第五話
☆デーニッツ領のとある村の女神教会
カーンコーン、カーンコーン
ワーーーワーーー、
「おめでとう」
「さあ、誓いのキスを」
結婚式のクライマックス、新郎新婦が誓いのキスをするシーンで、村の中央広場、突然、まばゆい光が炸裂し、徐々に光は収まっていった。そこには一人の聖剣を肩に担いだ者を中心に、10人近くの鎧を乱れて着こなしている無頼者が現れ、人々を困惑させた。
(勇者の聖女狩り隊だーーー)とこの場にいる者は誰しもが思った。
勇者は、若い女性を見ると、聖女の可能性ありとさらうと噂、いや、公然の事実として、この国全土に広がっている。
「ちょっと待って~や。この結婚異議あり~その女は聖女の可能性がある。この勇者アギトが持って行くぞ!」
「!!!え、勇者は女をさらわない約束では?」
「あ~約束は破るためにある。有難く思え」
領主が討ち死にし、その後の盟約で、多額の金品と引き換えに、領内を荒らさないと約束をしたが、アギトは平気で、約束を反故にした。
でなければ、白昼堂々と結婚式などしない。
村人は花嫁を逃がしたが、アギトは花嫁を庇ってスクラムを組んでいる村人達をなんなく飛び越え。花嫁の前に立つ。
「ヒィ」
「最近、抵抗するのがいいのよね。魅了は使わないでやるのにハマっていてさ~聖女検査やらせて!」
恐怖に怯えると思われた花嫁は、跪いて承諾した。
「勇者様は、希望の光、この身を・・喜んで差し上げますわ。ですから、どうか、この体を楽しんだ後は、魔物討伐に御出陣下さい。皆の願いです・・」
「はい、は~い。そうゆうのはいいから、ここでやろうぜ。おい、花婿をこっちに寄越せ。お前ら、花婿を連れて来い。花嫁は四つん這いになって、スカートをめくれ!」
「グハ」「ギャー」と悲鳴が聞こえた。
「おい、村人殺してないで花婿を連れて来い。見せつけながらやるのにハマっているのだ。まだ、殺すなよ。早くしろ。何が起きた?何?お前ら、攻撃されているのか?」
花婿や、村人は刀を取り出し、勇者の取巻きに斬りかかっていた。
勇者が後ろを振り向いた瞬間。
花嫁は短刀を取り出し。跪いた姿勢から、足の力を貯めて、一気に、勇者の背中に飛び込んだ!
「!!グハ、何だお前、勇者は刀傷付かないはずでは・・ググ-」
「お前-何をした」勇者は花嫁を突き飛ばした。
「フフフフ、この短刀は魔族軍から鹵獲した対聖魔法用の短刀、お前に一太刀浴びせたわ!」
「はあ、はあ、雷魔法、天地を切り裂け」
勇者は雷魔法を放った。花嫁は、勇者が詠唱を唱えている最中
「あら、あら、女を殺すのに、勇者の魔法ですか?さすが、落第勇者さんですね」
と最期の言葉を勇者に投げつけた。
ピカ、ドカーーン
花嫁は原型をとどめないぐらいに、黒いスミの造形物になった。
「ヒール、ヒール。ヒール」
背中だから、掛けにくい。俺の治癒魔法は欠損復元まで出来ない
「ヒール!ヒール!ヒール!」
効きが悪い・・まさか、魔族の武器のせい?
「それ、姫様の死を無駄にするな。第二段階に入れ」
「ウオオオオーーー」
家々からも村人に化けた騎士が一斉に刀を抜いて走ってきた。しかし、何人かは、その刀身が黒い
「黒い刀身?!」
ヤバイ、また、これが、勇者殺しの武器か?こうなったら、逃げるぞ!
「転移魔法!発動!」
勇者は取巻きを置いて元の拠点に逃げた。
「はあ、はあ」
あらかじめ、この村を狩り場としてマーキングしておいて良かったぜ。
「えっ」
魔方陣の前に王国魔道師団の制服を着た者が30人ばかりいた。その回りは、聖騎士が護衛している。
「勇者が現れたぞ。まず前段10人放て~」
「クソ!制圧されている。魔導師が、詠唱して待っていたのか?転移魔法発動!」
間一髪、勇者は元の村に転移したが、
「戦槌?だと」
目の前に戦槌が迫っていた。
かろうじて刀で受け止め
「爆裂魔法!!」
ドカーーーーン
大きな爆発音が響いた。
取巻きごと、村を爆発した。
「はあ、はあ、特大爆裂魔法で、何とか生き延びたぞ!しかし、背中はまだ痛い。聖女だ。本物の聖女の治癒魔法が必要だ」
水が欲しい。井戸だ。「グビグビ、ゲーーー、苦い。クソの匂いーー」
井戸にクソを投げ込んでいやがる。転移魔法の移動点に魔道師団がいる。その他の拠点は、俺の力では、遠くまではいけない。厄介だ。
王都に行くか・・いや、あれが勇者殺しの武器なら、もう無いだろう。いや、まだ、隠し持っているか・・
聖女を探す。本物の聖女だ!
アギトが徴収した聖女は、全員素人、良くて生活魔法を使えるぐらい・・
デーニッツ伯爵令嬢アガーテは、史上初の人族による暴虐勇者へ傷を付けたと、[王国史列女伝]に記載された。
最後までお読み頂き有難うございました。