112.クララの憂鬱
私の名はクララ・ネイメー、ネイメー伯爵家の長女、昨年からシャタイン侯爵家の勉強会に参加している。
「私一人では可哀想」
ということでお父ちゃんがネイメー伯爵家のメイドを1人私につけてくれた。
私が転移魔法を使えることはメイドに話した。それでさみしくなると領都の伯爵邸に転移してお父ちゃんとお母ちゃんに頭を撫でてもらって帰ってくる。その間私の所在をごまかしてもらっている。
私の容姿はあまりよくない。お父ちゃんに似るとよかったのだけど、お母ちゃんに似たところもあるみたいで、貴族では下の方、平民ぐらいと言われる。
確かにネイメー伯爵家にいた時もメイドはすべて美人だった。これはお父ちゃんの趣味だと思っていたのだけど、そうでもないみたい。勉強会に参加している貴族令嬢はすべて美人だし、平民でも私より美人な子もいる。また、シャタイン侯爵のメイドさんもすべて美人だ。
私には婚約者がいる。シャタイン侯爵家の嫡男マテアス様、私より5歳年上、現在王都の学院に通っているとのことで私が勉強会に行った時には会えなかった。夏の長期休暇には戻ってくるそうだ。
「私が生まれる前に決まったことだ」
とお母ちゃんに言われた。
シャタイン侯爵家に困ったことがあって、それをお母ちゃんが解決して、その褒美に私がシャタイン侯爵家に嫁に行けるようになったとのこと。契約書もあるとのこと。
シャタイン侯爵家に挨拶に行った時は当主のクリストフ様と夫人のアデリナ様にはよくしてもらった。
「寮に入らなくても、侯爵邸に住んでもいい。将来はここに住むことになるのだから」
と言われたが、
「まだ他家の人間なので」
と断った。
「侯爵邸に住むと息が詰まる。まだ自由でいたい」
そう思った。
私は冒険者登録している。時々魔獣を狩って換金している。また、勉強会用の魔獣を捕まえると報奨金ももらえる。オーガや地竜、それにワイバーンを生きたまま捕まえられるのは今のところ勉強会では私だけみたい。これはいい報奨金がもらえる。だからお金には困らない。でも勉強会では少し避けられているみたい。
勉強会の内容は、伯爵邸にいた時も家庭教師の先生に教わっていたので、大体はついていける。難しいのは貴族のマナー、うちはお父ちゃんも母ちゃんも元平民なので、伯爵邸にいた時もお父ちゃんもお母ちゃんも貴族らしい振る舞いは全くといってしてなかった。だから余計つらく感じる。
夏になって、嫡男のマテアス様が王都から帰ってきた。久しぶりに婚約者に会えると期待していたのだけれど、何か冷たい。雰囲気で分かる。
やはり、私の容姿が悪いから、お母ちゃんには
「夫の浮気の1つや2つは我慢しなさい。うちのお父ちゃんだって側室や愛人までいるのだから」
と言われているが、でもやっぱりつらい。
それで、ネイメーの伯爵邸に転移で帰っていたのだけど、戻ると何か騒ぎになっている。
メイドに聞くと
「マテアス様が私に冷たい態度をとったので、当主のクリストフ様と夫人のアデリナ様が謝りに来たのだが、私がいないので騒ぎになった」
そうだ。
仕方ないので、当主のクリストフ様と夫人のアデリナ様に謝りに行った。そして秘密にしてもらうことにして転移魔法のことを話した。
「転移魔法を使えるのは父と母と私、それに多分リヒトやマーサ、ルナも今練習しているので使えるようになると思う。
父は王都ぐらいなら平気で転移出来る。
母はあまり遠くへ行けない。このシャタイン侯爵の領都までは転移できない。
私はここから領都ネイメーまでなら平気で転移できる」
と答えた。
そしたら
「マテアスにはよく言って聞かせる」
といわれた。
その後マテアス様が謝りに来た。
わたしは
「容姿が悪いことは分かっているので、愛人ぐらいなら認める。でも第一夫人は私、それは譲れない」
と言った。
すると、マテアス様は
「わかった。クララを第一夫人にすることは変わらない」
と言われた。
私はうれしくなって
「ありがとう」
と答えた。
このことをお母ちゃんに言うと
「よかったね。私と同じだね。でもこれはハディー様にも知らせておく」
と言っていた。
その後、ハディー様からも私宛に手紙が来た。
「マテアスのことはごめんなさい。もしマテアスが今後も今回のようなことをしたら、マテアスを廃嫡にして、親戚から養子を取って、その子とクララさんを結婚させるよう父に言っておいた」
とのこと。
「ハディー様ってすごく過激な人だ」
と思った。




