第16話 【予防】怪我をするダンサーは、ここが「見えてない」
「先生、どうやったら怪我しない身体になれますか?」
若い奴に聞かれた。
もう何人ものダンサーが痛む姿を見てきたんだろう。真剣な目だった。
俺、その時、こう言った。
「怪我する理由、3つ知ってるか?」
首を振った。
だから教えた。
「1つ目は『無知』。自分の身体を知らない。
2つ目は『欲張り』。今すぐ結果を出したがる。
3つ目は『我慢』。おかしいのに、言えない。」
そう、怪我の原因は「運」じゃない。
ほとんどが「自分の選択」なんだ。
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ある日、見た「予防できるはずの怪我」
今からもうずいぶん前になる。
キーロフで、ある若手ダンサーが練習中に「バキッ」って音を立てた時の話だ。
膝だった。
半月板を損傷して、手術。
復帰まで1年以上かかった。
みんな「かわいそうに」って言ってた。
「運が悪かったね」って。
でもな、俺は違うと思った。
その前日、見てたんだ。
彼の膝が「おかしい」のを。
ジャンプの着地の度に、膝が内側に入ってた。
「それ、やばいぞ」って思ったけど、
彼は気にしてなかった。
言えばよかったのか?
でも、若手の俺が先輩に指摘できるわけがない。
今でも後悔してる。
「予防できたはず」の怪我だったから。
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怪我を防ぐ「3つの視点」
よし、じゃあ教える。
怪我を防ぐために「何を見るべきか」。
見るべきは「身体」だけじゃない。
「動き」と「心」も見るんだ。
視点1:「身体の声」を聞け
最初の視点は、自分の身体に向ける。
多くのダンサーは「痛い」になってから気づく。
でも、それじゃ遅いんだ。
「痛い」の前には、必ず「違和感」がある。
「違和感」の前には、必ず「変化」がある。
何を見るべきか?
・左右差が突然大きくなった
昨日まで同じようにできたことが、今日はできない。
それ、怪我の前兆だ。
・可動域が急に狭まった
いつも曲がった関節が、今日は曲がらない。
それ、炎症のサインだ。
・疲れが取れない
睡眠をとっても、疲労が残ってる。
それ、回復能力が落ちてる証拠だ。
この「前段階」で止められれば、怪我は防げる。
「まだ大丈夫」と思った瞬間が、危ないんだ。
視点2:「動きのクセ」を見抜け
次の視点は、自分の「動きのクセ」に向ける。
誰にでも「クセ」はある。
でも、そのクセが「危ない方向」に行くと、怪我する。
何を見るべきか?
・着地の時の膝
前に出てないか? 内側に入ってないか?
ロックされてないか?
・アンドゥオールの時の足首
無理に回してないか? 外側に倒れてないか?
・ポール・ド・ブラの時の肩
上がってないか? 前に出てないか?
これらの「クセ」を、自分で見抜けるか。
見抜けないなら、誰かに見てもらえ。
「自分では気づかないクセ」が、一番怖い。
視点3:「心の状態」を整えろ
これ、一番見落としがち。
心の状態が悪いと、身体は必ずそれに反応する。
・イライラしてる時 → 力が入りすぎる
・落ち込んでる時 → 動きが雑になる
・焦ってる時 → 無理をする
これ、全部「怪我の引き金」になるんだ。
どうすればいいか?
・自分の感情を「言葉」にしろ
「今、イライラしてる」
そう認めるだけで、身体の力が抜ける。
・無理な時は「やらない」と決めろ
休むことも、トレーニングのうちだ。
・誰かに「今の状態」を伝えろ
一人で抱え込むな。
怪我をするダンサーは、
「身体の声」を聞かない。
「動きのクセ」を見ない。
「心の状態」を整えない。
そして、「私は運が悪かった」と言う。
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ある日の医者、伝説の一言
キーロフには、専属の医者がいた。
バレエダンサーの身体を何十年も見てきた老医師だ。
ある日、その医者に聞いた。
「先生、怪我をしないダンサーと、するダンサーの違いは何ですか?」
医者、すぐに答えた。
「『違和感』を無視するか、しないか。ただそれだけ。」
「多くのダンサーは『もう少しだけ』と言って、無視する。
でも、その『もう少し』が、積もり積もって『大怪我』になる。
逆に、上手いダンサーは『違和感』を感じたら、
すぐに止める。
そして、『なぜ違和感があるのか』を考える。
たったそれだけの違いだ。」
予防は「特別なこと」じゃない。
「当たり前のこと」の積み重ねなんだ。
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「怪我しやすいダンサー」の3つの特徴
ここでハッキリさせてやる。
怪我しやすいダンサーには、「3つの特徴」がある。
特徴1:「自分の限界」を知らない
・どこまでやったら「やりすぎ」か
・どのくらい休めば「回復」するか
この「基準」を持ってない。
対策:
自分の「限界値」を探せ。
今日はここまで、と決めて、守れ。
特徴2:「誰かに頼れない」
・「ちょっと見てくれ」が言えない
・「助けて」が言えない
一人で抱え込むタイプ。
対策:
信頼できる人を作れ。
一人じゃないって思えるだけで、変わる。
特徴3:「休むことを悪いと思う」
・休む=サボる
・休む=弱い
この考え、致命的だ。
対策:
「休むも練習」と覚えろ。
休まない奴が、最終的に一番休むことになる。
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「予防」のための3つの習慣
最後に、今日からできる「予防習慣」を教える。
習慣1:「朝のチェック」
毎朝、起きたらやること。
・どこか痛いところはないか
・左右で動きの違いはないか
・疲れは残っていないか
たった1分でいい。
自分の身体と「対話」しろ。
習慣2:「練習後のケア」
練習終わった後、何してる?
帰ってすぐ寝てないか?
・ストレッチ(10分でいい)
・アイシング(痛いところがあれば)
・栄養補給(練習後30分以内が勝負)
これだけでも、怪我のリスクは半分以下になる。
習慣3:「週に1回の振り返り」
週に1回、練習ノートをつけろ。
・今週の身体の調子
・気になった違和感
・来週の目標
「見える化」することで、自分の身体を客観視できる。
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結論:怪我は「防げる」
よし、まとめるぞ。
怪我は「運」じゃない。
「防げる」んだ。
そのために必要なのは:
・身体の声を聞く
・動きのクセを見抜く
・心の状態を整える
この3つを習慣にしろ。
「まだ大丈夫」が、一番危ない。
「ちょっとおかしい」で止めろ。
それが、長く踊り続けるための唯一の方法だ。




