90.海賊の襲来
ハルトが、朝執務室に行くと部下が慌てて入ってきた。伝書バトの手紙では
「昨日ボタン地方の漁村が海賊に襲われた。村人の多くは公衆浴場に立てこもって難を逃れたが、殺された者や攫われた者もいる。村は焼き払われた」
とのことである。俺は、19人の兵士とともに魔道馬車に乗ってその漁村に向かった。
次の日の朝村に着くと、公衆浴場と公衆便所以外は焼け落ちて瓦礫が散らばっていた。
村長の話では
「逃げ遅れた男が5人殺されて女が3人攫われた。海賊は村人の家の中のめぼしい物を奪って、家に火をつけた。
公衆浴場は中から鍵をかけたら、海賊は入ってこられなかった。魔法で攻撃していたが、建物はびくともしなかった。
巡回の兵士を見て、海賊は逃げていった」
とのこと。
住むところがないというので、公衆浴場に隣接して前世のマンションのような建物を建てた。鉄筋コンクリート3階建て、キッチンとトイレ付3LDK、戸数は村人の戸数の2割増しぐらいにした。
安全面を考慮して、入り口は公衆浴場と同じにした。トイレは水洗とした。建物には公衆浴場と同様、防火、衝撃吸収、物理耐性、魔法防御、クリーン、自動補修の魔法陣を設置した。
また、中にはベッドと家具を設置し、毛布や布団を配置した。食料も配布した。また、ネズミと害虫を防ぐ魔道具の設置と、消毒液の配布も行った。これで冬が越せると村人からは感謝された。
俺が
「これまでに海賊が村を襲うことがあったのか」
と聞くと村長は
「私が子供の頃に襲われたことがあったが、それ以降はなかった。以前は村が貧しくて、海賊が来ても奪うものがなかった。
しかし、ノー川から水を引く水路ができてからは村が豊かになった。それで来たのではないか」
とのこと。
そうなると、このあたりの村はどこが襲われてもおかしくないということになる。それで、このあたりの村だけで巡回する兵士を編成して巡回させることにした。
また、安全面を考慮して先ほどの村人用マンションを各村に建設して、そこに移り住むように指導した。マンションの建設にはその後1カ月かかった。
以前ここが王家領であったときには、ラン地方に3隻の軍艦が停泊し、付近の海を巡回していたが、ネイメー伯爵領になってからは、軍艦は他の王家領の港に移動した。
そのため、このあたりの海の巡回は手薄になっていたのである。そこで、ネイメー伯爵家としても軍艦を作ることにした。
まず、国王の許可をもらうことにした。これについては、ジグムントお義父様より王宮に働きかけてもらうことにより、費用はすべてネイメー伯爵家持ちということで許可が得られた。
これは俺に金を使わせて力をそぐという意味合いもあると思われた。
フグ町は港町であり、船大工もいたが、商船や漁船などを作ったことはあるが軍艦を作ったことはないとのことであった。フグ町にいた軍艦については軍の機密ということで触らせてもらえなかったとのこと。
俺が前世の記憶で船というと、遊覧船に乗ったぐらいである。あと構造的には竜骨という1本の梁のような部材が使われていたこと。
船の横揺れ防止のために回転する駒のような装置が使われていたことぐらいしか思い浮かばない。
海賊退治が目的だから、スピードを出したい。そこで商船を細長くした船を作ることにした。船大工に商船の構造を聞きながら、商船を細長くして竜骨を入れた1/50スケールの模型を作った。
舵はもちろん舵輪にした。ハンドルを「面舵いっぱい」と言って船首を右に向けたり、「取舵いっぱい」と言って船首を左に向けたりする。
「かっこいい」
と思ってしまう。男のロマンである。
これをとりあえず、10隻作ってもらうことにした。金はある。ネイメー伯爵家は裕福である。足りなければ、ヤマユリ商会からも出せばいい。
この時代にはまだスクリューはないみたいである。そのため、船大工にはスクリューのことは秘密にして、後で俺がつけることにした。
エンジンについては魔道馬車のエンジンを改良して作った。燃料は魔石である。たぶんスクリューをつけないと、海賊船には追いつけない。
海賊船といっても船を作るのは膨大な金がかかる。これをそこら辺の盗賊ができるわけがない。多分バックには相当な大物がいると思う。だから海賊船といっても中身は軍艦だと思う。
それと遠距離攻撃ができる武器が必要である。現在魔道馬車につけている爆裂弾の射程は500mである。
これを2kmぐらいにしないと、すぐに接舷攻撃をされて、船の上での白兵戦である。これは絶対に避けなければならない。
このため、爆裂弾の発射装置を少し大きくして銃身も長くして、装置を回転式にして前だけでなく横にも打てるようにした。
前世の記憶では大航海時代の艦隊戦での大砲の命中精度は1%からよくて5%程度と聞いたことがある。これではとても使えない。
今回俺が作っているのは商船を軍艦もどきに改良したものである。命中精度はもっと落ちるかもしれない。そこで、散弾銃のように小さい爆裂弾をまとめて発射することにした。威力は小さいが、相手の船のマストに火が付けばこちらの勝ちである。
また周りを囲んで砲塔のようにした。試作品で実験したところ、問題なさそうなので、俺の収納空間ボックスの中で量産した。これを1隻につき10門付けることにした。
また、爆裂弾の命中精度を上げるためには、船の安定が不可欠である。それで、船の横揺れ防止のために回転する駒のような装置を作った。
駒の回転軸を水平にして高速回転すると、ジャイロ効果だっけ、駒が水平を保とうとする力で船の揺れに抵抗する力が働くのだっけ。
よくわからん。詳細については船が出来てから試行錯誤で決めることにした。
船は現在フグ町の船大工が製作中である。1隻目ができるのは来年の春ごろとのこと。そんなことをしていたらまた王都へ行く季節になった。
そこで、俺が王都へ行っている間を利用して水兵の募集と採用した水兵の訓練をすることにした。1隻30人として10隻で300人。募集も訓練も部下に丸投げした。




