第08話 死神との買い物がこんなにデンジャラスな訳がない!
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「どうだ? そろそろ動けるようになったか?」
俺は、30分前に言った『動けるようになったら買い物に行く』と言う言葉の通りに、あれから30分後に居間のソファの上で転がっているクゥを呼びに来た。
30分という微妙な時間を有効に使うために洗濯したり風呂掃除したりと家事をこなしていたのだがあっという間に時間が来てしまった。
「う、う~~~ん。 だ、大丈夫です。 今度はちゃんと動けるみたいです」
クゥは体を起こすのも苦労していたが、エネルギー切れとは関係なく、どうやら腹筋が弱いだけでもう大丈夫のようだ。
「さて、さしあたって買うものと言えば、歯ブラシ、コップ、タオル、服、下着、靴、スリッパ、箸、食器、鞄、財布、携帯電話、あとは、・・・そういえば夕飯の材料も買わないといけないんだった」
「ゆ、悠哉さん!? ちょっと、多すぎませんか!? 鞄とか財布とか携帯電話までは今買わなくてもいいですよ」
「そうか? まあ、クゥがそう言うなら別にいいんだけど」
「じゃ、じゃあ、さっそく行きましょう。 でも、結構買う物の種類が多いですけど、何処に行くつもりなんですか?」
「うん? そりゃ勿論、ヅャスコだ」
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と言う訳で、色々買い揃える為に俺とクゥはヅャスコにやってきた。
ヅャスコとは大型のショッピングセンターで、さまざまな店が大きな建物の中に入っている。
食品や家具、電化製品から日用雑貨まで多種多様な店が入っており、連日多くの客でにぎわう。
そして、俺たちもその大多数の客に便乗してこの店を訪れた訳だが、
「う、うわ~、広いですね。 み、見てください、色々なものが売ってますよ」
クゥのテンションが結構上がっている。
「ゆ、悠哉さん! このカラフルなものはなんですか?」
興奮した様子のクゥが指さしているものを見ると、
「うん? そりゃ、アイスだ。 310アイスだな。 いや、俺も久しぶりに来たけど、結構内装も中にある店も変わってるな。 俺が前に来た時は310アイスなんてなかったからな」
「こ、これが、噂に名高いアイスクリームですか」
クゥはショーケースに貼りつかんばかりに近づいて目をキラキラさせてアイスを見ている。
口に出さなくても食べたいと目が口ほどに物語っている。
そして、そんな光景は通りかかる人達の視線を集めてしまう。
それでなくとも、長い銀髪、白い肌、エメラレドグリーンの瞳の整った顔立ちに、対照的な黒を基調としたローブのような服を着ているためかなり目立つ。
確かにクゥの白い肌や銀の髪に黒の服はそれらを映えさせるのではあるが、あまりにも目立ちすぎる。
そして、ガラスのショーケースに張り付きそうなほど近づくと言う珍妙な行動がさらに注目を集めのだ。
その所為で、こっちをさっきから何人もの人たちが通りかかりざまに見ていく。
立ち止まる人もいるほどだ。
さらに周りからは、『テレビの撮影か?』などと言う声も聞こえてくる。
「クゥ! 目立ってる、かなり人目を引いてるからガラスケースに貼りつかないでくれ。 アイスなら買ってやるから」
俺は急いで、310アイスで適当にアイスを店員に見つくろってもらうと、クゥの手を引いてその場を後にした。
1階には多くの食品関係の店が軒を連ねているが、いささか以上に人が多い、さっき人目を引いてしまった手前、あまりさっきの騒動を見た人の居そうな1階にいるのはあまり気が進まなかった。
そのため階段を上がり2階の人通りの少ない休憩スペースにクゥを座らせてアイスを食べることにした。
「ん、ん~! おいしいです! 人間界っていうのは何でこんなに食文化が発達してるんでしょう?」
クゥはアイスを食べながら、顔をキラキラさせてアイスを不思議そうに眺めている。
そして俺はというと、急いで買ったアイスのレシートと買って来たものを交互に眺めて310アイスの店員のしたたかさに驚いていた。
驚いた理由は、あれだけクゥが人目を引いて小さな騒ぎになりかけていた中で、俺が『お勧めをお願いします』と言って見つくろってもらったアイスは、俺の知らない間に俺とクゥの分2つになっていたし、どっちもトリプルになっていたし、アイスの種類も値段の上から高い順に3つ選ばれていたし、そのうえよく分からんトッピングで値段が嵩増しされていた。
そのおかげで買った時は気にしていられなかったが、よく見たら俺はアイスだけで2000円も消費していた。
まだ、クゥの生活用品を一切買っていないのに。
しかし、アイス一つでここまで嬉しそうに笑ってくれるのならばいいかとも思ってしまうのだった。
だが、今はマックのCMでも見なくなったスマイル0円に対して、こっちはクゥのスマイルを得るのに1000円消費である。
溜息の一つも出ると言うものだ。
クゥのアイスと一緒に買ってしまった自分のアイスも早くしないと溶けるため一口食べると美味しかった。
なんかそれが微妙に悔しかったりもするのだった。
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「さて、スリッパ、箸、食器、コップ、タオル、歯ブラシは買ったし、ほかに買う物って何があるんだ?」
「え、ええと、悠哉さんのメモによると、靴、服、下着・・・・・・です」
メモに書いてある品物を言うごとに言葉が小さくなっていく。
恥ずかしがっているのか、遠慮しているのかは分からないが。
とにかく、買っていないものは三種類のようだ。
「じゃあ、まずは難易度の低いに靴でも買うか」
そして、俺とクゥは靴を売っている店へ向かった。
靴屋に行くと分かるが、靴と言っても色々な種類がある。
スニーカー、ブーツ、底上げ靴、ヒール、サンダル、パンプス、ローファ、長靴、等々。
とりあえず、靴と言って買いに来たが、正直に言ってどんな靴を買ったらいいか全く決めていなかったのでどんな靴を買うのかをまず決めなければならない。
店内にはスリッパも置いてはあるが日用雑貨店でさきほど安く買ってきたため、靴屋では外出のため靴を買うということだけは決まっている。
ちなみにクゥの靴は、コスプレかと思うような形状で先端部分が金属のようなもので出来ている。
冥界の金属がこちらの世界の金属と同じなのか分からないため何の金属か断定できないが、死神なんてものが存在した今、クゥの靴がたとえオリハルコンで出来ていると言われても驚きはしない。
俺はクゥにどんな靴が似合うのか、靴を一つ一つ見て考えていると、
「す、すみません、どんな靴が今流行っているのか教えてくれませんか?」
という、クゥの声が聞こえてきた。
確かにこう言う店の店員は流行などに詳しい(だろう)。
少なくとも、どんな靴が売れているのかは把握しているはずだ。
つまり、現在の流行りも知っているだろう。
まさに餅は餅屋という事だ。
なかなか、クゥもこっちの世界に慣れてきたな。
そう思った時期もありますた。
しかし、現実は俺の予想など軽く握りつぶしていく。
店員と話しているであろうクゥを俺が振り返ると、
店員のお姉さんは顔に恐怖の色を張りつかせ、口をパクパクしながら両手を挙げて降参のポーズをとっていた。
まあ、それもそのはずだ。
クゥは両手に金属製(に見える[実際は何か分からない])大鎌の刃の部分を店員のお姉さんの首に押し当てる寸前ぐらいまで近づけていた。
そう言えば、出合った時もクゥはお願いだか、質問だかのときには鎌を相手に付きつけるのが冥界の常識だかと言っていたな。
やっちゃ駄目って教えたはずなのにーーー!!
俺は、クゥに『なにやっとんじゃあぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!』とツッコミを入れようとした瞬間、
「動くなっ! 金を出せっ! 動いたら、この銃で風穴を・・・ってえええええ!?!?!?」
強盗と思しき覆面の男が銃を持って乱入してきて、大鎌を店員のお姉さんの首に鎌をかざしているクゥの姿を見て驚きの声を上げた。
ふう、強盗が銃を構えているという危機的状況のはずなのにシリアスな空気が微塵もない。
強盗の方もきっとシリアスなイベントとして受け取ってほしかったのだろうが、強盗としての決め台詞の途中でクゥに気を取られて言い終われなかったため、中途半端というか何とも微妙な感じになってしまっている。
俺としてはクゥにツッコミを入れて、哀れな店員のお姉さんを死神の手から解放してあげたいところだが、強盗のおっちゃんが銃を構えているため迂闊に動けない。
クゥはクゥで自分の行いに疑問を持っていないし、強盗という存在をまず分かっていない。
頭の上に?が3つほど浮かんでいるのが見て取れる。
強盗のおっちゃんは、銃を構えたままクゥの姿に唖然としている。
もちろん、店員のお姉さんはクゥの鎌、強盗の銃、二重の意味で動けない。
ある意味、一番の被害者だと言える。
かなり、同情してしまう可哀想なポジションだ。
さて、俺はどうすればいいんだろう?
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夜に見てくださった皆さんは、こんばんわ~
朝に見てくださった皆さんは、おはようございます~
昼に見てくださった皆さんは、こんにちは~
というわけでやってきました後書きコーナー
どんどんパフパフ
わ~い
はい、では、はじめましょうか。
いや~また一つ話数を増やしてしまったことに皆さんお気づきでしょうか。
前回の予告で出てきたはずのセリフが今回の話で全部出てきてねえじゃねか。
と思われた方もいるかもしれません。
そこまで気づいていただけたら、私の小説をかなり読み込んでくれている人だということになります。
気付いた方、ありがとうございます。
まあ、なぜ予告で出てきたセリフが今回登場しなかったのかといえばそれはつまり・・・
話が伸びたからです!
いや、ほんとはこのヅャスコ編は1話完結予定だったんですけど、
終わりませんでしたね。
2話目に突入してしまいました。
メインキャラがなかなか全部でそろわない!
とはいっても、キャラクターの数だけは構想のなかで増え続けているのに、メインキャラの区切りっていまだに決めてないんですよね。
とりあえず、うん。
そのあたりはおいおい決めていこうと思います。
いや~、でも久しぶりに実家に帰ってきましたよ。
一か月以上会社の研修で○○県に行っていましたからね。
しかも、まだ研修が終わっていない。
ゴールデンウィークだから一時的に家に帰ってきただけなんですよね。
まあ、研修受けて給料がもらえるんですから
かなりお得な気はしますが。
とまあ、そんな感じの一か月でした。(ほとんど一か月の内容を語っていないが)
それでは、今回はこの辺で、
みなさん読んでくれてありがとうございます~
それと
誤字脱字は指摘してください。
そして、
コメントと評価をお願いします。
大事なことなので2度言います。
コメントと評価をお願いします。
この文章もコピペじゃありません。
ちゃんと、2回打ちました。
では、今後とも私の小説(この「天使と悪魔と死神と」に限らず)
よろしくお願いいたします。