10・5 ノイン ルート
私はあのまま死んだのかと思っていると、見覚えのある部屋に寝かされていた。
ここはそう、何度かきたことのあるノインの父が所有する別荘だ。
「目が覚めました?」
ノインが安堵したように、私の具合を確認する。魔族は丈夫だから、あの程度では死ねないらしい。
「王子はいないわよね……?」
今、あの王に似た髪の彼を見たくない。
「いません」
彼は表情を変えずに、いつも通り無愛想に答えた。
「……私がここにいること、あいつら知ってるの?」
ノインは王子の従者だし、報告していてもおかしくない。
「どうでしょう、言ってはいませんが腕輪の発信機でバレていそうですが」
「そんなのついてたの!?」
「腕輪は外しておきましたから、個人の居場所は特定できないでしょう」
「ああ、もう城にはいかないから必要ないものね」
まだつけられていたペンダントを見て、赤じゃなくて本当によかったと思う。
そして紫のリボンがなくなっているのに気がつく。
飛んだときに落としてしまったのだろう。……悲しいけれど、もう私には必要ない。
「なんであれ、ここはプライベートエリアなのでいくらイルテ王子だろうと立ち入りはできませんよ」
ノインは棘のある言い方をして、嫌悪感をあらわにしている。
優しそうであった王の本性が露呈し、王家に対して失望している?
自分の主がいつか父のようにうなるのではないか、そんな危惧が見受けられた。
「それでは腕輪を処理しておきますから」
彼は部屋を出ていく。
「あんたに感謝する日が来るとは思わなかった。もう迷惑はかけないようにする」
ペンダントをベッド横のスタンドにかけて、窓の外から出た。




