65.緊急招集
それからしばらくして王家から緊急招集の指令が来た。
「3日以内に王都に来て、4日後に開かれる会議に参加するように」
とのこと。
嫌な予感しかしない。帝国が動いた。たぶん。俺は魔道馬車で王都に行き、まずジグムントお義父様を訪ねた。ジグムントお義父様の話では
「アムスム王国は俺の液体肥料で大豊作だったとのこと。隣のベー王国とユルノギ王国は、俺の液体肥料が一部使われたようで、不作ではあったが昨年ほどではなかったとのこと。
しかし、その隣の帝国は昨年以上の不作だったようで、帝国から、食料の緊急買い付けの依頼が来たそうなのだが、その単価が市価の半分。
しかも、断った場合は強制徴収をすると高圧的なものだったらしい」
「帝国と戦って勝てると思うか」
と聞かれたので
「帝国軍の規模にもよるが、5万の帝国軍に勝利しようとすると、魔道馬車2000台ぐらい必要かと」
「今どれくらいある」
「俺のところに600台、王家に500台、他の貴族家に1000台、合計2100台である。連絡用に100台、アムスム王国の守りに300台残すとすると、動員可能な魔道馬車は1700台くらい、これだと対応可能な帝国軍は4万人ほどである。
したがって5万人の帝国軍が攻めてきたら、1700台の魔道馬車と5千人の騎馬隊、5千人の歩兵が必要である」
「予想される帝国軍の規模は約5万人だ」
「これから行くか。王宮へ行って今の話をしたい」
ということで、俺とジグムントお義父様は今王宮にいる。相手は前回と同様、国王と第1王子第2王子、宰相、エウゲン将軍、それにアムスム王国軍の参謀である。
参謀の話では、状況はさらに悪化しているそうで、帝国の要求を蹴ったユルノギ王国には5万人の帝国軍が侵攻し、我が国にも救援要請が来ているそうである。
また、帝国軍は我が国の北東方面にも5万人の軍を進めており、ユルノギ王国が降伏後はこの方面からも国境を越えると考えられ、そうなると我が国は二方面に対処せざるを得なくなるそうである。
魔道馬車の状況を聞かれたので、
「我が国にあるのは、ネイメー子爵家にあるのが600台、アムスム王国に貸し出しているのが500台、他の貴族家に貸し出しているのが1000台の計2100台である」
と答えた。
俺は
「我が領にある魔道馬車のうち500台とその乗員2000人でユルノギ王国に救援に向かいたい。ただ、兵士がいないので3000人の歩兵を他の貴族家に依頼してほしい」
と言った。
これに対し国王が
「3000人の歩兵はシャタイン伯爵家に依頼する王命を出す。それで5万人の帝国軍に勝てるのか」
と聞かれた。
「5万の敵軍と一度に戦えば勝てない。しかし、すでにユルノギ王国に侵攻している状況なら分散していると考えられ、その状況なら各個撃破して勝てる。魔道馬車500台と3000人の兵で18000人の敵軍と同等の戦力である」
「魔道馬車とはそれほどの戦力なのか」
「騎馬や歩兵では魔道馬車に勝てない。怖いのは魔法士と落とし穴などの罠である」
「わかった。ユルノギ王国の救援はネイメー子爵に任せる。シャタイン伯爵家とともに、ユルノギ王国に侵攻した帝国軍を打ち破るように」
「わかりました。陛下の御意に沿い獅子奮迅の活躍をいたします」
「シャタイン伯爵家とネイメー子爵の軍がユルノギ王国救援に出ている間に、王命で残りの魔道馬車を集め、国内の貴族にも動員をかける。そして、北東方面の帝国軍に対処する」
「その場合、ベー王国はどう動くと思う。帝国軍に同調するか、それとも中立を守るかどう思う」
これに対し、参謀が
「ベー王国はすぐには動かないでしょう。4年前の敗戦と最近の不作で国力が落ちています。王太子の第1王子は戦争を好む性格ではないようです。
ただ、我国が帝国軍に蹂躙されるような状態になれば、軍を進めるかもしれません」
国王が
「テー公爵領の守りはどうなっておる」
これに対し、ジグムントお義父様が、
「国境のアー川に面して築かれたアーの丘の要塞は、現在1000人の兵を駐屯させ、20台の魔道馬車を配備しています」
国王が
「状況によっては少し増やすように。それと、今回の動員にはテー公爵領の魔道馬車はその対象に含めない。ただし、兵はいくらか出してほしい」
「ありがとうございます」
俺はすぐに領地に帰って準備をしたいので明日の会議に欠席することを伝え了承された。また、シャタイン伯爵家のユルノギ王国救援の王命も預かった。
このようにして、王宮での話は終わった。
明日の会議でアムスム王国の貴族にこの方針が示され、国内の貴族に動員がかけられるそうである。




