表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ninfea  作者: 蠍ノ丘
21/78

21話 『少女』だった物

 何かに襲われパニック状態になっているのなら早く助けて安心させなければならない。


 もしこのままパニック状態のまま走り続けて運悪くロギアが言っていた寄生された者と出会ってしまったら取り返しのつかない事になる。


 何も出来る事が無く、ただ守られている自分にとっては目の前の人を見捨てると言う選択肢はあるのだろうか。ましてや自分とあまり変わらないような年の少女ならなおさらだ。


 三階まで上がるとそこには少女の姿はなく、少女の傷口から落ちたであろう血液はそのまま最上階の四階まで続いていた。


「……はぁ、はぁ、三階……いない……」


 大きく肩を上下させながら四階へと続く血液、そして階段へと視線を送る。


 四階まで駆け上がるとアリアは少女を追いかけていた何かが近くまで来ていないか下の階を覗き込んだ。誰も階段からは追ってきていない事を確認すると少女を探す為奥へと進んで行く。


 階段のあったフロアを抜けると〈四階キッズ広場〉とかかれており、先程いた場所と違い見た事無いような機械や物が多く並べられている。


 落ちた血液の後を追いさらに奥へと進んで行くと埃をかぶってはいるが多種多様な玩具等が棚に並べてあり、どれもアリアの興味をそそる様なぬいぐるみやら可愛い系の物ばかりだった。


 “ロギの言ってた世界が終わる前にはこういう物が流行ってたんだ……”


 アリアは足を止め、棚に並べてある玩具をまじまじと見入ってしまったが直ぐに視線を落ちている血痕へと戻すと再び少女の追跡を開始する。


 このフロアの一角、ゲームコーナーと呼ばれる場所を通り過ぎた時にフロアの片隅でうずくまっている少女の姿が見えた。


 “居たっ!!”


 少女は蹲っていて顔はしっかりと見る事は出来ないが泣いている為か肩を震わせており、すすり泣く様な音も聞こえている。


「もう大丈夫だから心配しないで、貴方を追っていた者は来ていないみたいだから……私は危害を加えるつもりはないから安心して……」


 アリアは少女に駆け寄ると怖がらせない為にも一旦落ち着いてから優しく少女に話しをかける。声をかけた直後、うずくまって泣いているであろう少女の身体がピクリと震えた。


「下の階に私の……仲間――がいるから一旦そこで何があったかお話をしよ、ここだと危ないかもしれないから――」


 アリアは少女がこれ以上怯えないよう拳銃を床に置き少女の前でかがみ顔を確認した。


「――――ッ!!」


 一瞬にして頭の中が真っ白になった。


 少女の顔は死人のように白く、目も焦点があっておらず、額には血管が浮き出していた。


 それだけではなく、爪は両手共に五センチ程の長さ迄伸び切っており、それまで恐怖や不安等で泣いていると思っていた少女のすすり声が獣の呻き声の様なものへと変わっていく。


「え……あッ……」


 あまりの恐怖で腰を抜かしてしまい手足が思うように動かず、開いた口からは声が漏れる。その異様な姿を見た時、アリアは今目の前にいる少女が人ではないと認識した。それは口元を歪ませ乾いた呻き声を上げる。


「――いやッ!!」


 何とか恐怖を振り払い、直ぐに手を動かし近くに置いた拳銃へと手を伸ばす。


 それが頭を上げる。アリアを視界に捉えると長く鋭くなった爪をギチギチと鳴らし、這うように襲い掛かってきた「――ッ!!」


 拳銃を掴み、咄嗟に後ろに跳んで――転んでの方が正しいかもしれない少女の一撃を何とかやり過ごす。


「うっ!」


 肩から思いっきり床にぶつかりその痛みで思わず声が漏れる。直ぐに顔を上げると少女だったものは呻き声を上げながらメチャクチャに爪を振り回し始め、その光景は恐ろしく元々人間だったとはいえあんな獣のような爪を食らえばひとたまりもない。


 相手が寄生されていると分かった以上、相手が少女だとしても躊躇する理由はない。アリアは震える手で力の限り拳銃を握り締め少女に向け、迷う事無く引き金をひいた。


 銃口から放たれた弾丸は少女だった者の胸を貫通し少女の身体が後ろへと仰け反り倒れる。


「――はぁ、はぁ……んっ――」


 アリアは恐怖に震えながら息をつき、急いでロギアの所に向かおうと階段のある方へと駈け出そうとしたが――


 不意に何かがアリアの腕を掴み有り得ない程の力で引っ張った。


「――えっ?」


 アリアは予想外の力で引っ張られた為か、あっけなく仰向けに倒れ、背中を強打した。


「あう――ッ!!」倒れた拍子に拳銃は手から離れ床に乾いたような音を立てて落ちる。痛みを我慢し直ぐに上体を起こし自分を引っ張った何かの姿を確認しようと顔を上げた。


「……!?」


 それの姿を確認した時、恐怖で全身の筋肉が硬直し、心臓の鼓動が更に早くなる。


 少女の傷口から頭部が丸い虫の様な怪物が顔を出し、憎悪を剥き出しにした憎々しい表情を浮かべていた。


「キチキチキチキチ」


 その怪物は喉の奥から不気味な不快音を鳴らしアリアに向かって大口を開け、血生臭い息をアリアの鼻に吐きかけた。



この度は第21話を読んで下さりありがとうございました。




☆マークから評価・お気に入り登録、感想いただけると励みになるので宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ