45.学園祭
学期末休暇も終わり、今日から新学期である。教室に入ると、チョウチョ商会のことが話題になっていた。俺がピアノを弾いていたことも話題になり女子学生にも話しかけられた。レンの機嫌が悪い。
春の訪れとともに学園では学園祭が開かれる。戦闘系のスキルを持つ者は剣術大会や魔術大会も開かれる。戦闘系のスキルを持たない者は、楽器の演奏やレース編みや刺しゅうの魔道具の展示などが行われる。
学生はどれかに参加しなければならないそうだ。ユリアーネお姉様は魔術大会に出るそうだ。
俺とレンが剣術大会や魔術大会に出れば、相手を傷つけてしまう。俺の場合、ピアノの演奏や魔道具があるが、レンの場合、演奏できる楽器がないし、魔道具も作れない、ましてや刺繍などもってのほかである。あるのは料理スキルである。2人だけだと喫茶店も難しい。そこで2人で屋台のおでん屋をしてはどうかと提案した。
「ハルトと2人でする」
というところに食いついた。
うっとりしている。それで2人で屋台のおでん屋をすると届け出た。
俺が屋台を作っている間に、レンが森へ行って魔獣を狩って、農家を回って野菜や卵を仕入れてきた。
それを3日前から公爵邸で煮込みを始めた。レンは料理スキルがあるだけに、料理がうまい。しかし、前世の味を思い出した俺としてはもう一味ほしい。
せめて昆布でもあればと思ったが、今は春、確か昆布は夏から秋にかけが漁期のはず。ダメもとで行ってみるかと思って、転移を繰り返してアムスム王国最北端の村にやってきた。
「昆布は売っていないか」
と聞いたが、そのようなものは知らないとのこと。昆布を食べる習慣はないようだ。
仕方ないので、海に潜って小さい昆布を採取した。これを隠し味にしたら味が締まってとてもおいしくなった。
レンの作った料理を公爵家の人に味見してもらったらとてもおいしいと評判であった。
今後は昆布もヤマユリ商会の商品に加えようと思った。このことについてはリタに任せることにした。ただ、昆布は夏から秋が漁期なので、そのころに採取して天日干ししたものを購入した方がいいとアドバイスした。
学園祭当日になった。俺とレンは学園に行って決められた場所で、おでん屋を開業した。辺りを見るとアクセサリーや刺繍したハンカチを売っている学生もいる。
冷やかしでやってくる学生や親もいるが、ジグムントお義父様は春になって、公爵領都に帰って行ったので、今日来るのは公爵家の執事とメイド長である。
午前中はユリアーネお姉様の試合があるので来るのはたぶん昼頃だろう。暇である。朝からおでんを食べるような学生はいない。お客が来ない。
レンは
「ハルトと2人きり」
と言って終始ご機嫌である。
「まあいいか」
と思い索敵で暇潰しすることにした。
ユリアーネお姉様の試合については公爵家の執事が魔道具で記録して後で見せてもらうことになっている。それでも覗いてみることにした。
ついでだし監視装置も送って、おでん屋の中で映像と音声を出してみた。あまり大きな音を出すと周りの学生に気づかれるので、音は最小である。前世で野球中継を見ながら何かしていた記憶がよみがえる。監視装置を公にしてもいいならこれは受けると思ったが無理である。
昼と午後には学生や親が何人か来たが、それも午後の半ば以降は来なくなった。暇になったので、交代で学園祭を見て回った。
戦闘系スキルを持たない学生は苦労しているなと思った。店を出してもあまり売れているように見えない。
2日目も同様にして過ごした。
結局魔術大会はユリアーネお姉様は学年では優勝したが、その後の1年から3年の混合では5位であった。
俺とレンの店の売り上げは2日間で銀貨2枚であった。模擬店の中では中間くらいであった。一番売れたのは魔道具店、一番下は刺繍店とのことであった。




