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Ninfea  作者: 蠍ノ丘
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30話 マザー・クリスティアナ

「初めまして、ロギア・オルバースさん。私はマザー・クリスティアナ。そこに居る橘の雇い主です。先程交渉の時に出ていた安全地域を管轄している上層部の一人と言った方が貴方達にとって分かりやすいかもしれません」


「管轄?」


 聞きなれない言葉にアリアの声が漏れる。


「ええ、色々と面倒でね。貴方達の身柄と処遇については多少なりのいちゃもんはつきましたが、今回の件は既に根回しはしているのでそこは安心して大丈夫ですよ。」


「大丈夫なのか?」


「勿論、仮に反感を買ったとしても問題はありません」


「ああ、それに嘘偽りがなければな」


 ロギアのその台詞を聞きマザーはクスリと笑う。


「嫌いじゃないわ、貴方の様な用心深い人は」


 一応端末の音量は上げてありそこまで距離が離れてなければ聞こえるが、ハッキリと聞き取れていなかったのかアリアがロギアの方へと顔を寄せる。


「貴方達の此処迄の事情は全て報告を受けています。状況があれとしてもこちら側が少々手荒な手段をとってしまった事、先ずは謝罪させて下さい」

 

 実際に頭を下げているのかその言葉が少し遠くなる。ロギアは自身がかなり攻撃的だった事が脳裏に浮かび気まずくなり顔を横へとずらすとアリアと目が合う。


「そこはお互い様というか……まぁ俺の方も非が無い訳じゃないというか……」

 

 相手の態度が予想よりも反省の色が感じた為、余計気まずくなり口ごもる。


「そうでしたか、貴方達がそう言うのであれば――――」


 ロギアはマザーの言葉を聞きながらも交渉について思考を巡らせる。

 此処で強引な交渉をしてこっちの条件を呑ませたとしても、それは自分達にとって勝ちではないのだ。


 仮に此処での交渉でプラスになったとしても後々自分達が世話になる可能性があるのだ。長期的に考えてもかなりのマイナスになってしまう。


 ”今の俺達のメリットは……アリアの安全、行動制限について、人体実験、最低でもこの三つは確約してもらわないといけない”


「一つ、貴方達の要望を聞く前に頼みたい事があるのだけれど……いいかしら?」


「頼みたい事?」


「ええ、声を――アリア・イェリネック・エンシェント、彼女の声をよく聞かせてくれませんか?」


「――――?」


 マザーの真理は把握出来なかったが流石に断る訳にもいかずアリアと視線を合わせて、アリアへと端末を指し出すとぎこちない動きで端末を受け取る。


「もし、もし……アリアです……」


 緊張しながらも声を張った。


「ああ……本当に――――」


「ど、どうし、ました?」


 マザーの言葉が中途半端な所で途切れた為心配になり声をかける。


「ごめんなさいね、何の心配もないわ。ただこちらの事情よ、気にしないで」


「あ……は、はい……」


 少しの間をおき「アリア・イェリネック・エンシェント――――アリア、貴方の現状は私も理解しています、過去の事も」そう口にする。


「それは、研究所での……事ですか?」


 アリアは一瞬身体が強張るが何とか言葉を続ける。


「ええ、勿論。今は身体に異常とかはありませんか?」


「は、はい」


「そう、此処迄来る間、ロギア・オルバースには何度も助けられましたか?」


「う、うん――じゃなくて、はい……足しか引っ張ってなかったけど私が此処に居るのはロギのおかげだよ」


 何故マザーがそんな質問をして来るのか考えも思いつかず咄嗟に口にする。


「ロギ……そうでしたか……」


 そう呟いた言葉がやけに優しい。


 少しの沈黙の後「貴方自身も体験して来た通り、アリア貴方の身体は普通の人とは違います」そう告げるマザーの声色は真剣な物だった。


「私には身の安全は保障出来ますが、安全地域に入る為には厳しい検査はパスする事が出来ません。貴方の場合、更に厳しい精密検査を受ける事になります。今まで悪い思いしかないのは私も承知しています。それでも貴方は大丈夫?」


「その覚悟は……まだ怖いけど、大丈夫、だと思う」

 頷くアリアだったが、端末での音声だけのやり取りだったと思い出し慌てて声を出す。


「そう……それはアリア、貴方が自身で考え出した答えなのね?」


「うん、私が出した答え――」

 最初こそ尻つぼみだった声だが、そこだけはハッキリと口にしていた。


「そう、分かったわ。安心して貴方達を悪いようにはしないわ」

 マザーはそう告げると「ロギア・オルバースに代わって貰えるかしら?」そう穏やかに伝えた。



「もういいのか?」


 アリアから端末を受け取るとロギアはそう聞き返す、


「ええ、もう大丈夫よ。先程の話も聞こえていたと思うから単刀直入に話させてもっらても?」


「構わない」


「彼女と貴方の安全については、私の管轄している地域に居る以上は保証できるわ。勿論さっきも言っていたけど安全地域に入る為の精密検査には、もしかしたら時間がかかってしまうかもしれない。その期間だけは自由に行動は出来ないかもしれないけど検査を終えたあかつきにはアリアの安全、行動制限はしない、人体実験の事について。貴方達が一番大切にしている物は確実に用意出来る。というか私の権限を使ってでもやるつもりでいるわ」


「おお、そうか」


マザーが何故そこまで尽くすのか、先程のアリアとの会話で大体は予想がつくがこれに関しては直接会わなければ判断できないし、ただマザーがアリアに対して特別な感情を抱いている。これが分かっただけでも多少信憑性が上がる。



 マザー・クリスティアナの言う安全地域に行った場合どういった扱いになって行くのか、どういう風に安全を保障していくか等、最終確認の為ロギアとアリアの二人は再度根掘り葉掘り訊き情報をまとめていった。


この度は第30話を読んで下さりありがとうございました。


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