交わらない正義
「にしても、次の日すぐに来ることはないでしょ!」
校門を背に歩きながら、前を行くあかねの背中を睨む友梨奈。
振り返ったあかねは、くちびるを突き出して言い返した。
「来たくて来てるんじゃないし。勝手に聴こえてくるんだもん。学校とか、夜はセンサー切ってるし」
「え、何それ?」
「碧さんと修行してできるようになったの。その代わり、使ってる時は集中して能力を上げるように訓練してるけど」
(いやいや、それが余計でわたしが巻き込まれてるんだけど)
能力のスイッチをオンオフできるなら、友梨奈の教室での紅い眼問題も解決できる。
でも、相手がよく分かっていない状態で完全に切ってしまうと、不測の事態に対応できないリスクがある。
麻由を守れない――それだけは絶対に避けなければ。
「でも、あかねがうちに来てるの、見たことないけど。そもそも出入り禁止されてるんじゃなかったっけ?」
バス事故の時と、こっそり羂索を持ち出している時ぐらいだ。
どちらも友梨奈は現場を見ていない。
出禁なのは、もちろん碧からではなく――。
目の前に、住宅街の中の公園が見えてきた。
以前、あかねに連れて来られた場所だ。
思い返せば、あの時から色々と巻き込まれている。
「で、今回は何が起きてるの?」
その時、前を歩いていたあかねが急に立ち止まり、そのまま固まった。
「やっぱりこういうことだったのね。何か、学校から直接帰宅していないとは思っていたけれど」
公園の中から、一人の女性が出てくる。
あかねの隣で立ち止まり、友梨奈の表情も凍りついた。
「清華おばさん……」
能力否定派で木花家を嫌い、碧や友梨奈と娘との接触を禁じている人物。
友梨奈は、あかねを誘い出して能力を使わせているという濡れ衣を、この人に着せられている。
(梨奈ねーちゃん、そういえばお母さんにこの場所バレたから、河岸のに変えたんだった)
(あかね……そういう大事なことは忘れないでよ……)
頭の中で会話する二人。
「こら! 変な方法でコミュニケーションしない!!」
思わず、二人は起立の姿勢で硬直した。
友梨奈の母の妹だけに、否定派でも能力に対する素養はあるようだ。
――まんま聴こえているわけではないだろうが。
「友梨奈ちゃん、あかねを誘わないで、って前に言ったよね」
「あ、いえ、その……」
碧とは別の種類の圧力だが、友梨奈はこの人も苦手だ。
「人助けなんてどうでもいいの。人は自分の死は選べないし、その人の運命なんだから。わたしは、この子さえ守れればいいの」
「だから、二度と能力絡みであかねを連れ出さないでね」
清華はあかねの腕を掴み、公園の外へ引っ張っていく。
公園の奥を見ると、助けを求める腕が出現していた。
「どうすんのよ、これ」




