113.公爵邸のスパイ捕縛
俺はリヒト・ネイメー、伯爵家の長男、隣はマーサ・ネイメー、伯爵家の次女、そしてその隣はルナ・ネイメー、伯爵家の三女である。俺たち兄弟は今トゥール公爵家の領都の公爵邸にいる。
発端は、
「公爵領で魔獣が増えて手に負えないから魔獣狩りを手伝ってほしい」
とユリアーネ公爵夫人より、父が頼まれて、
「いい機会だから、お前たちで行って来い」
と言われたからである。
ユリアーネ公爵夫人は父の義理の姉ということで、俺達からすると義理の伯母さんということになる。あと公爵家の家族は、当主がユリアーネ義伯母さんの夫のフアニート様、嫡男がキニアニオ様8歳、次男のエトギル様5歳である。キニアニオ様はクララ姉さんと同じ年、エトギル様は俺たちと同じ年である。
俺たちの姿を見ると、フアニート様が少しがっかりしたような感じの声で、
「ハルト殿はどうしている」
と聞かれたので、
「父はフラ王国から帰ったばかりで疲れているのと、今仕事がたまっていて、とても領外へはいけないとのことです。
母も父の仕事の手伝いで手が離せないとのことです。
あくまで手伝いなのだから、強い魔獣は公爵家の従士にお願いして、できる範囲で魔獣を狩ればいいと父からは言われました」
そう答えると、フアニート様から
「しかし、あなたたちはエトギルと同じ年なのだろう。魔獣なんて狩れるのか」
と聞かれたので、
「3人一緒なら、オーガや地竜を生きたまま捕まえるのは無理ですが、狩るぐらいなら十分にできます」
こう言うと、フアニート様は驚いていた。
それと先ほどから気になっていることを聞いた。周りに結界を張って声が漏れないようにして、口元を隠して
「どうして公爵家は帝国のスパイを泳がせているのですか、何か意図があるならこのまま放置しますが、意図がないならすぐに捕縛したいと思いますが、いいですか」
これを聞くとフアニート様は驚いた顔をして
「ほんとにいるのか。いるなら捕まえてくれ」
と言われたので、マーサとルナに目配せした。
フアニート様の了解が得られたので、俺は部屋の隅に控えているメイドを土魔法で拘束した。またマーサは走って行って1人の従士を引きずってきた。
俺はマーサが引きずってきた従士も土魔法で拘束して、2人並べた。
そうしたらルナが1本の瓶を取り出して拘束したメイドと従士に飲ませた。
するとメイドと従士は急に苦しみだした。ルナが
「今飲ませたのは毒。大丈夫すぐには死なないから、多分3日ぐらいは生きていると思う。
以前はすぐに死んじゃったけど、最近は私も慣れてきたから薬の量の加減が分かるようになったの。
でも痛さはその間ずっと続くけどね。
知っていることをすべてしゃべったら、私が治癒魔法かけてあげる。
そうしたら痛みは取れるから。でも死にそうになっても治癒魔法で治してあげる。
もっとも治ったらまた毒を飲んでもらうけど」
これを見た公爵家の家族は呆然としている。しばらくして、ユリアーネ義伯母様が
「この2人がスパイだってどうしてわかったの」
と聞かれたので、俺は鑑定のことは秘密だったので
「以前クララ姉さんから聞いた魔力の波長と同じだったからです」
と答えた。
その後、このメイドと従士の部屋を公爵家の人が調べたら、公爵家の家族の予定を書いたメモ書きが出てきたので、俺たちのことは信用してもらったようだ。
結局取り調べは公爵家ですることになった。ルナが、伯爵家では私がしていたのにと残念がっている。それで今度は市内に行って同様に50人ほどスパイを拘束してきた。そして同様に公爵家で取り調べてもらうことにした。
その後、魔獣狩りの具体的な話になった。ブセルターン砦より北側の区域を魔道馬車で走って、目についた魔獣を手当たり次第に狩っていく。狩った魔獣は狩った者の所有とする。
魔道馬車の1台はリヒトとマーサとルナが乗る。運転手は公爵家から出す。
もう1台はキニアニオ様とエトギル様が乗る。
さらに10台の魔道馬車を出す。これには公爵家の魔法士が乗る。
これが決まった内容である。俺は明日、好きなだけ魔獣を狩れると思うと嬉しくて仕方なかった。
その夜、公爵邸では子供たちが寝静まったあと、フアニートとユリアーネが話をしていた。
「まだ公爵邸にスパイがいたとは、昨年クララちゃんが見つけてそれで終わりかと思っていた。それにしてもどうやって見つけたのだろう。何かコツのようなものがあるのだろうか」
「昔からハルトはスパイを見つけるのがうまかったわ。王都のお茶会でも毒を盛られるから飲み物に手を付けるなと言われたことがあったし、
王宮に行ったと思ったらスパイを捕まえたと言っていたし。子供も似たみたい」
「スパイを見つけるのはハルト殿の血筋か」
「そうみたい」
「明日は子供だけで大丈夫かな。一応うちの従士もつけたけど」
「多分問題ないと思うわ。ハルトが子供だけでここによこしたのだから。無理と思えば誰かをつけたと思う」
「それから比べると俺たちの子は弱いな」
「うちの子が弱いのじゃなくてハルトの子が異常なのよ。
私はハルトとレンの子供だから強いのだと思っていたけど、マーサとルナを見るとハルトの子供というだけでも十分強いみたい」




