時の奴かよ」
「ああ、御子が神具を使っている映像はマニアに高く売れるんだ。それでつい···」
なるほど。
俺はこの男の罪について考える。
一応、コイツはツヅリコジキを逃がしている訳ではなく、学園で暴れ回っていたのは何処かから入ってきた違う個体だった。
結局の所、コイツの罪は俺達が神具を使っている映像を盗撮したって事くらいか。
いや、盗撮とかは完全に犯罪な訳だが···うーん。
それから更に少しの間考え、俺は結論を下す。
「私もあなたがツヅリコジキを逃がしたと決めつけて多少乱暴な事をしてしまいましたからね。今回だけは超特別に大目に見て上げましょう。ただしこれは没収しますいいですわね?」
「えっ?暁良?いいの」
「ええ、まあいいでしょう。貴方もそれでいいですわね?」
「あ、ああ!?それでいい!!よ、よろしくお願いします」
「あなたが潔白だったという事は伝えておきますから、早くこの学園を後にした方がいいですわよ」
「あ、ああ本当にありがとう!!」
と男はそう言い残すと、早々に車に乗りこみ、素早くエンジンを掛け学園を去っていく。
「おい暁良?本当にいいのかよ?」
「え?まあ、このくらいな〜」
俺は映像を再び確認しつつ、遼の質問に答え、その後ビデオカメラを遼に向かって投げる。
「それよりよ、大野木さんにそれ売ってもらおうぜ。あの人なら足が付かない様な方法くらい知ってるだろ?ああ、もちろん顔を隠すとかはして貰ってな」
「なるほどね」
まあ身体測定での出費が痛かったし、今回の件では俺達は大活躍だった、このくらいの見返りはあってもいいだろう。
と俺と遼は悪代官と越後屋の様な笑みで笑いあった。




