23.褒美
祭りが終わって、何日かしたら褒美を渡したいとのことで屋敷に呼ばれた。
屋敷に行くと、執事のような人から広間に行くように言われた。広間に行くと、しばらくして、領主様とその夫人と思われる人とお嬢様が出てきた。後ろにはマリアンヌさんのお父さんのカールさんがいる。
領主様の顔を見るわけにもいかないので、慌てて膝をついて頭を下げた。横を見るとレンが、ボーとしているので慌てて、同じようにさせた。
「楽にしていい、顔を上げよ」
と言われたので、顔を上げて御領主様とその夫人を見た。
美男美女まさしく異世界である。当主様がジグムント様、その夫人がアベリア様、そして今回さらわれた娘のユリアーネ様とのこと。
褒美をしたいとのことで、希望があるかと聞かれたので、
「私は、冒険者活動とともに、商会を経営しており、商店で売る商品は私が今のところすべて自分で作っております。
その商品の中にはリバーシや陶磁器などあまり他では目にしないものもあります。
私は器用貧乏というスキルを持っており、手先が器用なこともあってこれらの商品を自分で作ることができます。
この能力を他に知られると、よからぬ者に狙われたり邪魔をされたりする恐れがあります。
そのため、そのようなことがないよう公爵様のお力をお借りしたく思います」
と俺が言うと、
公爵様が
「そうか、つまり、私の後ろ盾が欲しいということか。わかった。ハルトとレンをわがテー公爵家の客人にする」
とおっしゃられた。
俺とレンは
「ありがとうございます」
と答えた。
続けて公爵様が
「レンは何か他に望むものはあるか」
とおっしゃられた。
するとレンは待っていましたとばかりに、
「私はハルト様の奴隷です。ハルト様は将来奴隷を何人も買ってハーレムを作ると言っているので、不安です。
私としてはハルト様と結婚して第1夫人になりたいです。そうすれば何人奴隷を買っても私の立場は変わらないと思うので」
と言った。
公爵様に怒られるかなと思ったが、公爵様は冷静に
「わかった、レンを解放奴隷にする。手続きとそれにかかる費用はわしが負担する。ハルトとレンは教会へ行って式を挙げればよい」
そして、
「よいな、ハルト」
と言われた。
俺は素直に了解するしかない。
「わかりました」と答えた。
するとレンは涙を流しながら
「うれしい。ありがとうございます。ハルト様の気が変わらないうちに、この帰りに教会へ行って式を挙げます」
と答えた。
ハルトの結婚はこうしてレンに押し切られる形で、それも公爵様の勧めのもとになされた。
どう考えても、ユリアーネ様が広場でリバーシをした時のことを覚えていて、その時のことが公爵様に伝わっていたとしか考えられない。
続けて公爵様が「カールから聞いているが、お前たちは非常に優秀だと聞いている。特に数学と国語は、カールの娘以上とのことだが本当か」
と聞かれたので
「数学と国語は教わっていません」
と答えた。すると
「ユリアーネが、家庭教師から講義を受けているのだが、講師と2人きりだと息が詰まると言うので、お前たちも一緒に講義を受けたらと思ったのだが。どうか」
と言われた。
貴族の教育が受けられるというのは願ってもないことなので二つ返事で了解した。
結局、月曜日~金曜日は公爵邸でユリアーネ様と一緒に講義を受け、土曜日と日曜日は冒険者活動とレベル上げ。
店を開けている日がないので、店はマリアンヌさんに任せることにした。給金はこれまでと同じ月金貨1枚。マリアンヌさんもこれまでの講師料がなくなるのは痛いので渡りに船とのこと。
続けて公爵様から、栄養剤のことを聞かれたが、
「朝元気に起きられるぐらいの効果だ」
と言ったが、
公爵様が、カール様の方を向いて
「どうなのだ」
と言われた。
カール様は
「確かにそれぐらいの効果ですが、遠征から帰ってきた時などは、朝起きるのが非常につらいのですが、これを飲むと、朝爽快に起きられます。そういう意味では効果は大きいかと」
とおっしゃった。
「それではこれも試しに100本ほど購入しよう、効果が確認できれば、継続して購入することにする」
とおっしゃられた。
俺とレンは帰りに教会によって式を挙げた。カール様とマリアンヌさんが出席してくれた。
ユリアーネ様も出たいと言っていたが、無理のようであった。この間さらわれたばかりということで屋敷から簡単に出してもらえないようだ。
次の日、結婚の報告に実家に帰った。家族に報告したが、前回レンが、
「お義父様、お義母様、お義兄様、お義姉様、お義妹様」
と妻気取りでしゃべっていたこともあり、素直に受け取られた。
また、金貨20枚を置いていった。それから今年取れたテンサイの種を少しもらった。前回同様次の日の朝早く家を出た。そして夕方領都の家に帰った。
次の日、ずいぶんお金がたまったこともあり、結婚を機に領都の家を購入した。
通りに面した母屋は1階が店舗、2階が住居。そして、塀に囲まれたそれほど広くはない裏庭には、所狭しと、テンサイと薬草が植えられている。
これが俺の家になった。妻と肩を寄せ合い眺める庭先をほのかな風が流れていく。ハルト6歳。季節は秋、今日も領都は平和である。




