115.叙爵(俺がフラ王国の貴族)
6月の中頃、イングブリオ王国とフラ王国の特使が王都に来るというので王宮に呼ばれた。マンネリズム子爵も一緒とのことである。
王宮に行くとイングブリオ王国の特使はアラン伯爵だった。フラ王国の特使は知らない人だった。アラン伯爵が
「このほど、イングブリオ王国とフラ王国の間で条約が締結された。
イングブリオ王国のエドルマンド国王はフラ王国の王位継承権を放棄する代わりにフラ王国の領地を拡大することになった。
なお、エドルマンド国王はフラ王に対して臣下の礼を取らなくてもよいことになった。
また、同様に今回の戦争においても功績のあった者に対しても爵位と領地の下賜が行われることになった。
これについても、領地は下賜されるもののフラ王に対して臣下の礼を取らなくてもよいことになった。
ハルト伯爵にはサウスブニューデン地方を与える。これよりフラ王国ではサウスブニューデン伯爵と名乗るがよい。
マンネリズム子爵にはノースブニューデン地方を与えるので、これよりノースブニューデン子爵と名乗るがよい。」
俺は初耳だったので、
「よくわからないのですが、アムスム王国との関係はどうなるのですか」
これに対して、
「アムスム王国は関係ない。そもそもアムスム王国の応援軍は11月の末に帰還している。
貴官たち2名はイングブリオ王国のために個人的に参加した。
我国の記録はそうなっている」
それでいいのかと思って、俺は国王陛下を見ると国王も
「アムスム王国の記録にも応援軍は11月末に帰還したことになっている。
ヤンス提督の報告でも、ハルト伯爵とマンネリズム子爵は個人的に現地をもう少し見てみたいので帰還が遅れると報告を受けた」
俺はこれを聞いて
「だまされた」
と思った。繰り返す。
「だまされた」
と思った。
「しかし、結果的には領地をもらえるのだからそれでいいか」
と思った。それで
「ありがたく領地を拝命します」
と答えた。
マンネリズム子爵も同様に
「ありがたく領地を拝命します」
と答えた。
するとフラ王国の特使が
「来月、フラ王国の王都トイユアルジャンで任命式を行うので出席するように」
と言われた。
この後、俺は今度もらうことになっているブニューデン地方について調べてみた。
そこはフラ王国の西部の半島で北側がノースブニューデン地方で、南側がサウスブニューデン地方、中心都市は北側がノースナンテンブルグ市、南側がサウスナンテンブルグ市である。
俺たちが襲撃したブレルサンマルロ軍港はサウスブニューデン地方にある。そして、このサウスブニューデン地方はテー公爵領より広いことが分かった。
「これいばらの道じゃない。周りは昨日まで敵対していたフラ王国の貴族領、そして領民も戦争で焼いた街の住人」なんとも頭の痛い話である。
領都ネイメーに帰って、家族会議を開いた。念のため、クララも呼んだ。クララは喜んで転移でやってきた。
結局家族会議で決まったことは、俺とレンが最初に赴任し、落ち着いたら家族を呼ぶ。
その間は、アンナがネイメー伯爵領の仕事をする。
リタはヤマユリ商会とチョウチョ商会の両方の仕事をする。
俺が作っている商品は俺がサウスブニューデン地方で作って送る。
フグ町とサウスブニューデン地方の間に定期連絡船を運航する。
家族がサウスブニューデン地方に移動した後は、ネイメー伯爵家の仕事は代官を雇う。
ヤマユリ商会とチョウチョ商会は本店をサウスブニューデン地方に移し、リタが両方の仕事をする。
またネイメー伯爵家の領軍のうち1000人を連れて行く、文官とメイドについては希望者を募って文官は200人、メイドは50人を連れて行く。
後は随時修正する。
これを明日、領軍の指揮官と伯爵家の家令とメイド長に諮って修正してもらうことになった。
移住に向けた準備があわただしく進められる中、王都トイユアルジャンに行く日が迫ってきた。
俺とレンそれに家令とメイド長それに護衛の従士5人は領都ネイメーを魔道馬車で出発し、フグ町に着くと、軍艦でシフエルブルグ港に着いた。ここからは陸路を魔道馬車で王都トイユアルジャンに向かうのである。なお、領軍1000人はバルトカイが別に連れて行くので別行程である。
シフエルブルグ港に着くと、マンネリズム子爵に会った。マンネリズム子爵は、
「お互いにあわただしいですな。」
と言ってきた。
マンネリズム子爵にレンと家令とメイド長を紹介すると、マンネリズム子爵から同様に紹介を受けた。
レンの顔を見て子爵夫人が勝ち誇ったような顔をしている。レンの機嫌が悪い。
「どこかで飯を食おう」
ということになって以前行った居酒屋に行った。
扉を開けて中に入ると居酒屋の看板娘が話しかけてきた。
「以前来たお貴族様。お久しぶりです」
今日は平民服でなく貴族服それに周りには護衛もいる。いきなり腕をつかまれなくてよかった。そう思ったら、
レンが
「旦那様、この女は」
かなりお冠である。
「この居酒屋の娘さん。やましいことは何もないぞ」
「そう、それで」
「以前うちの屋敷で働きたいと言っていたから」
「屋敷で働くならメイド長の許可が要ります」
なかなかハードルは高そうである。
マリアは時々俺の方を悲しそうな目で見る。仕方ないので、助け舟を出すことにした。
「なあ、レン、これから行くサウスブニューデン地方は周りが知らない人ばかりだろう。この子をスパイにして働く人間の情報を教えてもらったらどうだ」
すると
「わかりました、この娘を雇います。ただし雇うのは私。私直属です。旦那様に絡んだら即解雇します。そして屋敷の人間の情報を私に伝えること。いいですか」
するとマリアは
「ありがとうございます。誓ってハルト様に絡んだりしません」
交渉成立である。
「この店はどうするのか」
と聞くと、
「店は借りているので、マリアがいなくなると店をたたんでサウスブニューデン地方に行く」
というので、
「俺に情報をくれるのなら、サウスブニューデン地方に店を出してやる」
と言った。これも交渉成立である。
「王都の帰りに寄るので、それまでに準備をしておくように」
言って、マジックバッグを渡した。
王都トイユアルジャンでの叙任式は、まあ、視線が厳しい。そんなものだと諦めていたが、これは今後が大変である。
その点、イングブリオ王国のエドルマンド国王は堂々としている、勝者の風格である。
アラン伯爵からは
「我々は勝者、何も臆することはない」
と言われたが、根が小心者の俺としては
「とても無理、早く帰りたい」
と思ってしまう。マンネリズム子爵も同様である。
叙任式が済むと俺たちは急いでシフエルブルグ港に帰ってきた。そして、マリアたちを連れて、サウスブニューデン地方を目指した。




