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Ninfea  作者: 蠍ノ丘
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19話 感染者の正体

 資料に目を通していると二○四九年、アウトブレイクが起きるよりも数年以上も前の物から記載されており、ロギアはこの実験が始まったきっかけよりも先に実践で直ぐに必要になる奴等、寄生虫の事が書かれているページ迄めくる。


「これか……」


 数ページめくり、目当てのページに辿り着くと読みにくい文書に目を通す。



 【寄生虫について】 


 陸・海・空の恒温動物に寄生し脳内の分子構造を改造している事が明らかになっており、人に寄生すると様々な健康被害を引き起こし、性格を歪めてしまう個体もいれば文字通り恒温動物を《乗っ取る》個体も多数確認されている。


 他にも、身体の外側から中へと食べ進む性質。身体の内側から外へと食べ進む性質。


 等々今までに様々な特徴を持つ個体をも発見されており、等脚類の形をしたもの迄確認されている。この等脚類は幼虫から八時間で成虫になるという異常な速さで成長。


 寄生虫の感染経路は接触した恒温動物の傷口から侵入して来る事が判明している。


 感染直後、無性生殖で体内全体に繁殖し、初期段階では不快感や寒気、熱、感染箇所の腫れ、発疹等の症状を引き起こし、重度の障害が残るケースも確認されており、寄生虫に栄養を取られている為かその後食欲が増す。


 意識も最初の内はしっかりとあり、言葉も話せるが、徐々に朦朧となり、言葉さえ喋れなくなる。最終的に身体の自由がきかなくなり、寄生虫によって操作される事になる。


 特例だが宿主の体内に潜伏すると繁殖しやすくなる様環境を形成する個体もいる。寄生虫が環境を形成する際宿主は寄生虫が持つそれぞれの特性が移り、寄生される以前よりも身体能力が大幅に上昇する。文字通り身体が乗っ取られ、意識が喪失する前までは身体能力は上昇し続け――――――


 恐怖――――それがこの部分を見て感じた事だった。


 “確かに……似た様な寄生生物がいた様な記憶はあるが、それとは全くの別物と考えた方が良さそうだな”


 この資料に記載されている生物については絶句せざるを得なかった。


 この資料に書かれている事が全て事実だとしたらコロニーについても必ずしも安全だとは言えなくなる。それどころかよく今迄襲われる事なく無事だったと称賛する程だ。


 脳裏に自らの父親『セルゲイ・オルバース』の顔が過った。


 確かに決めた事に対して突き詰めていく集中力と今まで作り上げていた研究、その姿勢に関しては尊敬に値するかもしれないが、何故この寄生虫の事を知っていて世論に公表しなかったのか、公表はしなくてもせめて各国の政府にだけでも伝えていれば此処まで取り返しのつかない世の中にはならなかっただろう。その事に関して自らの父親に対する不信感が募る。


 父親に関しては理解しがたい価値観やフィクション作品の様にとんでもない願望を持っているという雰囲気は十何年一緒に居て全く感じなかったし、それどころか様々な国の常識をわきまえていて、この国、日本にも多くの知り合いがおり内向的とは真逆の人間でとてもだがマッドサイエンティストだったとは思わなかった。


「結局の所、一番近くにいて気付かなかった――気付けなかった俺も――」


 資料を持つ手に力が入り、歯を食いしばる。


 寄生虫に関して大体読み終わると、資料は手前から古い順に重ねてある事に気付いた。


 ロギアは比較的に新しい実験。後ろの方から読み始めると予想通り早速アリアの受けて来た実験に関する物が目に飛び込んで来た。


 切断、臓器摘出、食事断絶……等々どれもこれも普通なら死んで当然な物ばかりだった。 


 いくら人類の為だからと言っても、いや、人類の為は単なる名ばかりで行き過ぎ手遅れ状態の捻じれ曲がった趣味を持つイカレタ集団による研究、いや拷問は到底許せる筈も無い。


 “だがこれでヘリコプター墜落でもアリアだけが生き残った理由が分かった”


 彼女は寄生虫の特性を受け継いでいるからこそ爆発に巻き込まれてもその再生能力で無事でいられ、ここに記載されている通り『死ねない』のだ。ただその事で問題点が見付かった。


 人間として失った細胞はアリアの中にいる寄生虫の細胞で全く同じ様に再生する。


 何度も実験を行い続けた結果、果たして彼女は今【人間】なのか?


 “この書類を見た限りではアリアと一緒にいるのはかなり危険だ……そうだとしても、まだ内面、精神の面では会話が通じるし反応や変化は小さいが表情に関しても人間だ“


「仕方ない、か……」


 他にも目を通しておきたい物が多くあったが取り敢えず今はアリアと行動を共にすると決めた以上、直ぐに判断の結果を伝えとにかく安全な場所へと移動しアリアを捕えようとする追手に備えないといけない。


 “他の資料を読むのはそれからでも出来る……ただ、今の段階では確認しきれていないだけかもしれないがこれだけの経験をしたらアリア自身既に壊れていても可笑しくない”


 ロギアはアリアに単独行動をさせてしまった事に後悔しつつ、資料と注射器をアタッシュケースにしまうとアリアを探しに婦人服売場へと向かった。


この度は第19話を読んで下さりありがとうございました。


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