41 桔梗屋のあととり娘
「おまちしておりました、こちらにお越しください」
桔梗屋の一人娘の花が案内をする
腐っても商売人の娘
織田家家臣の妻相手に堂々としていた
いや腐ってはいない
芳紀14歳
もう嫁に行ける年頃である
桔梗屋の花は桔梗屋徳兵衛の一人娘である
母親は産後の肥立ちが悪く、幼少の時に亡くなっていた
この戦国時代、ちょっとした体調不良でも死ぬことが多いのである
それゆえ7歳までは神様の子として大事に育てられる
・・・未来では考えられないことである
なにせ餓死する子供が後を絶たないのだから
桔梗屋は後添え(後妻)を貰うことなく娘を育てた
幸いにして親戚一同が子育てに手を貸してくれたからである
でなけけばこの戦国の世で娘を無事に育てることはできなかったであろう
最悪、自分の意に反して後妻を貰っていたことだろう
見かけによらす愛妻家であった
ちなみに桔梗屋はハゲでデブである
いや髪が結構薄いといった方が正確かもしれない
だがこれ以降はハゲとする
人間第一印象が一番なのである
そんな桔梗屋ではあるが結構人気がある
この時代、金があり太るほど食べられるというのは一種のステータスなのだ
ぼっちゃりであることが美徳とされていたりする
あのお腹に抱きつきたい
若い娘から夫を病で亡くした妙齢の婦人まで意外と人気がある
ちなみに男も同様である
貫禄があって良い
というのが大多数の意見である
そんなイケメン(戦国時代限定)に育てられた娘はまっとうに育った
なにせ女性陣からの秋波を丁寧にあしらいつつ、商売を繁盛させるという父親を見ながら育ったのだ
良いお手本があれば人は真っ当に育つという見本である
・・・ここで信長様はどうなんだ?という質問はいらない
世の中の偉人なんて普通とはどこか違っているのである
そんな人を見習えと言う方がおかしいのである
話を元に戻そう
商売人の父の背中を見て育った花は商売人の道を選んだ
この時代、完全な男尊女卑である
それでも選んだというところが凄いと言える
まあどんな困難があっても突き進む覚悟があると言う訳である
・・・お金が溜まるのを見るのが嬉しいというモチベーションがあればどんな困難も乗り越えられるというのは古今東西普遍の真理である
そんな花が熊から桔梗屋に提案された
上級階級の奥方様の髪を洗おう
に飛び乗ったのも当然である
なにせ女の自分にしかできない仕事だからである
金の匂いがプンプンしていた
そういう訳でもある
花は頑張った
熊から教えて貰って洗髪の技術を身に付けた
座るイスも新しく作った
布も大量に用意した
新しく小屋も建てた
桔梗屋の使用人相手に練習もした
・・・使用人が他の店の女店員から嫉妬されたのは別の話である
父親の全面協力もあり満を持して開業した
一番最初の客は帰蝶の侍女であった
そりゃそうである
自分達が完璧に再現できなかったものを再現したのだ
行かない訳が無かった
なあ上級侍女が熊の洗髪技術を再現できなかったのには訳がある
育ちが良すぎたためである
早い話、某女性政治家に家事を完璧にできるか?と問えば理解できるだろう
予約して訪れて綺麗になって帰って行った
それを見た侍女が後から後へと続いた
帰蝶の侍女が一回りしたらまた最初に戻った
人が綺麗になるのが許せないというのが女性の真理である
家臣の一人の妻が桔梗屋の客に加わった
最初は下賤な商家で髪を洗うなんて
と非難の声が上がった
だが
綺麗は正義
なのである
・・・熊が噂を広めたのは秘密である
すると雪崩をうったように繁盛した
その繁栄を見て
なにこのチート
転生者なんじゃね?
のちに熊が信長に漏らした愚痴である