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信長様と行く戦国時代  作者: 焼ミートスパ
第1章 家督相続編(信長18歳)
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9 森可成登場

「もちろん主家の存続でござる」


森可成は信長からの問いにためらうことなく答えた


言葉に込められた思いに信長は言葉がなかった





長い人生を生きてきた可成の言葉は歳若い信長には重すぎた









時間を少し戻す



信長は熊に


「織田家中の混乱を修めるにはどうしたら良いのか」


と問いかけた




家中は長男の信長派と次男の信勝派に別れ混乱していた


お互いに譲ることはない


そのため消耗戦と化していた


困った信長は友である熊に泣きついた





普通ならば農民に相談してもなんともならない


だがなぜか熊は賢かった





戦国時代有数の合理主義者と名高い信長と対等以上に話ができるのは訳がある


熊は転生者だったのだ


未来の知識を持っていれば当然である






信長からの懇願を受け、熊は銅鑼賀なる昔の賢者の言葉である


『誰もが得心する目標を立てる』


を勧めた




信長はその場でいくつか提案するものの熊にすべて却下された




曰く


日の本を統一するなどという戯言に誰が付いていくものか


・・・付いてくる者がいたら驚きである





後の世に戦国武将としては極めて合理的な論理を持つといわれる信長である


だがさすがに18歳の経験不足の若輩者の時には熊(てんせいしゃ)の足元にも及ばなかった





その場で答えを見つけることができなかったため宿題となった




困った信長は蘭丸の父である森可成に相談した


「三左(可成の通称)ならどう答える」





もともと熊から母である土田御前に相談するようにアドバイスを受けていた


もっとも母は弟側に付いているため相談できなかったため取りやめとなった


その焼き直しである





もっとも信長の味方は少なく、相談できる人間が他にいなかったとも言う


その結果が冒頭のセリフだった





可成は美濃の国(現在の岐阜県)の守護大名である土岐氏に仕えていた


ところが斎藤道三により土岐氏が滅ぼされてしまった


可成も奮戦したが力及ばなかった


いや道三といえばその当時、『美濃のマムシ』と呼ばれたほどの実力者である


敗戦は当然であった







戦国時代の戦とは相手の領地を奪い取り自分の部下に分け与えることである


当然のことながらそのまま美濃の国にいたら道三に殺される


そのため、可成は持てる物を持って家族や使用人ともども尾張の国(現在の愛知県)に逃げてきた





その後の生活は悲惨だった


可成一人ならば流浪の身になってもなんとかできただとう


ところが妻と子供、使用人の家族がいるのだ





持っているものを売りはらって食料を買った


雨風を防ぐために小屋を貸して貰った


持っている物が段々無くなっていく恐怖


腹をすかせる子供達


希望を持てない明日


絶望しかない今日


織田家に仕官するまで大変な日々だった




そのため主家の存続は絶対であると考える




戦になるのは良い


自分が死ぬのは良い


息子が代わりに召しかかえられるからだ




だが主家が滅ぶのだけはダメである


たとえ領地が半分になろうとも主家さえ残っていればなんとかなる


そんな思いを込めて可成は信長に答えた




信長は恥じた


可成といえば家臣の中でも古参である


かなり苦労してきたとは聞いていたがそこまでとは思わなかった




自分には妻の帰蝶がいる


仕えてくれる蘭丸がいる


もしも父が戦に敗れ尾張の国を盗られたとしよう


自分に可成のように家族や家臣を守っていくことができただろうか?




いやだめだ


出来る気がしない





この大うつけ


信長は自らの無力を自覚し、自分自身を罵った

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