40話 交戦
ロギアは周囲を警戒しながらアリアに建物の奥へと促す。
数メートル程走った時部屋の奥のタイルの地面に人影が見え、それは物音を立て走って来ている事に気付く。
白い服、ロギアは視界にそれを捉え「こっちだ、アリア」咄嗟に進む方向を変え傍にある物産展コーナーへと走りこむ。
改めて橘と言う男が何処まで見えていたのか恐怖に感じる。あの広場で挟撃されていたら確実に逃げ切れなかっただろう。
正面から来たтермит(サーマイト)(白蟻)は抑えている、それだけでもこちらの逃げおおせる可能性が桁違いな程上がる。
「居たぞッ!」
それに数テンポ遅れて銃声が響き渡るが、それだけで二人に弾は当たらない。
崩れている土産物の残骸を飛び越え二人は階段を駆け下り地下通路内へと入ると「行けぇ! あの二人を逃すなぁ!」怒声が後方で聞こえた。
少し大きめのホールへと出るとアリアを傍の物陰へと押し込み自らも入り込む。
息が荒いアリアだったが何とか音の立てない様静かに深呼吸をし、呼吸を整える。
二人が潜伏していると先程自分達が入って来た入口付近に二つの影が現れる。
じわじわと時が流れ、徐々に物音がこちらに接近し、その緊張感からロギアの額から汗が落ちた。
男達が警戒しながらも周囲に目を光らせていく。
「標的はいない、繰り返す。標的はいない」
「分かった、その場で待機して援軍を待て」「了解、待機する」
男達が無線でそう報告しているとホールの奥から更に三人の男が現れる。
「いたか?」
「いんや、いなかった」
「ふざけるな、此処を通ったぞ」
「そう言われてもこっちには来てないぞ」
五人は毒づくと「この辺りに居る筈だ、探せ」
暗いホールの中で五人は愚痴を零しながら散開し周囲をうろつき始める。
静まり返った空間に男たちの足音と装備が触れ合う微かな金属音だけが響き渡る。
その行動がロギアからしてみれば絶好のチャンスでもある。
ロギアはバックを下ろし身軽になるとアリアから離れ、息を潜めているアリアに合図を送る。
男の一人がその直ぐ傍を通りかかり――カタッ――アリアが発した微かな物音に男が敏感に反応する。
「何だ」
一瞬だった。
アリアの方向に男が神経を集中させた短い隙を突き、背後からロギアの腕がガッチリと男の首を締め上げる。
「うごぉッ!?」
意識外の奇襲に男が藻掻こうとするがロギアの動作の方が速かった。
首をそのままめいいっぱいに捻り上げ鈍い音が鳴る。途端男の四肢から力が抜け、ロギアはその身体を支え物陰へと引き摺っていく。
残りの四人 、一人はこちらを向いておらず距離も左程離れてはいないが流石にこちらに振り返った時に気付かれるだろう。後の三人は此処からだと暗がりのせいか微かに見える程度だ。
ロギアは物陰から遮蔽物等移動し、一人の方へと標的を見定める。
背後から忍び寄り、片手で男の口を塞ぐと同時に手に持つナイフの刃を男の首筋で横に滑らせた。
「んぐぅぅぅッ!」
声にもならない呻き声と共に血走った男の目がロギアと合う。驚愕の顔を浮かべ、瞬く間に男の身体が痙攣し倒れこむ。
ロギアが一息つきかけた時、唐突に傍の柱のわきから男が現れ目が合うのと同時だった。
「貴様ぁ!!」
怒声が響き銃口がロギアへと向けられるが倒れ掛かっている男の死体で射線を切る。
それを見た男が怯んだ隙に床に落ちている二人目の男の装備を三人目の男に向け投げつけた。
「なぁッ!?」
視界が塞がれ三人目の男から変な声が漏れる。
ロギアはその動作と同時にスタートをきっており、男が装備品を手で払いのける時には既に至近距離。
それでも男が諦めずに「糞――!」銃撃する。
弾丸が発射されたと同時にロギアが滑り込む様に態勢を下げ、頭の上数ミリ程を霞み被弾を避け――
「ッ!!?」
懐に入り込んだロギアがナイフの切っ先を上に向け、刃が男のみぞおちに深々と突き刺さる。皮膚を臓器もろとも貫通しその身体に深刻な重傷を負わせた。
男の口から微かに音が鳴り、次の動作をとる前にロギアはそのままナイフを横へと一線する。
傷口が広がり、知飛沫が飛ぶ。男はゴボゴボと血を口から溢れ出し、糸の切れた人形の様に倒れ込んだ。
「どうしたっ!!」
不意に男の声が聞こえ其方に目を向けると三人の内の一人がちょうどこちらに向き直った所だった。
ロギアは倒れた男の銃を拾い上げると咄嗟にその一人に向け銃弾を放つ。
それは男の身体に数か所の穴を開け、他の二人はそれに反応し、物陰へと隠れる。
お返しとばかりに男達から数十発の銃弾が浴びせられ、周囲に発砲音が響き反響する。
ロギアも反撃しようと視線を男へと向けた時、その背後へと釘付けになる。
発砲音や叫び声に反応し微かに壁が動いていた。
銃弾の雨のが途切れた瞬間を狙い男ではなくその壁へと銃弾を命中させた直後、その壁が動き目の前に居る男に覆いかぶさる。男が悲鳴を上げると、それが合図だったかの様に周囲から咆哮、呻き声、カチカチと言う不気味な音が反響し始める。
「アリア!」
そう呼びかけるとアリアもあの光景をしっかりと目撃していた為か慌ててロギアのバッグを手に持ち駆け寄ってくる。
「急いで此処を脱出するぞッ!!」
冷や汗を流しながら二人は背後から聞こえる悲鳴に押され、全速力で駆け出した。
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