31話 呆気ない交渉
「――それでは貴方達の要望を認めましょう、此処に来る迄の間貴方達の安全はそこに居る私のα(子供)チーム(達)が責任を持って務めさせるわ。だから貴方達は心配しないで彼等に付いて来て下さい。私は貴方達を向かい入れる準備をしておきます」
数十分の交渉相手との話が終わるとロギアとアリアは深く溜息を吐いた。
「マザー・クリスティアナ、か……確か橘が名前を出して来た奴だよな……まさかその本人が出るとは思わなかったが……取り敢えずこれで何とか話はまとまったな……」
ロギアとアリアはマザー・クリスティアナに対し自分達の要求を全て伝え、安全地域に行った場合どういった扱いになって行くのか、どういう風に安全を保障していくか等根掘り葉掘り訊いた。
その二人の疑問、要求に関してマザーは全てを応え聞き受ける決断をした。
端末越しの相手が本当にマザー・クリスティアナなのか、その人物が橘が言うお偉いさんなのかは正直言ってロギアには見当もつかないが、こればかりは疑っていたら流石にきりがない。
もし騙されていたとしたらお終いだが、自分達には既に後ろが無い。橘に対して強気に言った様に此処を危険を冒して切り抜ける選択をしたとしても、その先に待っている他の捜索部隊からの逃走劇は結果が見え過ぎている。
それに――父親の資料に載っていた寄生虫に関しての特例。
アリアにとっては強いストレスを与えるのも事実でその交渉の際にはマザーとアリアの間になるべく介入はしなかった。
傍に居ながら若干の罪悪感には感じたものの結果はどうあれ自身で選択する事が今のアリアにとっては重要なのだ。
勿論ロギア的にもフォローはするつもりで居たが思いの外マザー・クリスティアナの方からアリアに対して好条件を提示する事が多かった為結果的にはかなりこちら側が有利な物になっている事は間違いなかった。
ロギアから見てもその好条件過ぎる提案には流石に不信感を抱かざるを得なかったがどう考えてもこの先アリアを自身一人で守る事なんて出来ない訳で、それならばロギアから見て如何に相手が誠実な態度を見せるかだが、それすらも呆気なく重要だと思える様な情報を吐いた。これだけはその自身の感に頼るしかなかった。
ロギアは橘達に対する疑念は依然として持ちつつアリアにもその事を告げ、二人はαチームが待つ部屋へと戻っていく。
「そんな簡単に約束を取り付けるとはな……」
交渉を終え戻って来た二人に端末を渡され、橘は毒気の抜けた顔で嘆息した。
「大丈夫だ。まぁ、これは冗談抜きで、間違いなくオレ達のボスであるマザー……いや婆さんならおたくらを絶対に好待遇にそして――決して雑に扱ったりはしないだろうさ」
橘はロギア達を少しでも安心させようとしたのかそんな発言をした。
「何故言い切れる?」
ロギアが脚を止め振り返る。
「お嬢さん等にとっては初めてに感じても婆さんにとっては再開……まぁ、お嬢さん等との対面を個人的に今か今かと楽しみにしてるみたいだからな」
「再開――?」アリアは引っかかったその言葉は口にし、ロギアは眉間に皺が寄る。
「まぁ、そんな事もあってだな、オレ個人的には日頃から婆さんの世話になっている訳で無事にお嬢さん等を連れ帰れば恩返しにもにもなるしな。まぁ詳しい話は直接訊いてくれた方がこっちとしても助かる。なんせオレ自身もその事は小耳にはさんだ程度だからな」
橘の発言に他の二人も驚きの表情を浮かべていたが、最後の噂に過ぎないと同義の発言に水琶は呆れ返り「それでも隊長なんですから……噂話を真面目に喋らないで下さい……」そんな愚痴と共に苦言をさした。
「あー悪い悪い――――まぁそんな所だ。理解してくれるか?」
「納得は……まぁ出来んが、それならその通り直接聞かせて貰うとするよ」
ロギアは橘のその飄々とした態度に若干腹が立ったがその事を脳裏から消し去り、隣に居るアリアへと顔を向ける。アリアにとっては一日中緊張しっぱなしだったからか予想通り相当な疲労感が顔に出ていた。
「アリア、少しばかりコイツと話がある。別に此処に居ても構わない……そう言うつもりだったが、少し上で休んでいてくれ。明日の予定について聞いておかないといけない事があるからな」
「え……あ、う、うん……」
何か言いたそうにロギアの顔を見たが直ぐにその視線を地面へと落とす。
「う、うん……ッ判った――――」
突かれた様子で二階へと上がって行くアリアの後ろ姿を見ながらロギアは自身の判断が何処迄正しいのか不安になり溜息を吐いた。
この度は第31話を読んで下さりありがとうございました。
☆マークから評価・お気に入り登録、感想いただけると励みになるので宜しくお願い致します。




