102. ハルトの意見書とレン、アンナ、リタの出産
ハルトは領地に戻ると、トゥール公爵家のフアニート様とユリアーネお義姉様あてに、今回のことに対する意見書をまとめて送った。
公爵家の危機管理能力の低さが問題である。
まず、今回の帝国軍の侵攻は威力偵察である。本格侵攻は来年、そうでなければ、もうすぐ雪が降るような季節に侵攻してくるはずがない。
今回の侵攻で帝国軍は公爵領の状況、そして公爵軍の能力をかなり正確につかんだと思われる。
本格侵攻は来年、予想される帝国軍の規模は、最初は約2万人、最終的には約5万人である。
峠の雪が解ける6月ごろ、まず、北の砦を攻略、その後公爵領の北部地域を制圧、そして、その制圧した地域のどこかで、カタパルトの製作を開始すると思う。
場所としては、チュートブルゲンの森辺りが最有力と考えられる。カタパルトがなければ、ブセルターン砦は落とせない。
今回の帝国軍の侵攻では帝国軍はカタパルトを用意してなかった。ブセルターン砦は俺が急遽作ったため、当てが外れたと思う。もしブセルターン砦がなければ領都まで帝国軍は一気に侵攻し領都周辺を制圧、物資と捕虜を収奪し帝国に帰還していたと思う。
カタパルトの製作には2か月ぐらいを要すると思う。もし、カタパルトの製作を阻止できれば帝国軍は軍を引くかもしれない。
カタパルトの製作を阻止できなければ、帝国軍は8月ごろからブセルターン砦の攻略を開始する。
ブセルターン砦の防御には魔法士と弓兵の存在が要である。これが確保できなければ砦は落ちる。
ブセルターン砦が陥落すると、もう防御の拠点となるような場所はない。
今の公爵領軍に帝国軍と戦える戦力はない。したがって、野戦は不可能で領都に籠城し、王国の援軍を待つしかない。
領都を包囲したら、帝国軍は越冬用の物資の調達を開始すると思う。これは、峠の道は険しく冬の間の兵糧の運搬は不可能だからである。公爵領軍としては領都の防御を固めるとともに、周辺の町や村にもなるべく帝国軍に物資を収奪されないようにする必要がある。
王国の援軍であるが、6月に援軍要請を出したとすると7月ごろと考えられる。ブセルターン砦が陥落していなければ、その周辺の平原での野戦となるが、勝てば帝国軍は引き上げると思うが、負ければ領都は包囲される。
公爵家がとる対策としては北部の山岳地帯を通る道の破壊と北の砦の補強。
それにブセルターン砦に立てこもる魔法士と弓兵の確保。ブセルターン砦に立てこもる魔法士は最低500人、出来れば700人を確保したい。また弓兵は最低4000人、できれば5000人必要である。騎兵は必要ない。
また、遊撃隊として魔道馬車による部隊を編成する必要がある。現在公爵家には魔道馬車が30台あるが、春までにあと70台送る。これで100台の魔道馬車による部隊を編成してほしい。
魔道馬車1台に運転手2人、攻撃する魔法士4人、弓兵4人として1台に10人、魔道馬車100台で、計1000人の兵士を確保してほしい。この遊撃隊でカタパルトの製作を阻止したり、帝国軍の後方かく乱が出来たりすれば、公爵軍の勝機も見えてくる。
公爵家の魔法士は弱すぎる。もっと強力な魔法士を確保してほしい。兵の確保はテー公爵家に依頼してほしい。ネイメー伯爵家は人員が不足しており、派遣は出来ない。とにかく兵の確保は急務である。今からでもしてほしい。
ナットー町での魔獣の氾濫は、どうしてこんなにたくさんの魔獣が野放しだったのだ。俺たちが討伐した魔獣だけでも、ビッグボア200体、ビッグベア120体、オーガ80体、地竜30体、ワイバーン20体、これだけの魔獣が暴れたら、帝国に統率されなくても、町や村に被害が出ていたと思う。
公爵家はもっと早く対処すべきだった。それと、なぜ残った弱い魔獣を討伐するのに、公爵家の主力は1か月以上もかかっているのだ。公爵家の領軍は弱すぎる。
それから、公爵邸でもスパイを見つけたのはクララだったという話だし。公爵家は警備体制も見直す必要がある。
ブセルターン砦でも、帝国の斥候の対処はクララがしていたし、押し寄せる帝国軍に魔法を放っているのもネイメー伯爵軍の兵士だったし、公爵家の兵士は一から鍛え直す必要がある。兵士の採用にあたっては実力重視で行く必要がある。
それと、フアニート様とユリアーネお義姉様にはもっと公爵領の状況を正確に把握してほしい。部下の話を聞くだけでなく現地に行って自分の目で見て判断してほしい。
それからブセルターン砦より北側の公爵領については物資を帝国軍に収奪されているので、多分このままでは冬を越せないと思う。早急な支援が必要である。時間がないのですぐに動くべきである。
来年の帝国軍の本格侵攻に対してすぐに行動しないと取り返しのつかないことになる。
その年は王宮のパーティーもないことから俺は領都でゆっくり過ごした。次の年の3月の終わり頃に、レンとアンナとリタが相次いで出産した。
どうも、改良された居酒屋で疑似奴隷ハーレム計画を実行したときにできた子供のようである。あの時は俺もはしゃいだ。少し暗い中、大音響の音楽に酔って、うまいもん食って酒を飲み、女(妻)の体を寄せる。
異世界に生まれて初めて俺の理想の生活が出来たような気がした。難しいことはもうやめ。このまま酒池肉林の生活をするのだと歓喜したものである。
もっとも、その結果レンもアンナもリタも妊娠したのだが。生まれた子は全員女子である。レンの子供が五女レノア、アンナの子が六女セリーナ、リタの子が七女ミリーと名前を付けた。こう女の子ばかりだと名前を付けるのに悩んでしまう。
それと、レンの子供はまた女の子であった。嫁の貰い手があるのだろうか。これも悩みの種である。レンは男爵家を継がせるというが、レンに似ていると婿殿が可哀想である。




