110. ブレルサンマルロ軍港急襲
そんな状態が一変したのは12月の寒い日だった。俺たちはイングブリオ王国軍の指揮官の館に呼ばれた。
見ると、指揮官が変わっている。前の指揮官はシフエルブルグ港をフラ王国の艦隊に襲撃されそうになったのに、何の対策も取らなかったので更迭されたとのこと。今度の指揮官はアラン伯爵とのこと。
フラ王国の残存艦隊を攻撃するとのこと。俺たちは明日港を出て敵残存艦隊の正確な位置をつかむように言われた。
次の日の朝、俺たち3隻はシフエルブルグ港を出ると岬を回って一路南西へ舵を切った。北風が吹く冬の日である。
帆船ではまともに動けないが、俺たちは魔道船、魔石の消耗を気にしなければいくらでも航行できる。マンネリズム子爵には
「いつでも魔石に魔力を充填してあげる」
と言ってあるので、マンネリズム子爵も魔石の消耗は気にしていないようである。
港を出てから半日ぐらい行ったところで、俺の索敵に敵艦の影が映った。確かこのあたりにフラ王国の軍港があったはず。名前はブレルサンマルロ軍港だったかな。そこで3隻に隠蔽の魔法をかけて、遠くからブレルサンマルロ軍港を眺めた。
そうしたら、以前俺たちがシフエルブルグ港沖で交戦した軍艦がいた。数は40隻ぐらいか。もう少し正確な情報が欲しかったが、これ以上近づいて敵に発見されても困るので、ここまでの情報を帰ってアラン伯爵に伝えることにした。
シフエルブルグ港に戻って、アラン伯爵に
「敵の軍艦約40隻が、ブレルサンマルロ軍港に停泊中」
と伝えた。
その後、軍議が開かれ、明日、全軍でシフエルブルグ港を出て、明日の夜にブレルサンマルロ軍港に夜襲をかけることが決まった。
拿捕した敵戦艦は自分のものにできるそうである。船の上での白兵戦なんてしたことないし、こちらとしては火力で敵戦艦を撃沈したいのだが、そうすると後で船が使えなくなるので、今の戦法は艦上での白兵戦が主流とのこと。
「どうしたものか」
と思ったが結局マンネリズム子爵と相談した結果
「3隻で1つの船を襲って、最初は弓で相手の戦力をできるだけ削って1隻ずつ拿捕していく。狙う船は俺が決める」
ことが決まった。
次の日は冬にしては珍しく穏やかな日であった。イングブリオ王国軍の軍艦25隻と俺たちアムスム王国の応援艦3隻はシフエルブルグ港を出て、ブレルサンマルロ軍港を目指した。
俺たちの船は魔道船、速度が速い。イングブリオ王国の軍艦は帆船、速度が遅い。結局ブレルサンマルロ軍港の沖合に来る頃には夜になっていた。
このまま港に突っ込むそうである。
「心の準備が」
と思っている間にイングブリオ王国軍の軍艦は突っ込んでいった。
仕方がないので、俺たちも後に続いた。
港に入るとあちこちで船の上で白兵戦が行われている。まるで前世の映画のようである。
一番弱そうな船を探すことにした。見ると1隻港から逃げ出そうとする船がある。逃げるということは戦う気がない。イコール、弱い。そんな方程式が俺の頭の中でできてしまった。
3隻でその船を囲むと周りから弓矢で艦上の水兵をほとんど倒した。そうしたら、降伏すると言ってきた。初めての白兵戦、うまくいってよかった。その船に乗り移って、水兵を捕縛していった。その後、この船をどうしようか迷ったが、置いておくと逃げられても困るので、俺の船の水兵に船を操船させることにした。
その後、どの船にしようか迷ったが、結局港から逃げ出そうとする弱そうな船を狙うことにした。そうやってあと2隻拿捕した。もう無理である。
戦況を観察すると、今回の襲撃は大成功のようである。いくつもの船が拿捕されたようである。拿捕されない船は火がつけられたようである、港の施設にも火が放たれている。
「そろそろ引き上げかな」
と思ったら、無理やりこちらに突っ込んでくる船がある。
エンジン全開でその船を避けると、その船は俺たちの船の横をかすめると、そのまま逃げようとしている。
そこで俺は魔法で敵戦艦のマストを吹き飛ばした。マストを吹き飛ばされた船は、そのまましばらく慣性航行を続けたので、俺の船を並走し、そこから眠り魔法で敵の水兵を眠らせた。
もう俺の船の水兵には戦う余力はない。敵の船に乗り移ると、眠っている水兵を捕縛した。マストが壊れたのでこの船は自力では進めない、仕方ないので俺の船で引いていくことにした。結局拿捕した船は4隻になった。
その後、また1日かけてシフエルブルグ港に戻ってきた。
今回の襲撃でフラ王国の軍艦20隻を拿捕したとのこと。また残りの軍艦は航行不能にしたとのこと。また港の施設にも甚大な被害を与えたので、もうフラ王国海軍にシフエルブルグ港を襲う力はなくなったそうだ。
その中で初めての海戦で4隻を拿捕したということで、アラン伯爵より褒められた。また拿捕した船については俺たちの自由にしていいと言われたので、4隻拿捕なので、マンネリズム子爵と2隻ずつにした。マストの壊れた船は俺がもらうことにした。
捕縛した敵の水兵はアラン伯爵に引き渡した。引き渡した水兵の中に敵の上級貴族の子息が何人かいたようで、これについては
「あとで報奨金を上積みしてやる」
と言われた。




